第232回配信です。
一、前回配信の補足
建久元年(1190)十一月九日、源頼朝が九条兼実に対して語った「証言」は、
①平治の乱(1159)の三十一年後、
②近親者(息子)が自分の父親に関して語ったもので、
③本人の記録ではなく、政治家同士の会談の中で出た話を、相手が記録した伝聞
に過ぎない。
従って、仮に頼朝による意図的な改変はないとしても、遥か昔の出来事に関する美化された記憶。
建久元年の時点での政治情勢を分析するための史料としては貴重であっても、平治の乱の史料としてはもともと証拠価値はない。
坂口太郎氏は頼朝の「証言」が「二条天皇黒幕説」の「拠り所となる証明の心臓部」とされるが、桃崎氏は頼朝の「証言」以外にも相応の根拠を示している。
その部分を含めて、桃崎説の全体を批判するならともかく、もともと証拠価値のない頼朝の「証言」だけを攻撃対象として糾弾する坂口氏は風車に向かって突進するドン・キホーテではないか。
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桃崎氏が「名探偵」ならば「歴史書氾濫の昨今、世人の耳目を驚かす奇矯な説」を退治せんとする坂口太郎氏は歴史学界の検非違使、あるいは詐欺専門の捜査二課・坂口太郎警部かな。 ただ、私としては坂口警部にもルパン三世の銭形警部っぽい滑稽感を覚えない訳でもありません。
https://x.com/IichiroJingu/status/1870322954086855150
建久元年(1190)十一月九日、源頼朝が九条兼実に対して語った「証言」は、
①平治の乱(1159)の三十一年後、
②近親者(息子)が自分の父親に関して語ったもので、
③本人の記録ではなく、政治家同士の会談の中で出た話を、相手が記録した伝聞
に過ぎない。
従って、仮に頼朝による意図的な改変はないとしても、遥か昔の出来事に関する美化された記憶。
建久元年の時点での政治情勢を分析するための史料としては貴重であっても、平治の乱の史料としてはもともと証拠価値はない。
坂口太郎氏は頼朝の「証言」が「二条天皇黒幕説」の「拠り所となる証明の心臓部」とされるが、桃崎氏は頼朝の「証言」以外にも相応の根拠を示している。
その部分を含めて、桃崎説の全体を批判するならともかく、もともと証拠価値のない頼朝の「証言」だけを攻撃対象として糾弾する坂口氏は風車に向かって突進するドン・キホーテではないか。
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桃崎氏が「名探偵」ならば「歴史書氾濫の昨今、世人の耳目を驚かす奇矯な説」を退治せんとする坂口太郎氏は歴史学界の検非違使、あるいは詐欺専門の捜査二課・坂口太郎警部かな。 ただ、私としては坂口警部にもルパン三世の銭形警部っぽい滑稽感を覚えない訳でもありません。
https://x.com/IichiroJingu/status/1870322954086855150
桃崎氏が頼朝の「証言」を鬼の棍棒のように振り回しているのは研究者らしくないが、その棍棒だけを叩いて鬼の首を取ったように勝ち名乗りを上げている「太郎少年」も問題。
水曜日のカンパネラ『桃太郎』
https://www.youtube.com/watch?v=AVPgxn3xohM
二、平治の乱の研究史
資料:『平治の乱の謎を解く 頼朝が暴いた「完全犯罪」』〔2024-12-23〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/408464aec3f98dbdc0af039b0ea92acd
飯田悠紀子『保元・平治の乱』(教育社歴史新書、1979)
河内祥輔(1943生)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B3%E5%86%85%E7%A5%A5%E8%BC%94
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『保元の乱・平治の乱』(吉川弘文館、2002)
武士が政治の表舞台に登場した保元の乱。平清盛一人が勝ち残り武士の時代を不動にした平治の乱。この、世を震撼させた二つの事件には不可解な疑問がいくつも残されている。『兵範記』『愚管抄』などの史料をもとに、乱の経過を克明にたどり、皇位継承問題や摂関家の内紛と複雑に絡み合う人間模様を活写。事件の真相に迫り、時代情勢を解き明かす。
https://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b34533.html
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『保元・平治の乱を読みなおす』(NHKブックス、2004)
信西と清盛の提携は、本当だったのか?
武士を主人公として語られてきた通説を打破し、院政派と親政派の対立が複雑に絡み合う院政期の混乱した政治状況を暴き出す。平清盛の関与の低さや藤原信頼の武門としての逞しさ、誰にも顧みられることのなかった後白河上皇の存在など、これまで語られたことのない乱の実体を明らかにする。
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000910172004.html
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『中世初期の〈謀叛〉と平治の乱』(吉川弘文館、2019)
律令では天皇・朝廷への反逆とされていた「謀叛」は、承久の乱を経て中世初期にはどのような法概念に変わったのか。謀叛の代表的事例だが古記録に欠ける平治の乱の経緯と結末、源義朝や貴族らの決起の動機などを綿密に検証。古文書や『玉葉』などに見られる文例を博捜し、「謀叛」呼称の意味・機能・思想を考察して、御成敗式目の制定目的を解明する。
https://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b383077.html