初めてダブルサーフェースをもった「マライヤ」は、画期的なグライダーで、当然一番の性能を持っていました。
しかし、しばらくすると、謎の墜落事故がマライヤに起きはじめたのです。
それは、マライヤが荒れた風の中や、特に高速を出しているときに、タッキング(前転)に入ってしまったのです。
当時、この原因はなかなかわからず、手を焼いたのですが、そのうちとうとうその原因をつかむことが出来のです。
それは以下の図に示した現象でした。
通常の迎え角で飛んでいるマライヤは、全く問題のない翼断面(翼型)を持っていました。
しかし、何らかの要因で迎え角マイナスになった時、ダブルサーフェイス、つまり下面のセールが、負圧で下方に膨らみ、それが原因で翼の風圧中心位置が一気に変わり、更に下に引き込まれる力が発生していたのです。
これが一度起こってしまうと、加速→下面の膨らみ→更に加速→さらなる下面の膨らみ‥と、悪循環を繰り返し、一瞬のうちにタッキングに入ってしまっていたのです。
このことが分かったため、その対策が生み出されました。
それが「アンダーバテン」だったのです。
ダブルサーフェースに、負圧が生じても膨らまないように、棒、つまりアンダーバテンが差し込まれたのです。
固いものがあれば、セールの膨らみはかなり押さえられるはずです。
そうして、マライヤは後世のグライダーにも引き継がれる、大事な「改良」が加えられ、安全な機体へと生まれ変わりました。
そして、他のメーカーも、そのアイデアを導入し、ハンググライダーの性能は一気に向上して行ったのです。