【現代思想とジャーナリスト精神】

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サミットを建前とした「平成日本戒厳令もどき」の危うさ

2016-05-25 19:39:44 | 政治・文化・社会評論
サミットを建前とした「平成日本戒厳令もどき」の危うさ

               櫻井 智志

 二、三日パソコンから離れようと考え、テレビニュースをぼおっと見ていた。しかし推移する画面にしだいにあれよあれよという間に、このままサミットが終わるまで沈黙していたら、闘争ではなく逃走だ、と思い、きょうはこれひとつを書き上げる。


 話はそれるようだと思われるかも知れない話を。アイドルと大学生活をめざす女性が、ファンから変心した若い男性にめったやたらに全身をさされ、意識不明の重体。
 警察は、目撃者からの電話で事件を知り、すぐかけつけた、と報道された。しかしこれは事実と異なると訂正が出された。全身を刺された女性は、自分の携帯電話から警察に「助けて!!」と警察に電話していたのだ。テレビ報道では、女性が被害を受けた事件現場から電話した警察署までは700メートル。パトカーで2分の距離。女性は事前に京都府の警察に相談し、その指示で警視庁管内の警察にも相談した。携帯にはGPS機能がついていて、その女性が電話した場所は警察では認知できるシステム。で、警察は警官七人と救急車を派遣した。しかしその場所は本人の住所をもとにして電車で三駅ほど離れた駅の近く。その時点に自宅に女性がいるはずもない。
 目撃者が警察に連絡したのは、本人の電話の約一分後。そのあいだに重傷の女性は意識不明状態に悪化した。

 さて、明日からのサミットに備えて、サミット当地の三重・伊勢志摩の賢島。観光客ゼロ。いるのは警官だけ。それが全国に及ぶ。都内でも東京タワー展望台、東京駅などすべての駅でロッカー使用禁止・ゴミ箱撤去。これは英国サミットでのロンドン爆破や最近のフランス・パリの爆破テロによる劇場死傷者などの事例を参考にしている。

 しかし日本は、安倍政権の「有志国連合入り」「イスラム国」勢力衰退に資する巨額援助の公約発言など、日本が自らテロを受けやすい国際情勢を創り出したのだ。日本国憲法のもと戦後日本は、武器なき支援で医療・人的支援に徹してむしろ世界から尊敬を受けていた。日本赤十字や国境なき医師団、報道ジャナーナリストなど日本・日本人が信頼されていたものをわざわざ崩壊させ、異常な過剰警備をしかなければ安全が担保されないようないまの状態をつくりだした元凶は、安倍晋三首相とその政権なのだ。

 警官の特殊警備の集団訓練や銃撃訓練など、その公開の報道を通じて、今回のサミットを通じて日本国内は、まさに「戒厳令」状態にひとしい。国民の情報は、盗聴法、国民ナンバー制度、インターネットの大手サーバーからの大量個人情報流出という名目の情報の保護解体状況下にある。

 このような「先進国」僭称サミットで、何が決まってもそれが国際社会の平和と幸福の保障となるのか。ロシアや中国は加わっていないが、G7との外交はどうなるのか。伊勢志摩サミットを踏まえて、安倍首相はプーチン大統領とどう交渉するのか。

 国内でも方便と詭弁に終始して、あとは細かなテクニック政治でここまで政権を延命してきたが、自公政権が一日続けば続くほど、二極分化した国内の庶民層の暮らしは悪化している。東京オリンピックやサミットに巨額の浪費を続け、福島県民はじめ東北地震被災者や熊本・九州激甚地震災害の被害者に少しは政治を目を向けて真摯な国政をしたらどうか。熊本地震義援金七億五千万円のうち5月24日時点で支給したのは、わずか一世帯十万円のみ。「住宅の被害調査が進まず、罹災証明書の発行が追い付いていないのが主な要因」と東京新聞5月25日夕刊は報道している。
 さらに、サミット中は警備が手薄になるので、リスクを軽減するために「福島第一、原子炉冷却やパトロール作業を除き、きょうから作業を原則休止」すると報じられている。どこかが逆転している。どこかが狂っている。

 安倍政権の時代にはいって、日本の歴史と伝統、近代史の民主主義運動の成果がひとつひとつ崩壊させられている。だが、国民の理性は決して腐敗した政権とは異なる。
 参院選選挙区一人区のすべてで市民運動が媒介役となり野党共闘が成立した。政党と市民団体。日本は困難だが、屈せぬ希望の原理をもち続けて健闘している。