https://news.yahoo.co.jp/articles/cb7bba390cbdff453f2952b7652515dbf2ad9e34?page=1 12/28(火) 8:01婦人公論.jp
「〈こんな年にしよう〉という意志を持ち、前を向いて自らの力で歩くことが大切です」(撮影=鍋島徳恭)
86歳になった今だからこそわかることがあると言う美輪明宏さん。困難な時、自信を失った時にも前を向いて進むために必要な心構えを聞きました(撮影=鍋島徳恭 構成=篠藤ゆり)
美輪さん直筆の書
◆渋沢栄一のような実行力を
毎年、年末になると、いろいろなところで「来年はどんな年になるでしょう」と聞かれます。私のことを、預言者か何かだと思っているのでしょうか。(笑)
でも、「どんな年になりそうか」だなんて受け身で待っているだけでは、何も変わりませんよ。「こんな年にしよう」という意志を持ち、前を向いて自らの力で歩くことが大切です。
2024年に紙幣が新しくなるということで、21年にそのデザインが発表されました。一万円札の肖像画は、渋沢栄一になるようですね。
渋沢栄一といえば、大河ドラマで話題になりました。聞くところによると、あの方は一人で100人分くらいの仕事をなさったそうです。日本初の銀行を創業したり、ガスを引いたり、さまざまな会社の創立にかかわっています。
とにかくものすごい実行力で、「これをやるんだ」「やらねば」という思いで走り続けました。それもこれも、「日本を何とかいい国にしたい」という志があったからでしょう。そんなふうに志を持ち徳が高い方が、たとえば総理大臣などの立場で日本を引っ張っていけば、きっと日本もいい方向に向かっていくでしょうね。
渋沢栄一は大変能力の高い人ですが、特別な能力がなくても、誰にでもできることがあります。皆さんに一番必要なのは、「悩む」より「考える」ことです。「悩む」と「考える」は、似て非なるもの。まったく違います。
◆日本をいい国にするためには
「悩む」というのは「感情」の所産。「考える」は「理性」です。何か起きた時、人はとかく悩むものです。でも、それは余計なこと。悩んだところで、答えは出てきません。憂鬱になり、落ち込むだけです。
追い込まれた時に最も必要なのは、知性、そして理知です。難しいかもしれませんが、感情は脇にどかしておいて、理知を働かせましょう。
もちろん、簡単なことではありません。だからこそ、お釈迦様をはじめ、いろいろな聖人や宗教者たちが、その道筋を模索したのです。
最近、日本という国に対して自信を失っている人も少なくないようですが、歴史を見直せば違って見えてくるはずです。
たとえば日本の漫画やアニメーションは、世界を席巻しています。私も、宮崎駿さんの『もののけ姫』と『ハウルの動く城』で、声の出演をいたしました。
日本の漫画やアニメの歴史は、平安時代にすでに始まっています。有名な『鳥獣戯画』は、絵巻物になっているので、まさにアニメの原型と言えます。
江戸時代の漫画などに出てくる妖怪は、どこかユーモラスですね。ふんどしのお化けなんて、笑ってしまいます。葛飾北斎の『北斎漫画』に出てくる提灯のお化けなども、どこかかわいらしい。そこへいくとヨーロッパのドラキュラなどは、陰惨な感じがあります。
宮崎駿さんのアニメーションには、そういった伝統が受け継がれている気がします。「そこがすばらしい」と、うんと褒めて差し上げました。
最近は、さまざまなロボットが登場していますが、その原型は、とっくの昔にあります。
一番古いからくり人形は、「指南車」と呼ばれるもので、『日本書紀』にも出てくる。江戸時代にはお茶を運ぶ人形など、精密な人形が盛んに作られるようになりました。
今はすべてがデジタルの世の中ですが、日本には、すばらしいアナログの文化がありました。それを忘れてほしくないのです。
すべてがIT化され、確かに便利にはなりましたが、ロマンチシズムや情緒は失われつつあります。きちんと歴史を見て、理性的に分析し、守るべきものは守っていく。そうすれば日本はきっと、この先、いい国になると思います。
◆歴史を振り返ればそこに答えが
21年は、真子さんのご結婚について世の中、喧々。天皇制に関しても、やれ、男系男子でないとダメだとか──。
でも、それとて冷静な目で歴史を眺めたら、答えはちゃんと書いてあります。過去に持統天皇や孝謙天皇をはじめ、全部で8人の女性天皇がいました。江戸時代にも、2人いたそうです。
源頼朝の妻の北条政子のように、女性でも戦軍を率いた人がいます。木曽義仲の愛妾だった巴御前は、敵将の首をねじ切ったと言われています。男だから、女だからと性別にこだわるのが、そもそもおかしいのです。
オリンピックやパラリンピックを見ると、過去には男性のみの競技だと思われていた種目で、日本人女性選手の活躍が目立ちました。重量挙げやレスリング、ボクシング、サッカー、ラグビーなども、今では男女平等に行われています。
最近は多様性が大きなテーマとなり、LGBTの権利についても関心が高まっていますが、この問題も歴史を振り返ると、かつて日本で男性同士が愛し合うことは珍しくなかったことがよくわかります。
織田信長とだった森蘭丸の関係は有名で、明らかに二人は愛し合っていました。また、江戸幕府五代将軍・徳川綱吉の小姓だった柳沢吉保は、寵愛を受けて側用人に取り立てられ、大変出世したそうです。吉保は、全国から美少年を集めて柳沢十六人衆と名付け、歌舞音曲を仕込んで美しい着物を着せ、大名などをもてなす際に重用しました。日本には、そうした伝統もあったのです。
男色が排斥されるようになったのは、軍国主義の影響が大きいと思います。日中戦争から始まり戦争の時代になると、男性は徴兵され、戦場でどんどん死んでいきました。そこで兵士を補充するために、国は「産めよ、殖やせよ」と号令をかけたわけです。
そういう時代には、同性愛の人は「生産性がない」ということで、国賊扱いされました。非国民と言われたのです。LGBTが差別・排斥される社会というのは、ことほどさように恐ろしい。人の命を何とも思わない、強権的な社会であることの証しと言ってもいいでしょう。
◆老いて大樹になるか、朽ち果てるか
私は今、86歳です。やはり、実際にこの年齢になってみないとわからないことがたくさんあります。私より2歳上の黒柳徹子さんが「時間が束になって飛んでいく」とおっしゃっていましたが、まさにそんな感じです。
50代、60代の頃と比べると、体調の浮き沈みも激しくなってきました。私はもともと慢性気管支炎を抱えていることもあり、最近は数日単位で体調が変わります。動きも以前のようにテキパキとはいきませんから、大変のろまです。
けれど、「老い」は誰しも避けられないもの。受け入れるしかありません。たとえ若い頃、美貌に恵まれたとしても、「え~っ、あんなになっちゃったの?」と言われるようになります。かくいう私自身、まさにそうです(笑)。もう、見る影もありません。
ただ、老いて大樹になるか、朽ち果てるかは、人それぞれでしょう。
何のために生きてきたのか。どう生きてきたのか。今までの人生の積み重ねが問われるのです。つまり「老い」とは、人生の総決算の時期と言ってもいいでしょう。
その時期が近づいたら、人生を振り返り、自分を見つめ直して、総ざらいしてみることをおすすめします。自分は、誰かのためになっているだろうか。人のために、何かしてあげたことがあるのかを、自分に問うてみる。そして、自分を大事にしてくれた人に感謝することです。
◆戦中戦後のことを思い出して
えてして人は、してもらうことを「当たり前」と思いがち。とくに夫婦の間では、そうなりやすい。夫は妻が世話を焼いてくれるのを当然と勘違いし、一方妻は、夫が必死で働いてくれたおかげで生活できているのに、慣れっこになってしまい、感謝する気持ちが吹っ飛んでいる。そして、不平不満が出てきます。
小さい子どもからおじいさん、おばあさんまで、何一つ不平不満がない人はひとりもいないと思います。もし不平不満があった時は、何か感謝することはないかを探せばいいのです。
たとえば、歩ける。見える。聞こえる。口がきける──。今できることがあるというのは、ありがたいではないですか。感謝が大事だということを頭に入れておくと、日々の心持ちも変わります。
私はときどき、戦中戦後のことを思い出すようにしています。当時は皆さん食べるものもなく、お米が数粒浮かんでいるだけのお粥をすすっていました。もう、卵なんて貴重品もいいところ。私も長崎で原子爆弾によって被爆し、苦しみました。そういう時代を振り返ると、「今は何てありがたい世の中なんだろう」と思えるのです。
世の中は「正負の法則」から成り立っています。プラスとマイナスは交互にやってきて、最終的にはゼロになる。自分には悪いことばかり起きると思っている人も、同じくらいいいことがあったはずです。それに気づいて感謝の気持ちを持てば、まわりに優しくできます。すると人からも優しくしてもらえますし、何歳になってからでも運が開けますよ。
(構成=篠藤ゆり、撮影=鍋島徳恭)
感想;
美輪明宏さんが86歳になられても今も前を向いて生きられています。
もう年だからとつい思ってしまいますが、まだまだやれることがあるように思えます。
こうしたいという思いを持つかどうか。
そして今自分に出来ることをしていくことなのでしょう。
仮に周りからよく思われなくても、それが多くの人にとって意味あることであれば、気にせずに進むことなのでしょう。
結局、よく思わない人は多くの人のとって意味あることをしようとしない人なのですから。
目的が間違ってなく、やり方に問題なければいつかそれが当たり前になる時が来ると信じで行うことなのでそう。
これは自分への言葉でもあります。
人生に意味を持たせる。
人生からの問いかけにできることをしていくことなのでしょう。
そのときそのとき良いと思う判断をして。
後からそのときの判断が良くなかったとしても、それは状況が変わったからです。
また判断ミスだと思えばこれからに生かせば良いだけです。
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