歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

『下町ロケット』の佃製作所は夢と希望の会社?それともブラック企業?その境目は如何に!

2015年12月21日 | テレビの話し
『下町ロケット』の最終回を先ほど録画で見ました。

お約束どおり、悪役は社会的制裁を受けたりお縄になったり、ガウディ計画は成功し、佃製の燃料バルブを搭載したロケットも無事成功。

そして、そして、サヤマ製作所社長の小泉孝太郎クンも心を入れ替え、正しい技術者として、正々堂々技術で佃に挑戦状を叩きつける。

これで、みんな、みんな、ヨカッタ!ヨカッタ!と観客の皆さんは、手をとり、笑顔で涙を流し、昨晩はぐっすり眠れたことでしょう。

そう云う、わたくしも、目尻をうっすらと濡らし、静かに手等を叩いてしまいました。娯楽作品の王道を行くストーリー展開でした。

横暴な大企業と、地道に、真面目に、日々努力を積み重ねる中小企業。弱い立場の中小企業に正義有りは、判り易く勧善懲悪で、就業人口の7割は中小企業ですから、これは、もう勝ったも同然?

最終回の視聴率は22・3% で今年の民放連ドラで最高視聴率だったそうです。原作は、池井戸潤さんの直木賞受賞作です。

でも、それでも、静かに、よくよく考えると、そして、我が身に照らしてみたりすると、です。世の中は、そうは問屋が卸さない、と、思ったりするのでした。

有る意味で、かなり“ベタ”な小説です。悔しかったらお前も書いてみろ!と云われたら、スイマセンと云うしかありません。

それで、“ブラック”の件ですが、開発部の社員は、ロケットのバルブでも、心臓の人口弁でも、かなり徹夜の連続、長時間残業の連続、休日出勤の連続、そんな描き方でした。

でも、しかし、です。仕事の内容が、開発で、それも、宇宙への夢で、ロケットの重要部品とか、人の命を救う心臓の人工弁とか、やり甲斐が、とても、とても、ある仕事なのです。

こう云うお仕事は、寝る間も惜しんで、夢のために頑張れるのです。正しい?長時間労働なのです。とても、とても、恵まれているお仕事なのです。

ですが、ドラマを見ている、たぶん99.99%の方々は、こんなやり甲斐とか、夢とか、あまり関係無いお仕事に就かれている筈です。

夢や、希望や、やり甲斐のない仕事での長時間労働は、とても、とても疲れるのです。

それで、私が、中学生の時でした、週初めの朝礼で校長先生が、

・・・工事現場で作業中の数人の作業者に、何を作っているのか聞いたところ、一人は「見れば分かるだろセメントを捏ねている」と返答し、もう一人は「塀を作っている」と返答し、もう一人は「学校を作っている」と返答した・・・。

と、こんな話しをしたのです。この後で校長先生がどんな教訓を語ったかは忘れてしまいました。

成績は普通だった私は、世の中に出てセメントを捏ねるだけの仕事でも、学校を作っていると答えられる人間になりなさい、と、理解したのです。

創造的仕事から、単純反復の仕事まで、その人の能力に応じて世の中に関わる。どの仕事も世の中は必要としている。

だから、3Kで、単純反復で、熟練もいらない仕事でも、不平不満を言わず日々頑張って働く、それで、世の中は平穏無事に廻って行く・・・・・・。

まあ、そんなお話は、我々の年代までの事でした。「セメントを捏ねる仕事」では、生活できないのです、結婚できないのです、暮らして行けないのです、生きて行けないのです、21世紀のいまでは。

単純作業は低賃金が当たり前になったのです。生活できる、できない、そんな事まで企業は知ったこっちゃ無い世の中になったのです。

IT技術の発達で、高度で創造的な仕事する層と、低度の単純反復的な仕事する層に分かれ、中間的仕事が消滅し、そして、収入も二極化し、格差も拡大した現在、仕事で夢とか希望とかを語れるのは、ほんの一握りの人達なのです。

“セメントを捏ねる人”に、「死ぬまで働け!」は、とても、とても、無理な話で、労働基準法に違反で、人道的にも赦される事ではありません。

夢を実現できる仕事であれば、誰に強制される事もなく、人は寝ないで働くかも知れません。でも、単純反復作業をする人に、死ぬまで働けは奴隷になれと云う事です。

それで、“下町ロケット”22.3%の人達は、一瞬の錯覚を抱いたのかも知れません。

自分も、仕事に夢を、希望を、と思い描き、昨晩は寝床に入り、そして月曜の朝、眼が醒め、顔を洗って、飯を喰って、トイレに行き、歯を磨き、行って来ますと、意気揚々と会社に向かったのです。

でも、しかし、会社で待っていたのは、どこを、どう、考えても、夢も希望も無い現実に、
目覚めている頃かも・・・・・・。

まあ、佃製作所でも、生産現場では、決められた事を、決められたとおりに、毎日、毎日、只ひたすら、作業をする人達が圧倒的多数なのです。

月曜日から、夢のない話しで失礼しました。


それでは、また。




コメント (4)
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