アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

「上野千鶴子さん、祖母が「東大に行ったらお嫁に行けない」と言いますが本当ですか?」を読んで思ったこと

2021年12月09日 | 大学生活
上野千鶴子さん、祖母が「東大に行ったらお嫁に行けない」と言いますが本当ですか?」という記事が出ていまして、それに呼応して
米山隆一氏が東大ならではの恋愛事情明かす 男は「カルガモ」「刷り込み効果は絶大」」というのも出ているのですが、

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いずれもたいへん感覚に沿う部分と、そうでないところがあるので私にも一言(長いけど)いわせてください。

元の話(人生相談的な)は、東大行こうとして浪人して頑張ってる姉に対して、祖母が「もうお嫁に行けない」って嘆いてるという内容です。なんかレトロだなぁ…

まぁだいたい既に常識になっていると思いますが、東大卒女性の結婚率はそんなに低くなく、まぁ高くもないですが結婚したい人はちゃんとできている、決して「お嫁に行けない」わけじゃないです。その点については上野さんも米山さんも私も同意見です。

ただし、上野さんが言うのは、祖母の心配も根も葉もないというわけではないということ…学内女子とは付き合いたくないと考え、インカレテニスサークルなどを通して女子大生との出会いを求める学生もいて、彼らは

------
 東大男子は東大女子が苦手です。なぜって、自分と同じぐらいかそれ以上優秀かもしれないから。なぜ男子は女子が優秀だと困るんでしょう?  これも答えはかんたんです。
 「オレサマ」になれないからです。その点、他大女子は、「東大生、すごいわねえ」と目にハートマークを浮かべて「オレサマ」を見あげてくれるでしょう。
------ 上野さん上記記事より

なんだか、「彼女は頭が悪いから」についての記事を書いたときにも出てきたような話ですね。実際そういう人はいるんだろうけど、要するにそういう人がいても学内女子の目の前には現れないんだし、元々男女比率は極端で、そういう人を除いても十二分な数の男子が目の前にいるので問題なくモテます。

米山さんはおおむねそういった状況について書かれているのですが…「カルガモ」というのはどうなんでしょうね。確かに、男子校出身は多いし、そうすると女子とただのクラスメイトとして付き合うことに慣れていないもので、すぐ惚れてしまうという傾向はあるかもしれないですが、「概ね3~5人の男子学生が、『〇〇さん元気?分からない所ない?ノート見せようか?』とカルガモの雛の様に後ろをついていく光景」なんぞ見たことはなくて、だいたい皆さん控えめなので、こちらが声かけたらあとはいくらでもしゃべる人でも、そんな自分から来ない感じしますけども。

さらに、「この『東大刷り込み効果』(注: カルガモ)は絶大で、新学期だけにとどまらず、なんと多分一生(私が検証しているのは50代までですが)続きます。ですのでこの中からあなたがパートナーを選ぶつもりがあれば、多分一生結婚相手には困りません」ってのはどうですかねぇ…社会人になれば圧倒的男女比率も崩れ、別に東大卒女子に限らずいろんな出会いがあるわけで。

米山さん曰く、いったん卒業してしまった東大卒女子が、結婚しなかったり、結婚しても離婚したりする人が多いのは、モテないからではなく、
-------
恐らく最大の理由は、①結婚しないでも困らない事 ですが、多分第2の理由は、ご本人が、②「私より尊敬できる人がいいわ」という条件をパートナーに課している事です。
勿論どのような条件をパートナーに課すのも個人の自由ですが、人の尊敬できる度合いが正規分布するとして、2SD以上のあなた以上の人はそう多くはおらず、仮にいたとしても、首尾よくその人と恋に落ちる可能性はそれほど高くないという事は、聡明なあなたならきっとご理解いただけるでしょう。
------- 米山さんツイッターより

大学生の間は、いろんな面でたいへん優れたところのある男子が多数、狭いところに分布しているわけで、しかも彼らと授業や実験・実習やサークル活動など自然なインタラクションがある中で、気が合う・話が合う人を探せばいいのですからスムーズです。なのでやはり、東大女子が結婚したい場合は学内でつかまえておくのが固いと思いますが(という考えで学生結婚したんだけど)。そうはいっても、人の尊敬できる度合いは偏差値じゃないので、じっくり探すなら社会人になってからでも、よりバラエティーに富んだ人材と出会えると思います。そのときに「東大卒」がマイナスにならないかは心配する必要なく、なにしろそこをマイナスに考える人とは付き合うまでもないということでわかりやすいですね。学生時代と同じです。

それはともかく、上野さんの記事では続いて東大女子がなかなか増えて行かない理由について述べられています。私のころが一割くらいで、現状も二割前後だとか、まぁ驚くくらい変わっていないとはいえます。世の中こんなに変わったのに。で、上野さんは、前述のばあちゃんみたいに女子の意欲をくじく人が多いということ…「女の子だからそんなにがんばらなくても」「できすぎると可愛(かわ)いくないよ」を言っていますが、さすがにこういう人の率はどんどん下がってきていると思うんですよね、時代と共に。それに「くじく人」が両親だと面倒ですが、それ以上遠い人なら無視すればいいことですし。

むしろ、大学に行くところまでは、男女関係なく頑張るように奨励されているのに、就職・結婚・出産のあたりで「掛けたハシゴを外された」と思う人が多いのではないでしょうか。東大に行けば人生幸せということであれば、男女同じくらいの数が東大に行くかもしれませんが、現状はそうでない。つい先日も書きましたが、夫婦両方で「一人前」に働きながら子どもを育てるということはたいへん難しい状況が、平成になっても令和になっても続いていることを踏まえると、意識が高く勉強もできる女子が、再就職や時給の高いパートに強い資格職(医師や薬剤師その他)を目指すとか、資格職でないにしても、大学のネームバリューよりも「何を勉強して何の仕事をする」という明確なビジョンを持って選んだ結果、東大以外の選択になるという傾向はあると思います。
(男子校に行った子どもはいないので伝聞ですが、女子校よりも「そうは言ってもとりあえず東大行っておけば」的な雰囲気があるようです。まぁ総合大学だし、進振りあるし、今ビジョンがなくても行ってから考えてもなんとかなる、というような)

上野さんは「女はバカであってほしい」「高等教育を受けると女は生意気になってろくなことにならん」という風潮、あるいは女性側も「男って単純なヤツ。こういう単純なヤツは上手にあやつって「バカのふり」をしなさい」という処世訓、そういったものが妨げになっているようなことを書いていますが、いやさすがにね…そういう人がまったくいないとはいいませんが既に私が社会人になるころには下火になっていたし、さらに着実に減っていって今や絶滅危惧種ではないでしょうか。実態のないものは時間が経てばちゃんと滅んでいく、滅ぼしやすいと思います。あるいは、滅んではいなくても、スルーできるくらいには少なくなっている。

その一方で、現実問題、子どもを育てながら「一人前」に働くことが難しいというのはあまり変わっていません。これは根も葉もあることで、なかなか変化が難しいところです。つまり、東大女子率が低いのも当面変わらない。ということで引き続き東大女子はモテる。しかしモテるからといって東大に行って幸せになるかどうかはわからない。以上。

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男女別枠

2021年09月18日 | 大学生活
(さらに昨日の記事の続き)
「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ)の中で、主人公つばさたちが、利用できそうな女の子を引っ張ってくるためのサークルとして立ち上げたのが「星座研究会」。

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このサークル名は、実際の事件のものがそのまま使われています。もちろん中身については架空というか作者の創作ですけど、星座に合わせてその期間の誕生日の女子をメインに呼んで飲み会をしようという…要するにほぼ飲み会だけのサークルです。

「だってインカレって、異性と知り合いたい、仲よくなるために飲み会したい、って、ようするにこれが本音でしょ。本音のサークルを作るの、いいじゃないかと。でも、本音をラッピングしてやる必要があるわけすよ、対女子には。」というのが、譲治がつばさに趣旨説明したときのセリフ。

…インカレねぇ…

ただ単に複数の大学から学生が集まるサークルということなら、将棋部も、フルート同好会も、室内楽の会も「インカレ」といえます。そして学外から来るのは女子のみという点も「星座研究会」と同じだったけれど、違う点といえば、
・学内の女子もいること
・集まる目的が具体的にあること(フルートとか将棋とか)

この点が違うと、空気としてどう違うのかというと、「男」「女」という属性が先に立つのではなくて具体的な活動が、まずは基本としてあるということですね。
たとえば、ボワモルティエの五重奏をやろうってことであれば、いちおう譜面が読めてだいたい正しい音程とリズムが取れる人を五人集めて、中でもちゃんと吹けそうな人を1stに配置しようかなって話で、男とか女とか関係ない。もちろん、アンサンブルの練習をしているうちに、流れでごはん食べに行ったりもするだろうし、コンサートが終われば打ち上げもするだろうし、あるいは気が合えばフルートと関係なくボウリングとか行ったりするかもしれないですけど(昭和だな)。

そんなこんなで一年とか二年とか経ってみると、その中からいつの間にかカップルができてたりすることはある。あるし、ひょっとしたら元々、サークルに参加した目的が「結婚相手を探す」だったりする場合もあるかもしれないけれど…

…ってか、それ、私だよ…

私の場合、元々大学に入ること自体が「結婚相手探し」だったので、まぁあんまり人のことはいえないんですが、まずは人として親しくなって、友人といえるくらいになって、いろいろ遊んだり飲んだりする中で「この人だ」と思ったらそこで初めて男女としてカップルになったほうが、ハズレ(人として合わない)が少なくてよろしいのではと思うんですよ。

結果としては、サークルでなく学科で一緒だった人(よしぞう)と結婚したんですけど(この人、と決めたのは三年生の夏くらい)。サークルにもいい人いろいろいたな(^^;;

そもそも問題は、つばさ(たち)が、「女性をあまり対等な人間として見ていない」+「(自分は頭がいいから)頭が悪い人を支配していい」というような人間であることなんだけれども、それでもある相手に最初に「人として」会ってしまって、ある程度親しくなった後ではあの事件みたいな犯罪はなかなかしにくいでしょう。

「星座研究会」では、元々、東大生の男子が企画して、そこに指定の女子大の女子を呼んでくるという「男女別枠」として設定されているところが間違いの始まり、いや、始まりではないけれど助長していると思います。

この小説を読んで最初のうちは、こんな人たちいなかったよなぁと思ってしまったのですが、まぁ考えてみれば仮にそんなタイプがいたとしたら、私の目の前にはほとんど現れず、「男女別枠」なインカレサークルでもやっていたのでしょう。

そういえば当時(今もかな?)「男女別枠」のインカレサークルといえば、特定の女子大から女の子を呼んでくるテニスサークルとかがあったものですが、それはどんな雰囲気だったのでしょう。直接は知りませんが、しかしやはり「星座研究会」ではなくまずともかくテニスをするわけで、「人として」会ってしまいますからそこまでの事件は本質的に起こりにくいのではないでしょうか。

個人的には、人にいろいろな属性や特徴がある中でまずとにかく男女で分けて考えるという「男女別枠」があると、いろんな歪が生じやすいんじゃないかなと思うんです。じゃあ女子校ってなんなんだといわれるとアレですが、逆にもう女子しかいないから「男女で分けて考える」ことがなくてものすごく快適な世界なんですよ。それってどうなんだ。うむ。

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記号としての「東大」

2021年09月16日 | 大学生活
(昨日の記事の続き)
「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ)を読んだとき、まずどうしても違和感があったのが…

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主人公(主犯)を含む数人の「東大生」が、すごく東大生っぽくないというか、「そういうやつはおらんかった」としか思えないこと。

別に、品性下劣な人がいないとかそういうことを言いたいのではないんだけど、「良い」にしても「悪い」にしても、方向性というかキャラクターが、すごくありそうもないことに思えたんです。

もっとも、そういう事件があったことは事実なわけで、そしてこの小説にあるのはその事実から発想した架空の人物なので、私が納得行くも行かないもないんですが…

主人公の「つばさ」は、面倒なことを深く考えて時間を無駄にしたりしない、要領がいいタイプとして描かれています。

高校生になったとき、ややマイナーなスポーツの「パドルテニス」(創設したばかりの部)を選んだことについても
「この部なら毎日遅くまで練習もないだろうから塾にも通いやすいし、先輩のシゴキもなく、なのにいちおう運動部だから、内申点も高くなるんじゃ…」
とありますし、受験で理科一類を選んだことも
「理一の数学は、他の理系学部とは若干傾向がちがう。スタンダードな問題を速くミスなく解くことが求められる傾向が強い。つばさが最も得意とする。」
とあります。

そしてこれまで、挫折もなく深く悩み考えることもなく「つるつるぴかぴかの」自尊心を持っている、ことになってます。

これとは逆に、私が大学生になってまず感じたことは、「要領の悪い人が多い」だったのですが(笑)
気になることをとことん突き詰めて、考える。議論する。

要領のいい人なら、全体をサーーとひととおり大穴が空かないようにしておいてから、時間の許す範囲でバランス良く仕上げるとかね(私はそのタイプ)、そういうのがなくて、バランス悪く、深い。

そんなふうに過ごしてきたから、コンプレックスや、悩みや、挫折や、いろんなものもややこしく抱えていて、とてもじゃないけど「つるつるぴかぴか」どころではない。

なんでそういう人が集まりやすいかといったら、たぶん東大の入試に特徴があるからです。「スタンダードな問題を速くミスなく解くことが求められる」共通一次試験(当時)はありますがその配点は控えめで、あまり影響しない。二次試験は、「本質を深堀り」タイプのオール記述式で、難易度も比較的高いため、どこかボコ穴があってもその代わりにどこか得意なところがあれば合格できる。まぁ理三だけは、取らなきゃいけない点数のレベルが違うからあまり穴があっちゃまずいでしょうけど、ともかく問題は理一から理三まで同じ。

つまり、小説に書かれている上記の内容は実際の入試とはあまりにもかけ離れています(内申関係ないし)。もちろん小説の意図としては別に現実と合わせるつもりもなかったんだろうけれど。

でも、まったく架空の話でよかったのなら、わざわざリアルの大学名を使わず、「T大」や「東都大学」(よく使われる架空の大学名)とかでもよかったはずです。しかし著者あとがきにこういう記述があります:
「人社会での他者との接触の一つに学歴があります。日本社会では、東大を「1」とする秤(のような感覚)があります。そのため本作では、東京大学は実名で出しました。」
この小説のテーマである、いやな感情、いやな気分、それを演出する舞台装置として、「東大」という記号が使われている。

「東大」という記号はあちこちで使われています。テレビ番組のタイトルとして、本の題名として、見出しとして、さらにはピアニストの肩書に至るまで、いろんな方面から便利に利用されている「記号」です。それを支えているものは…

大学入試です。それ以上でも以下でもない。大学に入ったあとに、価値ある学問を究める人もいるでしょうし、中には東大ならではのこともいろいろあるかもしれませんが、それを言い出したらほかの大学でもいろいろな優れた研究が行われているでしょうし、バラバラすぎて簡単な比較の基準がありません。

問題の内容と難易度に特徴がある入試で測られた学力により、スパーッと切られて入学してくる。それ以外のルートが(ほぼ)ない。附属からエスカレーターとか、指定校推薦とか、ちょっと比べにくい(学力以外の)基準で入ってくるルートがない。推薦はごく少数あるけど、よけいたいへん(東大王の鈴木光ちゃんは推薦だそうだ)でどうせ一般入試でも合格するだろう人しか入れない。

なので、実名で「東大」を使うならば、少なくとも入試のところだけは、現実を踏襲するのがよかったんじゃないのかなぁと私は思ったんですけどね。

そしてその「東大」の学生が、あのような犯罪をした、という道筋を描き出してくれたら…実はもっとさらに怖い小説になったような気がします。
(既に十分怖いんですがw)

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とことん読後感が悪い小説「彼女は頭が悪いから」

2021年09月15日 | 大学生活
「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ)は、実際にあった事件を下敷きにした小説で、でも決してドキュメンタリーとかそういうのではなくて、まったく取材はしないで書いたものだとか。

     にほんブログ村 その他日記ブログ 50代女性日記へ ←興味深いが気分悪くなるのでお奨めできるかどうか微妙すぎる小説

ウィキペディアにあった事件概要
東京大学誕生日研究会レイプ事件
はほぼそのまま、でもそれ以外は現実に起こったこととは無関係の、完全なフィクション。事件報道を見たときの…なんとも言い難い後味の悪さ…それにとことんこだわって書かれた小説らしいので、それはそれはもう後味の悪い小説に仕上がっています。

小説の大半は「事件前」に費やされていて、犯罪をした側、された側、そしてその周囲の人々のあり方が丁寧に、数年分に渡って緻密に書き込まれています。つまり、どうしたらこんな事件が起こるのかという問いに対する、作者的な一つの解答(架空ですが)ということになるのでしょう。

した側とされた側がどのようにかけ離れた人間であったのか。「人種が違う」という言葉がありますがこれは生物的な人種ではなくて、住んでいる環境、育てられ方、価値観とか発想とか、そういうことの隔たりのことですが、ともかくそういう意味でものすごく離れた人間であること。

そして、その遠すぎる距離感によって、実際は人間対人間でありながら、加害者側にとって相手はあまり「異質平等」な人間であるという意識がなく、単に自分の都合で利用して捨てればよい対象。玩具のような、という言い方もできるかもしれませんがたぶん違います…玩具ではかえっておもしろくないのではないでしょうか。相手が嫌がったり苦しんだりするからおもしろい、もしかしたら動物虐待と似た感覚なのかもしれません。

小説タイトルにもあるように、その隔たりを形作るものとして「学歴(というかいわゆる偏差値)」が描かれているわけですけれども、読んでいくとなんとなく、もちろんそういう面もあるんですけど、それ以前に、「男女」というところで既に大きなギャップが感じられます。頭の良し悪し以前に、女であることから即、利用対象としか見ていないという感じ。

最近読んだ漫画で、「ハコヅメ」のスピンオフ、というか番外編的な一冊読み切りで「ハコヅメ別章アンボックス」というのがあったのですが、これはまったく学歴差別とは関係なく、でも当該事件ととてもよく似た側面のあるストーリーです。

しょっちゅうDVでごたごたして警察のごやっかいになっている同棲カップルがいるのですが、別れるといっては何度もヨリを戻して元の木阿弥になることを繰り返したあとに、今度こそ別れた…別れるかな…というところで最悪の形で事件が起こります。

漫画の冒頭、間もないあたりで、大山という男性(後に事件の犯人となる)の描写として、女性警察官が応対しているとものすごく乱暴で勝手なことばかり言っていて話にならず、男性警察官に交代するシーンがあります。

女性警察官「大山の様子どうだった?」
男性警察官A「だいぶ落ち着いたよ」
男性警察官B「あの野郎まじ…」
女性警察官「いや…なんかさ警察官として現場対応してると…ああいう…異性に対してだととたんに声を荒らげたり自分勝手になる人たまにいるじゃん」
男性警察官B「あぁ…いますね本当最低…」
女性警察官「いや最低とか違う…なんか…」
男性警察官A「警察の仕事をする上での肌感覚として…同性である男とはコミュニケーションとれるけど 女性が関わった途端 人が変わるタイプがいるなぁとは感じるよね」
女性警察官「そうそう! あくまでいち警察官の個人的な感覚だけどそういう人って性格とはまた別の何かを感じて…あんま腹立たないんだ」
男性警察官A「さっき俺から一応カウンセリングも勧めてみたんだけど行く気はなさそう ただ保健所と連携とるべきような精神疾患という状態でもないし…」

結局、大山は身勝手な理由で女性を殺して遺棄するのですが、金銭的な得があるわけでもなく、殺さなければいけないような困った事情があったわけでもなく、なんだか他人からは理解しにくい殺人です。それはやはり、相手が対等な一人の人間という位置づけでないあたりから生じる発想なのでしょうか。

事件の起こり方、そして報道されるときに被害者が誹謗中傷されることがセットで、なんだかこの小説とこの漫画は似ているのです。

事件はまったく救いようがないもので…(実際の事件は殺人ではありませんが)

しかし、最後にほんの少しだけ救い(理解者)が現れるというところまでが、この小説とこの漫画は似ています。


ところで小説のほうでは、そういったギャップに、「彼女は頭が悪いから」の部分が絡んでくるわけですが、そのことについては、長くなったのでまた後日。


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リモートと対面ミックスの大学生活

2020年12月08日 | 大学生活
前期授業はすべての授業がリモートで、「物理学実験」みたいな名前がついたクラスでも、先生の説明動画と、データ送られてきて整理してレポート書くみたいな課題があっただけでした。

     にほんブログ村 その他日記ブログ 50代女性日記へ ←来年はどんな年に…??

それはしかし「実験」なのか…!?

という事態で始まった今年度ですが、後期はそういう授業に関しては対面でOKということになっています。もっとも「実験」と名のついた授業だから全部従来型の方法に戻るということではなく、説明部分はリモートだったり、実際に実験するところは大学でやるにしても、「密」を避けて二交代制だったり、いろいろ細かくミックスしている模様です。

そうするとどうなるかというと…

対面授業のものをまとめて同じ日にやってくれるわけではないので、大学へ行って対面授業、家に戻ってリモート授業、また出かけてバイト(^^;; とか、せわしなく複雑です。
・大学で対面授業
・リアルタイム授業(ZOOM)
・オンデマンド授業(動画)
・課題

ひとつの科目でもいろんなスタイルが混じってたりするので、ほんとややこしいです。間違えそうです。うちでは今、大学生なのははなひめ一人で、こじろうはあと修論書けばOK、またろうは社会人ですからほんとに助かりました。またろうが大学生だったらこんな管理は無理で、留年待ったなしでしょう(ってか、そうでなくても留年したんだけども)。

それと、前期の「なんでもリモート」の利点であった「移動時間がない」メリットは失われ、増えた課題だけがどーんとのしかかっているのでとにかく忙しそうです。

いろんな授業形態には、それぞれ良いところもあり、それをミックスして活用していくというのは、たぶんコロナ後も続くでしょう。

けれど現在はコロナ後でなくてコロナ中なので、授業の性質に応じてベストな形態を選択しているわけではなく、「どうしてもの作業(実験実施)」以外はリモートでやっているし、対面の授業が終わればすぐ帰るように言われているし、どうしてもの作業であっても大学の外へ行く実習はやっぱりできないとかの制約があります。

現状は、「大学」という場の大幅なサービスレベル低下であることは間違いなく、もちろん大学のせいではないにしても、大学生による「授業料返せ」運動が高まっている国もあるようですが当然だと思います。(コロナで変わる世界<教育編①>学費返還を求める韓国、欧米の大学生 揺らぐ大学の価値)

日本でそこまでの状況になっていないのは、大概の家庭では本人がスポンサーでないことが大きいのではないでしょうか。自分が借金して、あるいは数年社会人をして学費を貯めてから学生をしている場合、サービスレベルが低下したら「金返せ」と言いたくなるでしょう。しかし日本の大学生は特に自分のこととして金銭負担を感じていなくて(うちの子も)、いろいろ不満があるとしてもそれは「金返せ」という形ではない。そして、もっと深刻に困っている学生の思うところは比較的少数者の意見となり、「運動」としてまとまるより先に、退学からの生活立て直しで必死なのでは?

元々がリモートの、通信制の大学と違って、学費が高いうえに、まともにリモート授業が作れない(作れない?)先生が多いのはかなりの「お買い損」感であると言わざるを得ません。

そして私自身にとっての不満・不安の中心は、そういった授業自体の「お買い損」感にあるわけではありません。

授業で、授業と授業の隙間で、あるいはサークルで、そして放課後に、学生同士「情報交換する」「議論する」「だべる」「溜まる」…そうしたことから、たくさんの学びや人生(「恋」を含む)があったはずで、そういったことが大学の機能のかなりを占めていたと思うのですけど…それが失われたこと、そして何より、既にすっかりその状態に慣れた本人がそれについてあまり不満を持っていないことが一番の不満であり不安です。

一年間、こういう状態でした。そして来年度は??

二年間、こういう状態が続いたら、大学生活はコロナ以前とはまったく別物になるでしょう。「単位」「成績」には見えないところで。

そういう学生たちが、社会に出ていくんですよね…

----- 今日の録音
リスト/愛の夢第三番(練習中)

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