平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「Winny(ウィニー)」~警察は未来の技術者・国民にこの逮捕が正しかったと胸をはって言えますか!?

2025年01月31日 | 邦画
 ナイフは犯罪に使われるが、ナイフを発明した人は罰せられるのか?

 映画『Winny(ウィニー)』はこのテーマを扱った作品である。
 現実に起こった事件でもある。

 金子勇(東出昌大)はプログラマー。
 ファイル共有ソフト“Winny”の開発した。

 WinnyはIT用語で言う「P2P」。
 サーバーを介さすパソコンなどの端末同士でデータをやりとりできるソフトだ。
「P2P」はインターネットの次世代型フォーマットだと言われている。
 つまりWinnyは日本がこのジャンルで大きくリードできる可能性を秘めたものだった。

 しかし、Winnyを利用したユーザーが著作権のある著作物を違法にやりとりしたことで、
 金子勇は「著作権法違反」などで逮捕。
 裁判をおこなうことになる。
 結果Winnyは「問題のあるソフト」として使用禁止に。
 ヴァージョンアップも、進化もできず、Winnyはそのまま消えていくことに……。

 そこで冒頭の命題の登場だ。
『ナイフは犯罪で使われるが、ナイフを発明した人は罪に問えるのか?』

 Winnyで違法なデータのやりとりをしたのは別の人間である。
 この人たちは逮捕されていい。
 しかし、開発者はどうなのか?
 金子勇の逮捕は正当なのか?

 金子勇の逮捕の背景には別の理由もあったらしい。
 Winnyを使ったことによるウイルス感染で、愛媛県警の裏金の極秘文書が漏洩してしまったのだ。
 警察とって極秘文書の漏洩は致命的なこと。あってはならないこと。
 それを引き起こしてしまうWinnyは違法なソフトとして消滅させた方がいい。
 だから金子勇を逮捕した?
 もし、これが事実だとしたら、
 警察の事情で優れた開発者や技術がつぶされたことになる。
 とんでもない愚行だ。

 金子勇の逮捕は別の問題も引き起こす可能性がある。
 他の開発者が萎縮してしまうことである。
 自分の開発した技術が悪用されたこと逮捕されるのなら、
 技術者は危なっかしくて技術開発などできない。
 結果、日本の技術は世界からどんどん遅れをとっていく。

 冒頭でも書いたが、Winny事件は実際に起こった事件である。
 映画『Winny』は、優れた開発者や技術が政治的・組織的な思惑で潰される愚かさを描いた作品で
 ある。
 これは現代日本の縮図とも言える。
 30年間ほとんど経済成長していない日本。
 画期的な技術や製品を生み出せないのは、こうしたことが原因なのだろう。

 現在、世界ではAIの開発競争が盛んだが、ぜひWinny事件のようなことがないことを願う。
 再エネ技術で日本は遅れをとっているが、原子力発電にこだわり過ぎている結果ではないか?
 原子力ムラが再エネ技術の発展を阻害している?


※関連動画
 映画『Winny』予告編(YouTube)

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「オッペンハイマー」~プロメテウスは神から火を盗み、人間に与えた。そのため彼は岩に繋がれ永遠に拷問を受けた

2025年01月29日 | 洋画
「プロメテウスは神から火を盗み、人間に与えた。そのため彼は岩に繋がれ永遠に拷問を受けた」

『マンハッタン計画』
 原爆を造ったJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)の話である。
 オッペンハイマーはユダヤ人だったこともあり、ナチスとの戦争を終わらせるために原子爆弾の製造に手を貸した。
 ナチスも原子爆弾の製造に着手していたから先に開発されたら、連合国に使われる可能性もあった。
 だが原爆完成前にナチスは敗北。
 製造された原子爆弾は日本に使われることになる。

 ここからオッペンハイマーは苦しみ始める。
 原爆を造ったことは是だったのか?
 アインシュタイン(トム・コンティ)は反対した。
 人類が途方もない力を持つことになるからだ。

 オッペンハイマーは政治に翻弄されるようになる。
 第二次世界大戦後は東西冷戦の始まり。
 レッドパージの時代。
 オッペンハイマーは共産主義の妻、恋人、友人がいたため、ソ連に通じているのではないかと疑われる。
 ソ連も原子爆弾を開発したので、アメリカ政府は「オッペンハイマーが原爆の製造方法やデータをソ連に流したのではないか」と疑ったのだ。
 実際、友人の中にはソ連のスパイがいた。

 その後、東西冷戦は本格化。
 米ソは原子爆弾を競って製造するようになる。
 プロメテウスがもたらした火はあっという間に世界中に広まってしまったのだ。

 この状況にオッペンハイマーは唖然とし、自分にこう言い聞かせる。
「人類を滅ぼす力だから、使用されることはない。逆に戦争の抑止力になる」
 同時にこう主張する。
「核兵器に関する国際的なルールをつくろう」
「各国が保有する核兵器の数を決めよう」

 だが政治は止らない。
 原子力委員会のルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)はソ連より優位に立つため、
 さらなる軍拡と水爆の製造に着手する。
 そのため軍縮・水爆製造に反対するオッペンハイマーが邪魔になっていく。
 オッペンハイマーを排除するために過去の交友関係をほじくり返し、
「オッペンハイマーはソ連のスパイだ」
「ソ連に情報を流している」
 と告発する。
 ………………………………………………

 政治に翻弄される科学者の話である。

 プロメテウスがもたらした火が世界に拡散し、
 プロメテウスが岩に繋がれたように人類が身動きとれなくなった話である。
 常に核の脅威にさらされているという点で、人類は拷問を受けている、と言ってもいいかもしれない。

 作品はともかくせりふの嵐。
 全編しゃべりまくりで、そのせりふの量に圧倒される。

 原爆製造の理論や過程、レッドパージ時代のアメリカの状況も詳細に描かれていて学びになる。
 戦前、戦争中にはアメリカにも結構、共産主義者がいたんだな。

 原子爆弾を通して描かれた第二次大戦後のアメリカ。
 これを押さえることで現在が見えて来る。
『オッペンハイマー』は現代人必見の作品だ。


※関連動画
 【本予告】『オッペンハイマー』(YouTube)

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「べらぼう」 第4回「『雛形若菜』の甘い罠」~既得権者に潰される重三郎。後から来たやつはどうするんですか!?

2025年01月27日 | 大河ドラマ・時代劇
「後から来たやつはどうするんですか!?」
 これが既得権なんですよね。
 今作で言えば『地本問屋でなければ版元』になれない。
 せっかくいい企画、アイデアがあっても潰されて、既得権者が持っていく。
 重三郎(横浜流星)はこうした既得権を打破するために戦っていく。

 花魁と帯のコラボ・タイアップ。
 これも現在でおこなわれていること。
・靴やドレスやバッグや指輪をモデルや著名人に着用してもらって宣伝する。
・主人公がドラマなどで着用して宣伝する。
 宣伝してもらうためにメーカーが出資することもある。
 今作では呉服屋が花魁の錦絵に出資した。
 資金・資産がなくても、良いアイデアがあれば出資者が集まり、事業を立ち上げることができる。
 重三郎はこうして版元『耕書堂』になれるはずだったが、既得権者に美味しい所を持っていかれた。

 唐丸(渡邉斗翔)は後の写楽か?
 歌麿の可能性もあるが、写楽は出所不明・正体不明と言われているから写楽の可能性が高い。
 北斎は独立独歩の人だし、蔦重とは生活費の援助をしてもらったくらいの関係だと言われている。
 広重は少し後の人。
 その他、十返舎一九や滝沢馬琴がいずれ登場するのが今作の見所。
 ………………………………………………………………

 江戸城パート。
「田沼、許すまじ!」
 田沼意次(渡辺謙)と松平武元(石坂浩二)の対立に田安賢丸(寺田心)も参戦した。
 意次は御三卿は財政面で不必要と考えて、田安家を潰そうとしている。
 そのために御三卿を創設したとされる吉宗の文書を偽装した。
 目的のために手段を選ばない意次。
 それに荷担する平賀源内(安田顕)。
 意次、源内は『理想を実現するためには抵抗勢力の排除は仕方がない』と考える人物なのだろう。
 吉原パートに比べて人物がオトナで複雑になっている。
 そして排除された者は恨みを持つので、いずれ仕掛けた方に返って来る。
 田安賢丸は後の松平定信。
 トランプがバイデンの政策を全否定したように、意次の政策の逆をやる。 

 今作のおかけで『御三卿』について識ることができた。
 一橋家、田安家、清水家。
 幕末に一橋家、田安家が重大な役割を果たすようになるのが興味深い。
 作中では吉宗を尊敬している田安賢丸の姿が描かれたが、
 当時の人々が吉宗をどう評価していたかがわかって面白い。

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原菜乃華、来てるな!~「推しの子」「すずめの戸締まり」「ミステリと言う勿れ」

2025年01月26日 | アイドル
 郵便局に行ったら、女優の原菜乃華さんが「簡保」のイメージキャラクターに使われていた。
 原菜乃華さん、来てるな。

 原菜乃華さんと言えば──
 やはり劇場アニメ『すずめの戸締まり』の鈴芽役。
 あの声が魅力的。インパクトがあった。

 テレビドラマでは、僕が見ている作品で言えば──
『真犯人フラグ』の相良光莉役
『どうする家康』の千姫役
 wikiに拠れば、
『MIU404』第7話にも出ているらしいから見てみよう。
 こうして好きな時にいつでも見られるのが配信サブスクのいい所。

 劇場映画では──
『ミステリと言う勿れ』狩集汐路役
 作品のキイパーソンだが、抜群の存在感があった。
 実際、2024年の日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。

 配信ドラマではもちろん、
『推しの子』有馬かな役。
 実写化はアニメ版と比べられて辛口になりがちだが、見事に有馬かなをやっていた。

 今後は──
 4月からの朝ドラ『あんぱん』の朝田メイコ役

 劇場映画では『見える子ちゃん』『ババンババンバンバンパイア』
 いずれもアニメ化されている作品だ。

 原菜乃華さん以外にも、現在、新しい女優さんが出て来ているから楽しみだ。

 最後はこちら。
『推しの子 B小町「サインはB」ライブパフォーマンス映像』(YouTube)
 コメント欄では、原菜乃華=有馬かなを絶賛する声が!
 ♪ ちゃんと見えてる君のサイリューム ♪(01:11)の表情が素晴しい!
 
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フジテレビは舐めてたんだろうな~なあなあにして半年も立てば、みんなが忘れると考えていた。

2025年01月24日 | 事件・出来事
 フジテレビの性接待疑惑。

 フジテレビの港社長としては、
 なあなあで記者会見をおこない、
 なあなあの第三者委員会もどきをつくり、
 なあなあの報告書を半年後くらいに出せば、その頃はみんなが忘れてて、
 なあなあで切り抜けられると考えていたんだろうな。

 ところが外資系の株主があれではダメだとオープンな再度の記者会見を要求し、
 スポンサー約75社がCMの差し替えを要求し、ACジャパンばかりのCMになり、
 キッコーマンは一社提供の『食いしん坊万歳』の放送の見送りを要請、
 シオノギは一社提供の『ミュージックフェア』のスポンサーテロップから名前を外すように要請、
 昨日の社員説明会ではフジテレビの社員が経営陣を糾弾した。

 フジテレビとしてはスポンサーの反応が想定外だったし、一番痛かっただろう。
 何しろ経営に関わる問題だ。
 スポンサーの対応は速かった。
 CM差し替えをした理由は「社会正義」「コンプライアンス」「企業イメージ」「よそもやっているから」とさまざまだろうが、いい傾向だ。

 いい傾向と言えば、社員が批判の声をあげたのも素晴しい。
 報道に拠れば、フジテレビの労働組合員は今までの80人から500人に増えたとか。

 今回の件、外資・スポンサー・社員がなあなあで済まそうとした経営陣を動かした。
 こんなふうにして日本社会の古い体質・意識が変わっていくといいですね。
 中居正広氏、接待をセッティングしたとされるプロデューサーは古い体質・意識の人物だ。
 ジャニー喜多川氏、松本人志氏もそうだ。
 政治の世界でも裏金→選挙支援、あるいはパーティ券購入→見返り、という図式が問題となったが、
 今までの突破できなかった岩盤が壊れつつある。
 ………………………………………

 フジテレビは視聴者を舐めてたんだろうな。
 なあなあにして半年も過ぎれば視聴者は忘れると考えていた。
 中居正広氏と松本人志氏を出しておけば、視聴者は見ると考えていた。
 こんなふうに視聴者を舐めているから面白い番組をつくれない。
 視聴者はとっくにテレビを見放している。
 Netfliexなどの配信ドラマやSNSの動画の方がはるかに面白いことに気づいている。
 芸人さんはテレビを見限りネットで稼ぎ、ミュージシャンはネットから誕生する。
 テレビの低迷が言われる中、突出してフジテレビの数字が悪かったのは、フジテレビの制作陣が視聴者を舐めていたからだろう。

 そして今がチャンス。
 今こそ意識改革をし、安易に走らず、すべてをゼロにして視聴者に向き合えば面白いコンテンツをつくれるはず。
 これをしなければテレビは終わりだ。

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立憲民主党支持率5%~まあ、減税を言わないのだから仕方ない。立憲が動けば減税は可能なのに……

2025年01月22日 | 事件・出来事
 立憲民主党の支持率がついに5%に。
 まあ当然、立憲は減税を言わないからね。
 小川淳也幹事長、いわく
「減税すれば社会がバラ色になるほど、ことは単純でも簡単でもない。
 政治の信頼回復と適正な再分配で社会を安定させていくということが本筋の議論としてあるべきだ」

 立憲の主張は「税金の適正な分配」「低所得者層の重視」。
 そしてプライマリーバランスを重視した「緊縮財政」だ。

 まあ、この「分配」という方法、30年間ずっとやって来たんだよね。
 ここに利権が絡み、中抜きが横行して本当に必要な人の所に行っていないのが現状。
 立憲民主党が政権を取ったからといって、適正に分配されるという保証はない。
 どうせ変わらないだろうという意識が蔓延している。
 だったら「中抜き」のできない「減税」が手っ取り早い方法なんだけど、
 立憲の議員さんにはその考えはない。

 というか、そもそも「低所得者層だけが苦しい」という認識が間違っている。
 一部の富裕層を除き、国民全体が苦しくなっている。
 その主な原因が円安だ。
 原材料費を輸入に頼っているからその分が価格に転嫁される。
 原油も高く買わなければならないから、電気代、輸送費(ガソリン代)が上がる。
 物価高がこんなに生活を圧迫しているのだから、ここは「減税」じゃないのかね?

 現状の衆議院の議席数なら立憲民主党が主導すれば「減税」ができるのに。
 立憲+国民、維新、れいわ、共産などが組めば簡単に実現する。
 それをやらずに「分配だ」「プライマリーバランスだ」と言っているから立憲に支持が集まらない。

 立憲の主張は「減税」すれば市中にお金がまわり「インフレが加速する」ということなんだけど、
 果たしてそうか?
 今のインフレは、コストが上がっているから値段が上がる「コストプッシュ・インフレ」。
 悪いインフレだ。
 一方、市中にお金がまわり消費者が消費をして値段が上がるのが「デマンドプル・インフレ」。
 良いインフレだ。
 これで経済の好循環が生まれる。

 もうひとつの立憲の主張は「減税の財源がない」「減税すれば社会保障が削られる」というものだが、果たしてそうか?
 無駄はないのか?
 無駄を見つけて減税するのが野党のやるべきことではないのか?

 こうして苦言するのは立憲民主党がなくなってほしくないから。
 今のままでは経済政策は自民党とほとんど変わらない。
 だから参議院選挙後に自民党と大連立みたいな話が出て来る。
 ……………………………………………

 以下はネットの言葉。

・まず、買い物カゴ持ってスーパーの中、回ってこい。
 白菜、キャベツ、米、2年前まで中流家庭でも躊躇いなく手にとれたが、
 今、みんなそれらを見て何を考えていると思うか?

・給付は今までの実績からして、中抜きの温床になっているので絶対にありえません。
 そもそも徴税にコストかけて、給付でまたコスト掛けるって、どれだけ頭悪いんですか?
 増税のやり過ぎが失われた30年の元凶だと言う認識すら無いみたいですね。

・人生薔薇色にしてくれなんて頼んで無い。
 普通の暮らしがしたいだけです。
 最高税収なのに税金足りないとか言う能無し議員は居るだけ無駄なんです。

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「べらぼう」 第3回「千客万来『一目千本』」~重三郎、出版プロデューサー・プロモーターになる!

2025年01月20日 | 大河ドラマ・時代劇
 重三郎(横浜流星)は出版プロデューサーでありプロモーターだ。

 本を出版するために資金を募る。
 今で言うと「ファンド」「クラウドファンディング」
 ちなみにこうして出す本を「入銀本」というらしい。
 出資者は花魁の贔屓客。
 推しの花魁を本に載せるためにお金を出す。
 今で言うと「推し活」あるいは「ホストクラブ」「クラブ」のシステム。
 資金に関して重三郎はノーリスクだ。

 それから出版企画。
 絵師を選び、本のコンセプトをつくる。
 重三郎は花魁を花や草木に見立てて紹介した。

「女郎花(おみなえし)」「蒲公英(たんぽぽ)」「山葵(わさび)」「葛(くず)」「鳥兜(とりかぶと)」
 これで花魁の性根を表現した。
 山葵はツンとして愛想がないから←なるほど!
 葛はほんとうにキズだから。笑
 鳥兜は必ず腹上死するから←恐ろしい
 花の井(小芝風花)は女郎花←女郎の代表ってことか。
 こういう本を「粋」「面白い」と考える江戸の人々の感性が素晴しい。

 さて、こうして生まれた本が『一目千本』
 重三郎はこの本を売って儲けようとは考えなかった。
 出資者に本を渡すと、残りの本を見本として男が行きそうな場所に配布した。
 今で言うと「サンプルプロモーション」だ。
 この本を手に入れる方法は「吉原に来て馴染みになること」と宣伝。
 男たちは、見立てられた花魁への興味と本を求めて吉原へ。
 結果、吉原は昔の活気を取り戻した。
 プロモーション成功だ。

 この成功は、重三郎のやることに否定的だった養父の駿河屋市右衛門(高橋克実)を認めさせた。
 重三郎は市右衛門に「これからも吉原のためにしっかりやれ」と励まされた。

 江戸城パートでは、田安賢丸(寺田心)の養子縁組をめぐって
 田沼意次(渡辺謙)と老中・首座の松平武元(石坂浩二)の対立が激化。
 経済重視の意次は秩父の鉄の採掘に乗り出した。
 重三郎の名前も源内(安田顕)が贈った『吉原再見』で思い出した。
 ……………………………………………

 吉原パート。
 ストーリーラインとしてはシンプルなサクセスストーリーでわかりやすい。
「こんな吉原良かないんで」
「親父様の機嫌より河岸(かし)が飯を食える方が大事なんで」
「忘八なら損得で動け」
 みたいな台詞がいい。

 長谷川平蔵宣以(中村隼人)は花の井のために五十両を出資して親の財産を食いつぶした。
 現代から見ると、ホストに入れあげて借金地獄に陥った女性を想起させてイメージが悪いが、
 宵越しのカネは持たない江戸っ子の粋と捉えたい。
 結果として平蔵の五十両が吉原を救ったことになったし、平蔵もサバサバしているだろう。

 ただ、この作品、こういう危うさを持っている。
 前回の源内の序文は「吉原を美化している」「公共放送がこんな描写をしていいのか」という批判がフェミ界隈からあがった。
 でも吉原の悲惨は今回も描かれたし、重三郎はそれを何とかするために戦っているわけだし、
 当時の人にしてみれば岡場所はあって当然の場所だったし、吉原文化も生まれたわけだし、
 現代の価値観で断罪してしまうのはどうなんだろう?
 表現が萎縮して作品がどんどんつまらなくなってしまうと思う。

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「坂の上の雲」~日本はなぜ旅順要塞を攻略しなければならなかったのか?

2025年01月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 さて本日(1月19日)、ドラマ『坂の上の雲』の「旅順総攻撃」が放送される。

 諸説あるが、本作では陸軍・第三軍の乃木希典(柄本明)を批判。
 ロシアの旅順要塞を落とすことに固執し、兵に無謀な突進させて敵の機関銃の餌食に。
 その総死者数は1万2000人。
 真之(本木雅弘)が主張したとおり、
 最初から203高地を獲ることだけを行なっていればよかったのに……。
 一応、乃木将軍も地下道を掘ったり、それなりの対応をしていたのだが、
 なかなか方針転換できないのが日本軍の悪い癖。

 ではなぜ日本は旅順要塞を落とさなければならなかったのか?
 旅順湾にロシアの「旅順艦隊」がいたからである。
 一方、ロシアからは世界最強の「バルチック艦隊」がアフリカの喜望峰を越えてやって来る。
「旅順艦隊」+「バルチック艦隊」となれば、日本の連合艦隊は確実に負ける。
 制海権をロシアに握られて、満州に展開している陸軍の補給もままならず、日本は負ける。
 だから旅順要塞を攻略して、要塞から旅順艦隊を殲滅しておかなければならなかった。

 この状況に海軍も手をこまねいていたわけではなかった。
「封鎖作戦」
 旅順湾の入口に船を沈めて、旅順艦隊を湾外に出さないようにする作戦だ。
 これで日本の連合艦隊はバルチック艦隊だけを相手にすればいい。
 真之は米西戦争に観戦武官として参加していた時、アメリカが「封鎖作戦」を使うのを見た。
 だが、旅順要塞の火力は米西戦争のスペインの火力よりはるかに高い。
 だから反対したが、東郷平八郎(渡哲也)は苦渋の決断。
「夜間に攻撃すること」を条件に作戦にGOを出した。
 果たして結果は──
 要塞からの集中砲火を受けて失敗。
 真之の親友・広瀬武夫(藤本隆宏)はこの作戦で戦死した。
 これが前回のエピソードで描かれた「広瀬死す」だ。

 という状況下で、本日、旅順要塞での戦いが描かれる。
 前回の「広瀬死す」もそうだったが、戦争の悲惨と愚かさを描かれるだろう。

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「坂の上の雲」~いかにして日露戦争は起こったのか。非戦派の伊藤博文と主戦派の桂太郎

2025年01月17日 | 大河ドラマ・時代劇
 ドラマ「坂の上の雲」。1月19日(日)の放送で「旅順総攻撃」が描かれる。
 そこで今回はドラマで描かれた、日露戦争が起こるまでの経緯を紹介していきます。

 日清戦争の勝利。
 勝利はしたものの、それは日本に恩恵をもたらすものではなかった。
 西欧諸国が干渉してきたのだ。

 時代は帝国主義の時代。
 それぞれが権益を主張する貪欲な世界で道理はない。
 強い者勝ち、言った者勝ち。

 同時にロシアは南下してくる。
 満州を占拠し朝鮮にも食指をのばす。
 朝鮮をとられれば日本は目の前だ。
 国際政治において地政学の見地は忘れてはならない。

 そんな情勢下の日本の政治。

 伊藤博文は非戦派だ。
 ロシアとの戦争を必死に回避しようとする。
 明治天皇(尾上菊之助)も伊藤に信を置いていて非戦派だ。

 一方、当時の総理大臣・桂太郎(綾田俊樹)。
 桂は主戦派で、ロシアとの戦争やむなしと考えている。
 非戦派の伊藤博文に対しては「恐露病」と揶揄している。

 一方、外務大臣の小村寿太郎(竹中直人)。
 伊藤博文の考え方は古いとして「日英同盟」を結ぶ。
 これはアジアの権益を日本と英国で守っていこうという同盟だが、
 ロシアは自分たちに対する事実上の軍事同盟だと非難する。

 一方、伊藤博文も負けていない。
 単身ロシアに行き、非戦派の大蔵大臣ウィッテ(ヴァレリー・バリノフ)と通商条約を結ぼうとする。
 しかしこの時、ウィッテはロシア皇帝ニコライ2世(ティモフィー・ヒョードロフ)の信任を失っていた。
 ニコライ2世は皇太子時代に日本を訪問して斬りつけられる(「大津事件」)という被害に遭って
 日本のことを良く思っていない。
「これでは日本が戦争を仕掛けて来ます」と訴えるウィッテに対し、
「日本が大国ロシアに戦争を仕掛けて来るわけがない。戦争を始めるか否かを決めるのはロシアだ」と
 突っぱねる。

 そして、ロシアの提示して来た通商案は日本にとって到底飲めないものだった。
 日本側は「満州の権益をロシアに譲る代わりに朝鮮の権益を確保したい」と提案したが、
 ロシアの返事は「満州の権益はロシア。日本の朝鮮の権益は制約付きで認める」
 日本が再考を促すと、条件はさらに悪くなって、
「満州の権益はロシアと朝鮮の北半分。日本の権益は38度線以南の南半分」と回答。

 結果、交渉は決裂。
 日露戦争が始まる。
 ………………………………………………

 僕はネトウヨさんではないが、この日露戦争までの過程を見ると、
 当時の人々が「ロシアとの戦争やむなし」と考えたのは理解できる。

 今の価値観で言うと、朝鮮併合も満州の権益確保も非難されるべきことなのだが、
 当時は弱肉強食の帝国主義の時代。
 これも当時の人々にとっては必然の考え方なのだろう。

 歴史を見る時は現代の価値観だけでなく、当時の価値観でも見る必要がある。

 ただ明治の政治家や軍人が賢明だったのは──
「戦争をいかに終わらせるかを考えていたこと」だ。

 戦争が避けられないとわかると、伊藤博文は外交官・金子堅太郎(緒形幹太)をアメリカに派遣。
 アメリカの世論を日本寄りにして、終戦の調停をアメリカにさせるように働きかけることを指示。
 金子はハーバード大学留学の経験があり、ルーズベルト大統領とは同窓生なのだ。

 この点は、いたずらに戦線を拡大し、戦争を終わらせる方策も考えなかった太平洋戦争の指導者たちと大きく違う。

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「坂の上の雲」~病床六尺。正岡子規のもうひとつの戦い

2025年01月15日 | 大河ドラマ・時代劇
「坂の上の雲」のレビューが滞っていたので今週まとめて書きます。

 まずは正岡子規(香川照之)。
 秋山真之(本木雅弘)が米国・英国を視察し、日清戦争を経験し、
 秋山好古(阿部寛)がドイツ・フランスで学び、満州で戦う中、
 子規は肺の病気のため日本の狭い世界にいる。
 病が少し癒えて、新聞「日本」の従軍記者として日清戦争の中国へ渡るが、
 戦争はすでに終わっていた。

 子規は狭い世界で生きている自分を嘆く。
 病が重くなり、床に伏せるようになると焦りはさらに激しくなる。

 そんな中、子規は自分なりの戦いを始める。
 俳句・短歌の論評・再評価と革新だ。

 やがて子規は、自分の戦いが清国・ロシアと戦う真之や好古の戦いと同じだと考えるようになる。
 真之も同じ考えで、子規を励ます。

 こうして子規は俳句・短歌の革新という仕事を精力的におこなっていくが、
 病はどんどん重くなり、痛みは子規を苦しめ、妹の律(菅野美穂)に当り散らしたりする。

 こんな子規が死を前にした時にたどり着いた境地がこれだ。
「病床六尺」
 庭の木々や朝顔を見て子規は考える。
「この六尺の小さな世界の中にも自然の営みがあり、真実がある」
「とりとめのない日常の中に大切なものが潜んでいる」

 つまり真之や好古のように飛びまわらなくても、世界を知ることはできるのだ。

 司馬遼太郎が今作で子規を描いたのは、「もうひとつの戦い」と「病床六尺」を描きたかったからであろう。

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