【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

#とことん共産党opinion~2020.3.23 櫻井智志

2020-03-23 22:49:48 | 言論と政治
ネット生放送
とことん共産党3月23日放送

「いま、マルクスがおもしろい」

ゲスト 石川康宏さん(神戸女学院大学教授)
MC・司会 小池晃書記局長、朝岡晶子さん
https://youtu.be/1UdBOsVgwA4




国会参院予算委員会での小池晃氏の質問は感銘的だった。赤木さんご夫妻の意思と哀しみを踏まえ、明快な事実に組み立てられ説得力のある展開だった。情理ふまえ無言の国民の怒りをわきまえた質問だった。

コロナと赤木さん夫妻の勇気ある告発の事態。ともに繋がる水脈がある。新型コロナ感染症対策は、安部首相なりに対応しているが「やってみせる感」が前面にあり、根本からの取り組みとは異質だ。だが安部氏も麻生氏も庶民とは全く異質の生活感覚で生きているのだろう。

「マルクス #者」は、「もの」でなく「しゃ」と思う、本質とは異なるが。
マルクスの実践と学問は新たな歴史的地平を拓いた画期的な存在と考える。ただ、マルクスを偉大な崇拝対象ととらえることよりも、時代を自分はどうとらえ生きていくかの生きた知恵として認識している。

サンダースの民主的社会主義は現代アメリカにとり重要な存在だ。ニューヨーク市立大哲学教授ジョンサマヴィルやキング牧師などアメリカの市民の側の民主主義は深い。北欧は資本主義だが「福祉社会」「社会民主主義」の特徴が現代的な意義を持つと考える。

マルクスの時代に「階級闘争」をメインに出した背景がある。資本主義が労働者を搾取し疎外を極めた。労働者・市民・国民・民族とカテゴリーが歴史的に発展していく。今のフェミニズムは、市民や女性への社会的発展によってマルクス期よりも発展している。

マルクスが開拓した画期的理論と思想の領域と併存する価値観の共存に40才頃から視野が変わった。「マルクス曰く」ではなく現実をどう認識するかの方法論として思考すべきと思う。近代からの科学技術の幾何級数的発展は、核や生物科学の発展は新たな理論的深化を要請している。

石川康弘先生のおっしゃる「資本主義の2つの側面」という考えに同感である。2つの矛盾はやがて対立を止揚する段階を必要とする。だが現在日本社会をよりよくしていくために、緻密なステップを要求される。その政策化にはかなり議論や発展が必要とされよう。

私は厳密に社会主義よりも「民主主義」の課題に関心をもつ。過去のロシア革命やコミンテルン、国共合作など今では疑問をもつ人々も増えているだろうが、同時代的には当時の矛盾を解決する集団的主体として意義がある。さらに時代も歴史も前に進む。民主主義運動が鍵。

今の時代をとらえる上で「マルクス」。私は日本の中にマルクス同様の人物を媒介としたい。戸坂潤、野呂栄太郎、芝田進午、渡辺治、などなど。生涯を終えるまでに日本人を終えてマルクスには到達できるだろうか?!

上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている

2020-03-23 13:26:52 | 転載
日刊ゲンダイDIGITAL 政治・社会 社会ニュース 記事
注目の人 直撃インタビュー
上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている
公開日:2020/03/23 06:00 更新日:2020/03/23 09:16


医療ガバナンス研究所の上昌広理事長(C)日刊ゲンダイ

上 昌広氏(医療ガバナンス研究所理事長)
 中国・武漢市が「震源地」だった新型コロナウイルスは世界中に感染拡大し、WHO(世界保健機関)は「パンデミック」を宣言した。日本でも連日、感染者が増え、「政治決断」の名の下、安倍首相が思いつきで打ち出す対策は効果に科学的根拠が見えない。感染を判断する検査件数も依然増えず、国民の不安は募るばかりだ。そんな状況を、内科医の立場から冷静に分析し、話題を呼んでいるのがこの人。山積する問題の背景には何があるのか。


 ◇  ◇  ◇

 ――日本でも感染拡大が止まりません。政府の対策について、どう見ていますか。特に「一斉休校」は、安倍首相の思いつきと批判が多く上がっています。

 医学的にはあまり効果がありません。「学級閉鎖」にはそれなりのエビデンス(根拠)があります。学級閉鎖すると、接触者である子供たちの数が少なくなるので、伝染する機会が減るのです。しかし、今回は全国一律ですから流行していない学校まで閉鎖してしまう。すると、子供から教育を受ける権利を奪ったり、保護者の負担を増やすことになる。この「副作用」は全ての学校に出てきます。一方、効果については、校内に感染者がいなければありませんね。政治的メッセージとしては効果があったとは思いますが。

 ――イベントの自粛要請についてはどうでしょうか。

 まず、イベント自粛について効果を検証した事例が過去にありません。過去の医学論文をほぼ全て収載している米国国立医学図書館のデータベースで検索したところ、大型イベントの中止で地域の感染症が減るといった研究は見つかりませんでした。効果については「分からない」としか言いようがないです。純粋な政治的メッセージで、科学的なバックボーンはないと思います。

 ――3月5日に政府が発表した中国、韓国からの入国制限策については、WHO幹部も「政治的な争いは必要ない」と苦言を呈していました。

 この対策は、医学的なエビデンスに反します。3月に、アメリカの一流科学誌「サイエンス」で、ボストンの研究者がある論文を発表しています。1月下旬の武漢封鎖が周囲への蔓延防止に効果があったかを検証した結果、「ほとんど効果がなかった」「数日間、(感染拡大を)遅らせた程度」ということでした。封鎖した時に、既に周囲に広がっていたのです。ウイルスが蔓延している状況で、中韓をシャットアウトすることは、科学的に意味がありません。これも政治的判断なのでしょう。

 ――陽性か陰性かを見分けるための「検査」の態勢にも賛否があります。保険適用されてもなお、日本では検査件数が増えていません。

 日本では、誰でも検査を受けられるようになると、「病院がパンクする」「院内で感染が広がる」と否定的な意見が多く聞かれます。しかし、いくらでも対策は取れるはずです。

 韓国はドライブスルー式の検査を実施しました。これなら車内で検査するわけですから、感染を広げることはない。また、ネットを通じて患者さんに検体を送ってもらい、検査できる可能性があります。そもそも、現在、実施されているPCR検査に難しい技術は必要ありません。新型コロナの正体を知る上でも、検査態勢の拡充が肝要です。
日本では検査件数が増えない(新型コロナウィルスの検査をする中国・武漢市の病院) (C)Featurechina/共同通信イメージズ

検査が増えない理由は感染研が仕切っているから
 ――なぜ検査件数が増えないのでしょうか。

 厚労省の研究機関「国立感染症研究所」が検査を仕切っていることが原因だと思います。現在、感染研が検体をハンドリングして、一部を外注したりしながら取り仕切っています。感染症研究の原資は税金です。これがもし、一般診療になり、民間のクリニックと健康保険組合、検査会社の仕事になると、感染研と厚労省はタッチできなくなる。

 患者さんのデータはクリニックと患者が保有します。検査会社は研究所にデータを横流しできません。感染研は研究する上で極めて重要な臨床データを取れなくなる。ですから、感染研のキャパシティーの範囲内で、検査をハンドリングしたいということでしょう。

 ――医師の紹介があったにもかかわらず、保健所に検査を拒否されたという声も上がっています。

 あってはならないことですが、これは基本的に「積極的疫学調査」という研究事業の延長線上です。専門家会議の方々が、「こういう基準を満たした人を検査します」と決めています。治療より研究を優先させているのでしょう。専門家会議は、コロナウイルスの効率よい研究体制を念頭においているように見えます。

 ――今、専門家を中心に行われているのは「治療」ではなく「研究」であると。

 例えば、90代のおばあさんが38度の熱を出しても、専門家会議は「2日間病院に行くのを控えてくれ」と条件をつけています。一部からは「陽性が判明しても、治療法がないから検査しても意味がない」という指摘もあります。

 しかし、我々医師の考え方は全く違います。患者さんに高熱が出た場合、コロナウイルスはあくまでひとつの可能性と捉える。まずは脱水になったら点滴をします。熱を下げないと体力を失います。もちろん、インフルエンザの可能性も探ります。それから、実際に診て「大丈夫だよ」と話をして、安心してもらう。それが患者さんの立場に立つということです。

 現行のやり方はあくまで「研究」で、患者ではなくコロナウイルスだけを見ているような気がするのです。

 ――国の研究機関が患者の治療よりも新型コロナの研究を優先する現状は、社会で「人体実験」が行われているようなものではないですか。

 はい。今、行われていることは「人体実験」だと思います。患者を見ていないと思うんです。例えば、高齢者の致死率が高いことが問題視されていますけど、介護や高齢者医療の専門の人はひとりも専門家会議に入っていません。多くが公衆衛生、感染症対策の専門家なのです。

 ――恐ろしい話です。医師と研究者・専門家は全然考え方が違うのですね。

 私は「国立がん研究センター」に2001年から05年まで勤務していました。同センターはがん対策基本法で、研究の司令塔となることが規定されるほどの機関でしたが、臨床医としては違和感を持つことがままありました。部長の先生が入院を希望した患者に、「臨床研究できないから、あなたは受け入れられない」と発言しました。こういう発言が問題視されないというのは、驚きでした。ある意味、病的だと思いますね。

 ――そういった環境下で仕事をされ、どう感じましたか。

 役人が仕切っており、「非効率だな」と感じることはありました。病院長のポジションに臨床経験の全くないキャリア官僚がやってくるのですから。ほんの一部ですが、エリート意識の強すぎる人物もいました。ただ、大半はみな非常に真面目。悪意がある人もほとんどいません。長年、こういう組織の中にいるので分かるのですが、「我々が国を率いねばならない」と本気で考えているのです。

■陸軍の「伝染病研究所」を引き継ぐDNA

 ――上先生は05年から16年までは、「東京大学医科学研究所」に所属していました。同研究所も“体制側”です。辞めて今の立場になったのは、やはり専門家や研究者に対して違和感を覚えることがあったからでしょうか。

 いやいや、純粋に自分のキャリアのことで、年も重ね独立しないといけないと思ったまでです。独立したほうが動きやすいという事情もありましたので。東大医科研は国立がん研究センターほど、国べったりではありませんでした。ただ、創設者の北里柴三郎以来の長い歴史を感じることが多かったです。陸軍と密接に関係して、研究を進めてきたのです。

 戦前、「日本のCDC(米疾病対策センター)」とも言える組織は伝染病研究所です。これが現在の東大医科研と国立感染症研究所です。今回の専門家会議を仕切る人たちです。同じDNAを引き継いでいると思います。

 ――「お国のために」では、患者目線から離れていくのも当然かもしれません。

 専門家の方々は医師免許があっても普段は診療しませんから。こういう方が主導的に感染症対策を決めるのは、暴走するリスクすらあると思います。テクノクラート(科学者・技術者出身の政治家・高級官僚)が主導権を握ると、しばしば暴走して第2次世界大戦のようなことになる可能性もありますよね。専門家に対応を丸投げするのは非常に危険なことだと思います。医療現場の判断を優先すべきでしょう。

(聞き手=小幡元太/日刊ゲンダイ)

※インタビューは【動画】でもご覧いただけます。
https://youtu.be/8EUMDgeSnxA
▽かみ・まさひろ 1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。

元NHK相澤冬樹が放った渾身のスクープ。「森友」で自殺に追い込まれた財務省職員赤木の遺書がもっと早く出ていれば安倍に大打撃になったのに!

2020-03-19 22:30:17 | 転載
【転載】J-CASTニュース テレビウォッチ 元木昌彦の深読み週刊誌
2020/3/19 16:46

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相澤冬樹大阪日日新聞記者が大スクープを放った。媒体は週刊文春。タイトルは「森友自殺財務省職員 遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』」

2年前の2018年3月2日、朝日新聞が「財務省が森友の国有地取引関連の公文書を改ざんした疑いがある」と報じた。その5日後の3月7日、改ざんを命じられた近畿財務局職員・赤木俊夫(54)が自宅で首を吊って自殺した。

当時、赤木の妻に遺書とメモが残されている、そこには文書の書き換えを指示されたとあり、佐川宣寿(のぶひさ)理財局長や麻生太郎財務相の名前が書かれているといわれた。

相澤はNHKで司法を担当していて、森友学園事件を追っていた。

彼がNHKを辞めてから書いた『安倍官邸VS.NHK』(文藝春秋)によると、ある記者が赤木のメモの内容を掴んできた。そこには、改ざんは財務局が勝手にしたのではなく、本省からの指示があったこと。佐川(前理財局長)の指示で書き換えたこと。決裁文書の調書の内容について、上から、詳しく書きすぎているといわれ書き直しをさせられた。このままでは私一人の責任にされてしまう、などと書かれていたというのである。

早速、遺族取材を始め、赤木の父親、妻にあたるが、一切の取材を拒否されてしまう。「こうしてご遺族の取材は頓挫した」(同書より)のである。

「これ、見たいですよね」安倍と近い小池NHK報道局長に疎んじられ、記者職を外された相澤に赤木の妻から近づいた
森友学園取材を続ける相澤は、安倍官邸と近い小池英夫報道局長に疎んじられ、記者職から外されてしまう。

相澤は、「森友事件は私の人生を変えた」と思い定め、この事件の深層を追うためにNHKを辞めて大阪日日新聞へと移るのだ。

相澤とは2019年の2月に会って話を聞いている。

彼は「森友事件は森友学園の事件ではない、国と大阪府の事件だ」といった。

自殺した財務省職員については、「改ざんはなぜ行われたのか、どんなふうに行われたのか、亡くなった方はどうしてあそこまで追い込まれたのか。そういうことを解明して、彼の無念を晴らしてあげたい」といったが、この事件の闇は深いから解明には時間がかかる、「正直、一生かけてやっても、結局、最後の最後の本当のところは分からなくて、死ぬ間際に真相解明できませんでしたと言って死んでいくかもしれませんけれど、そのぐらい一生かけてやっていきますよという覚悟」でやるといい切った。

それがこのスクープに結実したのである。

週刊文春の相澤の手記によると、森友学園事件を追って上司とぶつかり、NHKを辞めたことを知った赤木の妻のほうから「会いたい」と連絡があったという。

赤木が亡くなってから半年余りが経った11月27日に、大阪・梅田の喫茶店で会った。彼女は、「これ、見たいですよね」といいながら、パソコンの中にあった夫の手記を手渡したそうだ。

内容の重大性はよくわかったが、コピーもメモも写真も断られたという。後に彼女が相澤にこういったそうだ。

この手記を相澤に渡して、そのまま自分も夫の後を追うつもりだった。だが、相澤の興奮する姿を見て、手記を渡すのも死ぬのもやめたそうである。

今年の3月7日に赤木俊夫の三回忌を迎えたが、その間、財務省は彼女に対して、誠意のない態度をとり続けてきたという。

そうしたことで、彼女の気持ちにも変化が出て、手記を公開することを決意し、それと同時に、3月18日、夫・俊夫が自殺したのは、「公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした」(朝日新聞3月19日付)のである。

「森友問題 佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰もいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止符」

これは赤木が死の直前に書き遺したものである。「手がふるえる」という箇所に下線が引いてあるそうだ。

手記では、2018年2月から7月まで、「これまで経験したことがない異例な事案を担当し」て、強度のストレスが蓄積して7月から病気休暇を取るに至ったことや、森友学園への国有地売却問題で、財務省が国会等で虚偽答弁を貫いていることが、この事案を長期化・複雑化させていると指摘している。

さらに「佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、杉田補佐が過剰に修正箇所を決め、杉田氏の修正した文書を近畿局で差し替えました」。「3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり現場としてはこれに相当抵抗しました」が、本省から来た出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ」と調書の修正を悪いこととは思わず、あっけらかんと修正作業を行ったというのである。

赤木は「大阪地検特捜部はこの事実関係を全て知っています」と書いている。だが、大阪地検は全てを知りながら、全員不起訴にした。

赤木の心の支えは、7月の人事異動で担当部署が変わることだったが、他の職員も上司も全員異動させられたのに、赤木だけが同じ職場に残されてしまったのだ。



赤木の遺書には「なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止符」と書かれていた
この当時、赤木は、自分も罪に問われる、検察に狙われていると怯えていたという。

家で療養している赤木に、久保田検事から電話がかかってくる。

「ぼくは職場に復帰したら検察に呼ばれる。検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。(中略)ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」

普通の生活を送ってきた公務員なら、検察の事情聴取と聞いただけで怖れ、震えるのは当然のことであろう。

財務省が全ての責任を負うべきなのに、最後は逃げて近畿財務局の責任にする。「怖い無責任な組織です」(赤木)

手記の最後に、「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」の筆頭に、佐川理財局長の名前を書いている。だが、「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することが出来ません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(五十五歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)」、最後に「気が狂うほどの怖さと、辛さ こんな人生って何?」という言葉と「さようなら」で結ばれている。

この手記を読んだ人間の何人かは、彼は弱い人間だ、何も死ななくてもいいのに、と思うかもしれない。私も読みながら、そう感じたことは事実である。

だが、赤木俊夫という人間は、巨大な財務省という組織と闘うためには、死をもって告発するしかないと考えたのであろう。赤木の妻には失礼ないい方になるが、夫の死の直後に、これを公表していれば、安倍政権と財務省に大きな打撃を与えられたはずである。

もちろん、今回のスクープを、コロナ騒動でうやむやにしてはならないこと、いうまでもない。森友事件も加計学園問題も、安倍首相と妻の昭恵の関与は明らかだと思うが、メディアは彼らを追い詰められていない。

朝日と東京は一面トップ。読売は第二社会面に小さく載せただけ。読売はメディアとして恥ずかしくはないのか
赤木の遺言を無にせず、第2、第3の相澤記者が出て来こなくては、彼も浮かばれまい。

今朝の朝日新聞と東京新聞は一面トップでこれを報じていたが、読売新聞は第二社会面に小さく載せただけである。読売新聞はメディアとして恥ずかしくはないのだろうか。

恥ずかしいといえば、今日発売の週刊現代を、迷った末に買うのをやめたのも、現代OBとして恥ずかしく感じたからである。今週の週刊文春を見て、週刊現代の編集部員たちは何も感じないのだろうか。時代と切り結べとまではいわないが、巻頭が「人生は最後に間違える」というヒマネタ特集では、週刊と名乗るのをやめるべきではないか。

コロナ関連はやってはいるが、「医者がためらいながらも出している薬」「偏差値70の有名私大ミスコン優勝者 初のAV現場」「涙は心の汗だ 僕らは青春ドラマで大きくなった」という特集を、部員たちは喜々としてやっているのだろうか。520円も出して買う読者がどれほどいるのだろう。

今度こういう企画をやったらいい。「520円で買えるモノ大特集」。牛丼ならお釣りがくる。安い居酒屋なら、日本酒が2合と少し飲める。平野啓一郎の『マチネの終わりに』(文春文庫)はKindle版だと468円だ。いかに520円が"理不尽"な値段か、考えたほうがいい。

ところで、新型コロナウイルスの感染拡大は衰えを見せず、安倍首相の最後の悲願である東京オリンピック・パラリンピックも、開催、中止、延期で揺れている。

週刊新潮は「五輪は消滅」とタイトルを打ち、IOCのバッハ会長やトランプ大統領の、「世界保健機関(WHO)の助言に従う」、「無観客で開催するよりも1年延長する方が良い選択肢だ」という発言で、「中止・延期」が現実味を帯びてきたと報じている。

東京五輪の2年延期に動く高橋治之・組織委理事の狙いは古巣・電通の利権を損なわないことだ
そこに、東京オリンピック招致に"尽力"した元電通で大会組織員会理事の高橋治之も、「1~2年延期するのが最も現実的」といい出した。

国士舘大学の鈴木知幸客員教授は、高橋の本音は2年延期だと見ている。それは「来年8月にアメリカで開催される世界陸上は電通が放映権を握っているから、そことバッティングさせるわけにはいかない」というのだ。

再来年はカタールでサッカーW杯があるが、時期も11月から12月、W杯に出場する選手とは年齢層もかぶらない。

それにその年には、北京で冬季オリンピックも開催されるから、「アジアが一丸となる」と謳うこともできる。

私も延期論に傾いている。問題は選手だけではなく東京・晴海につくる選手村は、大会後に増改築して23棟のマンション、計約5600戸を売り出す予定だ。

既に販売済みの物件もあり、予定通りに引き渡しができないと、「補償問題に発展する可能性もあります」(スポーツ紙記者)

バカでかい新国立競技場も、ハコはできても、入れるものがないのでは、宝の持ち腐れである。

これを機に、IOCの利権まみれになってしまった五輪そのもののあり方、運営の仕方について、世界の首脳たちが話し合う場を設けて、侃々諤々、とことんやりあったらいい。(文中敬称略)

#相澤冬樹
#財務省
#週刊文春

元木 昌彦(もとき・まさひこ)

ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

#とことん共産党opinion「徹底討論 赤旗日曜版はどうして『桜を見る会』疑惑をスクープできたのか」

2020-03-18 22:30:21 | 言論と政治
2020年3月18日

ゲストの上西充子さん著書に、『国会を見よう』『呪いの言葉の解きかた』の名前があがった。

政府「働き方改革」の詭弁を、上西充子さんは「ご飯論法」という発想で切り返す斬新な提起をなさった。ことばのマジックを大江健三郎、芝田進午はそれぞれ打破。芝田氏は「核兵器」→「人類絶滅装置大系」、「昭和20年」→「核時代元年」と表現している。

世耕弘成参議院議員は小泉自民党政権の総選挙後「論座」2005年11月号で、広報戦略について「セオリーどおり」だったと自慢げに明らかにし、『プロフェッショナル広報戦略』(ゴマブックス2005年)に執筆。【9条の会小森陽一氏『心脳コントロール社会』ちくま新書2006年】

政府「働き方改革」の詭弁を、上西充子さんは「ご飯論法」という発想で切り返す斬新な提起をなさった。ことばのマジックを大江健三郎、芝田進午はそれぞれ打破。芝田氏は「核兵器」→「人類絶滅装置大系」、「昭和20年」→「核時代元年」と表現している。

【赤旗日曜版はどうして『桜を見る会』疑惑をスクープできたのか】についてしんぶん赤旗日曜版編集長と日曜版デスクがいきいきと具体像をあきらかにした。上西教授と山本編集長が、いっそうテーマに迫る対話を交わす。小池晃書記局長・朝岡晶子さんが話を深めるよう支援する。

上西充子さんの「記者を批判するだけでなく、支援して支えていくことが大事」という発言は大事と思う。批判と支援。しんぶん赤旗以外の他党派、市民、個人1人ひとりを批判も内在しつつ温かく見守る姿勢が、北風と太陽の寓話のように世間を動かすと感じました。


スタンス~国民統一戦線~ 櫻井智志

2020-03-17 19:10:58 | 政治・文化・社会評論
Ⅰ:
社民党が、緊急事態法に「与野党の別なく」賛同に加わったのは反対である。だが沖縄県で多くの県民に支持され、オール沖縄の有力な政党として健闘していること、福島みずほ党首が平和と護憲の理論派として言行一致の政治家であることを応援したい。私は日本共産党を選挙で支持し続けている。


Ⅱ:
ただベースは #国民統一戦線 の理念である。3層からなる。1:護憲リベラルを軸とする野党の結集グループ。2:日本共産党と共闘するれいわ新選組、緑の党、新社会党。3:保守本流と護憲保守のグループ。この3つが重層的に統一戦線を結成し、反安倍反極右政権に闘う。一気に実現できずとも持続。


Ⅲ:
当面は、政権構想で抗争せず。新型コロナパニックの政治で、個人の人権と国民主権の民主主義の立場から、専制管理主義を強権発動する安倍政権に、第二次大政翼賛会に巻き込まれぬ声を拾い集めていきたい。#地方自治体首長選や衆参一人区では平和人権護憲派を議員選では日本共産党を主に応援したい。

【新聞うずみ火 】2020年3月号(NO.173)

2020-03-15 16:14:20 | 転載
2020年3月号(NO.173)
1面~5面
「元徴用工」原告女性の訴え 戦後も偏見の苦しみ(矢野宏、栗原佳子)
日韓対立は改善の兆しが見られない。一昨年10月の元徴用工判決が発端となり、日本政府は輸出管理を強化し優遇対象国から韓国を除外、韓国は日韓軍事情報包括保護協定(Gsomia)の破棄を決定した。失効は回避されたが、韓国内にある日本企業の資産は差し押さえられ、日韓関係は国交正常化以降、最悪ともいわれている。そもそも原告たちは何を訴えてきたのか、彼らを支える市民運動家はどんな解決策を描いているのか。韓国へ行き、話を聞いた。

ソウル中心部から地下鉄で40分。漢江を越えた終点の馬川(マチョン)駅近くに、機械メーカー「不二越」に損害賠償を求めた訴訟の原告、金正珠(キム・ジョンジュ)さん(88)が暮らすアパートがある。
迎え入れてくれた金さんは身長145㌢と小柄だ。部屋は片付けられ、居間の壁にキリストの肖像画がある。食卓の上には山のように薬袋があった。
「私はまもなく90歳。残っている時間はもうない。今日死ぬか、明日死ぬか」
神経症を患っているといい、手渡した名刺を持つ手が小刻みに震えている。
元徴用工判決をめぐる安倍政権の主張に対する感想を求めると、金さんの口調が激しくなった。
「安倍(首相)に話がしたい。解決済みだというが、私たちが強制労働を体験したことを知っているのか」「私は不二越で働かされ、賃金も受け取っていない。補償を求めているのは不二越。なぜ、口をはさむのか」
立命館大大学院に留学中の金眞煕(キム・ジニ)さん(25)が同時通訳をしてくれているが、あふれんばかりの怒りを受け止めかねている。

6面~7面
元ソウル特派員が見た日韓関係 救済されない元徴用工(矢野宏)
2月の「うずみ火講座」が7日、大阪市此花区のクレオ大阪西で開講し、朝日新聞記者の武田肇さんが「元ソウル特派員が見た日韓関係の現在地」と題して講演した。武田さんは2017年3月下旬から今年1月9日までの2年9カ月、朝日新聞ソウル支局に勤務した。激動の朝鮮半島情勢、国交正常化以来最悪と言われる日韓関係について語った。

武田さんは「特派員には、任地の政府や国民が何を考えているのか、なぜそう考えるのか、相手を知る姿勢が何より求められます。日本と任地国との関係が悪い場合は、なおのこと。相手の姿を客観的に知り、議論のたたき台として伝えることが、回りまわって日本の読者の利益になると考えています」と切り出し、特派員時代を写真とともに振り返った。
武田さんが最初に書いた記事は「朴槿恵(パク・クネ)大統領逮捕でした」。のべ1600万人もの市民が退陣を求めた「ロウソク革命」を背景に、朴前大統領は韓国史上初めて弾劾・罷免され、17年3月31日に財閥のサムスンからの巨額収賄容疑などで逮捕された。
「朴前大統領は2審で懲役25年・罰金200億ウォンの実刑判決を言い渡されましたが、大法院がその判決を破棄。『賄賂の認定の幅が狭すぎる』として高裁に審理を差し戻したため、もっと重い刑が下されると思います」
大統領選が始まり、進歩系の元弁護士、文在寅(ムン・ジェイン)氏が同年5月10日、大統領に就任。「就任1カ月後の支持率は78・9%あり、韓国の多くの人たちが新しい政治が始まると期待していました」


8面~9面
奄美大島・陸自配備間もなく1年 生活圏に入り込む「基地」(栗原佳子)
豊かな自然に恵まれ、「東洋のガラパゴス」とも称される鹿児島県の奄美大島。世界自然遺産候補地のこの島に昨年3月26日、陸上自衛隊の基地が開設された。奄美市名瀬大熊の奄美駐屯地と、瀬戸内町節子の瀬戸内分屯地の2カ所である。それからまもなく1年。島にいま何が起きているのか。

広々とした敷地に真新しい建物が立ち並ぶ。外壁は独特の緑色。陸上自衛隊奄美駐屯地だ。2月半ばの午後、市民団体「戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット」代表の城村典文さんらの申し入れ行動に同行した。駐屯地の警備部隊が実施した行軍訓練への抗議だった。
「1、今後、徒歩訓練は駐屯地内で行うこと 2、世界自然遺産候補地で希少生物の棲息する森を軍靴で踏み荒らさないこと」。正門前で城村さんが要望書を読み上げる。迷彩服の隊員が、神妙な顔つきで書面を受け取った。
問題の「行軍」は1月24日、金曜日の午前中に行われた。奄美市に隣接する龍郷町の集落を起点に海沿いの県道からから山間の林道を経て駐屯地に戻るという30㌔、約10時間のルート。迷彩服にヘルメット、背のう。そして弾の入っていない小銃を手に、100人の隊員が隊列を組んで行軍した。有事に備え、道路や地形を把握することが目的で、同部隊が敷地外で訓練をするのは初めてだった。
奄美大島は駐屯地開設前から毎年、陸自西部方面隊の実動演習「鎮西」の舞台になってきた。14年には大島海峡に浮かぶ江仁屋離島で離島奪還を想定した陸海空の統合訓練が行われた。一昨年の「鎮西」では、観光地の真横でミサイル部隊が物々しい展開訓練。駐屯が始まれば、様々な訓練が生活圏を脅かすのは必至と懸念されていた。


10面~11面
有本嘉代子さん死去 拉致実行犯に見せた慈悲(粟野仁雄)
北朝鮮に拉致された有本恵子さん(60)の母、嘉代子さんが2月3日、神戸市の病院で亡くなった。享年94。愛娘との再会は果たせなかった。

恵子さんの拉致事件は、新潟県の海岸で暴力的に拉致された横田めぐみさんや蓮池薫・祐木子夫妻などと違う。推理小説をも思わせる欧州を舞台にした誘拐だった。英国へ1年間留学した恵子さんは1983年6月、欧州に残りたくて仕事を得ようと画策する。そんな折、八尾恵が接触してきた。八尾は70年に赤軍派が起こした「よど号事件」で北朝鮮に残ったハイジャック犯の妻だった。
「市場リサーチの仕事がある。いろんな外国に行けるよ」と恵子さんに持ち掛けた。ホームステイ先の英国人夫妻は「そんなうまい話があるはずない」と忠告したが、彼女を信用した恵子さんは帰国便をキャンセルしてしまう。恵子さんをコペンハーゲン空港に送った八尾は姿を消し、恵子さんの消息は絶えた。
両親には帰国便を知らせてきたが、8月の予定だった伊丹空港への帰国便に乗っていなかった。不安になる中「仕事が見つかる。帰国遅れる。恵子」の電報が届く。10月には日付もない手紙がデンマークから送られてきた。これが最後の音信だった。
夫婦は懸命に消息を求めたが外務省は「旅券が切れても帰らない若者は多いですよ。向こうで好きな男でもできたのでしょう」。警察では身体の特徴を詳しく問われた。「海外での死亡者確認とわかり建物を飛び出しました」と嘉代子さんは振り返った。その頃「うちの娘も留学しましたが、ちゃんと帰ってきましたよ。どうせ遊んでるんでしょ」などと無神経な電話までかかってきた。
88年9月、札幌市の石岡という女性から手紙が届く。「お宅のお嬢さんと息子がピョンヤンで暮らしているらしい」との内容だ。欧州で不明になった石岡亨さんと結婚して平壌で暮らしているというのだ。北朝鮮の監視下、密かにポーランド人に母への手紙を託したようだ。
「えっ、北朝鮮」。困惑しながらも有本夫婦は必死に尋ね回る。しかし、外務省は「外交関係がないからどうしようもない」。政治家も取り合ってくれない。「手紙を公表しないよう求めてくる社会党系などの関係者もいました」と嘉代子さん。
だが、朝日放送の石高健次記者、産経新聞の阿部雅美記者らの報道で拉致が浮かび上がる。97年に横田滋・早紀江夫妻ら拉致被害の7家族で「家族会」が結成される。有本夫妻は署名簿をぶら下げ、街頭に立った。「週刊文春」は何度も欧州に足を運び、恵子さん拉致事件のルポを連載した。


12面~13面
ヤマケンのどないなっとんねん 新型肺炎こじつけ改憲論
新型コロナウイルス肺炎に対する日本政府の初動対応は完全に失敗した。1月初頭に中国で感染が報道され、ただごとではないことが読み取れたにもかかわらず、安倍首相ら政権中枢は正月気分のまま対岸の火事と見て、対応しようとしなかったからである。
感染者が日本国内で初めて確認されたのは1月15日であったが、武漢滞在歴のある神奈川県在住の中国人男性だったこともあってか、安倍首相はその夜、麻布十番の日本料理店「幸村」で俳優の奥田瑛二、中井貴一氏らと会食し、翌17日の夜も、平河町の日本料理店「下関春帆楼東京店」でジャーナリストの櫻井よしこ氏らと会食していた。
20日には通常国会が始まり、中国での感染は日を追うにつれて増え、何人もの死者が出ていることが伝わって、ようやく21日に新型コロナウイルス関連感染症対策関係閣僚会議を開催したものの、緊迫感はなく、23日夜はホテルオークラ内の鉄板焼き店「さざんか」で、自民党二階幹事長、森山国対委員長、稲田朋美幹事長代行らと会食していた。
この日、中国政府は武漢封鎖を始め、翌24日から始まる春節(旧正月)の旅行を禁止する措置を取り、日本ではホテルなどのキャンセルが相次いで大騒動になっていたのだから、もっと緊張感を持っていいはずであったが、24日に関係閣僚会議を開催したものの、この夜も銀座の日本料理店「新ばし松山」で橋本五輪担当相、世耕自民党参院幹事長らと会食していた。


14面~15面
ゴジラと憲法 政治が主役シンゴジラ(高橋宏)
前回、1984年に公開された第16作『ゴジラ』で、総理の三田村清輝が主役とも言える重要な役割を演じたことに触れた。実は、昭和・平成・ミレニアムと続いたゴジラ映画シリーズにおいて、しばしば政治家が登場したものの、主役級の役割を演じることはほとんどなかった。しかし、2016年に公開された『シン・ゴジラ』は、内閣官房副長官の矢口蘭堂(長谷川博己)が主役で、登場人物のほとんどが政治家、官僚、そして自衛隊となっているのだ。
『シン・ゴジラ』のキャッチコピーは「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」で、文字通り架空の怪獣であるゴジラ以外は、組織や兵器、国際関係など全て実在のもので構成されている。ゴジラとの闘いで自衛隊のリアルな活動が中心に描かれているため、自衛隊礼賛ではないかとの批判もあった。実際に、映画公開時に自衛隊員募集のポスターにゴジラが使われていた。
製作にあたっての取材協力には、自衛隊はもちろん、加藤健二郎、青木理、石井暁らジャーナリスト、小池百合子、枝野幸男、上野賢一郎という現職の政治家も名前を連ねている。したがって、ゴジラ出現の危機に際した政府対応や官僚の動き、自衛隊の作戦行動などは、日本の現実を忠実に再現していると言える。特に危機管理という点では、自衛隊の運用をはじめとして、仮にゴジラが出現したとしたら、このような対応になるであろうというシミュレーションにもなっていて興味深い。


16面
検事長の定年延長問題の背景「検察人事に禁じ手」(矢野宏)
黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年延長を決めた閣議決定に対し、疑念が広がっている。不可解な検察人事はなぜ行われたのか、背景には何があるのか。時事通信解説委員の山田恵資さんは「官邸、特に菅官房長官の意向による法務官僚人事への介入」と指摘する。

検察官は法律に違反した犯罪や事件を調べ、容疑者を裁判にかけるかどうか判断する「法の番人」。独立性を保たねばならないため一般の国家公務員より手厚い身分保障が与えられ、定年も検察庁法で「検事総長は年齢が65年、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」と定められている。
黒川氏は誕生日前日の2月7日に退官予定だったが、安倍政権は1月31日、定年延長の規定がある国家公務員法に基づき、半年延長を閣議決定した。黒川氏の任期は8月7日までとなる。
1981年の国会で定年制を盛り込んだ国家公務員改正案が審議された際、人事院は「検察官に今回の定年制は適用されない」と答弁。検事長の定年延長は前例がない。 
今国会で「恣意的な人事介入だ」という野党の追及に対し、安倍首相は13日の衆院本会議で「規定が適用されると解釈することとした」と答弁。内閣の一存で立法時の解釈を変更できると明言したのだ。
定年延長の背景について、山田さんは「稲田伸夫検事総長の後任は黒川氏ではなく、7月30日で63歳になる同期で名古屋高検の林真琴検事長を就任させる案が有力でしたが、官邸サイドが黒川氏を次期検事総長に就任させる布石を打った。稲田検事総長は8月、慣例に従って2年の任期で退任すれば、黒川氏が後任に就く可能性が高い」と説明する。
黒川氏は法務省の官房長や事務次官を務め、安倍政権に近いと言われている。
「黒川氏は清濁あわせのむタイプです。官房長時代から国会議員の根回しに奔走し、菅官房長官とのパイプも太くなった。一方で林氏は対照的な質実剛健タイプで検察のエースと目された人です」


17面
プリズンサークル坂上監督に聞く「暴力の連鎖止めるため」(矢野宏)
取材許可まで6年、撮影2年ーー。島根県にある刑務所に初めてカメラが入り、対話を重ねて罪と向き合う更生プログラムに取り組む受刑者たちの姿を追ったドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」が注目を集めている。どんなプログラムなのか、罪を犯す背景には何があるのか、監督の坂上香さんに映画に込めた思いを聞いた。

18面
安保法違憲訴訟大阪 原告敗訴、憲法判断避ける(矢野宏)
「司法は憲法擁護義務を果たせ」と書かれたプラカードを掲げ、大阪地裁前で抗議の声が響いた。「不当判決を許さないぞ」「戦争法は憲法違反、無効だ」ーー。集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法違反だとして大阪在住の戦争体験者ら992人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(三輪方大裁判長)は1月28日、請求を退けた。

大阪地裁に提起された主な裁判は二つ。安保保障関連法に基づく自衛隊への出動命令などを差し止める行政訴訟と、「戦争ができる法を施行したことで国民が平和に生きる権利(平和的生存権)や人格権が侵害されて精神的苦痛を受けた」として1人当たり1万円の慰謝料を求めた国家賠償訴訟。
午後3時、2201号法廷は満席。三輪裁判長は自衛隊の出動差し止めの訴えに対し、「自衛隊派遣を差し止めるような事態が起きていない中での請求は、内容を判断するまでもない。行政訴訟の対象となる『公権力の行使』に当たらない」などとして不適法と判断、却下した。
平和的生存権の侵害について、三輪裁判長は「平和とは抽象的な概念で、個人の思想や信条で多様な捉え方が可能」と指摘。「平和的生存権は国民に保障された具体的な権利とはいえない」などと切り捨てた。
また、人格権の侵害に対しては、原告側に「不安と憂慮があるのは認めるが」と配慮
を示しながらも、「(安保保障関連法が施行されて)4年たっても武力攻撃の危険性はない。不安や苦痛については具体的な侵害ではなく、受忍限度の範囲内のものであり、法律上保護されるにはいたらない」などと述べ、国家賠償請求を棄却した。


19面
読者近況(矢野宏)
梶谷和恵さん初詩集

【島根】出雲市の梶谷和恵さんが初の詩集『朝やけ』を刊行した。小学生の頃から書きためてきた37篇を収録。「これまで、たくさんの人との出会いの中で完成させることができました。感謝の思いでいっぱいです」と話す。
詩集は四つの章で構成され、3章の「車窓の夕暮れ」では家族を描いている。ほのぼのとした詩が多い中で、「ほんとうのこと」は「私のおじいちゃんは人を殺しました」という衝撃的な一文で始まる。「長い、固い、重い銃を人に向けて引き金をひきました。いくつかの命の最後を、おじいちゃんが 決めました。……好きだから。よけい怖いです。戦争をした人がもっといやな人なら、良かった」
大好きな祖父を殺人者にした国家の戦争犯罪の恐ろしさを静かな怒りとともに紹介している。

20面
経済ニュースの裏側「アメリカの財政」(羽世田鉱四郎)
「米主導の国際秩序 自ら破壊/同盟国へ、カネ、カネ、カネ」。1月22日付の朝日新聞の見出しです。米国の「双子の赤字」が背景にあると推察されるでしょう。双子の赤字とは、財政赤字と貿易赤字のこと。では、現在の水準と、今後の動向や構造的な要因を探ってみます。

2019会計年度(18年10月~19年9月)は9840億㌦の赤字(約107兆円。1㌦108円換算)と7年ぶりの悪化。歳出は、国防費の増大などで8%増。財政赤字は前年比26%増です。歳入は低迷し、半分を占める個人所得税は約2%増と、消費の低迷を物語っています。
もう一つの大きな要因は大型減税。17年末に、向こう10年間で1・5兆㌦(162兆円)を決定。経済界に配慮し、連邦法人税率は35%から21%とし、実効税率が27・98%(地方法人税率等を含め)になりました。減税の幅は、対GDP(国内総生産)比で1・18。レーガン時代の1・91に次ぐ大幅水準で、18年度は1357億㌦(14兆6千億円)、19年度は2800億㌦(30兆円)となり、その結果、20年度の財政赤字はさらに膨らみ、「赤字1兆㌦」が見込まれています。CBO(米議会予算局)の予想では、20年度から1兆㌦の赤字が定着し、28年度には5割増しの1兆4787億㌦(160兆円)に拡大すると見込んでいます。


21面
会えてよかった 屋宜光徳さん「戦争の時代に育つ」(上田康平)
屋宜さんは久米三十六姓の中の鄭
氏の末裔。三十六姓は、13922年、
明国の洪武帝から琉球王国に下賜さ
れた職能集団で、交易や通訳、王国
の歴史の編集などを指導した。
久米出身で初の三仕官になった謝
名親方(じゃなうぇーかた)は16年、薩摩の琉球併合に反対して今年は子年。ネズミの出てくる噺をと探していたら、なんとネコの噺の多いこと。それでも幾つかあるネズミの噺の中から、ずばり「ねずみ」というお噺を。

左甚五郎が奥州を旅していると、小さな子供がうちに泊まってくれと袖を引く。ちっぽけな宿屋で、甚五郎から預かった20文で客用の布団を借りてくるという貧乏ぶり。聞くと、元は向かいの虎屋という大きな旅館の主だった父親が腰が抜けて動けなくなったのをいいことに、番頭に乗っ取られたのだと。親子は生駒屋の世話になっていたが、心苦しいので生駒屋の物置を借りて、鼠屋という宿屋を始めた。甚五郎は一匹のネズミを彫り、盥に入れ、上から竹網をかぶせ、福鼠と名付け、「このネズミをご覧になった方は鼠屋にお泊りのほどを」と書き添えた。ネズミが動くと大評判になり、鼠屋は大繁盛。…処刑された人である。
久米村(くにんだ)、今の那覇市
久米から読谷に来たのは祖父の代で、
明治政府が武力で琉球を併合した琉
球処分、廃藩置県が行われたとき。
開墾すれば自分の土地になるとの
ことでやって来た。以来、農業に従
事。その土地は読谷の親志。国道58
号線の東側で現在も米軍用地に接収
されていて、入ることはできない。
 屋宜さんが生まれたのは1932
年、日本の15年戦争が始まった翌年
である。
10歳のとき、父が大阪での出稼ぎ
から帰ってくるまで、「祖父から帝
王学を受けた」とのこと。久米三十
六姓の末裔だからと思
い、「三線、空手も」
とお聞きするとうなず
かれた。12歳まで親志
で育ち、読谷小学校に
6年まで通った。
 読谷飛行場の
滑走路づくりに
41年に太平洋戦争が
始まり、43年、小学校
5年のとき、屋宜さん
も読谷飛行場の滑走路づくりに動員
された。石のローラーを3人で引っ
ぱる作業だった。
22面
落語でラララ「桂福車」(さとう裕)
今年は子年。ネズミの出てくる噺をと探していたら、なんとネコの噺の多いこと。それでも幾つかあるネズミの噺の中から、ずばり「ねずみ」というお噺を。
左甚五郎が奥州を旅していると、小さな子供がうちに泊まってくれと袖を引く。ちっぽけな宿屋で、甚五郎から預かった20文で客用の布団を借りてくるという貧乏ぶり。聞くと、元は向かいの虎屋という大きな旅館の主だった父親が腰が抜けて動けなくなったのをいいことに、番頭に乗っ取られたのだと。親子は生駒屋の世話になっていたが、心苦しいので生駒屋の物置を借りて、鼠屋という宿屋を始めた。甚五郎は一匹のネズミを彫り、盥に入れ、上から竹網をかぶせ、福鼠と名付け、「このネズミをご覧になった方は鼠屋にお泊りのほどを」と書き添えた。ネズミが動くと大評判になり、鼠屋は大繁盛。裏の空き地に建て増しをして大きな宿屋に。一方、虎屋は乗っ取り話が広まって閑古鳥。困った虎屋は大きなトラを彫ってもらい、ネズミを見下ろす屋根に上げた。と、ネズミはぴたりと動かなくなった。
鼠屋の主人は立腹して、「チクショウ!」と言った途端に腰が立った。そこで、甚五郎に「あたしの腰が立ちました。ネズミの腰が抜けました」と手紙を書いた。 心配した甚五郎がやって来て、ネズミに「おれはお前を彫る時、魂を打ち込んで彫り上げたつもりだが、…

23面
100年の歌びと「真夏の果実」(三谷俊之)
マイナス100度の太陽みたいに/身体を湿らす恋をして

桑田佳祐のサザンオールスターズが『勝手にシンドバッド』(1978年)でデビュー以来40年を超えて発してきたおびただしい楽曲は、私たちの耳朶深くに残る。桑田が偏愛する戦後歌謡から洋楽ナンバーまで。あるいはパロディめいた曲から、オリジナルの名曲まで幅広い多様な広がりを持っている。サザンのことを「日本に初めて現れたポップバンドだと思う」と評したのは村上龍だった。彼が定義するポップとはなにか?
「そもそも、強くてきれいで金持のアメリカの大衆が求め、作り出したものだ。移民たちがヨーロッパの伝統芸術に反逆して、作り出したものだ。ジャズ、ブロードウェイミュージカル、ポップアート、ロックンロール、そしてハリウッドの映画。僕は、ルイ・アームストロングから『スター・ウォーズ』まで、アンディ・ウォーホルを含めて、みんなポップスと呼びたい」(『無敵のサザンオールスターズ』より)。
どうして今まで日本にポップスがなかったのか?村上龍がいう。「貧乏だったからだ。あしたの米がない、ひえを食いつくした。娘を身売りしなければ……という百姓は、『ラブ・ミー・テンダー』や『ア・ディ・イン・ザ・ライフ』を絶対に聞けないし、聞こうとしないだろう(略)ポップスは、人間の苦悩とか思想よりも、つまり『生きる目的は?』とか『私は誰?ここはどこ?』よりも、大切な感覚について表現されるものだ。だからポップスは強い。ポップスは売れる。すべての表現はポップスとなっていくだろう」(同上)
サザンに関して語りたいことは多いが、…

24面
坂崎優子がつぶやく「ご存じですか「信用スコア」
大学でネット分野の講義を担当して6年になります。今年度は日本でも動き出した信用スコアを取り上げました。最も影響を受ける若い世代にこそ、この事業について知り、考えてほしかったのです。
信用スコアとは個人のデータをスコア化し、点数に合った特典を提供するものです。米国の金融スコアから始まり、中国では「ジーマ信用」など、スマホアプリの利用データを使った信用スコアが広まっています。
米国で有名なのが「FICOスコア」です。返済履歴や借入残高、クレジットヒストリーの長さなどがスコアに反映されます。日本でもお金を借りる時やクレジットカードを持つ時に審査が行われますが、知らされるのは結果だけで、開示請求をしない限り自分の信用情報はわかりません。
一方、信用スコアは点数が本人に知らされ、自分にどのくらいの信用度があるかがわかるのが特徴です。「FICOスコア」は各種ローン金利や賃貸契約の入居審査、就職にまで利用されています。
ただクレジット履歴がない人はスコアを作ることができません。スコアがないと不当に高い金利でしかお金を借りることができなくなるため、米国の金融スコアは格差を広げる要因になりました。
そこで「FICOスコアXD」という下部スコアが新たに作られます。公共料金や携帯電話の支払い履歴、持ち家状況など、クレジット情報以外のデータを使ってスコアを算出。「FICOスコアXD」で高いスコアとなった人の中には、本来の「FICOスコア」を求めて、新たにクレジットカードを作った人も多いといいます。
日本では昨年から「ヤフースコア」「LINEスコア」「メルカリスコア」など10社以上がこの事業に参入。「〇〇ペイ」のキャッシュレス事業は、買い物情報を収集し、スコアに利用する目的もあることがわかります。「ヤフースコア」は当初、本人の意思確認をせず勝手に作る仕様で炎上しましたが、今はどのスコアも本人の同意があって初めて作られます。
日本のサービスは総合型スコア(本来の信用スコア)と特化型スコアとにわかれます。前者は金融系スコアで、後者はレストラン予約など一つのサービスに特化したスコアです。
総合型スコアで先行しているのが、ソフトバンクとみずほ銀行の合弁会社「ジェイスコア」が行っている個人向け融資サービス「AIスコア・レンディング」です。150の質問に対する回答に連携先から得た情報を加えて、AIスコアが算出されます。そして600点を超えた20歳~70歳未満の人にだけ本審査が行われ、融資金利が決まります。事業が始まって3年。新しい顧客の掘り起こしに成功したとも報じられています。
信用スコア事業が増えてきたのは多くの個人データが各社に蓄積されてきたこともありますが、社会の変化も影響しています。日本型雇用が崩れ、これまでのような尺度で信用度合がはかれなくなってきたからです。新しい尺度の開発が個人データを使って動き出したわけですが、危うさもはらんでいます。続きは次回。

25面~29面
読者からのお手紙&メール(文責・矢野宏)
頼みもしないのに
「感動与える」とは

大阪市淀川区 小泉雄一
2月2日付の朝日新聞で、「『音楽の力』は恥ずべき言葉」という見出しとともにミュージシャンの坂本龍一さんへのインタビュー記事が紹介されていた。
災害が多発するこの国で、被災者と被災した地域へのボランティア活動としての支援が定着した。その行為を「絆」と称して、人民の力を結集するための雰囲気作りに利用されている。坂本さんは音楽には「癒す力がある」ことを認めながら、「音楽を政治のプロパガンダに利用され、暗黒の力に戒めが必要」と主張している。子供の時から好きだったから一人でピアノを弾いていた、それを一緒に聞いてくれて楽しんでくれるだけでいい。音楽は多くの人が癒しの力を感じなければならないものではない。感動するかしないかは個人の勝手で音楽を作る側の力ではなく、感じる側の感覚の大切さを強調している。
また、坂本さんは「スポーツのプレイヤーで子どもたちが、勇気を与えたいなどの発言を恥ずべきこと」とも明言している。
オリンピック出場を目指すアスリートが「感動を与える」と平気で発言するが、「感動していただける」との発言になぜならないのか。少なくとも私は「感動を与えてほしい」と願ったことは一度もない。アスリートの希望により当初予定にない競技施設の建設がどれ程増加したか。五輪経費は誘致決定時の予算から何倍にも膨れ上がった。ほくそ笑んだのは建設業界だろうが、多くの企業が協賛で参加し利益をもくろんでいる。
安倍首相が通常国会の所信表明演説で、1964年の東京五輪記録映画の最後の言葉を引用し「人類は4年ごとに夢を見る」と語ったが、夢の後の現実の責任は誰が取るのだろうか。財政難からオリンピックに特化した宝くじの発売までいたっている。国と企業に利用されている自覚のないアスリートから真の感動を与えられることはない。
(「世界一カネのかからない」とうたった東京五輪。当初7000億円の予算額は暴騰し、3兆円を上回るとも言われています。そんな現実を覆い隠すような「感動を与える」という言葉。だまされてはいけませんね)

果たす意思なし
首相の説明責任

兵庫県姫路市 谷野勉
森友学園問題では国有地が8億円も値引きされて払い下げられ、決裁文書も改ざんされた。加計学園問題では獣医学部を新設する「国家戦略特区」の事業者に選定された加計孝太郎理事長が首相の長年の友であったが、それらに対する説明はなし。
首相主催の「桜を見る会」でも「地元で募ってはいるが募集していない」というわけのわからない発言が飛び出し、会場の飲食業者の選定も安倍昭恵夫人の知り合いだとか。その昭恵夫人は私人のはずなのに「推薦枠」もある……。安倍首相の国会答弁を聞いても、どれ一つ納得できるものではありません。官僚の殺生与奪の権利を握り、自分に都合の悪いことは一切説明しない。
先日の衆院予算委で、国民民主党の江田憲司氏が「何度、李下に冠を正せば気が済むのか」と追及していたが、まさにその通り。私たちはこのような安倍首相の姿にあきあきしている。
「国会で『桜を見る会』の話ばかりしていていいのか」という声もあるが、このまま桜を散らしていいのか。森友も加計も桜も、私は納得していない。
このような情けない国会状況を作ったのは安倍首相だ。憲法改正を言う前に現行の法律を守れと言いたい。
(安倍政権を支える力は「えこひいき」。官邸に近いジャーナリストの逮捕をもみ消した警察官僚に続いて、東京高検検事長の定年を半年延長するなど、やりたい放題。すり寄るのは官僚だけでなく、財界人やメディアのお偉いさんも…)

国会よりも不倫報道
「さよならマスコミ」

大津市 樽井弘志
毎月、興味深く拝読しています。
さて、先日、「さよならテレビ」というドキュメンタリー映画を鑑賞しました。東海テレビの、報道とは名のみの視聴率第一主義の現場を映し出した作品です。2017年に撮影されたものでしたが、今はもっとひどいありさまに思えます。民放は俳優の不倫スキャンダルと新型肺炎に関する話題で時間を埋め、NHKは、さすがに不倫は扱いませんが、その代わり大相撲初場所優勝力士を大きく取り上げていました。国会でデタラメなやりとりが横行しているにもかかわらずに、です。まさしく「さよならテレビ」というタイトルがぴったりですね。
でも、これはテレビ局だけの責任ではありません。このまま「さよならマスメディア」とならないよう、みんなで行動していこうではありませんか(安倍首相の得意フレーズだから、使うのは気が引けますが)。これからも楽しみにしています。
(桜を見る会で追及を受け、募ると募集は違うなどと素っ頓狂な答弁をしながら話題にもならない。安倍政権は、新型肺炎に救われましたね)

27面
車イスから思う事「なぜ、私に話さないの」(佐藤京子)
現在、介助犬のニコル君と離れて暮らしている。長く一緒に暮らしていると、ニコル君への接し方が自己流になる。これを長らく続けると必要な介助動作、例えば落としたものを拾うはずが、おもちゃで遊ぶようにかんだり、指示に従わなくなったりする。つまり、介助犬としての仕事をサボろうとすることがあるのだ。
そのため、自分自身のユーザーとしての再教育とニコル君の訓練で、千葉の訓練所に泊まりこんでいる。今では1泊2日や2泊3日で帰宅している。家に戻っている時は、ニコル君への給水、給餌、トイレなどの基礎訓練や落とした物の拾い上げやドアを閉じる練習をする。合間には、外出訓練で街歩き、スーパーやコンビニで買い物をする。 
先日、以前行ったことがあるコーヒー店へ、トレーナーさんと出かけた。入る前に外から座席のあることを確認したのだが、店員さんにさえぎられた。「混んでいるので席がありません」。目の前には10席近く空いている。すると、「犬は困ります」と言われた。なぜ、トレーナーさんに話しているのだ?介助犬を連れているのは自分なのに会話の外にはじき出されている。「店の奥は混んでいるように見えるけど、ここは空いているではないですか。そもそも、入店を拒めないはずです」と言うと、ようやく入口脇のテーブル席に座るよう指示された。
なぜ、自分には話しかけず、トレーナーさんにばかり話しかけるのか。自分は簡易型電動車イスを使用しているが、意思疎通ができないわけではない。仮に発語に不自由があったとしても客ではないか。それに何と言っても、相棒のニコル君を拒否されるのは自分自身を否定された気分になる。パッと見て、27㌔の犬が入って来たことに驚いたとしても、モヤモヤ感が残る。
世の中は、東京五輪・パラリンピックだと騒いでいるが、障害を持っている当人に会話もできないような大手チェーン店の従業員教育の低さを感じた。外資系のホスピタリティを掲げながら恥ずかしい限りである。
30面
編集後記(栗原佳子、矢野宏)
金正珠さんがドアを開けて迎え入れてくれた時、その小柄さにまず驚いた。リンゴ箱を二つ重ねてやっと機械に届く身長で男性行員の「補充」要員を強いられた証。裁判資料などを読むと、日本の勤労学徒よりもさらに過酷な状況だったことがわかる。そもそも海の向こうから年端も行かぬ少女を騙して重労働に充てたのだ。しかもただ働き。現在まで放置。許されることだろうか。かつて日本のメディアが元「慰安婦」について「朝鮮人女性を挺身隊の名で連行した」などと記したように、韓国内でも勤労挺身隊と「慰安婦」が混同された時代があった。どちらの被害者もどんなに辛い戦後だったか。不幸すぎる混乱も、加害国とその社会の無視・無知・無恥に端を発している。「国際法違反」の思考停止に与してはならないと思う。(栗)
▼連日、新型肺炎のニュースに押され、他の大事なニュースがはじき出されている。今月号はそちらにシフトした。なお、西谷さんは中東取材のため、今月号の「世界で平和を考える」は休載。来月号で最新の中東情勢を伝えてくれるはず。ご期待ください。さて、春は別れの季節。本格的な春の訪れを待つことなく、奈良市の水野繁さんが2月15日、心筋梗塞のため旅立たれた。98歳だった。水野さんは先の大戦で多くの学友を亡くし、自身も右腕を失った。戦後、民放ラジオ局「文化放送」に入社。1956年4月には、仮出所した旧陸軍の荒木貞夫大将や鈴木貞一中将、橋本欣五郎大佐らA級戦犯をインタビューしたドキュメンタリー番組「マイクの広場『A級戦犯』」を放送。大きな波紋を呼んだが、労組活動が問題視され現場を追われる。半世紀後の2013年7月のうずみ火講座で、当時の音源を披露してくれ、対談させていただいた。改憲と教育勅語を柱にと訴えるA級戦犯たち。水野さんは「今の右傾化の源流はA級戦犯」と訴えた。16日の通夜は無宗教で営まれ、読経の代わりに水野さんが好きだった曲、忌野清志郎の『サマータイムブルース』が流れた。「人気のない所で泳いだら 原子力発電所が建っていた さっぱりわかんねえ何のため?…」。反戦・反原発、憲法護れと訴えた水野さん、安らかにお眠りください。(矢)

31面
うもれ火日誌(矢野宏)
1月6日(月)
仕事始め。矢野は夜、MBSラジオ「ニュースなラヂオ」。特集はIR汚職事件を受け、「カジノで豊かになれるのか」。阪南大教授の桜田照雄さんにスタジオで話を聞く。「10分で現代を解説」では上田崇順アナが「抗議デモが続く香港の年末年始」を報告。
1月7日(火)
矢野 午後、ラジオ関西「時間です!林編集長」に出演。夜、長田神社前商店街の岡田育代さんと孫の亘起君に話を聞く。
1月8日(水)
西谷 昼過ぎ、ラジオ関西「ばんばひろふみ!ラジオDEしょー!」。
1月10日(金)
午後、今年初の「うずみ火講座」。25年にわたって中東を取材している「アジアプレス」の玉本英子さんを講師に迎え、大阪市此花区のクレオ大阪西で講演「取材映像から見るイラクとシリアの現状」。
西谷 「路上のラジオー吉井英勝さんによる原子力政策の深い闇」をネットでアップ。
高橋 朝、和歌山放送ラジオ「ボックス」出演。
1月11日(土)
矢野 午後、大阪市北区のPLP会館で開かれたJR西日本労働組合の「新春旗開き」に参加、あいさつ。
1月13日(祝、月)
矢野 午後、JR東海労働組合新幹線関西地方本部の「新春旗開き」が大阪市淀川区の西町甲東会館で開かれ、あいさつ。夜のMBSラジオ「ニュースなラヂオ」は、千葉猛アナの「ネットワーク1・17」との共同企画「阪神・淡路大震災25年」。ゲストは、兵庫県立大教授の室崎益輝さん、災害支援団体「チーム神戸」代表の金田真須美さん。避難所や仮設住宅、ボランティア、被災者生活支援法などが変わったかどうか話を聞く。
1月14日(火)
矢野 午後、谷町6丁目で劇団「息吹」の坂手日登美さん、『我が家に来た脱走兵』著者の小山帥人さんらと打ち合わせ。
1月16日(木)
矢野 午後、神戸市中央区のアンサー法律事務所で、永井幸寿弁護士に「被災者生活再建支援法」などについて話を聞く。
1月17日(金)
矢野 朝、神戸市中央区の東遊園で営まれた「阪神淡路大震災1・17のつどい」を取材。NPO「よろず相談室」理事長の牧秀一さんと歓談した後、神戸朝鮮初中級学校で金相訓(キム・サンフン)校長に話を聞く。夜、東灘区の加賀翠さん宅へ。震災で亡くなった一人娘の桜子ちゃん、2009年に他界した父の幸夫さんに手を合わせる。
高橋 朝、和歌山放送ラジオ「ボックス」出演。
栗原 早朝の便で石垣島へ。陸自駐屯地の造成工事が進む現場や周辺で取材。翌18日、夜、帰阪。
1月20日(月)
矢野 夕方、伊方原発差し止め仮処分について今中哲二さんに話を聞く。MBSラジオ「ニュースなラヂオ」。この日、通常国会開幕を受け、「首相の施政方針演説を読み解く」と題して、時事通信解説委員の山田恵資さんに話を聞く。
1月22日(水)
西谷 昼過ぎ、ラジオ関西「ばんばひろふみ!ラジオDEしょー!」出演。
1月23日(木)
矢野 午後、ラジオ大阪「里見まさとの朝起き情報スタジオ」収録(26日放送)。
1月24日(金)
西谷 「路上のラジオー清水ただしさんのカジノ疑惑」をネットでアップ。
高橋 朝、和歌山放送ラジオ「ボックス」出演。
1月26日(日)
矢野 午後、大阪府吹田市に在住のJR西日本労働組合の現役・OB・家族の新年会で今年初の講演「それでも安倍政権、それでも大阪維新」。
1月27日(月)
矢野 夜、MBSラジオ「ニュースなラヂオ」。トランプ米大統領の弾劾の行方と大統領選について、元共同通信記者でニューヨーク在住のジャーナリスト、津山恵子さんに電話で話を聞く。
1月28日(火)
矢野 午後、安保保障関連法違憲訴訟の判決が大阪地裁で言い渡され、原告敗訴。原告説明会を取材。
1月29日(水)
午後、お茶を飲みながら交流を深める「茶話会」。奈良から竹内和雄さん、吉松郁美さんらが近況報告。
1月31日(金)
矢野 栗原、空路ソウルへ。植民地歴史博物館で金英丸さん、李煕子さんに話を聞く。
32面
うずみ火講座、3月の茶話会・酒話会予定(矢野宏)
3月14日(土)午後2時
西区民センター第4会議室

東京電力福島第一原発事故の発生からまもなく9年。3月の「うずみ火講座」は14日(土)、今年も原発の安全神話に警鐘を鳴らし続けた「熊取6人組」の1人、京都大原子炉実験所(現・京都大複合原子力科学研究所)の今中哲二さんを講師に迎え、「福島第1原発と放射能汚染のいま」と題してわかりやすく語っていただきます。会場は、大阪市立西区民センターです。
福島原発で大きな課題となっているのが、たまり続けるトリチウムなどの放射性物質を含んだ「汚染水」。すでに1000基近くのタンクにおよそ120万㌧がたまり、さらに日々増えています。処分方法について、国の小委員会は海か大気中に放出する方針を打ち出しました。果たして安全なのでしょうか。
【日時】3月14日(土)午後2時~4時半
【会場】大阪市立西区民センターの第4会議室(地下鉄千日前線「西長堀駅」⑦出口から北へ100㍍、鶴見緑地線「西長堀駅」③出口から南へ100㍍)
【資料代】読者1000円、一般1200円、学生・障害者700円

4月25日(土)午後2時
「大阪市解体構想」考える

「2度目はない」と言いながら、大阪維新の会は11月上旬に「大阪市解体構想」の是非を問う住民投票を目指しています。この構想は、大阪市を解体し財源も権限も大阪府に吸い上げ、「1人の指揮官(知事)」のもとでやりたい放題できる体制をつくるのが狙い。うずみ火では、だまされないための連続講座を開講します。
1回目は4月25日(土)午後2時~大阪市中央区谷町2丁目の「ターネンビルNo.2」2階。講師は立命館大教授の森裕之さんです。詳細は次号で。

黒田イズムを受け継ぐ記者たち/「新聞うずみ火」傲慢な権力、差別のシステムに怒りのペン

2020-03-11 17:33:44 | 転載
黒田イズムを受け継ぐ記者たち/「新聞うずみ火」傲慢な権力、差別のシステムに怒りのペン
著者  朴日粉
(*写真 右から黒田脩さん、城戸久枝さん、大谷昭宏さん 【私見にかえて】にコメントあり)
【お元気な頃の黒田清さん】

黒田清さんとの出会い
黒田清さんとの最初の出会いは、読売新聞を退社したばかりの頃だった。1988年の8月。気温は33度。その日、奈良の取材先から大阪の黒田さんの事務所に着いたのは、約束時間の直前だった。全身から汗が吹き出す。そんな私に黒田さんは満面の笑顔で「まあ、冷たい麦茶でも一杯どうぞ」とさりげない気配りを。

この日から、交流の輪が格段と広がった。チマ・チョゴリ事件が頻発した時には、在京の記者50人ほどを緊急に集めて、事件について話す機会を設けてくれた。あの時の怒りの激しさと素早い行動力。記者はただ書くのだけではなく、周囲を動かし、社会を変革する力を持たねばと思い知らされた。


【大阪朝高の快挙を喜ぶ】
弱者への限りない共感と権力に屈せぬ反骨精神。威張るもの、傲慢な権力、差別のシステムに容赦ない怒りのペンを向けた。それが骨太のジャーナリスト活動を貫いた。

東京、大阪を往復しながらの激務とストレス。97年夏、すい臓ガンが見つかった。大手術に耐え、1年後に復帰した。その直後には、東京で開かれた「日本の戦時下での強制連行に関するシンポジウム」にパネラーとして参加。ふっくらとした体型は細くなったが、柔和な面立ちはそのまま。戦争法案の新ガイドラインを非難しながら、「新たな戦争をしかけようとする勢力と闘わずして平和を獲得することはできない」と力強く訴え、「エセ学者、エセ漫画家、エセ政治家らの主張がアメーバーのように日本の隅々まで浸透している」と警鐘を鳴らしていた。

99年の夏、大阪朝高サッカー部がインターハイ出場を決めた時には「長い間の差別に負けないで、よくチャンスをものにしてくれた」と、わがことのようにその快挙を喜んでくれた。

しかし、1年後の2000年7月23日、黒田さんは帰らぬ人に。まだ69歳だった。病魔とたたかいながら最後の気力を振り絞って、自らが発行するミニコミ紙のコラム「もぐらのたわごと」にこう書いた。

「さて、入院中、パッとしたニュースはほとんどなし。ただ一つ朝鮮半島の南北統一会談の成功です。韓国の金大中大統領の誠実さ、朝鮮民主主義人民共和国の金正日総書記の明るさが将来に希望を感じさせてくれました。それに比べて、私たちの国はどうですか…」。これが絶筆となった。

一週間後の30日、大阪市北区の太融寺で営まれた葬儀には、メディア関係者を含め1300人が参列した。黒田さんがいつも気にかけていた在日朝鮮人をはじめ差別で苦しむ人たちが、流れる涙も拭かずに焼香の列を作っていた。人は一生の間にこんなにも多くの人を励まし、慕われるのかと私はその時、実感したのだった。

かつて、読売新聞大阪社会部長として百人近い部下を率いた。「黒田軍団」と呼ばれた

その時代に、戦争や差別反対の粘り強いキャンペーンを手がけ、当時、軍拡路線を鮮明にした中曽根政権や新聞社の上層部と対立した。87年退社し、「黒田ジャーナル」を創設。以来、読者との濃やかな交流を柱にした窓友新聞を発行しつづけた。

黒田さんの口癖はこうだった。

「世の中には弱者がいっぱいいる。幸せな人には、少しでも長く幸せが続くように、不幸な人には少しでも幸せにちかづけるようにしてあげたい」


【黒田イズムを体現しながら、取材活動に励む矢野宏記者】

「森友学園」のヘイト発言を追及
黒田さんの死去から17年。高層ビル化が進み、すっかり様変わりしたJR大阪駅から歩いて10分ほどのビルの一室に、黒田イズムを受け継ぐ「新聞うずみ火」(月刊誌)が元気よく息づいていた。現在は矢野宏さん、栗原佳子さんらが中心メンバー。矢野さんは地方紙の記者だったが、黒田さんの「泣いている人の側に立つと、色んなことが見えてくるよ」の考えに共鳴して、飛び込んだ。今も、迷ったり、悩んだりするたびに、黒田さんと一緒に作った当時の紙面を読み返して、元気を取り戻すという。

読者参加型の紙面作りの姿勢に変化はない。大阪府豊中市の国有地の格安取得をめぐる学校法人「森友学園」(大阪市)について、一連の疑惑追及の先陣を切った豊中市議の木村真さんは、「新聞うずみ火」の読者だ。国有地の売却結果は公表が原則。木村さんが売却額の公表を求めて大阪地裁に提訴した翌日、朝日新聞が提訴の事実とでたらめな売却額を報じて、この問題に火がついた。3月号の「新聞うずみ火」は木村さんによる詳しい説明などを載せながら、特集記事を組んでいる。

とりわけ矢野さんたちが怒りの矛先を向けているのは、学園のヘイト発言だ。副園長からある保護者に渡された直筆の手紙にはこう書かれていた。「韓国人とかは、整形したり、そんなものをのんだりしますが(炭酸飲料水のこと)、日本人はさせません。根っこが腐ることを幼稚園では教えていません」。その保護者が在日であることを説明して、思いのたけを綴った手紙で反論した。「…はい、私自身韓国人です。この手紙を読んで私は言葉を失いました。数分固まってしまいました。私が中学生の時、韓国人だといじめにあったことを思い出しました」。しかし、2日後に届いた副園長からの返信はさらにエスカレートしていた。そこには「私は差別していません。公平に子供さんを預かっています。しかしながら韓国人と中国人は嫌いです。お母さんも日本に嫁がれたのなら日本精神を継承なさるべきです」「勝手なことをいいなさんな! 腹が立って仕方がありません」などと記されていた。


【黒田イズムが息づく「新聞うずみ火」 】

辞任したとはいえ、こうした小学校の教育方針に「感銘を受け、名誉校長に就任した」安倍首相夫人。「優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます」とホームページに一文を寄せた。矢野さんは、「まさしく戦前の日本人優越思想を地でいくあからさまな『ニッポン礼賛』に世界中が驚いたことであろう」と指摘する。

差別と戦争への動きに怒りを向け続けた黒田さんの背中に多くを学んだという矢野さん。「あの悲惨な戦争を引き起こした日本社会の構造が、今なお変わりなく続いているのはなぜか」「社会が一丸となって無謀で愚かな戦争に突っ走ったのはなぜか」という問いを記者として探し続ける。日本社会に幾重にも張り巡らされた重層的な差別構造に目を向けると、戦前も戦後も切れ目なく続く差別という巨大なブラックホールに行き着く。今も差別の連鎖の中でしか自我が保てぬしくみが継続している。そこで脚光を浴びつづける安倍晋三という存在に焦点を当てると日本社会の歪みがより解きやすくなると指摘する。

「朝鮮学校を高校無償化から除外し、これまで続いてきた自治体からの補助金まで打ち切れと文科省から通達を出す。朝鮮学校を潰せという意図があからさまだ。それなのに、なぜ、高い支持率を維持するのか。それは彼が日本人がもつ差別意識を丸ごと肯定してくれる、日本人にとって居心地がいいからだ」と怒る。しかし、この状況に絶望してはならないと矢野さんは語る。

黒田さんは「よい新聞は、よい読者が作る」とよく言っていたという。「一般紙の記者のときは、読者にほめられたり、手紙をもらったことも余りなかった。読者の顔がみえる新聞を作るということは、人々の苦痛と喜びを分かち合えるということ。その感性を持って、今後も差別や戦争の動きに抗っていかなければ」と熱い心情を吐露した。


【私見にかえて】  櫻井智志
#スーパーJチャンネル ずっと見ていた番組から大谷明宏さんが消え、ずっと懸念を持っていた。渡辺宜嗣キャスターの公正な報道人ぶりと他のアナウンサーが番組を支えている。大谷さんが他局に出ても、黒田ジャーナルの良識がいつも発言にあふれ勇気づけられてきた。
(黒田脩、城戸久枝、大谷昭宏)
#スーパーJチャンネル
#大谷昭宏事務所サイトより
#黒田清JCJ新人賞 2008
2002年からは亡き黒田清さんを偲んで「黒田清JCJ新人賞」が設けられている。7回目となる今年の新人賞は『あの戦争から遠く離れて/私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局)の著者、#城戸久枝さんが受賞。


新型肺炎検査の民間委託を妨害する国立感染研の「OB」とは誰か?

2020-03-06 16:38:46 | 転載と私見
転載
新型肺炎検査の民間委託を妨害する国立感染研の「OB」とは誰か?
2020.03.06 1363  新恭(あらたきょう)

Ⅰ:岡田晴恵特任教授の発言で浮かび上がった「感染研OB」とは
このところ、新型コロナウイルス感染症がらみでテレビに出ずっぱりの白鴎大学、岡田晴恵特任教授が、ある政治家から聞いたという驚愕すべき話をぶちまけた。

テレ朝「モーニングショー」(2月28日)のオンエア中、新型コロナウイルスの遺伝子検査(PCR)を医師が受けさせたくても断られる現状に話題がおよんだ時のことだ。

岡田教授は「私はあまり言いたくないんですが」と、切り出した。


いわく、「中枢にある政治家」。誰をさすのかはともかく、岡田教授のもとに何人かの「中枢にある政治家」から電話がかかってきたそうである。

用向きは「(担当者から)こういう説明を受けたけども、解釈はこれでいい?」というようなたぐいだが、その機をついて岡田教授のほうからも「検査費用の公的負担」や「PCR検査を拡充する体制づくり」について、要望を出していたらしい。

この件で、「中枢にある政治家」から返事があった。「公的負担に関しては、もうできたよ」。しからばと、岡田教授が検査の拡充についてたずねると、「クリニックからの直接依頼はちょっと待ってくれと言われてる」との答えだった。

そこで、岡田教授は「待ってくれっていうのはどういうことなんですか。オリンピックのために汚染国のイメージはつけたくないという大きな力が働いているんですか」と、かねてから抱いていた疑問をぶつけた。

すると、その政治家は「ハハハ」と笑って「そんな肝が据わった官僚は今どきいない」と言い、次のような話をしたと岡田教授は証言する。

「これはテリトリー争いだ。このデータはすごい貴重なんだ。衛生研から上がってきたデータは全部、感染研が掌握する。このデータを感染研が自分で持っていたいと言う感染研のOBがいる。そこらへんがネックだったんだよ」

どういうことなのか。自分の研究や論文作成のため、データを感染研が独り占めにすべきだと思っているOB研究者がいて、民間に検体をまわすのを渋っている。ほんとうなら、心得違いも甚だしい。

厚労省の一機関である感染研は、地方の衛生研究所からの検査データを集め、感染症についての研究を進める立場にある。検査機関ではなく、研究機関だ。多くのデータを確保したい気持ちはわからぬでもない。

しかし、さしあたって重要なのは、感染拡大と重症化を食い止めるための大量検査体制の構築だ。政府はヤルヤルと言いながら、検査を民間委託する数量を抑えているが、衛生研や感染研だけでは、検査できるキャパシティに、おのずから限界がある。

現場の医師が必要だと診断をつけて検査を保健所に申し入れても断られるケースが相次いでいる理由が、ジコチューな研究者心理にあるとしたら、患者はたまったものではない。

いったい誰なんだ、検査データ囲い込みのために民間委託を妨害する、そのOBとは。筆者ならずとも怒りを込めてそう思うだろう。しかしここは、落ち着いて考えてみたい。

ほんとうに「OB」のせいなのかは、わからない。しょせん政治家の言っていることだ。政権の思惑だとか、感染研の都合とは言えないから、「OB」なる便利な用語を駆使しているのかもしれない。

それを承知のうえでも、「OB」発言はやはり聞き捨てならない。実在するとしたら、国立感染症研究所にかつて在籍し今も影響力の及ぶ研究者で、とくに新型コロナウイルスの検査データを必要とする分野の専門家ということになるだろう。


そこで筆者は、「OB」を現役の研究者と仮定したうえ、それならどこかから研究費の援助を受けているはずだと想像をめぐらして感染症研究に資金援助するいくつかの機関のウェブサイトにアクセスした。資金提供先リストを探すためだ。

Ⅱ:浮かび上がった,あの大学の教授

その作業のなかで、筆者が目をとめたのが、内閣府所管の国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」の資料だ。


同機構は厚労省、経産省、文科省がこれまでバラバラに支援を行っていた医療研究を一本化し、産学連携で治験や創薬を行う司令塔たらんとして2015年に設立された。2019年の予算は1,267億円である。

新型コロナウイルスに関しては、感染研の迅速診断キット開発、治療法開発、ワクチン開発を支援しているほか、東大のワクチン開発、藤田医科大学の臨床開発研究への支援も決定している。

注目した同機構の資料とは、「平成31年(令和元年)度・実施課題一覧 感染症実用化研究事業」とタイトルがつけられた表である。


つまり、感染症研究に関する支援先のリストだ。82件の研究開発課題と実施機関名、代表者名が縦一列にずらりと並んでいる。

「国立感染症研究所に今も影響力が及び、新型コロナのデータを必要とする研究者」という条件に合う機関なり、人物はこのなかに入っているはずだとめぼしをつけた。

まず行ったのが消去作業である。感染研現職や、感染研とは無関係の研究者を除いていけば、感染研OBが残るはずだ。

やってみて残ったもの、すなわち感染研OBが代表になっている研究は

木村博一代表の群馬バース大学「下痢症ウイルス感染症の分子疫学および流行予測」
野崎智義代表の東京大学「原虫・寄生虫症の診断、疫学、ワクチン・薬剤開発」
鈴木哲朗代表の浜松医科大学「ジカウイルス感染動態」
モイ メンリン代表の長崎大学「デングウイルス感染防御のメカニズム解明とワクチン開発」
森川茂代表の岡山理科大学「動物由来感染症の制御に資する検査・診断・予防法」
―以上5件である。

このうち、代表者の経歴や研究内容から、当てはまると思われるのは一つしかない。岡山理科大の「動物由来感染症」だ。

代表者、森川茂氏は国立感染症研究所の獣医科学部長だったが、2019年3月31日に退職し、岡山理科大学獣医学部微生物講座の教授となった。2018年4月に開学した同学部には、同じ感染研でウイルス第一部主任研究官だった渡辺俊平氏が准教授として、非常勤のウイルス第一部研究員だった藤井ひかる氏が助教として赴任していた。

森川氏の教授就任とともに、まさに感染研の別動隊が岡山理科大に誕生したわけである。同学部のサイトを見ると、微生物講座の説明に以下のような記述がある。

新興感染症ウイルスに対する対策・研究を国立感染症研究所において、いわば最前線で体験してきたスタッフメンバーによって微生物学講座は、起ち上げられます。我々は、バイオセーフティーレベル(BSL)3の実験室を活用して、また日本の、または海外のBSL4施設とも共同研究を実施しながら、最前線での戦いを継続していきます。

森川氏は感染研時代の2017年2月、内閣官房「感染症研究拠点の形成に関する検討委員会」に、現在の感染研所長で「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議座長」をつとめる脇田隆字氏の代理として出席したほどの実力者であり、感染研に対する発言力はいまも維持しているとみられる。

だからといって森川氏がくだんの「OB」であると決めつけるつもりは毛頭ない。感染研に影響力を及ぼしうる「OB」は、ほかに何人もいるだろう。

たとえば、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のメンバー構成に注目すると、12人のメンバーのうち、座長の脇田氏を含め3人が感染研関係者であり、うち岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長がOBである。岡部氏はテレビ出演も多く能弁で著名であるため、座長の脇田氏が立場上言えないことでも発言できるかもしれない。


だが、森川氏ら岡山理科大の感染研OBらには、他の研究者にないミッションがある。

Ⅲ:込められた「安倍官邸」の思いとは

安倍首相が「腹心の友」と呼ぶ加計学園理事長、加計孝太郎氏。その長年の宿願であった獣医学部の創設を、国家戦略特区制度を使った特例によって実現させた安倍官邸の思いが、岡山理科大への感染研メンバー投入にはこめられている。


「動物由来感染症の防疫、創薬など、ライフサイエンス分野における連携研究に対応する」。これが開学前のうたい文句だが、実現性を疑問視する声が絶えなかった。鳥インフルエンザ研究で定評のある京都産業大を押しのけてまで、岡山理大の獣医学部を開設する必然性がどこにあるのかという意見もあった。

森川氏ら感染研から岡山理大獣医学部へ送り込まれたメンバーには、そういう世評を見返すだけの業績を示す役割が求められているであろう。彼らには、加計学園問題で野党やメディアに激しく追及された安倍首相と加計孝太郎氏、さらには実現を後押しした竹中平蔵氏や加戸守行元愛媛県知事らの期待が重くのしかかっているはずだ。

PCR検査をあえて制限しているように見える現況は、東京オリンピックをひかえ、検査の拡充による感染者の急増を避けたい安倍政権の願いと迷いがもたらしたものだという疑いが依然としてぬぐえないのだが、ここへきて浮上した「OB」疑惑、あるいは感染研のかかえる問題も、無視はできない。



「防疫」より「研究」。それが国立感染症研究所の基本的なスタンスとすれば、そこに各地の衛生研も含めPCR検査をほとんど丸投げした政府の判断に、そもそも大きな問題があったのかもしれない。検査体制の拡充にはまだ越えなければならないヤマがありそうである。

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新恭(あらたきょう)この著者の記事一覧
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。


【私見】
驚いた。
あのモリカケ事件がこことも関連していることに。
日本の医学ー文化ー教育ー行政の連環は、腐敗し底なし沼だ。
安部晋三氏ひとりの問題ではなく、日本国家全体がドレイの宮殿を構築している。
真面目な日本人によって残虐な行為が連綿と続いている。
日本は,いま日本史上最大の瀬戸際に瀕している。

【日刊ゲンダイDIGITAL】 元研究員が衝撃告発 司令塔・感染研に“検査拡大”妨害疑惑

2020-03-05 07:09:42 | 転載と私見
公開日:2020/03/04 14:50 更新日:2020/03/04 16:41

専門家会議の座長は感染研所長(右)/(C)共同通信社

 なぜ、医師が必要と判断した患者の検査まで拒否するのか――。いつまで経っても、新型コロナウイルスの検査態勢が整わないことへの批判は強まる一方だ。安倍政権の方針も二転三転。安倍首相と加藤厚労相の国会答弁まで食い違うありさまだ。


 ついに、感染症対策の“司令塔”である「国立感染症研究所」(感染研)に疑惑の目が向けられ始めている。

 衝撃だったのは、感染研の研究員だった岡田晴恵白鴎大教授の告発だ。先月27日、テレビ朝日系の番組で、「国立感染症研究所のOBがデータを独占したがっていることが背景にある」と暴露したのだ。

 岡田教授は「論文がどうだ、業績がどうだということよりも、人命を取るもともとの感染研の方針に返っていただきたい。一部のOBのせいで、人命にかかわってくるのは怖いことです」と涙ながらに訴えていた。

 さらに、国会でも野党議員が感染研の対応を問題視。北海道に派遣された感染研職員の“指導”の結果、「北海道の道庁の職員や保健所の職員は、検査をあまりしちゃいけないのかと思ってしまっている」と実情を明かしている。


 感染研のトップである脇田隆字所長は、政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の座長も務めている。専門家会議のメンバー12人中、感染研から“3人”が選ばれている。事実上、感染研が安倍政権の“コロナ対策”の方針を決めている状況だ。もし、その感染研が“検査拡大”を妨害しているとしたら、恐ろしいことだ。

 感染研は厚労省に所属する研究機関。1947年に設立されている。歴代所長や幹部には戦前、人体実験をしていた「731部隊」の軍医が就任していると報じられている。感染研に「白鴎大の岡田教授の発言内容は事実か」「職員の天下り先は」など、8項目の質問状を送ったが、締め切りまでに回答がなかった。

 政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。


「新型コロナウイルスのデータは、非常に貴重なものです。独占できれば、ワクチン開発や特効薬の開発など、巨額な利益を生む可能性があります。もし、感染研と民間の製薬会社に癒着があれば大問題です。はたして天下りがあるのかどうか。国会で徹底的に追及すべきです」

 国民の疑心暗鬼を晴らすためにも、国会で説明させた方がいい。

【私見】
日刊ゲンダイの記事は、驚くべき内容を世に問うた。国立感染研が国立予防衛生研究所の名前を変えたものだが、その前身は石井「731」部隊である。外国人捕虜の生体実験で、戦争犯罪を問われる寸前までいった。アメリカ軍GHQは、「731」部隊に、研究結果をすべて米軍に渡すことと戦時中の生体研究をすべて極秘に処すこととを交換条件とした。

今回のコロナウイルス事件の背景に、このような歴史的犯罪が絡んでいることは、ほとんどのマスコミは報道していない。日刊ゲンダイ編集部の勇気は、称賛に値する。

宮坂昌之教授「日本は感染症リテラシーを育てていく必要がある」の意義

2020-03-03 20:55:56 | 転載と私見
【序】
 以下に掲載する宮坂昌之教授「日本は感染症リテラシーを育てていく必要がある」は、2020年3月3日の色平哲郎佐久総合病院医師の評論に拠る。色平氏は、環境感染学会、医療機関の「対応ガイド」(第2版)公表についての「レポート 2020年3月3日 (火)配信 橋本佳子(m3.com編集長)」とともに、宮坂昌之教授「日本は感染症リテラシーを育てていく必要がある」を紹介なされている。

 その中で宮坂教授の「国立感染症研究所」についての叙述が、強く私の関心を引いた。感染研の前身「国立予防衛生研究所」が新宿区戸山の早大や住宅街に移転を強行してから、地元住民団体が反対し続け、強行移転後も、予研=感染研の住宅地での細菌組み換え実験などの諸行に、哲学者・社会科学者芝田進午元広島大教授を団長として裁判を闘ってきた。
 感染研は、戦時中の石井731細菌部隊の人脈をほぼそのまま受け継いだ。外国人捕虜に生体実験で様々な病原菌を試みた。詳しくは芝田進午氏の晩年の諸著作や森村誠一『悪魔の飽食』に詳しい。
 国会質問2020年3月3日に、日本共産党の議員が「アメリカのCDC(疾病予防管理センター)」なみに国立感染研に予算を増額し、研究をもっと充実すべしと総理に迫った。CDCについて宮坂教授は基礎的位置づけを明記し、感染研との根本的相違点を明確にしている。
以下に転載する。

【本論】
宮坂昌之教授「日本は感染症リテラシーを育てていく必要がある」

――日本国内の感染状況を把握するためPCR検査をもっと拡大しろと声高に主張する人がいます

「インフルエンザには迅速診断キットがある。ウイルスを増幅する必要もなく5分か10分で答えが出る。一方、PCR検査は何時間もかかり、その割に偽陽性も偽陰性も出る」

「なぜ手間がかかるかというと、コロナウイルスの場合は喉(のど)のぬぐい液、痰(たん)からRNA(リボ核酸)を抽出しなければならない。日本ではこれをロボットでできるところは少ない」

「ぬぐい液や痰から抽出したRNAを増幅して何度も何度もサイクルを回した上で陽性シグナルを探す。陽性シグナルがあってもそれがウイルスの遺伝子かどうかは塩基配列まで見ないと最終確認までつかない。そしてこの手技にはある程度の熟練が必要」

「それに、感染材料が入ってくるので部屋も機器も全部コロナウイルス専用にしか使えなくなる。また、やろうと思っても人材の問題がある。感染材料が入ってくるわけだから感染に関する手技を十分に出来る人が必要。でも実際はそれは少ない」

「国立感染症研究所(感染研)はそういう仕事をある程度は行うが、基本はウイルスや微生物の研究所であってアメリカのCDC(疾病予防管理センター)のような機能はほんの一部。検査機関としては十分なキャパシティー(処理能力)がない」

――PCR検査はどんな問題を抱えているのでしょう

「別のコロナウイルスの感染が原因のSARS(重症急性呼吸器症候群)や中東呼吸器症候群(MERS)の時にも散々、問題になったが、PCR検査の感度が不十分。陰性だと思ったら実は陽性だった、陽性だと思ったら陰性だったということがかなりあった」

「陽性と出ればほぼ陽性という確率が高いが、陰性と出た時には本当に陽性ではないという証明にはならないという大きな問題がある。それはなぜかというと喉や痰の中にウイルスが見つからないが、他の体のどこかに隠れている場合が常にあるからだ」

「新型コロナウイルスの感染細胞の主なものは肺の中の2型上皮細胞という非常に奥の方にある、しかもそんなに数がたくさんある細胞ではない。そこにウイルスがたくさんいても必ずしも喉にいるとは限らない」

「ただ、不思議なのは感染細胞の主なものは2型上皮細胞であることが分かっているにもかかわらず、人にうつすという感染性がこのウイルスは非常に高い。だから喉のどこかにはウイルスがいるとは思うのだが」

「喉の上皮細胞をとってもウイルスのレセプター(受容体、ACE2)を発現する細胞が非常に少ない。どうして喉にウイルスがいられるのかあまりよく分かっていない。主なウイルスの貯蔵庫は肺の中。しかし現場でのサンプル採取の場合、実際は主に喉のぬぐい液しかとれない」

「鼻からサンプルをとる方法もあるが、とったらくしゃみをされて医者に感染リスクが生じる。気道下部の細胞も病院ならカテーテルを入れてとることができるが、手技的に大変で、しかも看護師も医者も汚染される可能性がある」

「ということで、実際は喉のぬぐい液しか簡単にとれない。痰が出るケースは比較的少ない。新型コロナウイルスの感染の場合には空咳が出て、痰は必ずしも出ない。痰が出るのは30%か40%ぐらい。サンプルを喉のぬぐい液に頼らざるを得ないので、PCR検査が陽性になる確率がどうしても下がってしまう」

――日本のテレビではクリニックの院長が出演してPCR検査を自由にできるようにして欲しいと話しています

「PCR検査は手間がかかる、お金がかかる。さらに検査を受けるとしたら開業医や病院で受けなければならない。そこに感染者が集まったら、クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』で起こったようなことが今度は開業医や病院の待合室で起きる」

「テレビでもクリニックの院長が出てきて自分のところでは感染しそうな患者とそうでない患者の導線を分けて別々の部屋で検査をしていると説明している。そんなことはどこでもできるわけではない」

「開業医のところに患者がPCR検査をしてほしいと来たらどうなるのか。クリニック全体が汚染される可能性がある。日本は感染症リテラシーを育てていく必要がある」

――PCR検査にはお金がかかるとのことですが

「開業医や病院がこの検査を自由に発注するようになると一つ1万円ぐらいかかる。インフルエンザの場合、年間多い時には患者が2000万人ぐらい出る。PCR検査をやったら年間1億検体を超える。1億検体×1万円=1兆円。医者は儲かるからどんどん検査を出す」

「コロナ疑いと書けばいくらでも出せる。医者はイエス、ノーが言えるから是非やりたい。患者もイエスかノーか言ってもらった方が家で単に休みなさいと言われるより心理的には楽になる」

「私も、もっと件数をできた方が良いと思う。重症の患者でも今までは湖北省由来でないとか、いっぱい縛りがあったために検査をしてもらえないケースがいくつもあった。厚労省がそういう設定をしたからだ」

「開業医がフルに検査にかけたら、えらいことになるぞという思慮が一つ。そして日本は皆さん心配症。イギリスでは風邪なら来るなというのは日本では通用しない」

「日本でPCR検査が開業医や病院でできるとなったらおじいちゃん、おばあちゃんはじめ一家でやってくることになりかねない。証明書をもらいにね。でもこの検査で証明書なんか出せるわけがない。不確定性が高い検査なんだから、その時に陰性でもウイルス陰性にはならない」

「日本には隔離する病棟が1000とか2000のオーダーしかない。総合的な判断で厚労省はPCR検査を限っているという方策をとったという可能性も一部にはあると思う」

――PCR検査のキャパシティーについて日本の1日3800件というのをどう評価しますか

「やむを得ないと思う。マイクロプレート1個96検体しかできない。PCR検査の機器が10台あれば960検体できるが、それを動かす人、ロボットが必要になる。しかも感染性検体を扱う技術をもった人でないといけない」

「コロナウイルス用に使ったら他の検査には使えないので感染研でそんなことをしたら他の検査ができなくなってしまう。民間会社で検査をやりますと手を上げるところがどれだけあるだろうか。自分が感染するかもしれないわけだから」

「感染性のあるサンプルでRNAを抽出するという一つ余計な作業が加わると普通の研究室なら1日100件できて精一杯。それが感染研で数百、民間会社を合わせて1日3800件という数が出てきたのだろう。ただし、頑張ればそれを1万件にすることはできなくないと思う」

「しかし民間会社をどうやって説得するのか。民間会社もお金が来ると分かっていなければやらない。今度、保険適用の対象にすると言ったのは民間会社のためであろう。そうしないと絶対にやってくれない」

「PCR検査は誰もができるわけではない。トレーニングをしないといけない。偽陰性や偽陽性を出したら社会的な影響が出る。品質保証ができる場所でないとこの検査はできない。都道府県の衛生研究所に頼んだら技術的な問題だけでなく、感染の恐れがあるので誰でも引き受けてくれるというわけではないだろう」

「間違ったらいけないし、感染するかもしれない。日本政府はなぜ3800件しかできないかをもっと分かりやすく説明したら良いのではないかと思うが、厚労省も言えないことがあると思う。一方、それが日本の感染者数を少なく見せるための謀略であるということを言う人がいるようだが、そんなわけがない。現状ではもろもろのことが飽和状態というのが悲しい現実だ」

「もう一つ大きな問題はこの試薬がどこから来ているかだ。日本のタカラバイオは当初はPCR試薬の多くを中国の大連で作っていた。ところが中国での大流行で大連から来るのがゼロになった。今は日本での生産に切り替えているようだが、当初の試薬の配給にはそういうネックがあった」

――韓国では1日にPCR検査を1万3000件行ったと報道されています

「韓国が1日に1万以上の検体をこなせるのは医療関係のベンチャービジネスが非常に多いから。日本よりはるかに多い。PCR検査の機器をいっぱい持っている。韓国の医者はすぐにそういうところにサンプルを出す」

「韓国は普段から検査件数が物凄く多い。今回も1日に1万以上の検体を検査したというのを聞いてなるほどと思った。日本ではこれまでPCR検査に関してはそういう体制はなかった」

「日本のベンチャーや検査会社は小ぶりでその用意があるところは少ないと思う。ソウルには医療関係のベンチャーが大学のそばに山のようにある」

「日本のベンチャーは大学とちょっとつながっているか、大学を外れた人がやっているぐらいで、お金儲けの道具にはなかなかならない。日本はアメリカや韓国のようにベンチャーが育ちやすい環境ではない」

――後知恵で結構ですのでクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染をどう見ておられますか

「政府が乗員乗客3711人を船内で隔離しなければならなかった一番の理由は、日本国内にそれだけの人を収容できる施設がなかったからだ。素人考えでは船室に隔離しておけば安全だろうということだったが、夫婦や家族で入っていたり窓のない部屋があったり。空調も全部つながっている。また人々の導線が複雑に絡み合っていて、とても感染者を隔離できる環境ではなかった」

「あとから考えてみたら濃厚感染が起こり得る密閉空間だった。中国から医療関係者の感染が物凄く多いというニュースが入ってきた。なぜゴーグルや防護服、N95のマスクも着用している彼らが高頻度に感染したのかを考えると、飛沫感染以外の接触感染が起こっていたということだ」

「防護服を来たままトイレに行く、ご飯を食べる時にマスクを外す、いろいろな所に触る。防護服を着用していても隙間があって中に入ってしまう。手袋をはめていてもカルテを書く時にカルテが汚れる、ペンが汚れる。訓練を受けていた医療関係者でもあれだけの高率で感染したのはそういうことだ」

「そのニュースを見たとたん『ダイヤモンド・プリンセス』もまずいぞと思った。でも隔離を始めてしまったのでどうしようもない。決して政府のやり方を擁護するわけではないが、ベストの解決法はなかったと思う」

「唯一あったとすればオーストラリアのやっているようにクリスマス島のような孤島に隔離するしかなかった。しかし日本はそのような設備を持っていなかった」

――コレラが流行した時代には患者が出た船は沖で隔離されました。その時の経験は残っているのでしょうか

「コレラ船の時代の経験はほとんど残っていない。私は1973年に京都大学の医学部を卒業したが、コレラのことはほとんど習わなかった。今の役人でもご存知の方は皆無だと思う」

――感染症対策の経験の空白にグローバリゼーションやクルーズ船の超大型化という新しい問題が加わったことが問題を大きくしてしまったのでしょうか

「世界的にはSARSがありMERSがありわれわれは生命にかかわるような感染拡大の経験はしていたのだが、喉元過ぎれば熱さ忘れるということ。日本にしてみればSARSはいわば他国のことであったわけで、大変な事件として当時は理解していたはずだが、その時の役人は厚労省にはいない。厚労省の役人は2年か3年で異動する」

「日本にはアメリカのCDCに相当するものはない。感染研がその一部を担っているが、研究者のほとんどはウイルスや細菌の基礎的な研究をしている」

「これは公衆衛生の問題、危機管理の問題、政治的な問題、経済的な問題も含めての話だが、感染研にはそれを専門とする人は少ししかいない」

「制度上の日本の弱みがある中でこの事件が起きた。欧州の場合、SARS、MERSはよその問題だったのかもしれないが、おそらくはその教訓を覚えていたのだろう。驚くのはイタリアにしても欧州各国は町の閉鎖など非常にタイトな施策を打ち出しているという気はする」

――イギリスでは感染症対策は確立しています

「公衆衛生の概念が最も進んでいたのは当初からイギリス。今でもアメリカとイギリスは進んでいて公衆衛生の本物の専門家がいる。大学だけではなくて政府の機関にもいるし、医学の中の非常に重要な分野だ」

「日本は公衆衛生の分野が手薄。感染症の方はウイルスか細菌の研究をして教授になった方で、感染症の公衆衛生の研究で教授になった人はまずいないと思う。専門家会議にはウイルスや細菌感染の専門家、内科の人ぐらいは行くが、公衆衛生の専門家が手薄」

「日本ではワクチンの副作用を審査する予防接種・ワクチン分科会が厚労省の中にあるが、ここにも感染症のことを良く知る公衆衛生の人はほとんどいない。こういう人選をするのは政府の役人。役人が自分たちの意見を聞いてくれる人を選ぶから政府のやり方に一言ある人は呼ばれない」

「公衆衛生の専門家が少ない上に、官僚制度の弊害があり、自分たちの意見を聞いてくれる人しか呼ばない。公平にやらなければいけないというので法律の人やらマスコミの人が入るが、こういう人たちは専門家ではないので抑止力にならない」

「厚労相にレクチャーしているのは誰かというのが問題だが、それが分からない。日本は公衆衛生の人材を育てる場所も少ないし、実際に活躍できる場所も非常に少なくなっている」

――日本では「白衣の天使」として知られるフローレンス・ナイチンゲール(1820〜1910年)は統計に基づく医療衛生改革で有名です。英インペリアル・カレッジ・ロンドンは新型コロナウイルスの感染について数理モデルを使って予測を出しています

「日本では感染症にかかわる公衆衛生をご存知の方は非常に少ない。ましてや統計学的手法で感染が今後どれぐらい拡大していくのかとか、どの程度で終息するのかとか非常に重要なポイントだが、日本でそれができる人というのは本当に少ない」

「日本は1918年のスペイン風邪の時にたくさんの人が死んだ。ところが日本の医学が当時は十分に成熟していなかった。あの時にどういうことがあったのかということは私たちも全く習っていないし、感染症の歴史というのは日本ではほとんど役立てられていないと思う」

宮坂昌之氏
1947年長野県生まれ、京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学博士課程修了、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所、1994年大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター臓器制御学研究部教授、医学系研究科教授、生命機能研究科兼任教授、免疫学フロンティア研究センター兼任教授。2007〜08年日本免疫学会長。現在は免疫学フロンティア研究センター招へい教授。新著『免疫力を強くする 最新
科学が語るワクチンと免疫のしくみ』(講談社)。

https://news.yahoo.co.jp/by…/kimuramasato/20200228-00165104/
新型肺炎「日本は感染症と公衆衛生のリテラシーを高めよう」 2/28
免疫学の大家がPCR論争に苦言  木村正人  在英国際ジャーナリスト

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【結】
私たちをとりまく国際社会では、科学=技術革命が畸形的に発展している。現代の災難は、人類の存在を生物学の視点からも、自然環境学の視点からも、危機的な自然史地点においこんでいる。ひとつひとつの問題に丁寧にたちどまり考えたい。慎重な吟味と、さらに、「歴史的趨勢の中で現時点がどのような位置にいるか」を常に忘れてはならない。