いや奥の風呂仕切ってさ。
(浮世風呂(うきよぶろ)・浮世床(うきよどこ))(式亭三馬(しきていさんば))(滑稽本(こっけいぼん))
[句意]浮き浮き気分で風呂の床を仕切って滑稽なサンバを踊った、という句。広く大きな銭湯を想定して下さい。ただし『浮世床』の「床」は「床(ゆか)」ではなく「髪結床(かみゆいどこ)」(今で言う床屋さん)なので念のため。
[ポイント]
1.式亭三馬の代表作は、滑稽本の『浮世風呂』『浮世床』。
[解説]
1.滑稽本は、上方から始まり、江戸で流行し、町人の日常生活に題材をとった、滑稽さや笑いをネタに、庶民の生活をいきいきと描いた小説。寛政の改革以後文化期を中心に天保までつづく。多くは対話文をとる。代表作家は十返舎一九(1765~1831)と式亭三馬(1776~1822)である。
2.式亭三馬は、浅草の生まれ。父は版木師。8歳で戯作本などの版元(はんもと)に奉公し、やがてその流れで黄表紙、合巻を書く戯作者となる。滑稽本で本領を発揮し、代表作は『浮世風呂』(1809)、『浮世床』(1813)。戯作のかたわら出版屋、古本屋を兼業したのち創業した売薬の製造販売業が当たるなど、波乱に富んだ生活だった。また肉筆浮世絵もこなすなど多才でもあった。
3.『浮世風呂』『浮世床』は、庶民の社交場である湯屋(ゆや)(銭湯)、および髪結床(かみゆいどこ)に集う人びとの威勢の良い江戸弁の会話から庶民の生態を生き生きと描写している。
4.なお三馬と並ぶ十返舎一九の代表作に、弥次郎兵衛(やじろべえ)、喜多八(きたはち)による珍道中を描いた『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』(1802)がある。
〈2016関西大・全学部2/8:「
D 手紙の形式でさまざまな語彙や知識を学ぶ往来物は、江戸時代に広く教科書として使用された。また、戯作者のなかには新しい教科書を作る動きもみられ、駿河生まれの戯作者で、滑稽本『東海道中膝栗毛』などを著した[ア曲亭馬琴 イ十返舎一九 ウ式亭三馬]は、1815年から10年余りの間に約60種類もの教材を作ったといわれる。」
(答:イ)〉
〈2015早大・社会科学:「
問2 下線部(2)文学作品に関連して、著者と作品の組み合わせとして、不適切なものはどれか。1つ選べ。
イ 式亭三馬―『浮世風呂』
ロ 十返舎一九―『東海道中膝栗毛』
ハ 山東京伝―『江戸生艶気樺焼』
ニ 曲亭馬琴―『雨月物語』
ホ 為永春水―『春色梅児誉美』」
(答:問2ニ×『雨月物語』は上田秋成)