【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

参院選選挙区に広がる新たな可能性の胎動

2016-05-04 16:50:54 | 政治・文化・社会評論
参院選挙区に広がる新たな可能性の胎動

        「国民的な統一戦線への探求」
               櫻井 智志


 参院選選挙区で最初に日本共産党予定候補者がおりて野党の統一候補が成立した経緯を調べてみた。次の文章は、
〔【声明】あべ広美さん予定候補及び熊本県参院選選挙区に関わるすべての個人や団体の激震被災をお見舞いすると共に、
心から激励の応援エールを贈ります〕の一部分である。

以下引用開始~~~~~~~~~~~~~~~~~

 私たちは、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と民進党・日本共産党・社民党・新社会党とが、無所属弁護士あべ広美さんと協定して、参院選熊本選挙区の予定候補として決めたことを重要と考える。

 熊本県では、安保法制(戦争法)に反対するため結成された「戦争させない・九条壊すな!くまもとネット」が、(1)集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回(2)先の国会で採決された11の安全保障関連法の廃止(3)日本の政治に「立憲主義と民主主義をとりもどす」―の3点を共通の目的に、県内の5野党と二つの労働組合とともに、あべ氏を統一候補として擁立。全国に先駆けて市民・野党統一候補が実現していて、きわめて優位な基盤を形成していたのである。

 ところが、本年4月14日以降あいつぐ激震が熊本県のみならず大分・長崎・宮崎・鹿児島など周辺にもおよぶ連続的な地震が続いている。私たちは、国政を憲法にもとづく立憲主義の回復を求めるために、「戦争させない・九条壊すな!くまもとネット」、労働組合、「市民連合」、熊本県内の民進党・共産党・社民党・新社会党、そしてなによりもあべ広美さんらの災害被災を憂うとともに、熊本の全国に先立つ民主的選挙運動にも甚大な困難が生じていることを思う。

2016年2月11日、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称「市民連合」)と野党5党(民主党、日本共産党、維新の党、社民党、新社会党)は無所属の弁護士あべ広美さんを参院選熊本選挙区の予定候補として擁立した。
安保法制廃止、集団的自衛権の閣議決定の撤回を含む立憲主義の回復―などを公約として掲げ、当選した場合も無所属議員として活動することなどを内容とする協定書を調印した。

 調印には、「市民連合」から山口二郎氏(立憲デモクラシーの会・法政大学教授)、佐藤学氏(安保関連法に反対する学者の会・学習院大学教授)、本間信和氏、芝田万奈氏(SEALDs)、熊本側からは、あべ候補とともに「戦争させない・九条壊すな!くまもとネット」の代表、日本共産党、民主党など県内野党代表らが参加した。
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あべ広美熊本選挙区予定候補と「市民連合」が調印した協定書全文
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 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合は、「立憲主義、民主主義、平和主義の擁護と再生は、誰もが自由で尊厳あるくらしをおくるための前提となるものである。私たち市民連合は、安全保障関連法を廃止、立憲主義を回復し、自由な個人が相互の尊重のうえに持続可能な政治経済社会を構築する政治と政策の実現を志向する」という理念の下、下記の3点を公約する「市民派・野党統一」候補を推薦し、市民連合推薦候補として全力で支援を行います。
 公約1 安全保障関連法の廃止
 公約2 立憲主義の回復(集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む)
 公約3 個人の尊厳を擁護する政治の実現(具体的政策については今後協議する。)
   安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
 私は、市民連合の掲げる上記3点を2016年参議院選挙において公約します。
 市民連合の推薦を受け、当選したあかつきには、原則として任期満了まで特定政党に属さず、上記公約実現のため全力を挙げることを約束します。
 2016年2月11日   あべ広美

引用終了~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 これをよく読むと、野党統一候補のあべ広美弁護士は、「市民連合」とあべさんご本人とが協定を取り交わしていることがわかる。あべさんと野党とが協定したというのは、あいまいで不確かな表現であり、なおかつ間違っている。市民連合と無所属弁護士が協定成立した後に、この候補者ならということで野党共闘で支持している。
 もっとも熊本県段階では、市民団体と野党とが早くから提携していた。野党統一と市民運動とが、あべ広美さんを統一候補として押し出している。

 この些末なことにどうしてこだわるのか。
それは、「野党が合議して候補者をもってきて、市民も選挙に動いた」という認識は、野党共闘の根幹に関わることだからだ。
北海道5区で敗北した池田まきさんの選挙直後の公式発表を以下に転載する。

『【公式サイト転載】
『池田まきから皆さまへ』
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お礼のことば
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朝も晩も寝る間も惜しんで「私の選挙だ!」と、必死になって、一緒に闘ってくださった皆さん、
心の底から本気で応援いただいた全国の皆さん、
想いや願いを込めて投じてくださった皆さん、
...
本当にありがとうございました。
結果は、力及ばず、本当に申し訳ありません。
本当に、悔しくて、悔しくてなりません。
この1票1票には、私たち市民の想いがいっぱい詰まっています。
誰ひとりおいてきぼりにしない、
すべての人が「安心」できる社会をつくるため、
「夢をもっていいんだ」、「みんな、チャレンジできるんだ」ということを
私、池田まきが挑戦することで、「生きる希望」に叶えたい、
その強い想いでこの選挙戦、どんな理不尽な力にも負けず闘ってきました。
「見えない生きにくさ」という社会の課題も顕著になったと思います。
この課題については、権利を擁護する福祉の専門家として、
必ず、みんなが夢や希望が持てる社会へ、道をきり拓いていきます。
また、今回の選挙は、
市民が主体的に参加し、そして動いた、初めての市民選挙でもありました。
市民ひとり一人の力は小さいかもしれないけど、
みんなが動き、つながれば、必ず何か変わるという、
大きな、大きな、はじめの一歩になったと思います。
このことをすべての市民の「勇気」にしたい。
そして、日本にいるすべての人の「希望」に変えたいと思います。
本当に皆さん、ありがとうございました。
池田真紀はあきらめません。
諍いのない、争いのない、暴力・武力・権力に怯えることのない、
すべての人が「安心」して「あたりまえ」に生きていける「平和」な社会を。
一市民として、一ソーシャルワーカーとして、池田真紀として、
私に託していただいた願いや想いを実現する道を見つけていきます。
また、このことは新しい政治へのスタートラインでもあり、
この出発点を大事にして、皆さんの想い、大切な財産を政治にも反映していきます。
ありがとうございました。
                       池田まき
          無所属新人 池田まき 123,517票
         投票率 57,63% 』




 ここでとくに強調したいのは、
「今回の選挙は、市民が主体的に参加し、そして動いた、初めての市民選挙でもありました。」という箇所である。
ここに、安倍政権与党や長嶋昭久民進党議員らが言う「民共合作」などというデタラメな造語のインチキさを証明する根拠がある。熊本でも、北海道の池田まきさんでも、市民運動を十二分に考慮し生かして選挙に対応している。SEALDsの奥田愛基さんが札幌にわたり、池田まきさんに立候補要請したこと、それによって立候補を決断したことは報道され、よく知られている事実である。
 今回の参院選にとり組む民衆側の二つの特徴をあげよう。

 日本共産党が、自らの候補を取りやめて野党統一候補擁立に全力を尽くして一人区で20以上の県での実現をみたことは、かなり高度の判断であるばかりか、日本共産党の政治倫理への国民的な信頼を得ている。このことが参院選の特徴の第1。

 さらに第2は、市民団体や市民運動の動向である。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安全保障関連法に反対する学者の会」「安保関連法に反対するママの会」「立憲デモクラシーの会」「SEALDs」の団体そのものや有志が結集して、『安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合』(略称:市民連合)が結成されその活動ぷりは鮮やかである。
 戦後史では、今までも市民主義や市民運動は重要な意義をもった。ただそれらは理論的、討論的な特徴が見られた。それでもいままでの市井三郎、丸山眞男、林達夫、羽仁五郎、久野収、鶴見俊輔、小田実、これらの指導的存在は、市民運動家というよりも知識人として重要な貢献をなしえた。それに比べて「市民連合」に加わっている大学教授や知識人たちは、実践家としてきわめて高い政治的識見をもって、市民運動に参加している。

 とくに私が思うのは、日本共産党も市民運動団体も実に成熟した抑制と謙虚さを踏まえていることだ。
七月に迫った参院選にむけて、市民連合など市民が候補者とともに正面に立ち、それを野党共闘が候補者を支えながら、持続的に支援し続けること。このような「市民と政党」の共闘型選挙こそ、大きく国民に伝わり広がっていく。




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重要参考資料
【孫崎享のつぶやき】

有権者の方が賢い。自民は盛んに「民共合作」と共産党の協力煽るも不発。統一候補への勢い続く。なんと民主党長島昭久議員も「民共合作」使用。
2016-05-04 06:204



 参議院選挙一人区、衆議院補選での野党統一候補の動きを、「民共合作」という時代がかった表現で、その勢力を削ぐ動きが見られた。

 ウィキペディアを見てみよう。
「2016年2月28日、自民党の茂木敏充選挙対策委員長が岐阜市で講演し“野党統一候補と言うが、実質的には民主党と共産党が組んでやるということ。『民共合作』の革新勢力にこの国をゆだねるのか”、批判的なニュアンスでこの用語を使用した。」

 おまけにウィキペディアは次を記載している。
「民主党内でも共産党との協力に消極的だった長島昭久衆議院議員は、衆院北海道5区補選で自民党が新党大地の選挙協力を取り付けたことについて、2016年1月10日のツイートで「民共合作ポーズがもたらした手痛い誤算」と評している」
 (参考:長島昭久 認証済みアカウント @nagashima21

これも、民共合作ポーズがもたらした手痛い誤算だと思う。大地の協力があれば、引っ繰り返せた可能性は高いと言われていただけに、痛い。北海道補選は野党の反転攻勢の重要な足がかりだった。もちろん、勝負はこれからだ。―新党大地自民支持の報をうけてー)



 この長島昭久衆議院議員の説明は如何に事実と反しているかを見ると、「民共合作」批判が如何にいい加減な説明であるかが解る。
 池田まき候補が①鈴木宗男氏等が自民党候補応援に回ったことで失った票はどれくらいか。②共産党との令閨で得た票はどれくらいか。①と②を比較すれば簡単に結論が出る。

 そもそも連携は共通の政策目標があってのことである。

 共闘協定は、(1)戦争法廃止をめざす(2)立憲主義、民主主義の回復をめざす(3)その姿勢を最後まで貫く―の3項目であった。共闘を評価しようとすれば、この目標で共闘する意義があるかをまず、論ずるべきであろう。


 しかしながら、「民共合作」という批判的言動は、盛んに使われた北海道5区では何の影響もなかった、かつ北海道5区の戦いによって、野党統一候補の動きが加速されているとの報道を東京新聞が行っている。


A.事実関係 東京新聞(2016年5月3日)報道

 夏の参院選に向けた野党候補一本化の動きが、三十二ある改選一の選挙区のうち、六割超の二十一選挙区まで進展した。四月二十四日の衆院北海道5区補欠選挙では、落選したとはいえ野党統一候補が、自民党候補と接戦を繰り広げた。野党間の合意発表は補選前後に相次いでいる。安倍晋三首相が目指す改憲発議が可能な三分の二勢力の獲得を阻止することになるのか。

 改選一の選挙区では、四月十四日時点の本紙の集計で、十六選挙区で野党が統一候補の擁立で実質的に合意していた。その後群馬、新潟、秋田など少なくとも五選挙区で、共産党が候補擁立を取り下げるなどして、野党統一候補で臨む態勢が固まった。調整中の選挙区もあり、統一候補が増える可能性がある。

 野党共闘は、北海道5区補選で一定の効果が見て取れた。民進、共産、社民、生活の野党四党が推薦した無所属候補の得票は、二〇一四年十二月の前回衆院選で民主(当時)、共産両党がそれぞれ擁立した候補者の合計得票と、ほぼ同じだった。補選での共同通信社の出口調査では、民進、共産両党の支持層のほとんどが野党統一候補に投票しており「共産党と組むと保守層が逃げてかえってマイナスだ」との懸念はあたらず、共闘に弾みがついた形だ。

 北海道5区補選のように、票を積み上げることができた場合、野党共闘は夏の参院選にどんな影響を与えるか。

 一三年の前回参院選を基にした本紙の試算では、改選一人区で非自民勢力が候補者を一本化した場合、勝利する選挙区は二から九選挙区に増える。

 与党の自民、公明両党と、改憲に前向きなおおさか維新の会、日本のこころを大切にする党で、三分の二の勢力を確保するには、参院選で七十八議席の獲得が必要。四党の改選議席から十六上乗せする必要がある。もともとハードルが高い上、野党共闘により一人区で接戦になれば、三分の二を占めるのはさらに難しくなる。


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