かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

帰ってきました。

2007-11-30 22:42:50 | Weblog
 ようやく帰還しました。今回は徳島県の山の奥深く、携帯の電波が届かない(私のツーカーだけかもしれませんが)周囲を山に囲まれた谷中のある町に出かけておりました。まあ仕事ですから命令あればどこへなりとも行きますが、さすがに今回は遠かったです。四国の徳島なんて、瀬戸大橋でもフェリーでも、すぐそこ、という感じの県なのですが、その懐は非常に深く、山手の方は公共交通機関がほとんど通じていない、というか、かつてはあったんですけど今は廃線になっていたり大幅に本数が削減されていたりで、行くのがとにかく難しいところでした。
 もちろんネット環境もないこともなかったのですが、データ送受信量に制限があるし、そもそも荷物になるのを嫌ってPCを運んでいなかったため、このブログの更新は不可能でした。帰りは大阪でまた別件の仕事があり、戻ってきたのがようやく今というわけです。
 
 さて、ここ最近の仕事で聞いてきた話によると、ある種の花粉症を患っている人は、ある種の食物アレルギーも高頻度で発症する、ということです。また、もうひとつ面白いのは、その食物アレルギーのアレルゲンは植物が病気にかかったときに自ら作り出す病原菌に抵抗するための物質のひとつであり、無農薬で病気にかかったものよりも、しっかり農薬を使って病気を予防したものの方が、アレルギーにかかりにくくい可能性が高い、という実験結果でした。
 前々から私自身は無農薬栽培、というのに深い疑問を持っておりまして、野菜や果物が病気に冒されたり虫に食べられたりするときに作り出す抵抗物質というのは、人体にも悪い影響を与える一種の毒物ではないか、ということを考えておりました。対して昔はともかく今の農薬は安全性評価もかなりしっかりしており、某国のようなむちゃくちゃなことをするのならともかく、わが国の農業生産者が基準を遵守して農薬使用した作物の方が、無農薬栽培よりよほど安全だろう、と思っていたのです。第一、今の作物というのはさまざまな毒性物質を生み出して環境や病虫害に対抗していた野生植物を品種改良し、味や収量性を高める代わりにその手の抵抗力を弱めて、その弱まった分を人の手で助けてやるような形で発達してきたもので、それを野生同様の作り方をしてちゃんと作ろうというのは基本的に無理がある話なのです。であるのになぜか世の中は無農薬野菜、果物が大流行で、そんなものを安全だとありがたがって高いお金を出して食べる人々の神経を私は疑わざるを得ません。
 そんな疑問の一端が今回聞いた研究成果が少しだけ解いてくれたようですが、そこは慎重な研究者のことですから、マスコミのごとく大げさに喧伝するでもなく、更に実験を重ね、事例を積み上げ、原因の究明にあたる必要がある、という控えめな話でまとめられましたが、話の筋としては十分納得の行く内容でしたので、早晩この件については十分な証明がなされ、農薬の使用と無農薬栽培、それぞれのリスクと利益がより客観的に判断できるようになることでしょう。
 でも、そもそも世界全体で均せば食料は明らかに不足しており、ことにわが国のように自国でまともに食糧生産できないようなところで、無農薬栽培という非効率的な生産方法を許容していいのか? という点について、もっと議論がなされてしかるべきではないのか、とも思います。

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9.疑惑 その3

2007-11-30 22:14:54 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
『実はこの会社、ベンチャー企業なんだけど、資金の出所が良く判らないのよ』
『資金?』
『ええ。ベンチャー企業って信用がないから、普通銀行もお金を貸さないの。先端技術って成功すると収益も大きいけど、開発に巨額の資金が必要だし、失敗するリスクも高いからね。だから、ベンチャーキャピタルって言うベンチャー企業専門の投資家達から資金の融資を受けることが多いんだけど、この会社はどこからも資金融資を受けていない。全くの個人資産で運営されているのよ』
『ソレハ別ニ不思議デハナイデショウ。海外デハ大富豪ノ財団ガヨク研究助成シテマスシ』
 ハンスの言葉に蘭は一応頷きながら、更に言葉を継いだ。
『確かにそんな例もあるわね。でも、この会社を運営している個人資産家が、実は実在しない架空の人だとしたら、どう?』
『架空? ドウイウコトデスソレハ』
『言葉通りよ。私達の脳味噌を計っている機械はどれも億単位のお金が必要な超高級品ばかり。私、そんなお金をぽんと出す大富豪だったら、何かいいものも持ってるかも知れないと思ってそれも調べてみたの。ところがどっこい、一応それらしい名前はあるんだけど、詳しく調べてみれば全くの赤の他人で、この会社とは何の関係もない事が判ったの。これって、充分怪しいと思わない?』
『で、でも、私会いました。嶋田輝っていうおじさんに』
 美奈の驚きに蘭も頷いて見せた。
『私も会ったわよ。妙に甲高い声で話しかけてきたと思ったらお尻を触ろうとしたから、思い切り頭を張り飛ばしてやったけど』
 思わずその光景が浮かんで美奈とハンスが吹き出した。が、蘭の眼差しは、二人の笑いを抑え込んだ。
『でも、嶋田輝氏は架空の人物だわ。偽名を使って巨額のお金を出すだなんて、どう考えても不自然よ』
 お金のことはよく判らないが、財布を持っている人が実は偽物というのは確かにおかしい。美奈とハンスがその疑問に頭をひねるうちに、蘭はもう一つの興味深いことを語りだした。
『もう一つは高原博士の話よ。博士は遺伝子工学の専門家で、特に大脳関連の遺伝子情報の解析に力を入れている研究者なんだけど、何年か前に、夢に関して興味深いことを言っているの。夢というのは睡眠中に生じるノイズに過ぎず、進化の過程で生まれた無用の長物で、いずれ見なくて済むようになる時が訪れるだろう、って。その発言を巡って一時大脳生理学関係の学会で、夢は必要だという心理学系の学者と随分派手に論戦したらしいわ』
 美奈は、高原の夢の中でした話を思い出した。夢とは何だと思うか、と言う問いに答えた美奈へ、高原ははっきり、夢は幻覚に過ぎないと言い切った。自分はそれに反発を覚えたのだが、その言葉は高原にとって数年来の信念らしい。でも、それならどうしてあんな恐ろしい夢を、あんなに執拗に記憶し続けようとするのだろう。それに自身恐らく麗夢さんに匹敵するほどの力を持っているのに、日頃みんなの大事な夢を守りたい、と言う麗夢さんとはまるで正反対ではないか。
『それなら、どうして私たちの力を高めようとしているの?』
 美奈の当然過ぎる疑問に、蘭は言った。
『正直判らないわ。あれから考えが変わって夢を大事だ、と思うようになったのかも知れないけど・・・』
 それはない、と美奈は確信した。あの夜、高原ははっきり言ったのだから。その考えに変わりはないはずだ。
『とにかく、あの高原って奴は何か隠しているわ。私はこれを見つけて、そのことを確信したの。ここを見て』
 それは、これまでと代わり映えしない実験室の一つに見えた。美奈とハンスは、ドアの大きめの窓から恐る恐る中を覗いてしばらく視線を彷徨わせていたが、やがて部屋の隅に置かれたガラスケースの中身を見て、思わず声を上げそうになるほど驚愕した。
『あ、あれは、アルファとベータ!』
 それは、掌に乗りそうな大きさの可愛らしいぬいぐるみに見えた。だが、その姿、毛並みは間違いなく麗夢のお供の子猫と子犬、アルファ、ベータに違いない。二匹はガラスケースの中で、頭にケーブルが束になって繋げられたヘルメットを被せられ、体中に色々なチューブやケーブルを絡みつかせながら仰向けに寝ていた。良く見ると手足やお腹の上にベルトが掛けられ、動けないように固定されているらしい。
『やっぱりね。私一人じゃちょっと確信もてなかったから二人にも見て貰いたかったんだけど、どうやら他人の空似というわけでもなさそうだわ』
『でもどうして? どうやってここに来たの?』
『来たんじゃなくて、つい最近連れてこられたのよ。私達みたいに』
 美奈とハンスの疑問に、蘭は相変わらず厳しい表情で答えた。
『ここの研究員の立ち話を聞いたわ。奴ら、やっと実験動物が手に入ったって喜んでいたけど、間違いなくこのおちびちゃん達の事ね』
 実験動物! 
 美奈は、そのおぞましい響きにぶるっと身を震わせた。一体アルファとベータに何をしようと言うのだ?
『まあ私たちも言ってみれば実験動物同然なんだけど、人だというおかげで一応それなりに扱って貰っているわ。でも、あの子達はこれからどんな目に遭うか判らない。なにせ、脳の研究は直接脳へ電極を刺したりするのがちょっと前までの主要な実験手段だったし』
『解剖サレチャウノデスカ!』
『可能性は大ありね。何せ実験動物だから』
『何とかして助けてあげないと! このドア開けられないの? 夢見さん!』
 美奈の必死の願いにも、蘭は難しい顔を崩さなかった。
『もちろんこのカードで開けられるけど、今は駄目。仮に助けてもその後どうすることもできないから、すぐに捕まるわ。そして逃亡するくらいなら、っていきなりバラバラにされちゃうかも知れない。ここは慎重にしないと』
『デモ、コノママデハイズレ同ジ運命デス』
『いざというときは出たとこ勝負で動きましょう。そのために二人にもこの場所を見て貰ったんだし。でも今はとにかく待って。賭になっちゃうけど、一応の仕掛けはしておいたから、その賭が当たるかどうか、見極める時間が欲しいの。さあ、そろそろ戻りましょう』
 ええ、と返事をしてもと来た道に振り向いた三人は、そこにありうべからざる姿を見て、賭が裏目に出たことを悟った。高原研一が、白衣のポケットに両手を突っ込みながら、仁王立ちに帰り道を塞いでいたのである。
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携帯爆発、今度は韓国で?!

2007-11-28 22:38:34 | Weblog
 今日は仕事で京都に行って参りました。京都御所近くのとある会館で催された某研究会なるものでちょっとばかり話をしたり他の方々の話を聞いたり、まずまず充実した1日を過ごしたと思います。一方、今年は大変紅葉が遅れ、木によっては色づきもしないまま散ったようなものもそこここで見ましたけれど、移動途中で観た御所の紅葉がなかなかに見事だったのが印象的でした。さすがに王城は一味違うようです。仕事などほっぽり出して見学したかったのですが、残念ながらそうも行かず、多分今年は改めて京都の紅葉などめでる機会はありそうにないのが心残りではありました。いずれゆっくり紅葉の秋を満喫する時間をとりたいものです。

 といいつつ、明日は早朝から今度は四国の山奥に行くことになっています。携帯の電波も届かない秘境、なのかどうかは存じませんが、多分明日は音信普通になることでしょう。明後日夜遅くに帰ってくる予定ですので、おそらくは日記は一日お休みすることになるでしょう。とはいえ、宮崎でもそうだったように、いまや日本全国津々浦々にネット回線が張り巡らされているみたいですから、ひょっとしたら行き先のホテルにも設備があったりするのかもしれません。まあどうなりますかは行ってのお楽しみです。

 さて、今度は韓国で携帯電話が爆発したらしいとの報道がありました。過充電で電池がおかしくなるのはなんとなくわかるのですが、採石場での現場作業中、胸ポケットに入れてあった携帯の電池が爆発、というのは、事実だとしたらいったい何がどうしてどうなっているのか、大変興味があります。携帯電話は韓国製だったそうですが、電池はどこ製なのかも気になりますね。
 ちなみに私が今使っているツーカーのプリペイド携帯は、一応来年3月いっぱいまで使えるはずなのでぎりぎりまで使ってやろう、と思っているのですが、最近、プリペイドカードの販売店が見当たらなくて難儀しています。調べてみたら売っているところがないことはなさそうなのですが、いずれにしても少々苦労させられそうです。充電地も大分へたってきてはおりますが、これまでに膨らんできたりする様子もないですし、多分これが爆発するようなことはないと信じているのですが、日本ではそんな事例は発生しているんでしょうか? 

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賞金の話もよいけれど、研究成果の中身をもっと詳細に報じてほしいと思います。

2007-11-27 22:59:07 | Weblog
 なんだかやたらと仕事をしたような気がする1日でした。てきぱき珍しく仕事をどんどん片付けていったのですが、時間が足りなくて、まだまだやりたいこと、やるべきことがあるのに、そこに時間を割く余裕がないのです。こんなに仕事を抱え込んだり、溜め込んだりした覚えはないのですが、いつの間にか、何かと突っ込んでしまっていたんですね。もう少し悠長に構えてのんびりやらないと、いつか神経が焼き切れてしまうかもしれません。幸い明日からまた出張続きで日常業務からは開放された時間がすごせますので、ひとつ状況をリセットして、せわしなさは11月で打ち切りにしたいところです。

 ところで、いろいろあって書くのを忘れていたのですが、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授の研究グループが、ヒトの皮膚から胚性幹細胞と遜色のない能力をもった人工多能性幹細胞なるものの開発に成功した、との報道が先週ありまして、なんとすごい話が出てきたものだ、と驚いておりましたら、その成果をドイツがん研究センターが表彰し、がん研究で成果を挙げた人物に与える「マイエンブルク賞」を授与することに決まったのだそうです。賞金は5万ユーロ、約800万円だそうですが、賞金の話よりもその成果が海外からも認められる画期的なものだということのほうが何倍もすばらしいことだと思います。なにせ幹細胞研究は、去年の今頃発覚したお隣の国での捏造スキャンダルで、研究が大幅に遅れること必至、との話を聞いていただけに、その1年後、核もすばらしい成果がわが国から生まれようとは、正直思いもよりませんでした。もちろんこれは基礎研究の話ですから、この、幹細胞が実際に医療で利用できるようになるには、まだ幹細胞自体ががん化しないか、とか確かめないといけない点も数多く残されているようで、実用化はまだまだ先だとは思うのですが、捏造によって、拒絶反応のない移植手術などの画期的な医療技術が誕生する未来がいつになるかわからなくなった底なし沼状態の昨年からすれば、はるかに未来を遠望しやすい位置まで現状を押し上げてくれたのは間違いないでしょう。これで私が寿命を迎えるまでには、かつてない不老長寿への道が開けているかもしれないと期待できそうです。後は遺伝子修飾とサイボーグ化とが実現すれば、ヒトは本当に仙人になれるかもしれません。生命科学はどこまで夢を見せてくれるのでしょう。なんとも楽しみな未来像です。

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今日は吉報が相次ぎました。

2007-11-26 22:38:02 | ドリームハンター麗夢
 最近は富に寒さが増して、出勤の身支度も自然と重装備になってきています。その分時間もかかって、夏の間、この時間に身支度を整えるべく活動を開始すれば大体余裕でたどり着ける、という時計の表示をあてにして準備に取り掛かると、大体遅刻するかどうか、という瀬戸際に立たされるのです。あとせめて5分、できれば10分早く動き始めればいいとはわかっているのですが、冷えてきた朝、ぬくぬくの布団の中ですごす5分10分ほど貴重なものは世の中にはそうそうないのではないでしょうか? 寒気すさまじき外に布団を跳ね除けて起き上がるためには、それくらい時間をかけて気力を充填しないとなかなか思うようにはならないもので、ちりちりと直火であぶられる様な不安感を弄びつつ、危険な水域ぎりぎりまでいかないと、起き上がる気になれないものです。
 さて、今日はそうして日常的な冬の一日の始まりを予告する冷え冷えとした朝でしたが、昼は実に暖かいを通り越したある種の熱さを覚えさせる話が待っておりました。
 御大からのメールです。
 11月14日の日記「みんなで「麗夢」を応援いたしましょう!」で呼びかけいたしましたところの、ヴァルキリーハードに掲載された麗夢のコミックス応援依頼が功を奏し、かなりの麗夢を応援するアンケートはがきが同誌編集部に届いたそうです。中には批判的なものもあったのでしょうが、それだって裏を返せば将来への期待の現われとも取れるわけで、そんなこんなをひっくるめると相当大きな波が今回発生した模様です。その詳細と恐れ多くも御礼のメールを頂戴したのでした。
 まだ暫定的な数字ということですが、将来に向けた大きな一歩となったのではないか、と私は先々に希望を募らせています。アンケートはがきによるプレゼント応募期間は12月26日まで。まだ1ヶ月近くありますから、まだ観てない方は何とか本誌を入手いただき、アンケートはがきに麗夢応援メッセージを書いて50円切手貼ってポストに投函いただければ幸いです。私も近所の本屋さんにはすでにありませんでしたが、この際捜索範囲を広げてもう一冊購入できないか、努力してみようかと思います。
 もうひとつ、楽しいものが届きました。「ヒロイン陵辱クラブ」という雑誌です。天海麗さんによる麗夢ちゃんのコスプレ(レオタードバージョン)が堪能できますほか、盛りだくさんの情報満載な冊子です。麗夢ファン、ヒロイン好きな方は、観て損はないと思います。

 苦あらば楽あり、先週の不幸は今日の幸福を呼ぶための伏線だったのか、などと思えてしまう一日でした。

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9.疑惑 その2

2007-11-25 20:35:08 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
 こうして何度目かの突撃を敢行した二人は、またも高原の鉄壁その物な防御結界に行く手を阻まれ、虚しくはじき返されてしまった。あいたたた、と身体のあちこちに出来た打ち身に顔をしかめつつ二人がもう一度立ち上がったとき、高原はようやく終了を告げて三人に夢から出るように合図した。やっと休める、と溜息をついた三人が覚醒すると、既に高原は数人の助手を交えて、データの検討を始めていた。そして、三人がリクライニングシートに上体を起こしたところで、微笑みを浮かべながら振り返った。
「どうやらまずまずの反応が得られたようだ。次もこのフォーメーションで行くとしよう」
 まだやるの? と蘭が口をへの字に曲げてシートに再び仰向けになり、ハンスもげっそりとした顔でうなだれた。美奈もさすがに疲労を覚えて高原を見た。だが、高原は容赦なく始めるぞ、と三人に呼びかけ、自分のシートに足を向けた。
「博士、ちょっと」
 高原の足を、白衣の若い男が止めた。
「何かね?」
「吉住博士から連絡が入っています。とにかく緊急だそうです」
「全く、この実験の最中は手を離せないとあれほど言ってあるのに・・・」
 高原は、しょうがないな、と首を振って、三人に言った。
「ちょっと急用のようだ。夕食には少し早いが、お茶でも飲んで休んでくれ。今日はここまでにしよう」
 そう言い残した高原は、引っ張られるようにして白衣の男と共に研究室を出ていった。きょとん、として見送った美奈、蘭、ハンスの3名は、当面厳しい訓練が遠のいたことに安堵の溜息をついた。
「ふぁーっ! これでやっと一息つけそうね」
 大きく腕を大の字に広げて伸びをした蘭は、揃えた足を軽く上げると、反動を付けてえいやっ、とシートから起きあがった。
「さあ、折角だからティータイムと行きましょ!」
「ハイ・・・」
 先に立って実験室を出ていく蘭に続いて、ハンスと美奈もシートから降りた。それにしても一体何があったのだろう? あの高原が実験を中止して出ていくなんて。


 着替えを済ませ、レストハウスに移動したはずの三人は、そのまま目的の場所には入らなかった。実験室を出て間もなく、ふっと人気が途絶えたのを見計らったように、蘭が美奈とハンスに呼びかけたのである。
「夕食にはまだ早いわ。それよりもちょっと面白いものを見つけたの。見に行ってみない?」
 ウインクする蘭に驚く間もなく、二人は半ば強引に手を引く蘭に連れられて、レストハウスと反対の方向に歩いていった。どこまで行くのか、と問いかけようとした美奈に、しっと蘭が人差し指を口の前に立てた。と同時に、頭の中に蘭の声が響いてきた。びっくりして目を丸くした二人に、蘭はもう一度繰り返し「話し」かけた。
『二人とも聞こえる? 聞こえたら頭の中で答えて』
『夢見さん、これは一体?』
『博士の研究の副作用と言った所かしら? まあこうして盗聴の心配なく話が出来るのは重宝するわ』
『盗聴? ドウイウコトデスカ?』
『いいから黙ってついてきて』
 さっきまでとはうって代わった蘭の真剣な眼差しに制せられ、二人は開きかけた口を閉じた。やがて三人は、仰々しく関係者以外立入禁止、と赤字で書き付けられた扉の前にやって来た。
『ちょ、ちょっとここって、夢見さん!』
『五秒だけ黙ってて』
 美奈の制止を振り切って、蘭は胸ポケットから一枚のカードを取り出し、扉の右側の壁に取り付けられた読み取り装置の溝に、そのカードを走らせた。途端に、装置の上で赤く点灯していたLEDが青に変わり、扉が静かにスライドして、奥へ続く道を三人に提供した。
『イ、イッタイドウシタンデスカ、ソノカード?』
 ハンスも驚いて目を白黒させている。蘭は振り返ってウインクしながら、さらりと言った。
『盗人のたしなみよ。さあ、早く来て』
『こんなことして、大丈夫なんですか?』
『大丈夫よ。ここのセキュリティー結構厳しそうに見えるけど、所詮運用するのは人だからね。あの先生はともかく、他の人はみんなシステムに頼りきりでもう油断しまくりなのよ』
 そんなものか、と思いつつ、美奈は恐る恐る禁断の扉の向こうに足を降ろした。続いてハンスも、おっかなびっくりついて来る。そんな二人に、蘭は言った。
『ねえ、二人ともあの高原研一って人、どう思う?』
 急にそんなことを聞かれても、と美奈は困った。確かに自分の正義を信じる強烈な意志や、目的のためには手段を選びそうにない様子が、どこか不安を覚えさせる人ではある。だが、悪人と言う訳でもなさそうだ。答えあぐねている二人に、蘭は言葉を継いだ。
『実はね、私、ここに来る前にあの人とこのドリームジェノミクス社について少し調べたことがあるの』
『調ベタッテ、一体ナンノタメデス?』
『もちろん「お仕事」のためよ』
『お仕事って、夢見小僧の?』
『そうよ。名前からしても私の欲しいものがありそうな気がしたし、確かにちょっと興味をそそられたわ。夢の遺伝子なんて、私の目指すドリームアイランドに相応しいじゃない。次の次の次、位のつもりで、下調べしていたのよ』
 なるほど、と美奈は思った。麗夢に聞きかじった話であるが、夢見小僧こと白川蘭が、夢の遊園地を作るため、夢に関係する様々な品物を収集しているとのことだった。ではこれもその仕事の一環なんだろうか? すると自分達は共犯と言うことに・・・。
『大丈夫よ美奈ちゃん。私、仕事は一人でやる主義だから。それよりも聞いて欲しいのは、その時調べたこの会社のことと、高原博士の評判の方なの』
『?』
 話が見えない、と首を傾げるハンスに、蘭は心の中で頷いて見せた。』
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PCまた動き出しましたが、かえって不安は募るばかり、というところでしょうか。

2007-11-25 20:26:10 | Weblog
 今日、とにかく立ち上がらないのでは困りますので、起動時に、正常起動時のシステム復元、というコマンドを選択しましたところ、すんなり立ち上がってくれました。そのままリスタートしたり電源落としたりしたらまたおかしくなるかも? と思い、その後つけっぱなしにしているのですが、以前よくあった起動中に勝手にリスタート現象もなくなって、みたところまったく問題なく動いております。ただ、異常発生直前にたとえばソフトをインストールしたり、設定変更をしたり、というようなことをしたというのならともかく、まったくその種の疑問手は犯さないのに異常が発生したところから考えますと、やっぱりハードウェアの不調が影響しているのではなかろうか、という気がします。思えばこの夏は暑かったですし、ハードディスクにも電源にも何かと負担をかけていたに違いありません。このまま安定してくれればそれはそれでいいのですが、重要な作業中に現象再発でもしたら大変ですので、近いうちにハードディスクと、できれば電源も新調したいと思います。
 というわけで早速ハードディスクの値段を調べてみましたら、まあなんと安くなっていることでしょう! GBあたり30円弱になっているじゃないですか。しばらくその手の値段は見なかったのですが、GBあたり100円強だったのはついこの間だったような気がするのです。更に思い起こせば最初に買ったハードディスクは40MB10万円。いまさら大昔の話をしてもしょうがありませんが、本当に安くなったものです。
 
 さて、昨日はごたごたしていたためか、小説アップしたつもりが下書き状態で公開するのをうっかり失念しておりました。そこで続きをこれからアップします。今度は公開し損ねないよう注意して、3連休3本アップ完了といたします。

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9.疑惑 その1

2007-11-24 23:20:21 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
「やーっ!」
「てぇい!」
「きゃー!」
 勇ましいだけのかけ声とあられもない悲鳴が交錯する高原の夢の中。夢見小僧こと白川蘭と美奈は、必死に念を込めたそれぞれの武器を改めて握り直すと、目の前の高原に撃ちかかった。
「駄目だ! もっと集中して見せろ! 今の君達なら出来るはずだぞ!」
 高原の叱咤が鞭のように二人を襲う。蘭は、もう! と膨れて後ろを振り返ると、そこで両手を前に出して必死の形相で目をつむっている紺のジャージ姿の美青年を怒鳴りつけた。
「ハンスったら! もっとしっかり念を送ってよ!」
「ゴ、ゴメンナサイデス。デモ、コレデセイイッパイデ・・・。」
 歯ぎしりを交えたたどたどしい日本語に、ちっと蘭も思わず舌打ちした。全く、この高原という男は何てパワーの持ち主なの? 私達だって、ものすごく強くなっているはずなのに・・・。
「たあーっ!」
 蘭の目の前で、再び美奈が高原に撃ちかかった。手にする武器は諸刃の剣だ。夢魔の女王を刺したときの麗夢の剣に比べれば、細身でやや短い。高原によると、もっと真剣に念じればより強力な武器になるはずだというのだが、今の美奈にはこれが精一杯だった。
「駄目よ美奈ちゃん!」
 思わず蘭が叫ぶ甲斐もなく、強烈な反動で美奈の小さな身体が蘭の足元まで吹っ飛ばされた。
「大丈夫? 美奈ちゃん?」
 紺のジャージにアメリカンフットボールのような防具をくっつけた、一種異様なトレーニング用のスーツを見下ろし、蘭は手をさしのべた。美奈は、顔をしかめながらも自分と同じ格好をしている年上の女性の手を取った。
「あ、ありがとう、夢見さん・・・」
 蘭は苦笑して美奈が立ち上がるのを手助けした。蘭でいい、と言っているのに、この子は未だに夢見さん、と通り名の方で呼びかけてくる。理由を問うと、「麗夢さんがそう呼んでいたから」ともじもじして答えてみせた。なるほど、麗夢ちゃんの影響か、と理解はしたが、出来れば他人行儀な表看板ではなく、本名で呼んで欲しいと願う蘭である。
 (まあ、いずれそのうち、ね)
 蘭は苦笑を収めると、当面の課題に改めて頭を切り換えた。とにかく、目の前の高原から一本取るか、高原から終了を言い出さない限り、このトレーニングは終わらないのである。
「さあ、今度こそ当てるわよ! いい、美奈ちゃん!」
「はい!」
「ハンスも頑張りなさいよ!」
「ハ、ハイ」
 三人は何度やったかもう数える気もしなくなった儀式を、改めて繰り返した。1、2の3! で呼吸を合わせ、自分達の力をシンクロさせるのだ。
「ようし、行くわよぉ!」
 全身に力を込めた蘭は、同じようにエネルギーの塊と化した美奈と共に、もう一度高原に撃ちかかっていった。
 三人のこのハードトレーニングは、既に5日目を迎えている。美奈を加えて必要なデータを揃えた高原が、いよいよドリームガーディアン遺伝子の高発現因子開発に乗り出したのだ。数日前、そのプロトタイプを与えられた三人は、日常の夢見状態における各種測定を皮切りに、人の夢に直接入る訓練や、その中で自由に振る舞うコツを得るべく、トレーニングを始めていた。
 もっとも美奈は、もともと天性の力を持つため、この訓練は不要である。従って、当初の美奈の役割は、二人を高原の夢に連れ出す事だった。ハンスはもともと人の夢を渡り歩いていた経験を持つだけに飲み込みも早く、三度目にはもう美奈の助けは不要になっていた。従って、美奈はほぼ付きっきりで蘭の介添えを務め、二日前にようやくその役目を卒業したところであった。
 次に高原が要求したのが、夢の中での戦闘である。DGジーンの働きを最大限に発揮し、ドリームガーディアンとして覚醒すること。それには、夢の中で闘いを経験し、眠っている力を呼び覚ますのがもっとも効率がいい。ただ、今の段階ではまだ一人一人の力はたかが知れている。そこで高原は、三人が同じ気を練り上げ、三位一体となって互いに力を高め合うように指導した。一人が一人をサポートする方法や、二人を後方に置き、一人を前に置くやり方、そして今日のように一人が後方から力を送り、二人がそれを受けて闘うやり方。三人同時も含めて計一三通りの組み合わせを試みる。もちろんこれは、ドリームガーディアンとしての訓練の一環であると共に、DGジーンの働きを測定する重要な検証実験でもある。4台据えられた測定用リクライニングシートと各種測定機器が、今もリアルタイムで4人の脳の活動を記録すると同時に、血液を採取して活動している遺伝子の情報を取得するため、フル稼働しているのだ。そうして得られたデータを元に、高原は事前に想定した通りDGジーンの高発現因子が有効に機能しているかどうかを検証する。その結果を踏まえて、再び専門スタッフに向けて、より効率のいい因子の試作指示を出すのである。
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どうも問題はもっと根本的な部分にあるみたいです。

2007-11-24 23:18:55 | Weblog
 今日は休日出勤の日。先週もそうでしたが、旬な生き物を扱っている関係上、この時期はいわば月月火水木金金で仕事しなければなりません。面倒ではありますが、この時期を逃すと1年棒に振りかねない以上、多少の無理難題は折り込み済みで仕事しなければならないのです。その分暇な季節に長期休養でも取れたら良いんですが、まあなかなかそんなうまい話はありません。

 さて、昨日復旧したと思ったPC、確かに今朝までは問題なく動いていたのですが、今日、仕事から帰ってスイッチ入れてみたら、また症状が再発しておりました。それも更に悪化しているのが困りもので、通常起動では起動途中で勝手にリスタートがかかり、ならばとセーフモードで立ち上げてみれば、作業途中でまた勝手にリスタートがかかるという、不安定極まりない状態になってしまいました。原因は不明ですけど、親切な方がメールで指摘下さったように、ハードディスクが寿命なのかも知れません。試しにCDから起動して、起動ディスクにCHKDSKかけたらエラーが見つかりました。PC同様骨董品のような年代物のハードディスクですし、寿命と言われればなるほどその通りかも知れません。思い切ってハードディスクを新調しようか、と考えているのですが、買うとなればやはり大阪まで出ないと入手できませんし、しばらくはネットもMACで作業しないといけないみたいです。MACの方はもっと老骨な機械なのであまり無理させたくないのですが、致し方ないですね。

 と言うわけで、PC復旧記念もおじゃんになってしまったのですが、気を取り直して「ドリームジェノミクス」の更新を行います。お話もせっかく佳境に差し掛かったところですし、PCの方は暫時あきらめ、楽しめるところでやることをやろうと考えております。

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8.能力喪失・・・ その3

2007-11-23 21:11:00 | 麗夢小説『ドリームジェノミクス』
「何? 今のは。何がどうなったの?」
「拙僧には、何か人の姿が見えたように感じたが・・・」
 円光の言葉に、鬼童はにっこりと微笑んだ。
「さすがは円光さんだ。あの瞬間の映像を見切るなんて。では、少し戻して今度はスローで動かしてみましょう」
 鬼童がキーボードに指を滑らせ、再び再生のキーを押した。今度はゆっくり映像が動いているらしい。ただ、動きのない映像のため、さっきと何が違うのか、にわかには判らなかった。しかし・・・。
「あっ!」
「こ、これは!」
 二人が叫ぶと同時に、鬼童は映像を一時停止した。そこには、ついさっきまでいなかった一人の男が映っていた。それも麗夢の傍らである。男の姿はぶれてはっきりとしなかったが、それでも右手を麗夢の手に伸ばしているのは充分に見て取れた。
「どうです麗夢さん? 見覚えありませんか?」
「見覚えも何も、この映像じゃ判らないわ」
 麗夢が言うのも無理はなかった。その静止映像はチューニングが不完全なテレビ映像のようにゆがんでぶれ、男のようだ、と言う以外に判別するのは極めて困難だったからだ。
「やはり無理ですか・・・。ではもう少し時間を下さい。画像処理してもっとはっきり見えるように工夫してみます」
「それより、どうしてこの一瞬しか映ってないの?」
 麗夢は、より根本的な疑問を口にした。この男は、まるで心霊写真のように、あの一瞬だけ突然麗夢の傍らに現れて、その前後にはまるで姿が見えないのである。これについては、鬼童も一応は答えを用意していた。
「恐らくこの身元不明の男は、僕の夢を媒介して侵入し、また夢に去ったとしか考えられません。まるで死夢羅のように夢を自由に出入りできるのでしょう。その時、よほど強烈な思念波が発生したに違いありませんよ。うちの電子機器にはそれなりに僕自身も工夫してシールドしてあるんですが、それでもこんなに映像をゆがめるほど影響するなんて、ちょっと空恐ろしい気がします」
 夢を自由に行き来する・・・。麗夢は数日前の鬼童の夢の中での出来事を想起して、思わず身震いした。やはりあれは死夢羅だったのだろうか? でも、死夢羅なら何故幻覚だけで実際に鬼童を殺害しようとしなかったのだろう? それにこの男の姿、これは、いくらゆがんだ映像と行っても死夢羅でないことくらいは見て取れる。結局謎ばかりが深まる中、麗夢はもう一つ、未解決の謎が残されていることを思い出した。
「そうそう、鬼童さん、あの時私の手に刺さっていた小さな針はどうしたの?」
「あ、あれですね! 実はあれも興味深いものだったんですよ。ちょっと待ってください!」
 鬼童は三度キーボードを操作して謎の男の映像を消すと、新たに一枚の画像をモニターに映し出した。
「あの針の顕微鏡写真です。本当に極細の針ですが、麗夢さん、これ、何でできていると思います?」
 麗夢と円光は、画面の中に浮かぶ真っ白な針を凝視した。だが、写真で見ただけで材質まで読みとるのは不可能である。二人は結局、針なら多分金属だろう、と常識的な答えを返すしかなかった。ところが、鬼童の答えはおよそ二人の常識の埒外にあった。
「じつはこれ、糖で出来ているんですよ」
「トウ? なにそれ」
「ほら、砂糖とかグラニュー糖とかの糖ですよ。これは、その糖の一種で出来ているんです」
 もう一度麗夢と円光は目を丸くしてその画像を見つめた。頭には上白糖と赤い字で記された一キログラム入りの白い粉や、コーヒーに入れる茶褐色の砂粒のような結晶が浮かび上がるが、どれもこの針と上手くマッチさせることが出来ない。驚くばかりな二人に、鬼童は最新技術の一つですが、と前置きしながら二人に話した。
「実は注射針の研究で出来るだけ細くする、と言うのがあるんです。蚊に刺されても痛くないでしょう? あれは、蚊の唾液が麻酔効果を持つだけでなく、蚊の口が非常に細いため、人に痛みを感じさせずに血管まで刺すことができるんですよ。これを応用すれば、例えば糖尿病でインスリンを定期的に注射しないといけない人に、痛みのない注射が可能になるんです。ところが金属を使うと、万一折れたときに非常に危険です。どんなに小さい針でも、それが脳の毛細血管につまったり心臓壁に刺さったりしたら命に関わることになりかねないですからね。そこで開発が進められたのが、糖を針に仕立てる研究なんです。糖なら万一血管に入り込んでも、血液で溶けちゃいますからね。きっとこの謎の男は、この糖の結晶でできた針を使って、麗夢さんに何かを注入し、夢に入る力を奪ったんです」
「毒か!」
 円光が気色ばんで鬼童に振り返った。だが、鬼童は冷静に首を横に振った。
「僕も色々脳に影響を与える薬物を研究してきたが、この針で与えられる程の少量で、夢だけに作用するような薬物は見たことがない。それに、麗夢さんの能力はこの数日で少しずつ削がれていった様だ。注入された直後ならともかく、そんなに遅延して効果を発揮するなんて、ちょっと思いつかないな」
「おのれ・・・、一体誰が、どんな妖しの技を麗夢殿にかけたのだ!」
 円光は怒りにまかせて拳を握りしめた。麗夢も画面の針を見つめながら、重苦しい気分に落ち込んでいた。結局謎はほとんど解けていない。ただ、自分の力が完璧に失われたと言うことが、確実になっただけだ。そんな見るからに打ち萎れている麗夢に鬼童は言った。
「実は一つだけ、手がかりになりそうなことがあって、既に榊警部に連絡して、調べて貰っているんです。この針に関することなんですが・・・」
 麗夢と円光は、つかみかからぬばかりな勢いで、同時に鬼童に振り向いた。
「それは何 (なんだ )鬼童さん!(殿!)」
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3日がかりでようやく完全復旧しました。

2007-11-23 21:10:36 | Weblog
 3日間すったもんだしたPCの不調、結局昨日、というか今日未明、午前2時過ぎまでかかって、ようやく安定した状態に復旧することができました。なんともふざけたとしか感想の持ちようのないことなのですが、半信半疑でメモリを1枚はずしてXPのセットアップを試みたところ、今までの苦労が夢だったかのように、至極あっさりとセットアップが完了してしまいました。ただ、入れたのは生印XPでしたので、各種アップデートを繰り返した上、アンチウイルスソフトをインストールしたところで力尽きて寝てしまいました。
 で、今朝10時半に目覚めて後は、SP2にアップデートして、メーラーとブラウザをまずインストールしてあらかじめ保存してあった設定ファイルを読み込んで環境を回復し、残りの普段よく使うソフトウェアをインストールして、ほぼ9割がたもと通りに直りました。あとの1割は、インストール用CDがまだ発掘できていないソフトが若干あるためです。幸い、そう使用頻度も高くないソフトなので、あまりダメージはありません。最後に、はずしっぱなしだったメモリを挿し直し、BIOSの起動ドライブをハードディスクに書き直して、セット完了しました。

 それにしても、メモリ2本挿しだと駄目、というのが、どうもよく理解できません。それも、少なくとも最初の1回はうまくいってたのですから、余計わけがわからないのです。いくつか関連する記事の載っていたサイトやブログを検索して、結局XPのインストーラはハードウェアのチェックが厳しく、メモリとも相性があるらしいと理解したのですが、わけのわからない「相性」とやらで振り回されるのはどうにもやりきれない感じがします。メーカーにはもっと簡単でわかりやすく堅牢なシステムを作ってもらいたいですね。

 さて、勝てば官軍終わりよければすべて良し、というわけで、愚痴をたれるのもこれくらいにして、PC復帰記念に小説を3日連続でアップすることにしました。まずは1日目、第8章最後の1節、物語が急激に動き出す最初のステップを、ご覧ください。

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PCの調子が悪いとこっちの具合までおかしくなって、下らないことに気が行ってしまいます。

2007-11-22 22:28:38 | Weblog
 今日もPCの再セットアップに尽力しているのですが、まずCDが駄目なのかも? と疑われたので、職場のパソを使ってCDーRで複製を試みましたら、これがあっさり綺麗に写し取ることが出来ました。それではCDドライブが悪いのか? と言うわけで今度はDVDマルチドライブでブートアップしてインストールを試してみますと、かなりいいところまでいったのですが、結局幾つかのファイルがコピーできないと言うもうおなじみになった文字がでてきて、膨らんだ期待をぐしゃりとやってくれました。これはどうにも困った、と取りあえずネットで調べてみると、どうやら256MBのメモリを二本差ししているとその症状が現れるとの情報が。何それ? そんなことがあるの? と目が点になったのですが、確かにうちのも256MB×2の状態ですし、半信半疑ただ今メモリを一枚外してインストールやり直しています。
 
 さて、今日は仕事でどうしても出かける必要が出来、車で少し遠出したのですが、どうも具合が今ひとつで、かなり運転危なかったです。注意力散漫というか、何でもないところでポカを連発して、まあ田舎道だったからよかったようなものの、そうでなかったならきっとどこかで事故の一つもやらかしていたことでしょう。PCの調子が悪いからといって何もかもこううまくいかなくなる、と言うのも困りものですが、ごくたまにはそうして悪いことが集中する日もあったりするのでしょう。
 それはともかく、走っている途中なにげに見えた看板に、「憲法9条を守ろう ○○市9条を守る会」と大書してあるのが見えました。まあ私などとは主義主張の異なる方々の立てられたものなのでしょうが、そのこと自体をとやかく言う訳ではありません。ただちょっと面白いな、と思ったのは、この言葉、とりようによっては違う読み方が出来ると気づいたのです。
 これを立てた方々は、きっと日本国憲法が改正されて、金科玉条たる9条が改悪されかねないことに危機感を抱き、9条に手を付けるな、と主張したいのだと思いますし、大方の日本人ならその主旨への賛否はともかくとして、その意味を誤解することはないでしょう。でも、もしこの看板を、日本語を習う外国人、あるいは年端の行かない子供達が読んだとしたらどうでしょうか。「憲法9条を守ろう」は、「交通ルールを守ろう」というのと同じような意味合いで読んでしまうヒトが出て来るんじゃないでしょうか? 憲法9条と言う法律の内容を遵守しましょう、という呼びかけでもこの方々の主張には大体合致しているはずで、要するに全くどっちでも問題なく読めてしまうと思ったのです。
 日本語というのは言葉の使い方が結構曖昧で、意味の違う内容なのに同じ言葉を使うことはよくあります。でも、この看板のように、己の主義主張を明らかにして世に問おうというようなものに、このような曖昧表現を採用するのは、ユニバーサルデザインの考え方からすれば、明らかに落第点のコマーシャルであり、あまり賢いやり方には見えません。せっかく自分達の言葉をヒトに伝えたいと願うのであれば、もう少し言葉の使い方に気を使われた方がいいんじゃないか、と車窓から眺めつつ思った次第です。・・・まあ、そんなどうでもいいことをつらつら考えながらハンドル握ったりするから、余計危ないのですね(苦笑)。

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何で? どうしてまた動かなくなるの?

2007-11-21 22:30:44 | Weblog
 昨日一応復帰したはずのPCが、今朝には全く動かなくなっておりました。ちゃんと動いていたはずなのに、スイッチを入れたら、「/config/systemが無いので起動できません」と言うようなメッセージが出て、そこから先全く立ち上がろうとしないのです。仕方がないので色々試して何とかディレクトリをのぞいてみたのですが、確かにスッカラカンでそこには何も入っておりません。全く訳の分からないシステムです。ぼやいていても始まらないですし、このまま動かないPCに拘泥していては仕事遅刻してしまいますので一端電源を落としましたが、帰宅後ももちろん復旧できておりませんで、とりあえず今日は久しぶりにマックからブログ更新しておりますが、ブラウザが古くて不安定なので、できれば使いたくないのですが仕方ありません。
 PCの復旧は少しずつやるしかないので、取りあえず動くようになるのは明後日の3連休初日、完全復旧は3連休中の事になるんじゃないか、と希望的観測をしております。
 とはいえ手をこまねいていてもしょうがありませんので、一応今日はBIOSいじってインストールCDからブートしてみました。案外あっさりと立ち上がって、ハードディスクの領域解放、フォーマット、インストールプログラムの起動、と順調に進んだのですが、なんと、ファイルが幾つかコピーできない、というエラーが発生してその先に進むことが出来ません。CDが汚れているか傷でも入っているのか、と思いましたが、肉眼では汚れ、傷ともほとんど見えません。少しほこりが付いておりましたのでそれは拭いましたが、やはり途中でアウトになります。もう、全く持ってお手上げという感じです。
 後は、念のため作ったインストール起動用フロッピーディスクから立ち上げてみるしかなさそうですが、この分だとインストールプログラムが順調に起動しても、システムのコピーがうまくいかないかも知れません。そうなるとあと出来るのはXPは諦めて、2000でも入れておく、と言うことくらいでしょうか。その前に、以前マザーボードの液漏れコンデンサを取り替えたときにもう使うことも無かろうとフロッピードライブを外してしまったので、まずそれをセットし直すところからやらないといけません。それから、どこかにしまい込んだWindows2000のCDを発掘すること。ああ、頭が痛い(泣)。
 
 どうも今年は後少しで終わるというのに、ここにきて何かと問題がでてくる感じがいたします。ここらで一度、無事年を越せるように気を引き締めないといけませんね。

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苦闘の末、ウィンドウズを再インストールしています。

2007-11-20 22:41:06 | Weblog
 この1ヶ月ばかりどうも調子がよくなかったのですが、とうとうPCが立ち上がらなくなりました。これまでもなかなか起動しないことがあったのですが、セーフモードで立ち上げるなどしているうちに何とか動いていたので、面倒だとは思いつつもそのまま遣っておりました。インストールをやり直す手間から考えれば、それくらいの面倒さはさしたる問題にはならなかったのです。でも、それもまったく立ち上がらなくなってしまってはいたし方ありません。さらに倍する起動やり直しをかければひょっとして動いたかもしれませんが、それを待ち続けるのもばかばかしい話ですし、第一朝一でメールチェックをしてから出勤したいときなどに何度もリスタートをかけるわけにもいきません。結局いずれはOSのクリーンインストールは避けられなかったのです。
 とはいうもののやっぱりウィンドウズのインストールやり直しは大変な手間で、現在とりあえずブラウザ(Firefox)とメール(Thunderbird)、それにアンチウィルスソフトをインストールして最低限の環境を確保したところで、一日が終わろうとしています。そのほかの各種ソフトをインストールし直して問題なく使えるようになるのは、きっとこの週末になることでしょう。なんとも不便で難儀な話ではありますが、PCが動くようになってくれないととにかく不便でしょうがないですので、あきらめるよりないでしょう。
 それにしてもウィンドウズってやっぱりおかしいですよ。使っているうちにいつの間にか不安定になっていくし、それをやり変えようとしたらとにかく疎ましい手間がかかるし、ウィルスやスパイウェアはやたら多いし、本当に、どうしてこんな使いづらいシステムが世界を席巻してしまったりしたんでしょう? ウィルスなどは大いに普及したからターゲットにされているということもあるでしょうから致し方ない点もあるのでしょうけど、私はMS-DOSver2.1からPCをいじり始めましたが、できることが少なかったという点はあるにせよ、あのころのPCはシンプルで軽くてOSの再インストールなどほとんどせずにすみました。それからだんだん変化していって、いまやこんな不親切なシステムがPCのOSとして過半を占めているという事実が、どうも理解ができないのです。新しいvistaとやらはどうなのでしょう? どうも正直言ってつまらないギミック満載でやたら重くなっているだけのような気がしてしまうのですが、どうでもいい虚飾の部分をできるだけ削りこんで、とにかく堅牢にして安全安心、軽快動作のOSというのはもう望むことができないのでしょうか?

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昔は同人活動でも取材旅行していたんですが、最近はどうもものぐさになってしまいました。

2007-11-19 23:06:31 | Weblog
 今朝の寒さは格別でした。走り始めてものの5分とたたないうちにグローブ内の指が冷たく凍え始め、足やら顔やらが冷たくなって、本当にこれで無事職場まで通勤できるのか? とかなり真剣に危ぶみました。幸い天気はよくって8時を過ぎる頃には気温も大分上がり、出がけの懸念は払拭されましたが、この分だと明日以降もう少し防寒態勢を念入りにする必要がありそうです。
 
 さて、最近故あって東京の中央線界隈について色々調べていたりするのですが、もともと土地勘の無いところなので、なかなかに苦戦しております。その昔、麗夢の同人2冊目になる「悪夢の純情」の設定をしていた頃は、2万5千分の1の地図を片手に、平将門関連の神社や警視庁、皇居などを実地に観て回るため、夜行バスで早朝の新宿に乗り付け、1日ほっつき歩いてその晩の夜行バスで帰宅する、などという無茶なことをしたこともありましたが、さすがに今は時間も取れませんし、お金も無いので、いちいち取材旅行などすることも出来ません。できればもっと時間をとって高尾山に登ってみたり中央線の幾つかの駅で降りてその辺歩き回ったりしたいのですが、その代わり、当時はまだなかった(と思いますが、ひょっとしたら記憶違いかも?)インターネットで地図やその場所の写真、由緒などと言った各種情報が得られるため、おかげさまでそれなりに現場を見なくてもおおよその想像は付くようになってきています。それでも現場の匂い、と言うか、空気と言うか、一種の場の雰囲気をつかむには、実際にその場所に立って体感するのが一番よいに違いなく、出来れば次に仕事で東京方面に出張るときにでも、予習した場所をちょこっと訪ねるような時間を少しとってみたいと考えています。それにしても、やはり私は関西の人間だからか、実際に住まいしている奈良はもとより、大阪、京都、神戸と言った街や周辺の海山などと言った場所は、実際に言ったことのない土地でも、地図とデータで大体そう大きく外すことなく、なんとなく雰囲気まで感じ取ることが出来るみたいです。おそらくそれは、言葉であったり植物の植生であったり建築様式であったり水であったり、五感で感じ取れる色々な情報を、既知のものとして無意識的に理解してしまえるからなのでしょう。東京は最近では下手をすると大阪と変らないくらいの時間を過ごす街になっておりますが、それでもまだ東京の空気を無意識的に体得することは出来ないでいます。多分何週間か、あるいは何ヶ月かそこで住まないと、そういう感覚は身につかないのではないか、と思ったりもします。まあ外からの方が見えるものもあるみたいですし、無意識的に理解した情報を意識的に表現することも難しいですから、あえて短時間意識して場の雰囲気をつかむように努力する方が創作にはいいのかもしれません。と言うわけで、多分12月か1月に仕事で関東に行くことになるはずなので、そのときには少し時間をとって幾つか気になる場所を歩いてみたいと思います。
・・・もっとも、生まれつきの方向音痴ですから、なまなかな時間では取材も難しいんですけどね。

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