じゃ、僕の話をします。

『本気食聡咲』の記事は「居酒屋・和食」カテゴリーよりご覧下さい。/※各掲載店の閉店情報等は基本的に追記しておりません。

札幌創成川イースト「北光飯店」の奇跡。

2020-11-17 | 中華
世は密かに「町中華」ブーム。

BS-TBSの「町中華で飲ろうぜ!」と言う番組が火付け役。

先日には、この番組とコラボしたベビースターラーメンもなんてのも売り出されてますね。

そして最近では、札幌中心部にも昭和の雰囲気を漂わせた、町中華テイストを売りにしたお店もオープンしてたりします。

そんな中。

どう考えても、本当に昭和から営業してたんだろうなと言う「黒帯」クラスの町中華が、札幌二条市場近くにありまして。

ずーっと、気になってて…

でも、どーしても、入れない。

オーラが半端ない。

それはもう、敷居が逆の意味で高い。

お店がもう本当に街に馴染みすぎてて、自分の様な若輩者が図々しく入り込んじゃいけないんじゃないかと。

地元の方々のオアシスに、他所者がズケズケと乗り込んじゃいけないんじゃないかと。

実際、毎回恐る恐るお店を覗き込むと、カウンターのみの席は大抵びっしり。

お昼時をずらしてもびっしり。

きっと殆ど馴染み客ばかり。

何となくお店の中をチラチラ見つつも、踏ん切りがつかずにお店の前を素通りする、という事が何度も続きました。

しかし。

ある日、同じようにビクビクしながら(する必要はあんまり無いはずなんですが。)、お店を覗き込むと…

入り口側の席が丸々空いてる!

よぉし、今だ!

と、意を決して乗り込むことができました。

ネットの数少ない情報によれば、ご夫婦で営んでると思しき、こちらのお店。

その日は、女将さん…とお呼びして良いかも分かりませんが、奥様…なのかも未確認ですが、とにかく「お母さん」が優しく迎えてくださいました。

お昼過ぎだったからか、厨房に立っていたのはお一人でしたね。

カウンターの他の席には、親子連れと若いお兄さん、自分と同年代くらいの方の3組。

横にいた親子連れは、お父さんと小学生くらいの男の子。

男の子は食べ盛りなんでしょうね。

麺を食べ終えた丼に頭を突っ込んで、ひたすらレンゲでスープを啜っている。

お父さんは「飲み過ぎたら太るし塩分取り過ぎだから、もう飲むな」と。

しかし、男の子は止まらない。何度言われても止まらない。

「だって美味しいんだもん」と、言い訳をしつつ飲むのをやめない。

カウンターの中の女将さんは「嬉しいねぇ、そう言ってくれると。いいから飲み干しな。」とか言ってて、横でお父さんは苦笑い。スープをひたすら飲み続ける男の子を横目に、女将さんと二条市場界隈の昔の街並みの話をしてる。

やがて、満足げな顔で席を立った男の子とお父さんと入れ替わる様に、また大学生くらいの若い男性が来店。

その彼がカウンターに座ると、挨拶もなしに女将さんはいきなり「いつ帰って来たの?」と話しかけて、彼のプライベートを知らなければ無理な会話が続く。

奥のお客さんは、注文した品を黙々と食べて「置いておくよ」と、お代をちょっきりカウンターの上に置き、その横に食器を置いてサッと帰る。

……。

…こんな、まさに昭和のテレビドラマのワンシーンのような光景を、いきなり見せつけられる訳ですよ。

そりゃ、怯みますよ。いい意味で、ですが。

そして思い出した様に、女将さんの目線が自分に。

「あ、じゃあ、餃子と…カツカレーを。」

と、告げつつも自分の中では迷いが。

壁のメニューを見ても、ビールはもちろん、コーラなどの飲み物の類もない。

でも、餃子にはビールだし、カツカレーにもビールだよなぁ…お願いしたらビールくらいは出るのかなぁ…町中華に普通は酒あると思うんだけどなぁ…

そんな感じでモヤモヤしつつ、様子を見ることに。

けれど、店内をキョロキョロしてみても、そもそもビールの気配が無い。

あるのはセルフの水のみ…なのかな、コレは…

と、思いを巡らせてるうちに登場。


手づくり感溢れる餃子です。

コレを受け取りつつ、再び意を決して「あの…ビールなんてありますかね…?」と、女将さんに聞くと…

「もー、何だい、それならもっと早く言わないと!!餃子焼いてるうちに言えば良いのに。」

「あー、…はい…」

「そこのコンビニで早く買っておいで!!!!」

「…………えっ……?!!!」

個人的に衝撃が走る(笑)。

「餃子冷めるから、早く行っておいで!」

「あの、ここって…酒の持ち込みできるんですか?」

「置いてないのよ。だから、飲みたい時はそこのコンビニで買ってきて自由に飲んで良いから。ほら、行っておいで。」

狐につままれる、とはこのことか。

呆気に取られて状況を飲み込み切れないまま、コンビニへ向かい…


こうです(笑)。


ついに、「餃子とビール」のコンビが成立。

…まさかの持ち込み自由(笑)。

まぁ、もちろん節度を持って、でしょうけど。

お店で出来立ての餃子を口にして、そこへ…自分でさっき買ってきた缶ビールを流し込む。

初めての体験(笑)。

「美味しそうに飲むねぇ。やっぱり餃子を食べながら飲みたいもんなんだねぇ。」

と、女将さんが珍しそうに言うのですが、いやいや酒持ち込み自由な町中華の方がどう考えても珍しいですよね?!…と心の中でツッコミを入れる。

「いやぁ、こんな経験、今まで生きてきた中で初めてですよ。」と、告げると、

「そうかい?そんなもんかねぇ。初めてってかい。」

「初体験ですね(笑)。」

「そうかい、いやぁ、初体験かい。」

なんて会話をしつつ、何故か女将さんは嬉しそう。

「色んなお店行きましたけど、お店来てコンビニで缶ビール買って持ち込んで飲むなんて、そんな事ありませんもん。」

「そうなんだねぇ。初めてかい…。」

と、相変わらず何故か嬉しそうな女将さんの前では、カウンターに座ってる常連さんが何となく笑ってる。

この衝撃的な展開。

聞けば、お店に来る酔客が多過ぎたのが原因だと。

確かに、近くには昼下がりから安く飲める大衆酒場もありますしね。

散々酔っ払って、締めのラーメンを食べに来る酔客が、そのままカウンターで寝込んでしまう事が多く、その対処に困った結果の決断が「酒を置かない」という事らしく。

でも、飲みたいなら今回のように持ち込んでもらっても構わないと。

「酒で利益だそうなんて考えないし、美味しく料理を食べてもらえれば、もうそれだけでいいのよ。」

と、豪快に笑いながら語る女将さんは、まるでジブリのアニメに出てくるキャラクターの如く。「ラピュタ」の「ドーラ」のような豪快さと懐の深さを感じます。そりゃ、酒の持ち込み自由なんだから、懐は深いですよね(笑)。

やがて、カツカレーと思しきものの作成に入る女将さん。

カウンターの横に座ったお兄さんは「トンカツ定食」を頼んでたので、一気にトンカツを揚げる算段か。

冷蔵庫からは、豚ロースの塊が出現。

注文ごとに豚肉を手切りしては、衣を付けて揚げていると言うことですね。丁寧。

今度は大きなタッパーを出し、中のカレールーを鍋へ入れて温める。

昔ながらのカレーの香りが店内に漂い始めた頃に、奥の炊飯ジャーから大きめの皿にご飯をワシワシと盛る。

ザクッ!と、音を立てつつ、まな板の上で揚げたてのトンカツを切ったらご飯に載せ、湯気の立ち上るカレールーをたっぷりとかける。


はい、来ました。

この艶。真っ赤な福神漬けも輝かしい。

ルー自体にも、豚肉の薄切りや玉ねぎがたっぷり。

カレー好きな子供も大人も、皆がうっとりする様な、そんな昔ながらのカレーですよ。泣けてくる。

コレを掻っ込む幸せは…ご想像のとおり。

もちろん、合間に缶ビールも流し込む(笑)。

実は、店構えは町中華ですが、メニュー的には定食も多く。

隣でお兄さんが食べてたトンカツ定食や、「生姜焼き定食」なんて魅惑のメニューもありました。

次はソレ狙いですね。

帰り際、女将さんが「次にまたここに来るなら、最初から缶ビール買ってくるんだよ。」と。

「次は、抜かりなく準備してから伺います。」と申し上げつつ頭を下げると、また女将さんはドーラの様に豪快に笑うのでした。
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札幌「香州」にて「町中華で飲ろうぜ」的な。

2019-12-07 | 中華
BS-TBSで、「町中華でやろうぜ」と言う番組が放送されてまして。

中華料理店ではなく、「町中華」。

赤や黄色の看板に、使い込まれた暖簾。入り口に無造作に置かれた、出前用の自転車と岡持ち。

店内は真っ赤な内装。茶色くなった手書きの短冊メニュー。油で燻されたテレビと、ラップで包まれたリモコン。

丸い椅子に座り、ザーサイと瓶ビールで呑みつつ、棚の漫画を読みふけり、餃子やレバニラで飲み進めて、ラーメンやチャーハンで締める。

そんな「町中華」で飲る事の魅力を、玉袋筋太郎さんや、高田秋さん、坂ノ上茜さんが実際に街に出向いて、地元の町中華で呑みながら伝えてくれる、そんな番組でして。

毎週見てますが、つまみになるテレビですね(笑)。


これを札幌でやろうとしたら…

まずは「香州」しかないぁ、と。


狸小路沿いの、札幌の中心部に堂々と店を構える老舗。いつも混んでます。

町中華と言えば、やはり瓶ビールですね。


そして、おつまみはチャーシュー。結構なボリュームです。


この日は、そのまま豚肉あんかけラーメンで締め。

で、後日は夜に伺いまして。ほぼ満席。二階の小上がりのテーブルに、辛うじて座れました。


基本に立ち返り、ザーサイと瓶ビール。


四川風、と銘打たれてる方の麻婆豆腐。かなり山椒が利いてて痺れます。ノーマルの方はこれ程ではなかったような。


寒かったんで、日本酒の熱燗。玉袋筋太郎さん曰く、町中華で日本酒を呑む人は「黒帯」だと。

町中華に通う上級者の嗜み、という事らしく、すぐに感化されて(笑)頼んでしまいましたが、確かに日本酒と中華も合うんですね。


さらに基本に立ち返り、餃子を。皮のもっちりした食感が素敵。


こうなれば、最後まで基本に立ち返り続けようという事で、締めは醤油ラーメン。

ビジュアルからして、これぞラーメン、と言う佇まいです。

一人でテレビの競馬中継を見ながらチャーハンを掻っ込む人や、家族連れ、会社の飲み会、料理をシェアしながら楽しむ女性のグループなど、実に様々なお客さんでいつも賑わうこちらのお店。

この身近さが町中華の魅力ですよね。

いつか、「町中華でやろうぜ」のロケが来てくれないかなと期待しております。

そう言えば。

なかなか一人では頼みづらい、裏メニューの大学芋。久しぶりに食べてみたいもんです。まだあるかどうかは分かりませんが。


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数学の公式のような「茶月斎」の中華料理。

2018-07-01 | 中華
お料理を食べてて、「難しい…」と思ったのは久しぶりでして。

もちろん、味が分かりづらいとか、ネガティブな意味ではなく。

素材の組み合わせ、調味料の使い方、調理法。

確かに、「料理は素材に公式を当てはめて作り上げる、数学のようなもの」なんて話を聞いたこともありますが…

食べながら料理の因数分解をしている感覚と言うか、味覚の試験を受けてるような気分になった訳で。


前菜盛り合わせ。

手前から時計回りに…
噴火湾ボタンエビの紹興酒漬け、
ザーサイと干しエビにアナゴのうま煮、
サクラマスと自家製なめこ、
鹿児島産そら豆と雪菜「漬物」の合わせ練り冷菜、
鳥もも肉のアボカドパイン巻き、
ポテサラ。

お酒のおつまみにはこの上なく、「盛り合わせ」と言いつつも、少しずつ小皿に盛っていただけるのがありがたい。

海老の紹興酒漬けなどは、もはや定番とも言える中華ですが、ポテサラも口にすると何かこう…中華的なエッセンスを感じる…気がする。

なので、こうした一瞬中華以外のジャンルに思えるようなお料理にも、様々な中華の技法が取り入れられてるのでしょう。きっと。



かみこみ豚肩ロースと大根餅の黒酢。

いわゆる黒酢の酢豚ですが、豚のザックリした歯応えや旨みはもちろん、大根餅がすばらしい。

外側はカリッとしつつ、噛むとしっとり。黒酢をたっぷり絡めるとウットリする味に。


千歳原木椎茸シュウマイ。

これまたプリプリと言うか、もはやブリブリの歯応え。椎茸の旨味も噛む度じんわり。


三重産ハマグリと三つ葉の蒸しスープ。

三つ葉の鮮烈な香りも嬉しい、滋味深いスープ。身体に染み渡ります。


麻婆豆腐。

久しぶりに、こちらのお店の麻婆豆腐を頂きましたが…ガツンと来る辛さと、その裏に潜む深く独特な旨みは、他とは少し違う味わい。

他のお店とは一線を画す…のか、それともこれこそが本流なのか。

豆豉と思われる調味料が効いてる…ような気がするけど…むむっ…

油の量も比較的多くて、その油自体も味わい深いし…

一般的には片栗粉でトロミをつけるはずだけど、そのトロミと言うより、ペースト状になった豆豉がそれに代わってるような…

うーむ…

うーむ…

と、唸りつつ食べておりました。

昔から慣れ親しんだ、街の「中華屋さん」のお料理はよく頂きますが、思えば本格的な中華を食べる機会は少なく。

なので、何が「本格」かと言われると迂闊な事は言えない訳で、色々悩みつつも…そのストイックなまでに洗練された味を、しっかり堪能させていただきました。

また味覚の経験値が上がった気がします。

「試験」の結果はともかく。
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ランチ限定メニューなのが口惜しい「順香」の麻婆豆腐。

2017-12-02 | 中華


このブログには数年前に載せたきりでしたが、実はちょくちょくお邪魔はしてまして。

ただ、ランチで来るのは久しぶりでした。

麻婆豆腐が食べられるのはランチだけなんですよね。

味が濃くて辛さも程良く、まさにご飯と共に食べるにはこの上ない麻婆豆腐。

…休みの日だったんでビールも飲みましたが。
σ(^_^;)

逆に夜は餃子がありまして、こちらも魅惑的な味わい。

できれば、この麻婆豆腐と餃子を一緒に食べたいんですが、それは叶わぬ願いだったりするのが口惜しい。
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帯広名物、豚丼…ではなく「中華ちらし」。

2017-01-25 | 中華


帯広の名物と言えば…

豚丼やインデアンのカレーが有名ですが、「中華ちらし」というメニューもあったりします。

つまりは…ご飯の上に中華風の野菜炒めがドカッと載ってます。

卵も入ってるのが良いですね。

やはり、地元の方には馴染みの味なんでしょうか。

豚丼の陰に隠れてますが、僕はそういうメニューの方が好きです(笑)。
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