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シューベルト ピアノソナタ17番D850と村上春樹

2020年12月22日 | 聴く・観る・オーディオ・映画・パソコン

今日もシューベルトのピアノソナタを一日聴いて過ごした。特に17番 D850を。

私はモーツァルト、ベートーヴェンのソナタ、特に内田光子のモーツァルトを愛した。

発売される彼女のCDはほとんど手に入れた。どこで聞いたか見たか失念、私が死ぬということはシューベルトを弾くことができなくなることだ(不正確)

それを知り、ほとんど興味無なかった1996年頃から録音を開始した彼女の愛するシューベルトのピアノソナタ集(CD8枚)を手に入れたのはそんな遠いことではない。

モーツァルト、ベートーヴェンと違った表現できぬが、とりとめない魅力に魅せられ、よく聴いた。16番から21番、特に疲れ時、21番D960。

未完成の初期のソナタも収録した大好きなSchiffの全集もいつしか手に入れていた。だがダーンとフォルテで始まるや17番は飛ばし、ほとんど聴くことはなかった。

昔、営業マンの時、待ち合わせ時間を潰すためよく書店で過ごした。赤とグリーンのけばけばしい装丁の本がどの本屋でも大量に平積みされていた「ノルウェイの森」著者、村上春樹。

出版社が悪いのか、大衆迎合嫌いな私はそんな本を触る気にさえなれかった。以来村上春樹嫌い、ノーベル文学賞候補の噂にあがっても彼の作品を手にしたことはない。

ごく最近、そん彼が17番D850を絶賛している「海辺のカフカ」の部分的記事を見た。本当にあの17番を聴いているのか、村上春樹が・・・

かの吉田秀和さえ、シューベルトの病気の一つ、D850は冗長に長すぎる、とまで。

おでんパーティーの際、たくさんの蔵書をお持ちのI氏奥様に「海辺のカフカ」を読んでみたいがどうか?と問うた。

2,3日前、奥様が村上春樹の本を数冊持ってきてくれた。「意味がなければスイングはない」には付箋さえ貼られていた。ピアノソナタ17番ニ長調、ソフトな混沌の今日性。

早速読む、聴く。村上春樹がハッタリではなく心底17番を愛している事を知る。彼のコレクション15人の演奏家、それも既に30年ほど前から、私の俄と全く違う。

私の手元にある内田光子、Schiff、ブレンデル の17番を聴きなおす。そして17番の素晴らしさに気付いた私、村上春樹に完敗、

更に驚くべき、彼の推薦盤のなかにWalter Klienがあった。長男が小さい頃、ピアノ教室に通っていた。

教育テレビでクリーンが演奏指導する番組があり、モーツァルトのソナタだったと思う、一緒に観ていた。

そして彼が監修した ソナタ K545の楽譜を子供に買い与えた記憶がある。若杉指揮、N響と共演の27番のピアノ協奏曲を聴き、感動した覚えもあり、

Walter Klienは忘れがたき演奏家であった。だが、その後彼が亡くなった時、ほとんどメディアの話題にならず、日本人の奥様からの訃報で知った。

ネット検索するもWalter Klienの17番、残念ながら今や手に入れることができない。

だがYouTubeに17番のみならず全集があった・・・ Walter Klienは全集録音していたのだ。

ここ数日何度聞いたことか。長い冬、春樹を読み、シューベルトを聴き続けることになるだろう。幸せなことだ。

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