警察庁によると、去年、全国の警察が児童虐待の疑いで児童相談所に通告した18歳未満の子どもの数は、11万5762人と過去最多でした。虐待を受けた子どもへのケアがますます大きな課題となる中、虐待を受けた子どものその後に密着したドキュメンタリー映画が公開されました。
虐待を受けて施設などで育った若者約70人の”リアルな声“を映し出すことで、「大人になっても、虐待の苦しみは終わらない」というメッセージを伝える映画『REALVOICE』。
12日、都内で行われた試写会には、企画・監督を務めた山本昌子さん(30)、メインキャストの阿部紫桜さん(20)、主題歌を提供した歌手の加藤登紀子さんが登壇し、トークショーを行いました。
虐待を受けて施設などで育った若者約70人の”リアルな声“を映し出すことで、「大人になっても、虐待の苦しみは終わらない」というメッセージを伝える映画『REALVOICE』。
12日、都内で行われた試写会には、企画・監督を務めた山本昌子さん(30)、メインキャストの阿部紫桜さん(20)、主題歌を提供した歌手の加藤登紀子さんが登壇し、トークショーを行いました。
◇「まずは知ってほしい」そのために無料で公開
約70人の当事者の声を取材し映画を制作した山本さん
企画・監督を務めた山本さん自身も、生後4か月で育児放棄を受けて乳児院に保護され、その後児童養護施設で育ちました。
現在は、虐待から逃れたなどの理由で孤独を感じている人に自宅を開放する「居場所事業」を行っています。
事業を通じて、児童養護施設などの社会的養護を離れた後に、多くの人が虐待の後遺症や孤独に苦しんでいると気づいた山本さん。
山本さんは「知ってもらうことが大切」と語った
山本さん:
まずは知ってほしい。私たちの声に耳を傾けてくれる、それだけですごくありがたいし、それこそが、今知ってもらうっていうことがこの日本で大切なことかなと感じています。
仲間たちの“リアルな声”を多くの人に知ってほしい。映画を企画すると、全国約70人の当事者が集まりました。
映画は、より多くの人に見てもらえるよう、公式サイトなどで無料で公開しています。
虐待を受けた当事者が「未来の子どもたち」のためにと協力した
山本さん:
(映画制作を)やろうって言ったときに、自分から「やりたい」って手を挙げてくれる子が多くてすごく驚いたんですね。でも、やっぱり自分の(虐待を受けた)経験を私たちが肯定できるチャンスって、人のためになった瞬間しかないと思っていて。
親に理不尽に殴られた理由をいくら考えても分からない。理由なんて出てこない。何で自分が愛されなかったのか分からない。
それでも、過去の自分は救えなくても未来の子どもたちに繋げたい。本当にみんなそういう思いだと思っています。
◇大人になっても続く苦悩…虐待を受けても簡単には切れない縁
約1年間の密着取材を受ける阿部さん
トークショーに登壇した阿部紫桜さん。約1年間の密着を通し、大人になっても続く苦悩を伝えました。
映画のなかで阿部さんは、虐待を受けてもなお母親を「大好き」と話し、義理の父親の死を経て、落ち込む母親を支えるか、母親と絶縁して自分の人生を優先するか、葛藤する姿が描かれています。
母親に対する複雑な心境を語る阿部さん
阿部さん:
母親の態度によっては絶縁しますし、その覚悟を持って映画に出演をさせていただいているので。もう自分は自分だし、これからの人生自分は他の人に邪魔をされたくないので。
映画を母親が見てどういう態度を取ってくるか。それによっては関係をそのまま継続していくんですけれども、親がすごく否定的な意見であったり、「あなたが悪い」と言ってきたら、もう絶縁しようかと思っています。
◇加藤登紀子さんが提供した主題歌『この手に抱きしめたい』(メンバーが歌っています)
主題歌の『この手に抱きしめたい』は、今回山本さんの思いに賛同した加藤登紀子さんが、無償で提供しました。
映画の上映後、ステージ上で山本さんを抱きしめた加藤さん
加藤さん:
ここ(作品中)に描かれていないけれども、「本当はあなたを愛しています」「遠くからあなたを見守っています」っていう。お母さんの側からのメッセージのような感じがしましたね。お母さんの声を、歌を通して聞いてほしい。
◇虐待のSOSには「そんなことがあるわけない」ではなく「あるかもしれない」と考えて
出演者や施設の職員、映画に出資した支持者らが映画を鑑賞した
映画を通し、虐待された人たちの苦悩を描き、問題を提示した山本さん。
山本さん:
みんなが虐待のSOSを出しているのに否定された経験から、もうSOSを出したくないと感じている子は多いと思っていて。多分防御本能だと思うんですね。聞いている側の。
「そんなことがあるわけない」とか「作り話なんじゃないだろうか」「嘘なんじゃないだろうか」とか。受け止められず嘘だと片付けようとしている自分にみんなが気づく、そこがとても大切だと思っていて、「そんなことはあるのかもしれない」。そう、想像を働かせていってくれる方が増えるっていうだけで変わってくると思っています。
感想;
虐待を受けて、でも今前を向かって生きていこうとして若者たちが映画を作り、謳っています。
当初、エイズで闘っている医療関係者の応援ソングとして作られたのですが、映画『REALVOICE』のためにプレゼントされたそうです。
先ずは知って欲しいということで、無料で公開されています。
多くの子どもたちがREALを話されています。
母親から「あなたを生まなかったら良かった」と言われた子が、何度も自殺未遂してきたことも話されています。
自分で自分を傷つける。自分の身体に傷つける。
苦しさを身体に残す。
死にたいというより、今の自分を知って欲しいとの気持ち。
部活の顧問の先生が、苦しい、死にたい気持ちを伝えたら、「思春期だからよくあることだ」と言われた。
親身に聴いてくれたら、一人でないと思えた。
その頃はSNSを使って異性と交流していた。
一時でも心配してくれる人がいるのが嬉しかった。
いま思えば、男の方に利用されていたかと。
SNSだからこそ、私のことを知らないのでストレスの発散になっていました。
児童相談所に相談したが、暴力ではなくネグレクトだったので、行政が「優先順位が低い」と相手にしてくれなかった。
そのときは、行政の人より夜の世界の男性の方を信頼していた。
体重も35Kgど瘦せていた。
中学生だったが、死ぬことより夜の仕事をすることにした。
今生きられているのはその仕事をしていたから。
男の人と性的な行為をすることは抵抗あるが、幼少期のときに、養護施設で、年少者から性的被害を受け、それが当たり前と思っていた。
実の父親からも性的虐待を受けたので、夜の仕事をすることに抵抗がなくなってしまっていた。
防御本能がなくなっていた。
家に帰らない子どもを、「子どもが悪い」と決めつけてないで欲しい。
「ずーっと虐めてきた人、放っていた保護施設の人、全員死んでください」
虐待を受けながらも生きのびてきた人の生の声がたくさん込められています。
それにしても、男が悪いとつくづく思います。
子どもを作ったなら責任を取れ!
種蒔くだけの動物と一緒です。
でも、支える人もいました。
その多くの声を入っています。
厳しい状況の中で、どう自分た頑張ってやれたかとの話もあります。
親に期待しなくなった。
自分で何かしないといけないと思うようになった。
同じ虐待されてきた子と出会って、少し救われた。
自分だけでなかったと思えて吹っ切れた。
自分のことを話して、誰かの助けになる。
自分の過去は助けられないけど、これからの子どもを助けられることができる。
理解する人がいるだけで、救われることがある。
この映画を見て、少し目を向けるだけで、今も虐待を受けている子が救われるかもしれないとの思い。
虐待は他人事ではなく、身近にあることとこの映画を見て知って欲しい。
最後に、加藤登紀子さんの歌を含めて、1時間27分の映画になっています。
ある総理が「先ずは自助、次は共助、最後に公助」と言っていました。
自助、共助できない子どもの公助が欠けています。
その総理は自分の子どもを会社の役職に就けさせて、総務省の幹部とその会社が会食して、特別にその会社に許可を与えました。
こういう親助がある人だから「先ずは自助、次は共助、最後に公助」と言えるのかもしれません。