アコースティックセットになっても
ガットをバキバキならずクラプトンに対し
オーソドックスに弦を奏でるウィンウッド
客席はクラプトンの『Wonderful Tonight』が聴けて大喜びだが
私は続く『Can't Find My Way Home』 でのウィンウッドの歌唱に
感動してたし
ウィンウッドの生ギターサウンドにも感激してた
音が欧州的というか、『グリーンスリーブス』を思わせる音色なのよね
アメリカ志向のブラインドフェイスと思わせて、そういう部分が隠せない
・・・そんな生ギター演奏
クラプトンとの個性の違いを感じつつ
「完全に一方のソロ曲になっても、片方は引っ込んで休養しないで伴奏に
専念するんだな」と、このコンビの姿勢に感銘
そうしてアコースティックセットは終了し
ウィンウッドさんがキーボード席に戻る
なにを演ってくれるのかとワクワクしてたら
「あの」5連イントロ
それに被るキーボードサウンド
ロック史上に残る名曲『Gimme Some Lovin'』
バックコーラスの女性と一緒に私も「ヘイ!」
アレンジもオリジナルに近い
スティーヴも10代の頃のような爆発的歌唱・・・は無理としても
充分歌ってくれてます
サビの歌唱もお見事
私は「Gimme Gimme Some Lovin'♪」とコーラスに参加
(周辺で歌ってるのは私だけだったが・・・)
いやぁ、トラフィックのライヴ・アルバム『ウェルカム・トゥ・ザ・
キャンティーン』でも演奏している同曲だが
70年代的ダルなアレンジに少しガッカリした記憶あり
それに比べ、今回の演奏は60年代的でホント感無量
こんな曲を15分くらで書き上げた17才当時のウィンウッドは、まさに
神童だったんだな
※関係者が「これからは自分で書いた曲を歌う時代だ」と言ってスタジオに
ウィンウッドたちをカンヅメにして、ちょいと一服して「さぁ、少しは
進んでるかな」と戻ったらトンデモナイ曲が出来上がっててビックリ仰天
・・・なんて逸話あり
ウィンウッドさんは後に「なんか、出来ちゃったんだよね」と平気な顔で
回顧したのでした
そして黒人ソウル歌手かと思わせるヴォーカル・・・やっぱり天才です、
神童です
しかも、ルックスも良かったんだから3拍子も4拍子も揃ってます
それでいながら『Georgia On My Mind』の歌い出しが甲高い声で
「ジョジャ♪」・・・だから、もう可愛くて堪りません(笑)
当時観たクラプトンさんは別の意味でも惚れちゃったんじゃないか
・・・と疑いたくなる程です
でも天才は成長速度も驚異的だから、サイケにアーシーにと目まぐるしく
進化して、なかなか万人の理解は得られないのでした・・・
しかし、歌い出し前のカウベルが無いのが寂しかったな
大事だよ、『ギミサム・ラヴィン』にカウベルは大事なんだよ!
ああ、私の「幸せのカウベル」はどこに・・・
そんな事を考えつつも感激な私の耳に低音のオルガン・サウンドが
そしてクラプトンのブルージーなセッションギターが・・・
『Voodoo Chile』だ
ジミヘンの曲をクラプトンとウィンウッドで演奏だ
『ロック史そのもの』な曲が続く
すごい公演を見ているのだと再々々々認識した
演奏は圧巻だ
全盛のジミヘンとだって堂々と共演したウィンウッドさんだ
そしてジミヘンに「英国に行くなら彼に会いたい」と言わしめたという
クラプトンさんだ
そんな両者がジミヘンの曲を演るのだ
もうクラプトン&ウィンウッド+ワンだ
60年代後半のエネルギーが甦るのだ
ここでもウィンウッドさんの特性がクラプトンのギターと共に光る
バトルしないのだ
ジミヘン相手でもそうだった
ハモンドオルガンという楽器の特性もあるが、真っ向から衝突しない
~かといってバックに廻るワケでもなく、堂々と存在を主張している
実にウィンウッドさんらしい
パンクの台頭にも、閉塞した英国の状況への反抗として理解は示しつつ
「少し性急すぎるのではないか?」と苦言を呈した理性的な存在
さすが娘が英国王室系の青年と結婚するだけの事はある
(おめでとう御座います)
王室系の結婚相手なんて身内の素性まで調べられるでしょうに
ロックアーティストのウィンウッドさんは、その温厚さと理性的な人格ゆえ、
その査定を楽々クリアしてしまいました
楽曲の売り上げで爵位を得るより凄い事かも知れません
・・・そんな
理知的でありながら情熱的でもあるウィンウッドの演奏
そしてクラプトンの気合が入ったギターソロ
曲が一段落するたびに拍手・・・
そんな圧巻な『ブードゥー・チャイル』が終わって本編は終了
クラプトンとウィンウッドの共演といえば
薬中アル中で再起不能になりかけたクラプトンのカムバックを
助けようと、P・タウンゼンド他の有志がクラプトン復活を企画した
『Rainbow Concert』があるが
※その辺を考えるとクロスロード・フェスにピート・タウンゼンドさんが
出ないのは不思議な気もするが
ピートさんが「オレはギターをウン百本も叩き壊した人間だから」と
辞退してるのかも知れませんねぇ
レインボウ・コンサートでのウィンウッドの演奏は少しぎこちなかった
気もするのよねぇ
やっぱ
まだ、わだかまりが解けてなかったのかもねぇ・・・
そして、本日の武道館
アンコールで再登場したクラプトン・ウィンウッド・グループは
『Dear Mr. Fantasy』を奏で始めた
ああ
トラフィックの1stアルバム『ミスター・ファンタジー』のタイトル・
ナンバーとも言えるウィンウッドさんの代表曲だ
『パーリークイーン』同様、AメロBメロが続き、サビらしいサビが無い名曲
強いてあげればコーラスがサビ
従来のポップソングのパターンを解体したかのような「まったりした」曲構成
曲間のギターソロをクラプトンと交換するウィンウッド
クロスロード・フェスで「ウィンウッドってこんなに良いギタリストだった
んだ!」と感銘受けた演奏が再現されている
2階席だから「目前で再現」ってワケにはいかないが・・・
ウィンウッドファンは皆こう思っただろう
「スティーヴ、あなたこそがミスター・ファンタジーだ」
歌詞は確かこんな感じだった
「ねぇ、ミスター・ファンタジー
あなたがギターを爪弾けば皆はハッピーなんだ
あなたが歌えば皆がハッピーになるんだ」
「ねぇ、ミスター・ファンタジー
歌ってよ ギターを弾いてよ そうすれば皆はハッピーなんだ」
ああ、我等がミスター・ファンタジー=スティーヴ・ウィンウッド
あなたがギターをプレイして歌ってくれて、僕らはハッピーだ
そう感じながら私の頬には涙が伝っていた
最後はクラプトンの『Cocaine』
ここでやっと観客全員が起立
約2時間、20曲目を演奏してくれました
メンバー全員で肩組んで終演の御挨拶
ああ、ありがとう
ウィンウッドさんの来日公演は今後もあるかも知れないが
60年代~70年代の曲をこれほど高いテンションで再現してくれる事は
もう無いかも知れない・・・
それはクラプトンも同様だと思う。
二つの才能が刺激しあった素晴らしいステージだった
それを日本武道館で見れたという事は感動以外なにものでもない
ありがとう御両人
そしてメンバーの方々
帰りは武道館をバックに記念撮影する人々の山
もう50代を過ぎた男女4人が「卒業以来なんです」と言って、
通りがかりの人にシャッターを頼み、相手の人も快く応じていた
ああ、イイ光景だ
12月になって本当に良いものが観れた
そう思いながら九段下の駅へ向かった
大満足のコンサート鑑賞だった