かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

ひょっとして花粉症なのかも?

2008-01-31 22:22:42 | Weblog
 ふと気がつくと、随分日が長くなっています。つい昨日までは、5時を過ぎるともうあたりは真っ暗、と思い込んでいたりしていたのですが、今日窓の外を見て、まだ4時ごろだろうか、なんて考えながら掛け時計に振り返って驚いてしまったのです。今日で1月も終わりですから、そろそろ春の息吹がほの聞こえしてきそうな感じがします。
 春の気配というと、大変憂鬱なのがスギ花粉です。すでに伊豆方面では飛び始めているようですが、数はまだまだ少ないものの、こちらでも飛び始めてはいるようです。家人が、目が痒いと訴えておりましたし、私も今日初めて、右目だけですが無性に痒くなる時間がありました。思い返してみれば、いつに無くくしゃみを散発したりもしましたし、てっきり風邪だと思い込んでいた最近の不快な症状も、こうなると花粉症の疑いも捨て切れません。まあ、花粉症を契機として風邪に移行することもありますし、そもそも鼻粘膜が炎症を起こしているわけですから、身体が風邪に対して抵抗しがたくなっているのは間違いないところです。とりあえず当面は安静を旨とし、症状の変化を見極めてから、かかりつけの内科医か耳鼻科医に相談に行くことになるでしょう。

 さて、中国製冷凍餃子農薬混入事件は、随分被害人数が増えて来ていますが、多分最終的にはもっと出てくるんじゃないのでしょうか。毒に当たった方にはまことにお気の毒と言うよりありませんが、私が気になるのは、一体その農薬がどの時点で食品に混入したのか、という点です。この事件に関してネットを渉猟していますと、件の農薬があたかもサリンと同格でもあるかのごとき申しようでその毒性の恐ろしさを描いているようなものも見受けられましたが、有機リン系殺虫剤というのは別に珍しくもなんとも無い、身近にありふれたものでもあり、あまりに騒ぎすぎるのもどうかという気がいたします。
 それはともかく、捜査当局のコメントによると、原料の残留農薬にしては症状が急性すぎる、ということなのだそうです。急性ということは、それだけ毒物の量が多かった、ということなのでしょうが、一方、問題の食品の袋には注射針様のものを刺した後は無かったということですし、全国に渡って被害が分散しているところを見ても、誰かが悪意で製品に毒物を注射した、ということでもなさそうです。してみると、その農薬が餃子に混入したのは、調理中か袋詰めまでの間ぐらいしか考えられなくなりそうです。たとえば、調理現場の殺虫目的で農薬が日常的に使われ、それが誤って混じってしまったりしたのでしょうか。ただ、その場合は撒いているその人自身がかなり危ない状態になっているんじゃないかとも思います。あるいは、当の企業にダメージを与えるべく、現地において、悪意を持った誰かがパッケージ前の商品に農薬を混入した、というようなことは考えられないでしょうか。
 いずれにしても想像の域を超えるものではなく、捜査の進展に期待するより無いわけですが、貴重な食品をこんな形で廃棄処分するよりないというのがなんとももったいない限りです。早く事件の全貌を明らかにして、しかるべき処置が取れるよう関係各位の努力に期待したいところです。

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14.死神の陰謀 その2

2008-01-30 22:25:29 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
 高原は一見隙だらけにぐるりと辺りを見回し、今度は蘭を見据えて言った。
「ふん、吉住達をどこに閉じこめたのか知らんが、直ぐに元通りに戻してやる」
「そ、そうはいくもんですか! 夢を無くすだなんて、本当にそんなことが許されると思っているの?!」
 蘭の叫びを、高原はせせら笑った。
「聞いていたのだろう? 私と鬼童君の話は。こんな単純明快な話が理解できないとすれば、君たちはまだまだ子供だ。そして子供は、大人が知識と道理とをしつけてやらねばならぬ。故にこれからの私の攻撃は、全てその愛の鞭だと思ってくれ」
「何ヲ勝手ナ事ヲ・・・」
「第一、ここには私達が来たときには誰もいなかったんです!」
 ハンスと美奈が相次いで高原に言葉をぶつけたが、相手にそれを聞く耳は存在しなかった。悠然と佇んでいた高原の姿が、瞬きする間もなく消えた。
「危ない! 夢見さん!」
 美奈が叫んだときには、一撃を食らった蘭の身体が、後ろの壁へ大の字に叩き付けられていた。一瞬壁に貼り付けられたかのように見えた蘭の身体が、ぐらりと揺れて足元から崩れ落ちる。が、倒れることは許されなかった。たちまち高原が突進し、蘭の喉元を左手でぐいと持ち上げたのだ。蘭は苦しさのあまり両手で高原の左手を握り締めたが、高原はそのまま首の骨を折りかねない力で、がっちりと押さえ込んで放さなかった。
「特に君は、あまりに手癖が悪すぎる。ここに来るのに、エレベーターのシークレットキーも使ったんだろう? 全く、恐れ入る泥棒猫振りだ。だが、私は言ったはずだな、二度とこのような振る舞いは止めてくれと。人の注意を聞こうとしないガキには、それ相応のお仕置きが必要なのだよ!」
「やめて!」
「ヤ、ヤメナサイ!」
 見る見る青ざめていく蘭の様子に、たまらず美奈とハンスが駆け寄った。だが、高原は後ろを振り返ろうともせず、絶妙のタイミングで右手の剣を水平に薙ぎ払った。途端に剣から生じた衝撃波に、美奈とハンスが簡単に吹き飛ばされる。高原は、木枯らしに舞う落ち葉のように転がっていった美奈とハンス目がけて、左手一本で蘭の身体を投げつけた。蘭は人形のようにみじろぎもせず宙を飛び、慌てて手を出したハンスを巻き込んで、更にホールの床を転がっていった。
「さあて、そろそろ終わりにさせて貰おう。私も時間が惜しいのでね」
 高原は再び剣を構え直した。剣をまっすぐ上段に振り上げ、左に降ろして八相に構える。丹田に精気を集中し、腰を落として右足を大きく一歩前に踏み出した。野球選手のバットのように立てた剣を、少しずつ息を吐きながらまっすぐ前に倒してゆき、口元の高さで床と水平にぴたりと止めた。
「死なない程度には手加減をしてやる。はっきり力の差を思い知ったら、今後は二度と私に逆らわないことだ」
「そ、そんな貴方を、好美さんが許してくれると思うの」
 二人の必死の呼びかけに、ようやく息を吹き返した蘭の一言が、高原の動きを止めた。ぴたりと制止していた剣先がぶるぶると震えだし、驚愕のあまり見開かれた目が、ぼろぼろになった三人を見据えた。
「な、何故君が好美のことを知っている?」
「し、調べたのよ・・・。怪盗夢見小僧として、ターゲットになる貴方のことをね。そして美奈ちゃんに貴方の夢のことを聞いて確信したわ。これだけの力を持ちながら、恋人を夢魔から守れなかった、その事に何より自分自身が許せないでいるんでしょう? だから、必死にその償いをしようと夢魔を亡ぼす事だけを考え続けてきた。貴方は人類のためとかご大層な理屈を並べているけど、本当はただ恋人を失った自分のために、復讐を果たしたいだけなのよ! 自分への怒りを、夢にぶつけてるだけだわ!」
「だからどうだというのだ!」
 今や、わなわなと震える高原は、再び怒りを顔中に漲らせた。
「認めてやろう! 確かに私の動機は復讐だよ。そう、絶対、絶対に許せるものか! だが、私の復讐で夢魔が人類から完全に駆逐できるのもまた事実だ! 君達はその邪魔をしているだけなのだぞ!」
「よ、好美さんは、そんな復讐を望んでいないと思います・・・」
 今度は美奈がおずおずと高原に言った。
「貴方の夢の中で、好美さんは、貴方の無事だけを願っていました。し、死神に首を切り落とされる瞬間まで、ただ貴方の身を案じて・・・」
「黙れっ!」
 高原は剣を改めて振りかぶると、岩も砕けよと床に叩き付けた。フローリングの床がすっぱりと切れ、心材のコンクリートがまるで脆い砂の塊のように粉砕される。同時に生じた凄まじい衝撃波が三人に襲いかかった。一瞬も踏みとどまることが出来ないまま、三人は後ろの壁まで吹き飛ばされた。
「黙れ黙れ黙れ黙れぇっ!」
 高原が瞬時に剣を逆袈裟に切り上げ、また強引に振り下ろした。本人ももうどう剣を振り回しているか、恐らくは意識していなかっただろう。太刀筋も何もあったものではない無茶苦茶な剣舞が何回も続き、ようやく息が続かなくなった時には、もうもうとほこりの舞う中、折れた柱や砕けた床面が、高原を中心に放射状に広がっていた。一撃で吹き飛ばされた美奈達の姿も、瓦礫に埋まって全く姿が見えない。
「くそっ! 私としたことが・・・」
 ハアハアと荒く肩で息をしながら、高原は剣を降ろした。これ以上建物にダメージを与えては、肝心の仕事が出来なくなってしまう。
「取りあえず、まずは吉住を捜さないとな」
 高原は足元の瓦礫を蹴り飛ばすと、階段の方に向きを変えた。
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我が国の食料自給率が十分に高ければ、こんな危ない食品を輸入せずともすんだでしょうに。

2008-01-30 22:24:39 | Weblog
 どうやら風邪をひきかけています。
 日曜日、どうもやたらと寒気がするな、と少々いぶかしく思っていたのですが、実際に寒いことでもあったので、挿して気にすることも無く過ごしておりました。でも、振り返ってみればあの寒気が風邪の前兆だったような気もしてきます。
 とはいえまだ本格的に具合が悪くなったわけではなく、鼻の奥が、誤ってプールで水を吸い込んだときみたいに、痛み未満の不快感がわだかまっている、というような状況です。多分間違いなく炎症を起こしかけているのでしょう。とりあえずそんな身体の状態が見えてきましたので、まずは無理をしないように、と仕事もそこそこに切り上げて帰宅し、部屋でもストーブをがんがん焚いて部屋を暖かくし、とにかく早く寝るようにしようと、このブログを書き終え次第寝るつもりで準備を進めています。あ、薬も忘れず飲むように気をつけねば。できれば悪化させること無く快復したいので、しばらくは何かにつけ我慢が肝要な感じです。

 さて、巷では中国産餃子に高濃度の農薬が検出され、それを食べた人達が具合が悪くなって治療を受けている、と報道があり、私も商売柄それなりに気にになる情報なのでそこそこに注視しているのですが、この事件、単に中国の順法意識の低さや輸入業者の安全管理の怠慢ををあげつらうだけでは、今後も何度も繰り返されるだけのようにも思います。
 我が国の食卓が海を渡ってくる様々な食材によってまかなわれているのは紛れも無い事実で、問題の中国からも多量の食品が運ばれてきます。中国自体が自国の生産力だけで国民を食わせることができない国なのに、外貨を稼ぐためにわざわざ日本に食料を売りつけているわけですが、日本も、いまや中国から一切の加工生鮮を問わず食料が入ってこなくなったら大問題になること必定です。そういう事態にあわてないで澄むようにするには、一番いいのは自給率をできる限り100%に近づけ、海外からの食料に頼らずとも自前で食っていける体制を作り上げるのが最善なはずなのです。けれども、今の農林水産省は、どうもそういうつもりがまったく無いような気がしてなりません。むしろ、自国で不足しているはずの食料を他国に輸出してお金を稼ごう、なんていう政策を、堂々と推し進めております。そんなのを見てますと、どうも根本的にゆるがせにできない政策の柱も無いまま、場当たり的にただ大声上げて走り回っているだけのような気がしてきます。
 
 農水省の失策といえば、そろそろまたスギ花粉の季節になってきますね。無理な植林を強要して瑞穂の国の山を荒らし、膨大な借金を垂れ流し、国民に花粉症という途端の苦しみを押し付けて恥じないこのお役所は、厚生労働省と並んで本当に何とかしないといけない官庁のワースト3に入るんじゃないか、と思ってしまいます。

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厚生労働省は、更に病院現場の首を絞めようとしているように見えるのです。

2008-01-29 22:27:47 | Weblog
 昨日の雪は夜の間に雨になり、懸念していた積雪にはならなかったのでほっとしました。今年は本格的な冬ということで、夜の間に雪が降り出し、一晩中降り続いたというのに、それが雨に変わるなんて少し信じがたいことです。雨だったのが夜のうちに雪に変わる、というのなら別段不思議でもなんでもないのですが1月末でその逆がありうるとは思いませんでした。
 ただこの雨は並みの雨ではありませんでした。朝の天気予報では、昼にはあがる、と言っていたのに、昼になっても降り続け、そのときの天気予報では、夕方までにはあがる、と言うことだったのに、辺りが暗くなってもまだやまず、結局、二日続けてびしょぬれになりながら帰宅する羽目になりました。もっとも昨日の今日ということで少しは学習した私は、グローブを防水性の高いものにかえました。おかげでバイザーをぬぐうのもまるでワイパーを使っているかのごとく一回でクリアになりますし、何より手が濡れないので、指がかじかむということがありませんでした。まあこれも、雪だとどうなるか、生地が薄めなだけに少々気になるところではありますが、とりあえずは雨対策として有効であることが確認できました。
 
 さて、何か久しぶりに新聞をまともに見た気がする今日なのですが、その夕刊の一面に、大阪と兵庫にある大学病院などで研修医という身分の人が98人、違法なアルバイトをしていた、ということが、近畿厚生局という厚生労働省の地方部局の調査で判明し、26の病院に処分が検討されていると記載されていました。医師法という法律で、研修医は指導する医者の管理下でないと診療できない、ということになっているそうですが、アルバイト先の病院で、夜間の当直や休日の日直などに一人で診療に当たるようなこともあったとのことです。これに対し、近畿厚生局は研修医に医師として法令順守を徹底させるのが病院の役割であり、厳正に処分したい、とのコメントを出しております。まあ、アルバイトをした研修医やそれを指導する医師・病院が法令をないがしろにしている、というのは事実なのでしょうし、そういう局の言い分は、それはそれとして理解はできます。でも、どうしてそれら病院が研修医をアルバイトで雇い入れたのか、夜間当直や休日に勤務させたのか、という、需要側の問題については、この記事には何も触れられておりませんし、コメントしたのかどうか知りませんが、近畿厚生局も触れていないようです。多分そういう人たちを使わないことにはそれら当直の人員を確保できなくなりつつある現状が背景にあるんじゃないか、と私などは思うのですが、それを無視してただアルバイトした側させた側だけを罰しても、解決には程遠い気がするのです。というより、そんな些細な問題をちまちまつついている暇があったら、根本原因ともいうべき、崩壊間際の医療現場を何とかすることを厚生労働省は総力を挙げて知恵を絞るべきなのではないのか、という思いがぬぐえません。新聞も新聞で、別の企画で医療現場の苦境をレポートする記事を載せたりもしていたのですから、どうしてもう一歩踏み込んだ取材と記事作りができないのか、と、せっかく一面に掲載するというのに、もったいなさと歯がゆさを覚えてしまいます。大勢のアルバイトがある日突然使えなくなる民間病院の医療サービスは、今後維持できるんでしょうか? 結局割を食うのは患者だけのような気がするのですが。

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夜の雪の中を疾走する恐怖はまた格別です。

2008-01-28 19:40:13 | Weblog
 今日は朝の寒さはいつものことでしたが、帰りが大変難儀しました。雪が降ってきたのです。予報ではもう少し遅く、夜半過ぎから、という感じでしたので何とか降り出す前に帰ることができるだろう、と思っていただけに、夕刻、薄暗くなってきた窓の外に舞う白い魔物のい姿に、愕然としてしまいました。すでに芝生の上などは白く塗り替えられてきてましたし、急いで残りの仕事を片付けてほうほうの体で帰路に着きました。
 しかし、およそ夜の雪の中ほど走りにくいものはありません。
 ただでさえ見えにくい夜の道が、バイザーに付着した雪が更に視界を狭めてくれます。それが溶けてくると雨と同じく、対向車のライトを散乱させて前が見えないようになってしまうというおまけつきです。仕方ないので何度もグローブでぬぐうのですが、そのうちグローブが濡れてきて、気温はさほど低いわけでもないのに、手がかじかむほど冷たくなってきます。
 帰路の中でも1.5車線以下の狭いところでは、もう対向車が来るたび一時停止してやり過ごさないと、万一歩行者や自転車がいたりしてもまず絶対に見えませんから、危なくて仕方がありません。特に今日は、恐れていたことに暗闇から突然無灯火の自転車が突っ込んできて、危うく衝突の危機にいたりました。自転車はうら若い女性のようでしたが、ただでさえ視界の厳しい雪の夜に無灯火で疾走するのだけは本当にやめて欲しいです。貴女がどうなろうが知ったことではありませんが、万一接触事故でも起こすことになったら、相手の方が大変な迷惑なのです。

 さて、今頃からこの天気でしたら、多分明日朝は再び白銀の世界に様変わりしていることでしょう。予報では今夜半から明日朝まで雪か雨、ということでしたから、額面どおり受け取れば、先日の積雪に勝るとも劣らぬ状態になることは間違いなさそうです。はたして明日は無事出勤できるかどうか。文字通り運を天に任せて、明日朝を待つよりなさそうです。

 
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14.死神の陰謀 その1

2008-01-27 22:49:47 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
 ガチャン! と受話器を放り投げた蘭は、してやったりと得意満面で受話器を奪い合った二人に振り返った。
「さあ、戦闘開始よ!」
 だが、案に相違してあれほど昂揚していた美奈とハンスが、今は緊張した面もちに不安の色を浮かべている。二人とも、ついさっきまでアルファ、ベータの件で怒り心頭に達していたのだが、その怒りを吐き出した途端、冷静になった頭へかえって不安が募ってきたのである。
「大丈夫デショウカ?」
 ハンスがたまらず蘭に言った。蘭は、憤然として二人に言った。
「今更何言ってるの! もう挑戦しちゃったのよ。覚悟を決めなさい!」
 すると、美奈がまだ眠ったままのアルファをぎゅっと抱きしめた。
「こ、このまま逃げたら・・・」
「駄目よ! どこへ逃げたって、眠ったらその時点で掴まっちゃうわ。今度掴まったらもう猶予はないわよ」
 蘭の一言に、二人は一段と肩を落として来るべき災厄に目を逸らそうとした。蘭はやれやれと腕を組むと、二人に言った。
「いいこと? 今あの高原の野望を阻止できるのは私達だけなのよ? 夢を無くしちゃうなんて、そんなこと許せるわけないでしょう?」
 三人はすっかり高原と麗夢達の話を聞いていた。蘭が、実験室前で高原に偽物のセキュリティーキーを渡したとき、隙を見て盗聴器を白衣のポケットに放り込んだのである。その微弱な電波に乗ったノイズの多い会話を、三人は寄り添うようにして聞いていたのだった。
「とにかく頑張るしかない。私達が頑張って高原を少しでも弱らせれば、麗夢ちゃん達が何とかしてくれるわ」
 やるしかない! 蘭の決意に二人も退路が無いことを改めて意識した。弱気が影を潜めて、悲壮な決意が表に上がってくる。
 その時、人気のないナノモレキュラーサイエンティフィックの空気が、突然一変したことに3人は気がついた。ちりちりと首筋が焦げるような感じがして、思わず3人は身震いした。しかし、周りを見回してみても辺りの風景は何も変わっていない。閑散としたホールに人気は絶えて無く、3人の人いきれさえ聞こえてきそうなくらい静寂に包まれている。だが、3人の研ぎ澄まされたドリームガーディアン遺伝子がこの気配を感じ取った。励起したDNAがその波動を敏感に捉え、眠っていた力を呼び覚ます。三人もその感覚にようやく気づいた。これは、夢の中と同じ感覚だ。
「きっと高原の仕業ね」
「ドウシマス?」
「どうするも何もないわ。夢の中で闘うというならそこでやるまでよ」
 こともなげに蘭は言ったが、正直夢の中でのトレーニングでは、三人がかりで高原相手に一本どころか有効一つ取った試しがない。ハンスは、やれやれと天を仰ぐと胸に抱いたベータをせめて少しでも危なくないよう、エントランスホールの壁際にそそり立つ、柱の影においた。美奈も習ってアルファをその隣に寝かしつける。
 こうして再び三人が寄り添ったその時、奥に三つ並んだエレベーターの右端の一台の頭上に突然灯が灯り、ちーん、と到着音の澄んだ音色が鳴り響いた。三人の緊張が再び高まる中、そのエレベーターのドアが開いた、その瞬間。
 美奈は、気がつくと天井が高速で流れていくのを見つめていた。音もなくただ肌に靡く風が妙に冷たい。と、唐突に背中が折れ砕ける勢いで打ち付けられ、肺の空気を一瞬にして失った。ほとんど同時に後頭部へ倍する衝撃が走り抜け、文字通り目が真っ赤に発火する。美奈は、濡れ雑巾を思い切り振り回して床に叩き付けたみたいに、なんの抵抗も出来ないままのびた。
「起きろ! 馬鹿者共!」
 高原の怒号が、美奈の耳に遠いところから耳鳴りのように響いた。起きようとして、全身が張り裂けるような痛みに思わずうめき声をもらす。それでもやっとの事で上体を起こしてみると、一〇メートルは離れたところに蘭、そしてハンスの身体が転がっており、美奈と同じく全身強烈な電撃を浴びたように感覚がしびれたまま、なんとか起きあがろうともがいていた。続けて美奈は、さっきまで三人が固まっていたその場所を見てさっと青ざめた。一瞬、またあの時の夢を見ているのかと思ったのだ。あの、高原が片時も忘れないと言う夢。憤怒の形相で古びた西洋甲冑に身を包んだ高原の姿だ。だが、今高原は轟然と床に立ち、手にした大剣を振り回している。
「起きろと言っているのが判らんのかぁっ!」
 怒りの叫び声が、強烈な物理的圧力を伴って三人を翻弄した。正面からまともに受けたハンスは、ようやく上体を起こしたと思う間もなくまた仰向けに倒された。美奈、蘭も目をつむり、必死に圧力に耐える。それが薄れたところで、三人はようやくの思いでよろよろと立ち上がった。
「ほう? よく立ち上がったな。さっきの一撃は手加減無しだったんだが、そこまで成長してくれていたとは、私もうれしいよ」
 高原は、大きく剣を回して、とんと肩に載せた。その顔は一時の憤怒を収めて、笑みさえ浮かべている。だがけして心は笑っていない。大噴火が一段落し、次の破局のためのインターバルタイムに入っているにすぎないことは、三人にもはっきりと理解できた。
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なかなか進歩が無い、と言いつつも、それなりに慣れては来ている感じがします。

2008-01-27 22:47:56 | ドリームハンター麗夢
 今日も一日ひたすらアニメーション作りに没頭してました。昨日のうちにサイズ変更まで済ませていたので楽勝で午前中には動いているはずで、実際その通り動いたのは動いたのですが、2度ほど動かしてみて、とんでもないミスを発見、本来透明度設定してあった部分が何故か100%不透明表示になっており、それがランダムにこま挿入されるために、あたかも不定期に点滅するように見えてしまうところがあることに、気がついたのです。透明度設定は原画であるイラレ画像でやっているので、結局その異常があった数十枚はイラレファイルからやり直し、フォトショデータに書き出しして、リサイズ、GIF変換と一通りこなす必要がありました。それを何とかこなし、ようやく完成にこぎつけたのは予定よりも半日遅い時刻でした。昨日までは、今日のうちに絵の方も何枚か進めておこうと画策しておりましたが、時間よりも集中力のほうが続かず、今日の作業を仕舞いしました。
 この手のことは、過去にも何度か経験しているミスなのですけど、なかなか完全払拭できるまでにはいたりませんね。我ながら進歩が無い、と思うのですが、お絵かきのスピードやアニメ製作の手際などは、初めて手がけたころに比べれば随分改善しておりますので、遅々としてはいますがそれなりの成果はあるのでしょう。
 現在300枚を突破して完成まであと少しというところまできましたが、完成を予定している2月14日はちと微妙な感じですね。これからどれだけ作業時間を確保できるか、で左右される段階に入っている感じです。

 さて、大阪府知事選、私がアニメ化に悪戦苦闘している間に橋下徹氏で決まりました。タレントさんの強い土地柄、宮崎県知事の応援演説も結構効いたのかもしれません。かつて日本第2の大都市もいまやベスト3から零れ落ちかねない状況の大阪府をどう変えてくれるのか、その政治手腕は未知数ですしどちらかというと不安の方が大きい感じもしないでもない、というのが私の現時点での正直な感想ですが、大阪の、ひいては関西の浮揚のために、しっかりした指揮を執っていただきたいものです。
 とりあえずきな臭くなってきた東京でのコミケ開催を、インテックス大阪へ招致する、なんてのはいかがでしょう?(笑)

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1日ひたすらアニメ製作に没頭中です。

2008-01-26 23:47:11 | ドリームハンター麗夢
 今日はアニメ用CG作画をいったん休止し、一日かけて製作中のアニメーションについて、前々から気になっていた部分である背景の修正を手がけました。その後、前回2秒だったテストバージョンを更に伸ばし、5~6秒くらいにして動きをチェックしてみよう、ということで、イラレ画像をフォトショ画像に変換してリサイズする作業に没頭しておりました。順調に行けばもうGIFアニメで動いているはずだったのですが、やりかけてはおかしなところに気がついて元に戻し、またいくらか進んだところでふと気づいた点をまた振り出しに戻して最初からやり直し、というような作業の連続で、ようやく順調に作業が進められるようになったのは夕方になってからでした。とりあえず原画をリサイズするところまでは進めましたので、次はPSD画像をGIFに変換してGIFアニメ製作ソフトでアニメ化する、という続きの作業は明日にいたします。もし明日中に出来上がって無事おかしなところも無く動いてくれましたら、改めて某SNSで公開してみようかと思います。ここで公開するのはとりあえず来週です。・・・あくまでもうまく動いてくれたなら、ということですので、いつまでたってもアップされなかったら、ああうまくいかなかったんだ、と察してやってください。

 さて、明日といえば、もう大阪府知事選の投票日なんですね。私はまたもう少し先のことだと勝手に思い込んでおりました。山向こうの話ですからそうそう状況が聞こえてくるわけでもないですし、今週は出張も多かったですからあまりニュースの類も見たり聞いたり読んだりしなかったせいもあって、一体どういう状況になっているのか、トンと気づくこともありませんでした。何でも大阪では結構注目を集めているそうですから、テレビ等は開票速報など結構こまめに流すかもしれません。それなりに楽しみにして、作業続行しつつ日曜日を過ごすといたしましょう。


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「八甲田山」もの2冊目。

2008-01-25 23:44:27 | Weblog
 毎日毎日書き出しが「今日も寒い一日でした」では芸が無い、と思わないでもないのですが、実際に寒いのですから致し方ないと自分に言い訳しつつ、今日も朝より昼間のほうが寒く感じました、と記録しておきましょう。この冬何回「寒い」という単語を使ったか、後で統計を取ってみたらここ数年の冬の気象記録として使えたりするかもしれませんし。

 それはさておき、寒い毎日にふさわしい一冊を今日読み終えました。「指揮官の決断 山下康博著 中経出版 2005年刊行」という私にしては珍しくハードカバーな一冊で、私が購入したのではなく、このブログで新田次郎氏の小説の完走を書いたところ、それを読んで下さったさる奇特な方が、わざわざ郵送してくださった逸品なのです。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 さて、その内容は、先日、関連書籍ではもっとも有名な一冊をぼろくそに言ってしまった「八甲田山」のお話です。明治35年の八甲田山雪中行軍は、青森第5連隊と弘前第31連隊がまったく逆方向から別々に挑み、青森隊が全滅、弘前隊が1名負傷のほかは無傷で完遂とこれも真逆な結果になったのですが、この両隊のうち、主として弘前隊隊長福島泰蔵大尉に焦点を当ててその生い立ちや業績を丹念に拾い上げるとともに、失敗した青森隊と成功した弘前隊の相違点を浮き彫りにして、それを現代の企業・組織の運営に活かすことを目的とした内容になっています。
 全体に福島大尉への尊敬の念や、散っていった青森隊の兵達への愛惜の思い入れが色濃く出ていて、筆の運びとしては時に閉口を覚えないこともないほどに熱さを覚える筆致で、その点、淡々と語る新田次郎氏の小説とは大分趣が異なります。かなり好き嫌いが分かれる文章かもしれません。私はどちらかというと苦手な部類に入る文体なのですが、全滅した青森隊の悲劇ばかりでなく、成功した弘前隊の偉業を拾い上げて語るその内容や、当時の軍隊組織のあり方をもとに、青森隊の山口少佐を不当に貶める小説とは異なる解釈を提示しているところなど、文体を補って余りある内容と感じました。
 特に読んでいて思ったのは、日本人が悲劇の英雄を好み、成功した英雄には関心が薄い、性癖が、今も昔も変わらないのだな、ということでした。雪山の怖さをしっかりと認識した上で用意周到準備万端整えて挑戦し、危機にあっても冷静沈着に指揮を執り、日本気象観測史上最低気温を記録した未曾有の大難を乗り越えてついに偉業を成し遂げた福島大尉と弘前隊よりも、結果的に雪山の怖さをなめてかかり、当然の結果として無残な最期を遂げた青森隊の英霊達の方が有名だというのは、どうも引っかかるものを感じます。最近は「プロジェクトX」など、技術者や研究者達の苦難の末の成功物語を取り上げるようなものもありますが、本来ならもっともっと成功した方へ光が当たってしかるべきではないか、と私などは思うのです。悲劇は確かに衝撃的で人々の耳目を集めやすいものではありますが、悲劇を強調しすぎるとその行為自体が不運だった、で片付けられ、どこで間違ったためにその悲劇が生じたのか、どうすればその悲劇を回避できたか、という、今日で言うところの失敗学的な解析が難しくなってしまいます。特にこの事件のように同じような試みをして成功と失敗が両極端に現れたようなものでは、その比較を通じて失敗を回避し、成功確率を上げるためのノウハウが更に容易に得られるでしょう。事件当時にもそういう観点から警鐘を鳴らした人がいたとこの本で知りましたが、いまだ日本人という人種は、そんな冷静な解析をする目で物事を捉えるヒトがまだまだ少ないような気がいたします。

 
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宇宙への夢が少しだけ身近になってくれるかもしれません。

2008-01-24 22:35:01 | Weblog
 今日は朝よりも昼間のほうが寒さを覚えました。そういえば昨年の今頃、職場付近の排水路でカエルが泳いでいるのを見た記憶がありましたが、過去のブログを検索してみますと、昨年の1月31日のことでした。昨年の今時分は、これが冬? と見間違うばかりにうららかな陽気を覚える日々が続いていた模様です。それに対して今年は、月曜朝の雪がいまだに溶け残っている寒気厳しい至極当たり前な1月後半を迎えております。寒いのはなるべくなら避けたいところではありますが、昨年のごとくカエルも目を覚ますような暖かさ、というのはどうも調子が狂う感じがしますし、昨年は1年通じて季節がひょこひょこめまぐるしく変化する妙な年でした。それだけに、冬はやはり冬らしくあってくれたほうが、その後の春や夏も順調かつ穏やかに推移してくれたりするんじゃないか、などと期待してみたくなります。

 さて、有名な自称霊能者が生きてるヒトを「霊視」して週刊誌に突っ込まれたり、PCウィルス製作者が国内で初の摘発を受けたり、と今日も今日とて色々世間を騒がせる話が目白押しでしたが、私としては、英ヴァージングループ会長 リチャード・ブランソン氏の掲げる、一人2万ドルの宇宙旅行実現! という話題が一番琴線に響きました。この会社は来年に宇宙旅行事業に乗り出すのだそうで、現在の「旅行代金」は1人20万ドルという、田舎なら家一軒買えそうな位の大金になっています。それを近いうちに10万ドルに値下げし、最終的には2万ドル程度まで下げるというのです。「宇宙旅行を体験したい数十万人の夢をかなえたい」とのことで、2万ドルでも安くはありませんが、一生に一度と思えばちと無理をしてでも貯金してみたくなる金額ではないでしょうか。氏の言う「最終的には」というこの期限が一体いつごろの話なのか、というのが気にかかるところですが、なるべくなら10年以内位で実現してもらえたら、こっちも未来に対し楽しみな夢をもてそうな気がします。
 でも、本当は宇宙ステーションか、できれば月に行きたいのですよね。仮に2万ドルになったとしても、それは要するに弾道ミサイルよろしく一応宇宙、といえる高さまで飛び上がってすぐ落ちてくるというものになるのでしょうし、それだけでも大したものであるには違いないのですが、どうもまだ地球の重力に囚われたまま、という感じがぬぐえません。とはいえ、月にしても宇宙ステーションにしても、さすがに観光で行くのは私の寿命の間には無理っぽい気がします。そこでせめて2泊3日位で衛星軌道をくるくる回るくらいのツアーならいいのにな、と夢を見たりしています。いくつか別のツアー会社が出てきて、いずれそういう方向に行ってくれないだろうか、なんて、残りの人生の時間に賭けてみたいニュースでした。

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13.高原の秘密 その5

2008-01-23 22:18:16 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
研究室のドアを蹴破るように飛び出した高原は、まっすぐ中央ホールのエレベーターに向かった。一歩一歩、革靴を床にのめり込ましかねないほどに、足に力を込めて歩く。ことここに至るまでは全く順調に進んでいたというのに、一体どこでどう狂ってしまったのか、いくら考えてみても高原には理解できなかった。そして、その事が余計に高原の怒りに油を注いだ。思わず右手が、白衣の右ポケットから何かを探し出そうと無意識にまさぐり、何かを掴んだ瞬間、高原ははっと気がついて手を抜いた。遙か昔、あの唯一無二の存在を失って以来止めていた煙草を探していることに、ふと気がついたのだ。だが、掴み出したものを見た瞬間、再び高原の怒りは頂点を飛び抜け、満身の力を込めてその手の中のものを握りつぶした。それまで小さなLEDの点滅を見せていた小さな機械、盗聴器と、セキュリティーキーとそっくりな大きさのプラスチック製「夢見小僧犯行予告カード」が、音を立てて単なる無機物へと姿を変える。それだけでは飽きたらず、すでに原型をとどめないそれらを思い切り壁に投げつけた高原は、ようやく上がってきたエレベーターに乗り込んだ。おもむろに操作パネルに指を伸ばす。だがその指は、行き先階の選択キーを通り過ぎ、そのまますっと1のボタンの下まで動いた。高原の指が、一見何もないパネルをとんとんと叩き、すっと引く。
 何も変化が無い。
 途端に高原の右手が拳を作り、手近なエレベーターの壁を殴りつけた。思わず震えるエレベーターの中で、高原は今度は慎重に、もう一度同じ動作でパネル上に指を滑らせた。最後にトン、とパネルを叩いたところで再び手を一旦離す。すると、今度はちゃんと間違いなく出来たようだ。そこに新たなタッチキーの枠が白い光に浮かび上がり、Bという文字盤が現れたのである。それは、高原と吉住など、研究所でもごく少数の許された者しか知らないシークレットフロアだった。肉眼では判らないようパネル上に設置されたタッチキーに触れる回数とリズムで暗号化されており、ちゃんと暗号通りセンサーに入力しないと現れない。高原は怒りの余り滅多にやらないミスを犯したため、二度もやる羽目になってしまったのである。だが、もう大丈夫だ。高原はやっと満足げににやりと笑うと、新たに現れた『B』のキーにぐいと指を押し付けだ。エレベーターがようやく命令を受領して、扉を閉じた。不快なGが身体を包んだが、高原は、今自分がゆがめてしまった壁面に凄みの籠もった笑みを映していた。
 地階に到着して扉が開いた時、高原は一気に自分の結界フィールドを極限まで広げた。もう誰一人逃げることは出来ない。今夜中に全てのケリを付け、おかしくなった軌道を修正して、改めて、夢が無くなった至福のパラダイスを築き上げるのだ。
 エレベーターを降りた高原は、現実世界における戦闘衣装から、夢世界でのそれへと姿を変えた。すなわち、白衣姿が一瞬で古色蒼然とした西洋甲冑へと変化したのだ。そして、すっと伸ばした右腕から突如生え延びるかのように、刃渡り二メートルを超える幅広の大剣が姿を現した。柄を握り締めた高原は、軽々と片手でその大剣を振り回し、久しぶりの感触に血が沸騰するのを意識した。
「待っていろよ小娘共。私の邪魔をするということがどういう結果を招来するか、疑問の余地無く学習してもらおう」
 ドリームジェノミクス社とナノモレキュラーサイエンティフィックとを繋ぐ秘密地下通路に、はじめて甲冑の足音が響き渡った。
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こっちより中国路の方がよほどしっかり雪が降っていたようです。

2008-01-23 22:17:19 | Weblog
 昨夜から今日にかけて、岡山県から広島県へ仕事で出かけておりました。あちらは我が山間地よりも雪がすごかったようで、こちらでは積雪の日の夕方には北向きの屋根の上くらいにしか雪は残っていなかったのに、仕事先では枯れた芝生の上がまだしっかり雪で覆われていたりするなど、大雪の有様をまざまざと見せつけておりました。もし雪の日が1日2日後ろにずれていたりしたら、道路はもとより鉄道もどのような影響を受けていたやも知れず、無事往復とも時間通り行動できたのは本当に僥倖でした。次の遠出は3月初旬ですので、しばらくは落ち着いていられそうです。遠出はそれなりに楽しいものではありますが、やはりなじみの枕でないところで寝泊りするのは結構疲れるもので、私としては、あんまり頻繁に動き回るのはなるべくなら避けたいのです。まあそうも言ってられないところが仕事の厳しさというものなんでしょうが、そんなことは百も承知の上で、できるならなるべく腰をすえて仕事したいと思う出不精のかっこうでした。
 
 とりあえず帰宅後連載小説をアップ、第13章が完結しました。次からは、いよいよ真打ならぬ黒幕の登場! 更にその次の章でクライマックスを迎えます。永らく続けてきたこの連載も、そろそろ終局が見えてきつつありますね。もう少ししたら、次をどうするか考えませんとね。

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霊的番組は、やっぱりテレビにはふさわしくない、と私は考えます。

2008-01-21 22:05:32 | Weblog
 多分そうなるだろうな、と昨夜の段階で予測はしていたのですが、目が覚めると外は一面銀世界に変貌しておりました。目覚まし代わりになったのが、道行く自動車の走行音。なにやらべしゃべしゃと水溜りの中を走るような音がしていたので、ひょっとしたら途中で雨になったのかな? と一瞬だけ思いましたけど、結局アスファルト上だけ水気の多いシャーベットになっていただけで、駐車場や車の上はしっかりと雪が積もっておりました。推定される積雪量はおよそ3~4センチほど。でも、職場のある山のほうは10センチ以上にもなっていて、思わず、「雪の進軍」を歌いながら新雪に足跡をつける、というおバカな行為にふけったりしてしまいました。
 ところで明日からは2日間、中国路を仕事しに回るのですが、岡山も広島も明日明後日とも雪の予報が出ているのがちと厄介です。以前にも雪で交通が麻痺して難儀したことがある方面ですので、できれば無事つつがなく胃って帰ってこられたら、と祈らずにはいられません。

 さて、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が、『スピリチュアルカウンセリング』に警鐘を鳴らす内容の意見を公表しました。夏にあったフジテレビ系の27時間テレビなる番組の中のコーナーで行われた内容について、放送倫理違反があったとした上で、「面白さを求めて『スピリチュアルカウンセリング』をPRするような構成・演出は避けるべきだ」というコメントを付したそうです。
フジテレビには、3カ月以内に改善策などの提出を求めているとのことですので、何らかの報告がまた改めて出ることでしょう。
 昨日の「たかじんのそこまで言って委員会」でも取り上げられておりましたが、テレビ局も「スピリチュアルカウンセラー」なる方も、自分達が霊感商法の片棒を担いでいる、という状況をもっと真摯に考えるべきです。拠るべき宗教を持たず、日々不安にさいなまれる現代日本人にとって、カウンセリングそのものには、それなりの存在意義もあるのだろうことは理解できますが、なぜにそれを行うに際して、「スピリチュアル」なる冠をつけてやる必要があるのでしょう。人生相談ならもっとほかにやりようがありそうなものなのに、安易に霊的な世界を持ち出すのは人心を惑わすばかりのように思います。

 私は霊的なものを否定はしません。むしろ、そういう世界が是非現実にあって欲しいと願いますし、それを客観的に解析し、理解できるような科学的体系化が、いつの日か必ずできる、と信じています。また、自分で日々易を立て、占いを日常生活に必須のものとして暮らしておりますが、一方でそれらを無批判に妄信することのないよう、自らを戒めるようにしています。あくまで占いは意思決定のための一つの道具であり、その文言は判断を下す上でのアドバイスに過ぎません。意思決定する主体はあくまで私にあり、占いの結果を妄信して思考停止状態になってはいけないことを、常に自分に問いかける必要があるのです。そういう態度を保持している限りにおいて、易は無上の益を私の人生に与えてくれますが、それを忘れた途端、手痛いしっぺ返しをくらいます。
 今のスピリチュアル系番組や霊感商法の類に、そんな個人の主体性は存在するのでしょうか。わらをもつかみたいくらいの悩みに苛まれているときこそ、自身の拠って立つ確とした己の存在を意識できるような人間を作る教育が、今こそ求められているのかもしれません。

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13.高原の秘密 その4

2008-01-20 20:46:14 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
「エピジェネティックか。なるほど、興味深い説ではあるな。夢魔遺伝子に関与するエピジェネティック暗号については全く未解明だし、検討する余地は確かにある。しかし、その最後の大異変、恐らくハルマゲドンなどと言うつもりなんだろうが、それはあまりにも荒唐無稽な仮定だし、夢が夢魔の入り口である以上、それを閉ざすのがもっとも早道だという点は、君も否定できなかったな。やはり私は、計画を実行することにする。まず人類から夢を無くす。遺伝情報の解析は、それからでも遅くない」
「ちょっと待ってください。一体どうやって全人類の遺伝情報を変更しようと言うんです? 遺伝子治療なんて、そう関単に出来るはずが・・・」
「それが出来るんだよ、鬼童君。インフルエンザウィルスを使えばね」
「インフルエンザ?」
「風邪の、インフルエンザ?」
 麗夢達が首を傾げる間に、鬼童の顔が見る間に青ざめていった。
「き、危険だ! 危険すぎる!」
「心配いらない。毒性は充分落としてあるし、伝染性は申し分ない。全人類を対象にしたベクターとして、これほど優れたウィルスは無いだろう?」
「で、でも、万一猛毒の株に変異したらどうするんです?」
「一定時間で失活するようにプログラムを組んであるし、どんなに猛毒に変異しても、全人類を死滅させるようなことはないさ。もともと、我々人類の遺伝子情報の45%は、レトロウィルスなどで持ち込まれた外来遺伝子だ。私はそれに一つだけ書き加えてやるだけだよ。それで、夢魔は永遠に私たち人類から消滅を余儀なくされる。実はその第一段階の最終実験用として、隣の建物に、改変インフルエンザウィルスに感染させた鳩を1万羽ほど用意してあるんだ。まあウィルスの運び屋はなんだっていいんだが、平和の使者たる鳩にこそこの役目が相応しいと思ってね。あとは私の合図だけで、全てが始まり、数日のうちに、まずは東京都民の大多数が、残りの人生を夢なしで過ごすことになるだろう」
 高原は、テーブルのインタホンを取ると、隣の建物、ナノモレキュラーサイエンティフィックを呼び出した。
「待ってください、高原先生!」
「お願い! 何とかして止めて!」
「円光さん!」
 鬼童、麗夢、榊の悲鳴に近い呼びかけに、円光もここが先途と一心不乱に念を凝らす。だが、高原の力は余りに強大だった。
「だ、駄目だ、こやつの結界、こちらの結界を維持するので精一杯だ・・・」
 円光の膝が床を舐めた。途端に結界が不安定に揺れ、半径が一回り小さく縮む。高原はにやりと微笑むと、4人に告げた。
「そろそろ限界かな。まあ、準備の待ち時間を楽しい話で消化してくれたことに礼を言おう。あ、私だ。計画通り始めてくれたまえ」
『いやです!』
 その瞬間、高原は明らかに虚を突かれた。理解を絶する内容に、インタホンの先にいる相手が誰なのか、考える余裕を失ったのだ。
「な、何を言っているんだ! すぐに私の言う通りにしたまえ!」
『こっちは貴方の思い通りに何てなりませんからねーだ!』
『ソーデス。貴方ノ野望ハココマデデスヨ、博士』
 次々と入れ替わる通話口の相手に、高原の混乱はようやく収束した。
「お、お前達一体いつの間に!・・・吉住は、吉住はどうした!」
『知らないわ! ともかくこっちの建物は私達が占拠してます!どうしても言うことを聞いて欲しかったら、麗夢さん達を開放してから、貴方一人でこっちに来ることね』
「お、お、愚か者めぇっ!」
 高原は通話器をテーブルに叩き付けた。
「聞こえたわよ! 美奈ちゃん達、隣にいるのね?」
 麗夢が顔面紅潮して今にも弾けそうな高原に言った。高原はそれまでついぞ見せたことのない凄まじい怒りの表情で、麗夢を睨み付けた。
「そうだ! あの馬鹿者共が! 私の実験の邪魔は、絶対に許さん!」
 高原はイスを蹴り倒すと、大股に出口へと向かった。
「待ちなさい! 結界を解いて行きなさいよ!」
「うるさい! お前達も邪魔だ! しばらくそうしていろ!」
 高原の憤怒が結界を一段と強くした。だが、それは密度を高めるためと言うよりは、影響範囲を広げるためのものであった。高原は、ドリームジェネノミクス社だけでなく、隣のナノモレキュラーサイエンティフィックまで自分の結界領域に呑み込む積もりなのである。
「今まで甘く接しすぎた。もう二度と逆らう気など起こさぬように、思い知らせてくれる!」
高原の怒りが、凄まじい旋風を巻き起こしながら4階から移動していった。
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ようやく「ヤッターマン」復活第一話を観る事ができました。

2008-01-20 20:45:44 | アニメ特撮
 天気予報では今夜から雪になるそうで、明日昼ごろまでは降雪が続くとのこと。そのまま行けば、間違いなく明日朝は一面銀世界に変貌していることでしょう。今のところ外の様子はまだ雨模様のようですが、明日朝の状況次第では、通勤そのものが非常に困難になるかもしれないです。

 さて、今日は少し時間をとって、録画していた番組を観ることにしました。ほとんど1週間遅れになりましたが、「ヤッターマン」を観ようと思ったのです。
 昨今、過去の作品をリメイクするのが一種の定番になっている感がありますが、これは30年ぶりの復活となります。もっとも、番組終了後も結構再放送で流れていましたから、我々現役世代から結構後の世代まで、何らかの形でこの作品に接していたことでしょう。そういう意味では、世代を超えたファン層を獲得しているアニメと言えるかもしれません。もちろん私自身は欠かさず見るアニメの一つとして割と熱心に見ておりましたから、今回の復活劇はかなり好奇心を刺激されておりました。
 というわけで観た感想ですが、やはりなんといっても第一は『懐かしい!』の一言になるでしょう。悪役ドロンボー一味の方は、声優さんがそのままでほぼかつてのテイストを忠実に踏襲したところが実に驚異的でしたし、主人公ヤッターマン側は、ガンちゃんの性格やアイちゃんの口グセ、ヤッターワンの妙に細かく描かれる各種装備など、いろいろ変更点もありましたけど、総じていにしえのイメージを大きく損なうことなく、割と自然に観る事ができました。もちろん、そのあまりの過去テイストへのこだわりに一種のあざとさも覚えましたが、とりあえず第一回の放送としては、満足できる結果だったように思えます。
 ただ、物議をかもしたあのオープニングはちといただけない気がします。他の番組でにぎやかなオープニング曲ばかり聞きなれているせいか、今回のはあまりに貧弱に思えましたし、どうせならOPもリメイクしてもっとにぎやかにしてくれたらよかったのに、と思わずにはいられませんでした。また、エンディング、あれはないでしょう! こちらが主役といってもよいほどの存在感のあるドロンボーのテーマソングなくして、ヤッターマンが復活した、といえるとは到底思えません。早急なる改善を要求したいと思います。
 ところで、巷の評判はおおむね好評のようですが、ちなみにうちの職場で聞き取りしたところ、お子さんが中学生の場合はどうも反応今ひとつであり、年齢が下がるにつれて次第に好意度が増し、小学校低学年のお子さんは、画面に食い入るように見ていたそうです。
 お話としては、脈絡の無い唐突な変身など、首を傾げたくなるような部分もありましたから、年が行くとそういう点が目に付いて、作品そのものを楽しめなくなるのかもしれません。それに対して小さな子供達には、そういった理屈っぽさは必要が無く、純粋に中身を楽しめたのではないか、と推察します。そういえば、あのお話の脈絡の無さ、善悪のはっきりした設定、どこがどうすごいのかいまいち判らない気もするデフォルメされたメカなどに、なんとなく私は「アンパンマン」を想起いたしました。昨今この種の理屈を度外視したような物語は無かったように思いますから、低年齢向けの番組として、今後が期待できる復活になるかもしれません。

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