英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『東野圭吾ミステリーズ』 第8話「小さな故意の物語」

2012-09-01 15:38:25 | ドラマ・映画
―重なる恋(故意)心―

美代子(三吉彩花)の故意
 達也(大野拓朗)への恋心(片思い)に気づいて欲しくて、鏡で反射させた光を屋上の縁にいた達也に当てた
洋子(波瑠)の故意
 達也の束縛から逃れたいと思った洋子は、美代子の反射させた光を達也に気付かせた(目が眩みバランスを崩して転落すること期待)

 この両者の故意は、多少意味(罪)が異なる。
 光を反射させたのは思いを届けたかっただけの美代子に対し、達也の転落を期待しての洋子の行為なので、悪意は洋子の方が濃い。
 ただ、洋子は光に目が眩んで転落してしまうと確信していただけではない。美代子にしても、光の反射をし続けていたような感じだったので、洋子の行為がなくても転落につながった可能性はある。転落との因果関係は美代子の行為の方が大きい。


達也(大野拓朗)の故意
 屋上の縁に立った達也。洋子の態度によっては飛び降りることを考えていたのではないか?
 洋子を失いたくない、良(三浦春馬)に奪われたくない。それなら、いっそ死んだ方がまし。そんな気持ちがあったのだろう。
 そして、洋子の心を知ったところへ、光を受ける。しかも、洋子がそれに気付かせたのだ。
 自分の死を以って、洋子に足枷を付けた。しかも洋子に、事故を誘発させた、いや、殺害したという意識を持たせ、呪縛をかけたのだった。

 堤防で寝ころぶシーン、夏の制服で歩く男女、青春の空気漂う美術室など、青春の甘酸っぱさや切なさを感じさせる画は良かった。
 夏服の三浦春馬も良かったが、顔はともかく胸板や肩幅が発達してしまっているので、高校生としては苦しい。やはり、男子高生はどこか華奢なところがないと……(あ、私にはそういう趣味はありません。セーラー服の方がいいです)

 あと、思わせぶりの演出が不要かな。
①良が美代子の描きかけの絵を見ようとするのを制止する時の「念が入ってしまう」という台詞
②洋子が美代子が乗ったバスを必死に追いかけるシーン

 ②には必然性を感じないが、画的には良かったので許す。

 
【ストーリー】番組サイトより
高校三年生の中岡良(三浦春馬)、佐伯洋子(波瑠)、行原達也(大野拓朗)は、小学校からずっと同じ学校に通う幼なじみで仲の良い3人組。だが、思春期に入ると関係は微妙に変化。洋子と達也が交際を始めたことで、良は悩んでいた。良も密かに洋子に想いを寄せていたからだ。表面的な関係は変わらないが、良は早く高校を卒業して想いを断ち切りかった。
そんなある日。衝撃的な事件が起きる。達也が校舎の屋上から転落死したのだ。目撃した生徒によると、達也はひとりで屋上の縁を歩いていて、急にバランスを崩して落下したらしい。捜査にあたった刑事たちは自殺も視野に入れている。だが、良には事故も自殺も考えられない。なぜ、達也は死んだのか? その原因が知りたかった。

次の日、達也のロッカーが何者かに壊されていた。散乱した達也の私物を片付ける洋子のもとに良が駆けつける。昨日は冷静に対処していた洋子も、さすがに動揺は隠せない。そんな2人を伺う、人影が…。

 良は達也が立っていた屋上に行く。すると後を追うように女子生徒がやって来て、良に気づかれると慌てて去った。追いかけた良は、担任の井本五郎(近藤公園)に遮られてしまう。事件以来、立ち入り禁止となった屋上の扉の鍵を持ち出したことを咎められたのだ。だが、良は井本から、逃げた女子生徒の名を聞く事が出来た。笠井美代子(三吉彩花)。良は達也の葬儀で気を失った女子生徒を思い出す。
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王座戦第1局 その2 ~この将棋を負けたということは~

2012-09-01 11:48:14 | 将棋
後手番の渡辺竜王は急戦矢倉を採用。2008年竜王戦で苦杯を喫した羽生ファンにとっては縁起の悪い戦型。勝負が揺れた難解な激闘……あれから4年、羽生ファンの無念な思いは、未だ晴れていない。


先手の羽生二冠は、後手の飛先交換を拒否せず、更に▲3六歩と自らの飛先交換は急がないという指方。飛先の歩交換より、布陣を優先させるということなのだろうか?


更に▲9七角と意欲的。しかし、これには△6五歩▲7七桂に△6六歩と強烈な反発があり、ここで飛車を取れずに▲5七金とよろけるのでは先手が辛いのではと思ったが、以下△8三飛▲2四歩△同歩▲同飛と進んでみると、▲3四飛と横歩を取る手(5四の銀取り)や飛車角交換をして▲7二角(飛車銀両取り)が見えて、後手の受け方が難しいと言う控室の声。


 どう受けるのか控室は注目していたが……竜王は受けなかった。これこそ、羽生二冠に対して「かかってきなさい」という王者の手
 いろいろな攻め筋があるので受けるのは大変。それなら、「攻めが緩んだら攻めますよ」とプレッシャーをかけたのだ。
 うまく表現できないが、玉の生命力(ライフポイント)を100とした場合、第3図の一手前の局面で放置した場合30点削られ、受けても15点の被害を受ける。ならば、的玉の端に手を付け10点(15点かもしれない)のポイントをあげておき、次に取り込む手(△9六歩・25点相当)の手を見せておいた方が効果的と見たのだ。
 なので、羽生二冠もこの竜王の考えを無効にするため(△9五歩を緩手にしたい)、いきなりではあるが▲4二角成と角を切ったのだ。

 第3図より▲4二角成△同金上▲2三歩△4四角▲4五桂と進む。▲4五桂は攻めを溜めた手だ。△9六歩と取り込まれるより一手早く角を切ったため攻めを溜めることができたのだ。
 しかし……


 それでも、竜王は△9六歩!(第4図)

「いやぁ、堂々と取られてねぇ」(羽生)
「こちらは他に選択肢がないので。見た目は一手負けかと思いましたが」(渡辺)


 感想戦の言葉である。取り込まれない計算で事を進めていたのに、堂々と取られてしまった。しかし、渡辺竜王にも成算があったわけではなかった。他に選択肢がなかったこともあったからだが、ここでの心理状態が、後の羽生二冠の読み(直観)を狂わせることになったのではないだろうか。


 竜王の圧力を感じながらも、羽生二冠は細い攻めを正確につなげていった。しかし、竜王も頑強に受け羽生二冠に緩みを許さない。
 そして迎えたのが第5図だった。


【中継サイトより引用】
「▲2二歩成△4一玉▲3二と△同金を利かしてから▲4五銀(参考図1)としなきゃいけませんでしたね。あとからだと▲3二とが入らない変化が出てくるので」(羽生)
上記の変化は▲4五銀以下、△6七桂▲6九玉△1五角▲3二銀成△同玉▲2三金△4一玉▲5四銀△4八銀▲6七金寄△同歩成▲同金△8七飛成▲5三桂△同角▲同銀成(参考図2)まで並べられ、「先手玉が詰まないので負けそうですね」と渡辺。羽生は「こうやるべきでしたね」と悔しそうな表情を浮かべていた。
 


 ただ、この手順前後は致命傷ではなかった。
 問題は、第5図より▲4五銀△6七桂と進んだ第6図だった。


【中継サイトより引用】
「これが厳しくて、しびれちゃいました」と羽生が言ったところで、立会人の島九段が「▲6九玉と逃げる手はどうでしょうか」と質問した。
羽生の読み筋は▲6九玉△4二玉▲4四銀△同歩▲3一角△同玉▲3四飛△4二玉▲3二金△同金▲同飛成△5三玉▲5五歩△同銀。それで足りないと見ていた。渡辺も同様の読みだった。
しかし△5五同銀に▲7二竜(参考図3)と回る手があり、むしろ先手が面白かったようだ。▲7二竜は△6三金からの詰めろ。感想戦では△6三角▲8三竜△7二銀の変化が並べられたが、「そうか、飛車を取れるのならやりますね。形勢は難しいと思いますが」と羽生。両者とも▲7二竜が見えていなかった。



 ▲6九玉を逃してからは先手に勝ちはなかったらしく、この後、しっかり△9七歩成を間に合わされ、渡辺竜王の先勝となった。


 機敏に動き、一手のリードを保ち逃げきるはずだったが、渡辺竜王の圧力に間違えてしまった。竜王の断固たる指し手に、どこか羽生二冠が引け目を感じ、自分の読み(感覚)に自信を持てず、読みの精度や深さが減少しているような気がする。
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