【現代思想とジャーナリスト精神】

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G7と広島訪問における日米トップの政治哲学

2016-05-27 22:21:46 | 政治・文化・社会評論
G7と広島訪問における日米トップの政治哲学
~安倍晋三の方便とオバマのこころざしの相違を垣間見て~
  
                櫻井 智志


 G7において、安倍首相が見せた総てが、G7のトップがあきれ、しらけていた。まともに論評するに値しないめちゃくちゃである。国内では、日本経済はアベノミクスの効果でうまく言っていると強弁しつづけてきた。ところがG7では、世界経済はリーマンショック寸前と似た経済危機にあると述べたのだ。まったく国の内外で正反対を述べた。ドイツやイギリスの首相が安倍理論に反対したのは当然だ。日本以外のG7の各国は経済がほぼ安定しており、「危機的だからG7各国が一斉に財政出動して経済危機をアベノミクスで立て直そう」などというでたらめな方便は、最初から各国は呆れてしまった。それをホスト国の顔を立て、神道のメッカ伊勢神宮をなかば強制的に集合場所に使うなど安倍首相のやることなすことが、本論ではなく「おもてなし」の美食の飽食などまったくサミットとは別の次元であっても、外国首脳は大人だから安倍に気をつかっていた。


 日米首脳が最も際だっていたのは、広島平和記念公園での感動的なオバマ演説と安倍演説の内容である。

 オバマ大統領の17分に及ぶ演説は、「私が生きている内に核廃絶は成就できないだろう」という見通しを述べる冷静さをもち、しかも核時代・ヒロシマ紀元を唱えた思想家芝田進午の「被爆者・被曝者・ヒバクシャ」の三段階の社会的存在論を踏まえているかのような確かな論理と哲学をもっている。

 安倍首相は、参院選の前に消費税のことを言うといったが、G7でのリーマンショツク寸前に似た危機説をあそおり財政出動までもちだして、参院選に少しでも有利な状況にしようとしている。広島訪問もオバマに便乗して、平和の使者パートナーを装った。

 原発セールスで世界を回り続け、東京五輪を有利に するため福島原発汚染水は完全にブロックしたと国際舞台でセコイ見え透いた嘘を述べた。IOCといい、G7といい、国際会議に出てくる各国のトップクラスは、既に安倍なるものの何者かを熟知し了解してしまった。何も言わないだけで、まともに相手にされていない。
 
 オバマは雄弁家だが政治力は高くはない。けれど、その高潔で誠意あるスピーチは被爆した「被団協」の坪井さんや「原爆乙女」の笹森さんなどから感銘をもって受け止められた。戦争責任の謝罪問題の視点からすれば、問題が皆無ではない。けれど、現在の時点で、核兵器に被爆した80,90才台の老人たちの心に響く見解をもっていることは紛れもない事実だ。学生時代から「核なき世界」という文章を書いていたという。プラハ演説は実現していないが、大統領退任後も核廃絶運動に取り組む意志を明言した。


 広島の原爆資料館の入り口にいた少年少女に、「私が折ったものだよ」と言って折り鶴を四人に渡したという。そして、
NHKテレビのニュースでは、
「共に平和な世界をつくるために努力していきましょう」という意味の言葉を受付名簿に記帳したという。



 人間性と人格の質が違う。オバマとシンゾーとでは。