アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

星降る夜のアップルパイ

2024-10-12 | ・最新のお知らせ・イベントなど

「星降る夜のアップルパイ」いつかの秋に書いた旅雑文です。期間限定公開です。

 最高気温18、9度。

 川とはカンケーない「旅雑文」を書いてしまいました。暇にまかせて。

キョーミのない方はトバしてくださいね。

 

星降る夜のアップルパイ

 リンゴの季節になると、心あたたかく思い出すおふくろの味がある。

それは、アメリカ旅で食べたアップルパイ。

 

 「星が降るような夜のフリーウェイを走るのも悪くない」

でも、昼間の長時間のドライブにくたびれていた僕は、結局、目的地より随分手前でキャンプをするコトに。

ある年の秋。レンタカーで、ジョージアからフロリダへむかう途中、町外れのオートキャンプ場。

「もう9時を過ぎている。腹へったなぁ・・・」

管理人が指定したサイトに車をとめ、広々とした芝生に素早くテントを張った。

周りは、貨物コンテナのようなでかいキャンピングカーだらけだ。

 

 「安っ!」スーパーで安さにつられ、大量に買い込んだ「くそまずビール」。

そいつを飲みながら、コッフェルをがちゃがちゃ鳴らし、夕メシの支度をはじめた。

(アメリカのビールは、ぜんぶうまいと何故か思い込んでた。

こんなまずいビールがあるとは・・。ある意味新鮮な体験だった)

すると、夕メシを作っていた僕に、隣のキャンピングカーの老夫婦から声がかかった。

「お腹空いてない?良かったらこれ食べなさいな。焼きたてよ。ここまで取りにおいで」

 

 僕の目の前に差し出された物は、(フリスビーを半分にしたような)半月形でアルミ箔に包まれていた。

そいつは、ホカホカと温かく、ずっしりと手に重い。

中を開けてみると、シナモンの香りがプーンと広がった。アップルパイだ。

「わおっ、サンキュー!めちゃめちゃ腹が減ってたんだ、ありがたい」と僕。

「どこから来たの?」と、おばあさん。

「ジャパン」

「わーおっ。随分遠くからねぇ、でどこまで行くの?」

「ずーっと南、キーウエストまで」

「そう、気をつけてね」

「お二人は、もうどれぐらいここにいるの?」

「もう、何年もいるよ」

「ふぇー・・・とにかくどうもありがとう、イタダキマス」

 

 老夫婦にお礼をいい自分のテントまで戻った僕は、

熱いコーヒーを片手に、でっかいアップルパイに早速かじりついた。

「うん?・・・」

それは、洒落たレストランや店で売っている洗練された味とは、まるで違っていた。

たっぷりの中身は、大甘で、ぼわーんと味がぼやけている。

「でも、これがアメリカのおふくろの味なのかな?映画やテレビ越しでは、わからない味だよなぁ・・・」

そう思いながら僕は、ブラックコーヒーを飲みながらしっかり全部たいらげた。

アメリカおっかさんのあたたかさが、異国からきた若造の身に染みた。

食後、老夫婦に日本から持ってきてた緑茶をプレゼントした。

 

 おせじにも美味とは言えなかったアップルパイ。

だけど、それは印象深い旅の味として記憶にのこり、

僕の心を何度もあたためてくれるし、大事なコトも教えてくれる。

映える景色や映える食べ物も良いけど、心に通じなければ、記憶はすぐに冷めてしまうのだ、というコトを。

画像は、いつかのキャンプツアーで作った「焼きリンゴ」。

これもあまり美味しくなかったような・・・。人のことは言えないですね。



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