・結局、研究者がくだした結論は、読書療法が、うつ病に苦しむ患者さんに有効であり、公的教育とうつ病防止プログラムにおいて、重要な役割を担う可能性がる、というものでした。そして、本書を用いた読書療法が、否定的な思考傾向をもつ個人が、互いに協力し合い、うつの深刻な症状を防止するうえで役立つのえはないか、と彼らは推論しています。
・全米50州すべての500人に及ぶ、アメリカの精神衛生専門家を対象に調査を行い、回復の速度を速めるために面談と面談の合間に読むよう、患者さんに本を「処方」したかどうかについてたずねました。調査を受けたセラピストの70%が、その前年の1年間に、自分の患者さんに少なくとも3冊の本を推薦したと述べ、さらに86%が、これらの本が患者さんに好ましい効果をもたらしたことを報告しています。また、セラピストには、100冊のリストの中から、どの自助本を最も頻繁に患者さんに推薦したかについても質問しました。その結果、本書が、うつ病の患者さんに推薦する書の第一位に評価され、やはり私の書である、フィーリングGoodハンドブックが、第二位にランクされました。
・認知療法の原理
1) あなたの感情はすべてあなたの「認知」(物事の受けとめ方)あるいは考えにより作られる、ということです。認知はあなたが物をどう見るか、どのように受けとめるか、それに対してどのような態度をとるか、そしてどのように信じるかを規定します。
2) 「憂うつな時には悪い方向ばかりでものごとを考える」ということです。自分自身のことを悪く考えるだけでなく、世の中全体を暗く考えてしまいます。始末の悪いことに、自分の思っているように事態は「実際に」ひどく悪いのだ、と確信してしまうのです。
3) 哲学的で治療的にも重要なものです。感情の混乱を引き起こすマイナスの考え方は、ほとんど常に認知の歪みを含んでいます。認知療法を学ぶにつれ、このような考え方は不合理で間違っておりあなたの憂うつの主な原因であることがわかるはずです。
・認知の歪みの定義
1) 全か無か思考
ものごとを極端に、白か黒かどちらかに分けて考えようとする傾向のことです。
2) 一般化のしすぎ
あることが一度あなたに起こったとすると、それが何度も何度も繰り返し起こるように感じてしまうと言うことです。
3) 心のフィルター
うつ状態の時には特別製のレンズのついてメガネをかけて、世の中のポジティブなこと、明るいことを見えなくしてしまうものなのです。
4) マイナス化思考
うつ病でもっとも始末の悪い錯覚は、何でもないことや良い出来事を悪い出来事にすり変えてしまうことです。
5) 結論の飛躍
事実と違った悲観的な結論を一足飛びに出してしまうことです。
① 心の読みすぎ
他人があなたを見下していると思い込んでしまうと、はたして本当にそうなのかを確かめようともしなくなります。
② 先読みの誤り
不幸しか映らない水晶の玉の前に座った占い師のようなものです。
6) 拡大解釈と過小評価
私はこれを「双眼鏡のトリック」とも呼んでいます。つまり対象物を拡大して見たり、縮小したりするという意味です。
7) 感情の決めつけ
これは自分の感情をあたかも真実を証明する証拠のように考えてしまうことです。たとえば、「私はダメ人間のように感じる。それが何よりもダメ人間の証拠だ」といった具合に考え方です。
8) すべき思考
なにかやるとき、「これを『すべきだ』」「これを『しなければならぬ』」と考えてしまうことです。こういう考え方は必要以上のプレッシャーを与え、自分自身を追い詰めてしまいます。
9) レッテル貼り
間違った認知に基づいて完全にネガティブな自己イメージを創作してしまうことです。
10)個人化
罪の意識のもとになる考え方です。良くない出来事を理由もなく自分のせいにして考えてしまうことです。
・無価値だという気持ちを克服する。
・自己評価を確立するための特別な方法
1) 内面の批判的な声に反発すること!
克服するための三つの段階が必要です。
① 胸の内に自己批判的な考えが浮かぶとき、それをはっきり見て記録するように訓練する。
② このような考えが、なぜ歪んでいるかを学ぶこと。
③ もっと合理的な自己評価システムができるように、このような声に実際に反発すること
2) 精神のバイオフィードバック
腕につけるカウンターを利用して、ネガティブな考えをチェックする方法です。ボタンを押すたびにカウンターの数字が変わるようになっています。ネガティブな考えが心に浮かぶと、一定の警告して数字が変わります。その日の終わりにスコアを見て、日誌に書き込むようにしなさい。
3) しょげないで、乗り越えること
・ぐずぐず主義と虚無主義に最も見られやすい心理状態です
1) 絶望
2) 無力感
3) 圧倒されること
4) 早合点
5) レッテル貼り
6) 報酬を安く見積もってしまうこと
報酬が払った努力に値しないように感じるからです。
7) 完全主義
8) 失敗への恐れ
9) 成功への恐れ
偶然成功しただけなんだ、と思っているからです。
10)非難や批判への恐れ
11)プレッシャーと反発
12)フラストレーション許容力の低下
13)罪と自責の念
・日常スケジュール
どうして役立つのでしょうか?
それは第一に、活動の価値についてくよくよ悩む癖を断ち切るからであり、また実行しようかどうしようか逆効果になるような熟考をも断ち切るからです。スケジュールの活動の一部分でもやり遂げることは、何らかの満足をもたらしてくれうつ状態とも闘ってくれます。
・誰かに批判されたときどう言い返し、難しい状況で優越感や自信を高めていくためにはどうしたらいいかを示します。
1) 共感
2) 批判の武装解除
① 踏みとどまって言い返す
② そこから逃げる
③ うまく相手を無力化
3) フィードバックと交渉
批判者の言うことに共感の技法を用いて耳を傾け、そのなかに何かしら共感できるものを密消えるこtによってその人の武装を解いたら、そこであなたの立場と感情を手際良くはっきりと説明できる立場に立てます。
・自分の怒りについて知るべき十の事柄
1) この世に起こることがあなたを怒らせるわけではありません。あなたの「怒りの考え」が怒りを引き起こすのです。
2) たいてい、怒りはあなたを助けたりしません。それどころか、怒りによって活動できず、何ら生産的な目的もなく敵意のなかで身を縮めることになるのです。
いままでで一番幸せだと感じた時期をひとつでも思いうかべてみてください。
3)怒りを頻繁に引き起こす考え方は歪んでいます。その歪みを直せば怒りの回数は減るでしょう。
4) 怒りというものは、誰かの行為が不正であるとか、なにか不当なことが怒ったと信じていることから引き起こされるのです。
5) あなたがこの世を他人の目を通して見ることを覚えたら、他人の行動が彼らにしてみたら何ら不正ではないということに気づき驚くことでしょう。
6) 他人はたいていあなたに責められるいわれはないと思っています。
7) あなたの怒りは、他人に批判されたり賛同してもらえなかったり、他人が自分の望んだとおりのふるまいをしなかったときに自尊心をうしなうことに対する防衛から怒ることが多いのです。
8) 挫折感は期待が実現しないことにより起こります。
9) 自分には怒る権利があると主張してすねるのは子供じみたことです。
10)人間でいるためには、怒りはほんのたまには必要なものです。
・純粋に嫌なことが起こったら、もっぱら考え方と認知から感情は湧いてくるものです。その出来事に対するあなたの意味づけから感情が湧いてくるのです。あなたの悩みの実質はあなたの考え方の歪みにあるのです。その歪みをなくせば「現実的問題」の苦痛もずっと少なくなるはずです。
・本当に治った場合とは、次のような状況を指します。
1) どうして憂うつになったかその原因を知っている。
2) なぜ、あるいはどうやったら良くなるかがわかる。このことは、自分自身にだけ効く特別な立ち直り術を体得して、それを必要に応じて再度適用し、効き目を発揮できることを意味する。
3) 自信と自負心を持つこと。自信というのは、人間関係のなかで、また仕事において自分に見合った成功を得るだけの良い機会に恵まれているということをわきまえてこそ生まれる。自負心は、自己愛をできるかぎり感じ、成功しようがしまいが人生をどんなときにも楽しめるということ。
4) もっと深く憂うつの原因を探ること。
・いつも認められたい(承認中毒)
なぜ他人に反対されることがそんなに怖いのでしょうか。あなたは次のように考えます。「誰かが自分に反対ということは、皆が私に反対していることを意味する。つまり私に何か間違いがあるのに違いない」と。
このような考え方をすれば、人から反対されるたびに気分が悪くなってしまいます。逆に、「誉められたときには気分が良くなれる」と言うかもしれません。しかし、なぜこの考えが不合理かといえば、自分の気分を高めるのは自分自身の考え方しかないということを見逃しているからです。他人の賛成などは自分でそれをもっともだと納得しなければ、気分に何の影響も与えないのです。ですから、たとえ誉められたとしても、自分の気分を良くさせるのは結局はあなたの考え方次第なのです。
・仕事だけがあなたの価値を決めるのではない。
不安やうつ病の原因となる第三の思い込みは、「人間の価値は人生で何を成し遂げたかによって決まる」というものです。
・自尊心を手に入れる四つの方法
1) 実用的かつ哲学的な方法です。
本質的に人間の「価値」などというものは抽象的なものであると理解しなくてはいけません。そんなものは存在しないのです。
2) 人は生まれてから死ぬまで一つの「価値体系」を持っていると理解するべきです。何もしていなくてすらも、あなたには「価値」があるのです。
3) 自分を責め、不必要で不合理な考えによって自尊心は失われるものだということを理解してください。
4) 自尊心は、自分自身を親友のように扱うことで得られます。
・中ぐらいであれ!
あなたには「完璧」の扉を通ろうとして、いつももう一つのれんがの壁に突き当たります。いくらそれを突き破ろうと努力しても、結局はそこにぶつかって痛い思いをするだけです。反対にもう一方の「中ぐらい」の扉の向こうには、魔法の庭があります。
・アーロン・ベック博士は、死にたいという願望は中等度のうつ病ではおよそ1/3に、重症のうつ病では3/4に認められると報告しています。
・なぜうつの人はそんなにしばしば自殺を考えるのでしょうか、またこういった衝動を防ぐには何ができるのでしょうか?
彼らの思考には、悲観的なものの見方が蔓延しており、人生は悪夢以外の何ものでもないように思えてしまうのです。過去を振り返ると、思い出すのは抑うつと苦悩の日ばかりです。
あなたの気分がどんなに悪くても、ものごとは最終的に良くなっていくという確信さえ持っていれば耐えられるものです。
・自殺が、問題解決の唯一の、そして最上の方法だとするあなたの考えは間違っています。
あなたが自殺したいという考えを持っているなら、その考えを重大だとみなしているかどうか自分自身に尋ねてごらんなさい。
積極的な死を望む場合は、もっと危険です。あなたが現実に自殺の手段を真剣に練っているとしたら、次のことを知っておくべきです。方法を考えていますか? それは、どんな方法ですか? 計画は? 何か特別な準備をしましたか? 一般に計画が具体的であればあるほど、また良く整っているほど、実行に移す可能性は高くなります。専門家の助けを借りるのは、今ですよ!
あなたは過去に、自殺を図ったことがありますか? もしあるなら、今抱えるのがどんな自殺衝動であろうとすぐに助けを求めるべき危険信号として、その衝動を考えないといけません。
・以下の項目があてはまれば、あなたは危険性が高いということになります。
1) 重症のうつ病で、絶望感を持っている。
2) 以前に自殺を図ったことがある。
3) 自殺についての綿密な計画を準備した。
4) 自分を引き止める何の歯止めも見当たらない。
この項目の一つかまたはそれ以上があなたにあてはまるなら、専門家による介入と治療を受けることが急務です。うつ病の人にとっては、自己救済という姿勢が重要であると私は固く信じているので、あなたは直ちに専門家の指示を受けるべきです。
・「自殺を望むあなたの動機は何ですか? あなたの人生で、解決法もないほど悲惨な問題とは、何でしょう?」
それからできるだけ早く、自殺衝動の背後にある非論理性を明らかにして救済をはかります。あなたがもっと論理的に考えられるようになったら、絶望感は消え、生きたいという欲求が出て来るでしょう。こうして私は、死にたいと願う患者に死よりも喜びを勧めるのです。そして、できるだけ早く喜びを手に入れるような方法を教えるのです。
感想;
「心と体がラクになる読書セラピー」寺田真理子著 ”言葉の力”
「うつの世界にさよならする100冊 本を読んでココロをちょっとラクにしよう」寺田真理子著 ”100冊のエッセンス紹介”
より良い認知をするためには、この本はとても役立つように思いました。
自分の考えは、親や先生など周りの人から催眠術をかけられて、あたかもそれが正しい考えだと思い込まされているのかもしれません。
これを臨済宗では”人惑(にんわく)”と呼んでいます。
ワッソは”社会的催眠”と呼んでいます。
そして人は催眠術をかけられた自分の考え方に縛られて自分を苦しめている場合があります。
自分で自分を苦しめることほど苦しいことはありません。
人惑から自由になり、自分の価値観を持つことなのでしょう。
その新しい価値観、考え方で人生を歩むと見える世界が変わるのでしょう。
仏教用語で「唯識」があります。
世界は自分の考え方を通して見ているのだということです。
自分の考え方が変わると、見えるものが変わるのだそうです。