平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「シャイロックの子供たち」~半沢直樹、花咲舞に続く新しい主人公が東京第一銀行に登場した!

2024年08月31日 | 職業ドラマ
 池井戸潤原作のドラマ『シャイロックの子供たち』を見た。
 舞台は東京第一銀行・長原支店。
 東京第一銀行には半沢直樹もいるし花咲舞もいるし、どんだけ人材豊富なんだよ!笑
 どんだけ不正や問題があるんだよ!笑

 以下、ややネタバレあり。
 …………………………………………………

 今作の重要ポイントは「謝礼金200万を受け取ってしまったこと」
・融資のおかげで、ある会社の事業が大成功。
・ある銀行員は社長から謝礼で200万円をもらう。
・しばらくすると事業がうまく行かなくなり会社が傾き始める。
・社長は銀行員に「不正融資」を求める。
・銀行員は断わるが、「200万のことをバラすぞ」と脅迫されて不正融資に応じてしまう。
・その後、銀行員は何度も不正融資をおこなうことになり……。

 ひとつの小さな誘惑に負けたことで起こる悲劇。
 これくらいたいしたことがないだろうと手を染めたことから傷口がどんどん拡がっていき、
 破滅に至る。
 人生の分かれ道や落とし穴はいろいろな所にある。

 教訓としたい。
 …………………………………………………

 主人公の西木雅博(井ノ原快彦)が魅力的だ。
 いわゆる、部下に慕われるいい人で、いかにもイノッチって感じ。
 過去に上司から理不尽な目に遭って出世の道を閉ざされたのだが、
 半沢直樹のように「倍返し」せず、淡々としている。

 上司の理不尽な要求に我慢できず激怒した銀行員・小山徹(森永悠希)に西木は休憩室で
 こんな言葉をかける。
「行ってるか?」
 小山と西木は釣りが趣味で、いっしょに釣りに行ったことがあるのだ。
 だから「行ってるか?」と尋ねた。
 普通なら「大丈夫か?」「お前の言ったことは間違っていない」と慰める所に「行ってるか?」と
 釣りの話をする。
 上手い台詞だと思う。
 これで西木の人柄と小山との関係がスーッと入って来る。

 西木のまわりにはプライベートを含めた周囲のさまざまな情報が入って来る。
「どうして西木さんにはいろいろな情報が入って来るんですか?」
 部下の北川愛理(西野七瀬)は尋ねる。
 すると西木は──
「みんなのことを信頼しているからだよ。
 信頼しているから、みんなも僕のことを信頼していろいろ話してくれる」

 これも深い言葉だな。
 僕なんか「人間不信」のかたまりだからなぁ。
 結果、世界をどんどん狭くしている。

 いい作品を見せてもらいました。
 銀行員のなぁちゃんもよかった。
 あんな行員さんがいたら毎日通う。笑

 半沢直樹、花咲舞に続いて東京第一銀行に「西木雅博」という新しいスターが登場した。

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「公共の福祉」とは何か?~公共のために個人が犠牲になっていい、という考え方ではない。

2024年08月29日 | その他
「公共の福祉」についての、とあるXの投稿が物議を醸している。

 個人の権利を認めていたら、集団の秩序を維持することはできません。
 だから個人は全体のために犠牲になる義務があるんです。


 これに対するコミュニティノートの回答。

・公共の福祉は全体のための犠牲という概念ではなく個人同士の人権衝突の調整役を担います。
 ポスト主は高校教師を自称していますが、高校どころか中学校公民で習う範囲です。

 その他のXユーザーの回答。

・いやもう、それだと全体主義国家の論理じゃないですかね。
 お聞きしたいのですが、あなたは自分自身の権利を放棄してるんですか?

・公共の福祉と集団の秩序は別物である。
 公共の福祉はあなたがお嫌いな個人の権利が充分に保全されるために、ある個人の権利濫用に対し、
 個人を信頼し、個人の権利濫用を制限していく個人の尊重に立った民主主義思想であるのに対し、
 集団の秩序は、国などが上から権威主義的に個人を抑圧する思想である。

・個人は全体のために犠牲になる義務がある→誤
 個人はそれぞれを尊重し合って全体(集団)を構成する→正

・「公共の福祉」とは「自分の人権を行使するときには他人の人権にも配慮するよう気をつけようね」という当たり前の原則を言ってるだけで、決して「個人は全体のために犠牲になれ」なんてことを言っているのではありません。
 国民は「個人として」尊重されます(第十三条)

・社会契約論を勉強し直しなさい。教師失格。

・個人の尊重を定めた日本国憲法に反した思想の持ち主なのですね。
 しかも"公共の福祉"を外在制約だと勘違いする初歩的ミスを犯しておられます。
 勉強が足りませんね。

・これは、自民党の憲法草案の公益および公の秩序です。

・自民党が大喜びする「自称教師」だな。

・北朝鮮の考えですよそれ笑笑
 …………………………………………………………

 以上のような反論の回答があって、ホッとする。
 まだまだ日本の民主主義は大丈夫なようだ。

「公共の福祉」とは──
・初めに人権ありき。
・基本的人権は何よりも優先される。
・個々の人権の主張がぶつかり合った時、判断の材料として「公共の福祉」が適用される。

 基本的人権>公共の福祉→正
 公共の福祉>基本的人権→誤

 最近、「言葉」がおかしくなっている。
 曲解されて、社会があらぬ方向に向かいつつあるような気がする。
 言葉は簡単に崩壊する。
 言葉が変われば社会も変容する。
 だから、こうしてひとつひとつ糺して行く必要がある。

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Netflixオリジナルドラマ「地面師たち」~よくできた脚本! 面白い作品はネット配信の中にある!

2024年08月28日 | 推理・サスペンスドラマ
 Netflixオリジナルの『地面師たち』
 土地取引の詐欺師たちの物語である。
 彼らは土地所有者の偽者を立て、書類を偽装し、土地購入を持ちかける。
 被害者は契約書を交わし土地代金を払うが、蓋を開けてみると……騙されていた!

 本当に面白い物語で、全7話を一気に見てしまった。
・詐欺の過程のディティール
・その過程で起きるトラブル
・そのトラブルをどうクリアするか?
・被害者側も不動産取引のプロで、交渉でおこなわれる駆け引き
・タイムサスペンス
・迫る警察の捜査
・登場人物すべてに設定されたバックボーン。
 ハラハラドキドキで本当によく出来た脚本だった。

 たとえば、新人刑事・倉持 玲(池田エライザ)にこんな描写がある。

 以下、一部ネタバレあり。

 聞き込みで、あるアパートを訪ねた玲。
 女性の顔に殴られた痕があり、DVだと判断。
 コンビを組んでいる先輩刑事の下村辰夫(リリー・フランキー)は「やめておけ」と言うが、
 玲はもう一度アパートを訪ねて、出て来た男を格闘技で組み伏せる。
 すると殴られた痕のある女性が「何すんのよ!」とキック、パンチで挑んでくる。
 どうして? 助けに来たのに? と思いながら玲は女も組み伏せる。
 真相はこうだった。
 痕のある女性はプロの格闘家だった。前日試合があって顔が腫れていた。
 つまり玲の早とちりだったのだ。
 同時にこの描写で、玲というキャラクターを見事に描いた。
・DVを見過ごせない正義感あふれる女性
・プロの格闘家を組み伏せるほどの格闘術の持ち主
・早とちりの猪突猛進キャラ
 ワンシーンでキャラを描く。
 これがプロの脚本なんですね。

 地面師のボス・ハリソン山中(豊川悦司)は劇中、映画『ダイハード』の撮影エピソードを披露していた。

 悪役ハンス・グルーバーが高層ビルから落下するシーンの撮影。
 ビルから落下させることはできないので、撮影では背景の合成を使い、
 ハンス役の役者さんには20メートルくらいの所から落ちてもらう。
 下にはもちろんクッションがある。
 では、このシーンを『ダイハード』の監督はどう撮ったか?
 ハンス役の役者には「5、4、3、2、1で落とす」と話していた。
 だが、実際は「5、4、3」で落とした。
 この方が、不条理に困惑する、ハンスのリアルな表情を撮れるからだ。

 さて、この撮影エピソードを披露した地面師のボス・ハリソン山中は
 ある人物をビルから突き落すのだが、もちろんハリソンがやることは──
 ………………………………………………

『地面師たち』は全7話。
 脚本が面白いと一気に見てしまうんですよね。
 同時にこういうドラマを見ていると、地上波のドラマが安っぽく見えてしまう。
 時代はもうネット配信の時代。
 面白いものはネット配信の中にある。
 イッキ見の楽しさを知ってしまうと、一週間待たねばならない地上波ドラマがだるくなる。
 というか地上波ドラマは一週間待つことを前提に作られている。
・1話完結
・シリーズを貫く縦糸の物語、謎がある。
 このフォーマットは古くなった気がする。
 今は「ええっ、ここで終わるのかよ!?」「次どうなるんだ?」の時代だ。

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「光る君へ」第32回「誰がために書く」~これがおまえがおまえであるための道か。これが俺の惚れた女だったのか。

2024年08月26日 | 大河ドラマ・時代劇
 伊周(三浦翔平)がふたたび力を持ち始めている。
 定子(高畑充希)への思いを引きずっている一条天皇(塩野瑛久)を利用しているのだ。
 一条天皇も伊周に傾きつつある。

 伊周の台頭に道長は苦悩している。
 帝は聴く耳を持たず、ダメだと言っても伊周を人事で強引にねじ込んで来る。
 かといって伊周を力で排除したくない。
 力で排除すれば父・兼家(段田安則)と同じになるからだ。
 居貞親王(木村達成)は一条天皇を排して自分を帝にしろ、と言っているが、道長は乗り気でない。
 なので道長の頼みの綱は彰子(見上愛)。
 是が非でも一条天皇の目を彰子に向けなくてはならない。

 一方、彰子。
 一条天皇に思いを寄せつつあるようだ。
 前回、彰子は瓢箪に顔を描く練習をしていた。
 彰子は一条天皇と敦康親王(池田旭陽)の間に入りたかったのだ。
 今回は火事の時、一条天皇のことを気にかけて逃げずにいた。
 次回は、一条天皇が読んでいる物語を自分も読んでみたいと言うらしい(予告)。

 この状況下、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)は死の床で語った。
「ようやく光を手に入れましたな。これで中宮様(彰子)は盤石です」
「何も怖れることはありません。思いのままにおやりなさい」
 晴明の言う「光」とはまひろ(吉高由里子)のこと。
 まひろが彰子を変え、道長の地位を揺るぎないものにするのだろう。

 まひろと『源氏物語』は道長と彰子にどのような光をもたらすのか?
 ……………………………………………………………

 サブタイトルは「誰がために書く」
 清少納言(ファーストサマーウィカ)は定子のために書いた。
 まひろは道長の依頼を受けて彰子と帝のために書いた。
 だが、その後、まひろは誰かのために書くことをやめ、自分のために書くことにした。
 降って来るイメージ、湧いてくる言葉、勝手に動き出す登場人物──
 書かずにはいられない。書くことが楽しい。
 ここには現実の利害関係などまったくない。
 政治も生活のために稼ぐということもない。
 少なくとも書いている間だけまひろは自由になれる。
 こんなまひろを道長はゆったりと眺める。
「これがおまえがおまえであるための道か?」
「これが俺の惚れた女だったのか」
 何と素敵な男女関係。
 まひろといる時だけ道長は政治を忘れて穏やかな気持ちになれる。

「あれは朕への当てつけか?」
『源氏物語』に対する一条天皇の反応はまずこれだった。
 だが、一条天皇は聡明でもあるので、ここで拒絶しない。
 書き手が漢籍や歴史などに通じた博学な者であることを読み取り、
 その博学な者が自分に何かを訴えていると気づいた。
 続きを読めば、その訴えが明確になると考えた。
 帝は諫められることを求めている?
 おそらく、まひろが伝えたいのは「帝も人間である」ということなんだろうけど。
 さて帝は『源氏物語』にどうハマる?
 次回、帝に会ってまひろは何を語る?

 彰子の女房として出仕する際、為時(岸谷五朗)は言った。
「帝に認められ中宮様にお仕えするおまえはわが家の誇りである」
「身の丈のありったけを尽くして素晴しい物語を書き、帝と中宮様のお役に立てるよう祈っておる」
「おまえがおなごであってよかった」
 伏線回収である。
 まひろは為時から「おまえがおとこであったら」と何度も言われて来た。
 弟・惟規(高杉真宙)は最後の言葉の時だけ、ツッコミを入れない。

 父娘のいいシーンだと思うが、僕は『赤毛のアン』の愛読者でもあるので、
『赤毛のアン』のアンとマシューを思い出してしまった。

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「気づいたら片想い」with松井玲奈~名曲だ! そう言えば、松井玲奈さん、乃木坂に留学してんだよな~

2024年08月25日 | アイドル
 酔っ払って帰って来てYouTubeの動画を見ていたら、
 乃木坂46の『気づいたら片想い』with松井玲奈 全国握手会の動画が流れて来た。
 YouTubeのセレクト機能、どうなってるんだ?

 動画はすごく懐かしい。
 何しろ、僕はこの幕張メッセの現場にいたから。
 乃木坂を応援してドルオタ活動で忙しかった。
 今はそのパワーはないのだけれど。

 松井玲奈さんは、この頃、乃木坂に留学生として来てたんだよな~。
 というか留学生というよりは、乃木坂にプロ意識を識ってもらうためにやって来た。
 冠番組で星野みなみさんなんかは松井さんに叱られてたよね。

 動画を見ると、やはり松井玲奈さんの表現力は群を抜いている。
 表情の作り方、振り付けのキレ、どれも秀逸。
 松井さんにしてみれば、
「わたしは先輩。パフォマンスでは負けない」といった自負があったのだろう。

 曲もあらためて聴くと実にいい。

 サビ始まり センター西野七瀬、脇を固める白石麻衣、橋本奈々未
 Aメロ冒頭、白石麻衣、西野七瀬
 続いて、松井玲奈、橋本奈々未
 次に、生田絵梨花、松村沙友理
 次に、桜井玲香、若槻由美
 Aメロ2回目は深川麻衣、堀未央奈、秋元真夏
 実に尊い。

 Aメロも美しいが、Bメロが秀逸。
 そう来るかって感じ。
 そしてキャッチーなサビへ。

 懐かしい思い出だ。
 動画を見て曲を聴けば、あの頃に戻れる。
 そして、この動画のメンバーはすべて卒業している……。

 というわけでお聴き下さい。

 乃木坂46の『気づいたら片想い』with松井玲奈・幕張全国握手会(YouTube)
 ※センターは西野七瀬さん。ドラマ『シャイロックの子供たち』よかった!

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「国家」とは何か?~生物学者・池田清彦先生、いはく「国家も神もすべて幻想です」

2024年08月23日 | その他
「ホンマでっかTV」などにも出演されている生物学者の池田清彦さん。

 池田先生の著書「38億年 生物進化の旅」(新潮文庫)
 カンブリア大爆発、恐竜の進化と、鳥の起源など、
 やや専門的ではありますが、240ページで生物の進化の過程がわかります。

「他人と深く関わらずに生きるには」(新潮文庫)
 その内容は──
・他人を当てにしないで生きる
・退屈とは人生最大の楽しみである
・自力で生きて野垂れ死のう など
 名著です。
 …………………………………………………………
 
 さて池田先生。
 Xで「国家」についてこんなことをつぶやいていた。

『国家などは実在しません。
 実在するのは今現実に生きている人々です。
 個人を超える崇高なものがあるという思想は全て幻想です。
 国家も神も全て幻想です。
 幻想は人々を幸福にする装置として機能している時は役に立ちますが、
 個人を超える存在だと錯認した途端に、個人を抑圧する装置として機能し始めます。
 タチが悪いことに、錯認している本人たちは、国家という幻想を盾に、逆らう人々を抑圧する快感に
 浸っているだけなのです。
 国家も神も概念です。
 概念は実在しないのです。
 実在するのは現象だけです。人間は概念ですが、個々の人は実在です』


 完全に同感です。
 たとえば、かつて「大日本帝国」という国家があったが、敗戦を機に「日本国」になった。
 江戸時代までは「国家」なんて意識はまったくなかった。
 21世紀のわれわれも「日本」を意識するのはオリンピックの時くらいで、
 普段はほとんど忘れている。
 つまり国家とは幻想であり、システムなのだ。
 人間が集団生活を営むために作ったシステムであり、ルールに過ぎない。

 敢えて言えば、「同じ言語」「同じ文化」を共有している集団と言えるかもしれないが、
 別に国家でなくていい。
 西洋人が来るまでのインディアンはインディアンでしかなかった。

 このことは宗教で考えてみると、わかりやすい。
 キリスト教徒は「聖書」に書かれた内容を信じているに過ぎない。
 キリスト教徒でない者から見たら、何それ? ウソっぽい、となってしまう。
 つまり幻想なのだ。

 池田清彦さんはさらにこう語る。

 幻想は人々を幸福にする装置として機能している時は役に立ちますが、
 個人を超える存在だと錯認した途端に、個人を抑圧する装置として機能し始めます。


 人は集団生活を営む上で便利だから「国家」というシステムを作った。
 だが、「個人より国家が大切だ」「国家を守るために戦場へ行け」になると、
 国家はたちまち「個人を抑圧する装置」になる。

 宗教は信じていると幸福だから信仰しているが、
「異教徒と戦え」「その行為は悪魔の行為だ」になると、たちまち「個人を抑圧する装置」になる。

 最近、日本では「国家」という抑圧が強くなっている気がする。
 政治家は声高々に「国家」という言葉を口にする。
 でも、われわれにとって大切なのは個人の生活。普通の生活。
 国家が「個人を抑圧する装置」になって来た時は異を唱えなければならない。
 主役はあくまでも「個人」だ。


※関連動画
 「イマジン」ジョン・レノン(YouTube)和訳あり


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「冒険者たち」~冒険を描きながら孤独と哀愁。これぞフランス映画! 主題歌「レティシア」は青春の名曲!

2024年08月21日 | 洋画
 アラン・ドロンさんが亡くなった。88歳。
 素敵な作品をありがとうございました。
 ご冥福をお祈りいたします。
                             以下、敬称略

 アラン・ドロン作品で真っ先に思い出すのは『冒険者たち』
 冒頭エッフェル塔の下を複葉飛行機で飛び抜けるシーンで一気につかまれた。
 アラン・ドロン演じるマヌーはパイロット。
 リノ・ヴァンチュラ演じるローランは自動車エンジニア。
 ジョアンナ・シムカスが演じるレティシアは前衛芸術家。
 レティシアが作品で使う素材を求めてローランの工房を訪ねたことから3人の関係が始まる。
 3人はぞれぞれの仕事で挫折し、何かを求めていた所に「財宝探し」の情報が入ってくる。

 で、これが『冒険者たち』のポスター。

 

 見て下さい、このポスター!
『冒険者たち』ってタイトルなのにこれなんですよ!
 実際、作品はコンゴでの財宝探しやこれを狙う連中との銃撃戦など、冒険要素がいっぱいなのだが、
 ポスターはそんな要素をまったく入れずに、3人で笑いながら野原を歩いて行く光景。
 そう、この作品は3人の物語なんですね。
 財宝探しなどは二の次。
 その過程で3人がワチャワチャしたり、友情と恋愛の間で迷ったりすることの方がメインテーマ。
 男ふたり、女ひとりの関係は友情で結ばれている間はいいが、
 いったん恋愛に傾くと、残された男に哀しみと孤独が生まれる。
 作品はここを掘り下げる。

 これがフランス映画なんですね。
 冒険を扱っていながら、ベースには「哀愁」がある。
 友情や恋愛を扱っていながら「孤独」がある。

 同じ男ふたり、女ひとりのアクション映画に『明日に向かって撃て!』があるが、
 こちらに「哀愁」要素は少ない。メインはブッチとサンダースキッドの物語だ。
 僕は『明日に向かって撃て!』も大好きですが、やはりアメリカ映画なんですね。

 そしてヒロイン・レティシアの美しいこと!
 レティシアはマヌーとローランのふたりから愛されるわけだが、
 この作品を見たら、みんな、レティシアに心を奪われる。

 というわけで、最後は主題歌『レティシア』
 ときどき思い出す、大好きな歌です。

 レティシア ~映画「冒険者たち」(YouTube)
 ※語り口調の歌い方。フランス語が美しく、そして哀しい。

 ※歌詞はこちら

 Laetitia je ne savais pas
 Que tu étais tout pour moi
 Un oiseau chantait tout près de moi
 Mais je ne l'entendais pas
 Et tu vivais innocente, éphémère
 Tu habillais nos printemps de chimère

 Laetitia je ne savais pas
 Que la vie n'est rien sans toi
 L'oiseau fragile un jour s'est abattu
 La mort ne l'a pas rendu
 Et tu reposes dans le bleu de la mer
 Toi qui colorais de bleu nos chimères

 Un oiseau chantait près de moi
 Jamais il ne reviendra
 Laetitia, non je ne savais pas
 J'étais amoureux de toi !

 ChatGPTに訳してもらうと──

 レティシア、僕は知らなかった
 君が僕にとってすべてであることを
 鳥は僕の近くで歌っていたけれど
 その声を僕は聞かなかった
 君は無垢で、はかなく生きていた
 僕たちの春をはかない夢で彩っていた

 レティシア、僕は知らなかった
 君なしでは人生は何もないということを
 そのはかない鳥がある日、地に落ちた
 死は彼女を返してはくれなかった
 今、君は海の青に眠っている
 僕たちの空想を青く染めていた君が

 鳥が僕の近くで歌っていた
 もう戻ってはこない
 レティシア、僕は知らなかった
 僕は君に恋していたんだ

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「光る君へ」 第31回「月の下で」~『源氏物語』誕生! 桐壺のモデルは定子。一条天皇は何を思う?

2024年08月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 まひろ(吉高由里子)、ついに『源氏物語』を書く!
 ここに至るまでに紆余曲折がありましたね。
『カササギ語り』は消失。
 根が暗くて鬱陶しいまひろだから逆に書ける『明るくて楽しい話』は
 帝に献上するには軽すぎるということで、まひろ自身がボツに。

 では帝にふさわしい物語とは何か?
「ご乱心も人ですから。人とは何なのでございましょうか?」
 まひろは人間を描きたいと考えた。
 清少納言(ファーストサマーウィカ)が宮廷の光輝く部分だけを書いたが、
 まひろはもっと深い人間の心を描きたいと考えた。
 だから道長(柄本佑)から帝のまわりの人たちのエピソードを聞いて取材した。
 そこで出て来たのが──

『いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、
 いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。
 はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、めざましきものにおとしめ嫉みたまふ』

『源氏物語』の桐壺のことだが、モデルは定子(高畑充希)ですよね。
・帝にとんでもなく愛された女性
・周囲から嫌われ妬まれた女性
 桐壺=定子だ。
 定子が周囲から嫌われ妬まれたのは出家した身でありながら帝の寵愛を受けたから。
 違っている点は、桐壺が「やむごとなき際にはあらぬ」身分の低い女性であること。

 まひろ、攻めましたね。
 道長も読んで「これはちょっと。帝の御機嫌を損なう……」とためらった。
 定子がモデルの物語に対して一条天皇(塩野瑛久)は
「何だ、これは? 定子との美しい思い出を穢す気か!」と瞬間的に思った事だろう。
 だが、ふたたび読み直そうとした。
 物語は人の心の奥底に届くんですよね。
 心を抉り、心に深く刻まれることもある。
 エッセイ(=枕草子)だと、それはなかなか難しい。
 帝の正式な評価は次回。

 ちなみに『源氏物語』では、この後桐壺は死んでしまうわけだが、次に帝の心を奪うのは藤壺。
 藤壺とは彰子(見上愛)のことなのだろう。
 …………………………………………………………

 まひろと道長は安定した関係になった。
 何でも気軽に話せる関係。
 何気ないひと言で相手の考えていることを見抜いてしまう関係。
 もはや、ここに身分の違いはない。
 永年連れ添った夫婦だ。

 たとえば
「俺の願いを初めて聞いてくれたな」
 さりげない言葉だが、ふたりの年月を感じさせる。

 直秀(毎熊克哉)はふたりの共通の思い出だ。
 直秀はふたりの心の中で生きている。

 賢子を膝に乗せた道長は、まひろに出会った頃の事を思い出しているのかもしれない。
 というか、道長は賢子が自分の娘であることを知らないのか。

「誰かが今俺が見ている月を一緒に見ていると願いながら、俺は月を見上げてきた」
 これはまひろにとってパワーワードだ。
 なぜならまひろも同じ思いで月を見上げていたから。
 ふたりは月を見て、遠く離れたお互いのことを考えていた。
 …………………………………………………………

 というわけで、まひろがついに歴史の表舞台に出て来た。
・『源氏物語』は宮中のベストセラーに!
・倫子にバレる?
・明子は病床で道長が「まひろ」とつぶやいたことを知っている……。
・彰子はまひろとの出会いでどう変わるのか?

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映画「ゴールデンカムイ」~明治の社会に居場所のない男たちが北海道で暴れまわる! アイヌの少女・アシㇼパが魅力的!

2024年08月17日 | 邦画
 映画『ゴールデンカムイ』を観た。
 なるほど~、この方法があったか!
 日本だと、銃の撃ち合いはどうしてもウソっぽくなってしまう。
 でも、それが明治三十七年の日露戦争後で、舞台が北海道があれば、ほとんど違和感はない。
 主人公の杉元佐一(山﨑賢人)や敵は陸軍の軍服を着ているしね。

 物語はアイヌの金塊をめぐる戦い。
 脱走した死刑囚の背中に金塊の隠し場所を描いた入れ墨があり、それを集めていくというのが
 メインのストーリーラインだ。
 これにアイヌの少女アシㇼパ(山田杏奈)が関わり、主人公・杉元の人生観が変わっていく。
 敵は金塊を狙う陸軍第七師団の鶴見中尉(玉木宏)。
 それに土方歳三(舘ひろし)! 何と土方は箱館戦争で死なずに生きていた!
 自分の愛刀・和泉守兼定を取り戻すために襲撃したりする。
 こういう虚実皮膜な所が面白い。

 第七師団の鶴見や土方がアイヌの金塊を求める理由は、これを資金にして『北海道に独立国家』を
 つくること。
 土方はもちろんそうだが、鶴見も明治政府に反抗的な、はみ出しものなのだ。
 主人公の杉元もそうだ。
 そんな彼らがイキイキと生きられるのは、まだ政府の手が行き届いていない北海道。
 いいですね、この世界観。

 日本史では、昭和の時代に入って満州馬賊が登場するが、
 彼らも鶴見同様、日本社会の枠の中で安住できない男たちだった。

 一方、彼らとは別の価値観で行動する人物もいる。
 ヒロインでアイヌの少女のアシㇼパだ。
 アシㇼパを始めとするアイヌの生き方は、自然との共生、神との会話だ。
 彼らは生きるためにリスや熊を殺して食べるが限度を知っている。
 親のいない小熊や狼がいれば育てる。
 神の言葉を心に刻み、民族の慣習や自らの運命に従って素朴に生きている。
 彼らには節度があり、過剰な欲望はない。

 こんな彼らの姿勢に、観ている僕たちは心を洗われる。
 主人公・杉元佐一もそうだった。
 だから、これらを体現するヒロイン・アシㇼパが魅力的!
 アシㇼパは山田杏奈さんがやっているのか。
 純粋さと芯の強さをもったアシㇼパを見事に演じている。

 杉元とアシㇼパのやりとりも面白い。
 アシㇼパは杉元の所持している味噌を「オサマ(ウンコ)」だと思って口にしない。笑
 杉元は助けた小熊をアシㇼパに食われると思って懐に隠している。笑
 こういう人間同士の交流! 異文化交流!
 アイヌのサバイバル技術が杉元を助ける所も面白い。

 面白い作品を見せてもらいました。
 アニメ版も見てみようと思う。
 脚本は映画『キングダム』シリーズも書いた黒岩勉さん。
 やっぱ黒岩さんの漫画脚色は上手いな。

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終戦記念日~靖国、特攻、A級戦犯……そして石橋湛山の「小日本主義」

2024年08月15日 | 事件・出来事
 終戦記念日。

 毎回書くが、戦争指導者がもっとはやく終戦を決断していれば、
 沖縄戦も広島・長崎の原爆投下もなかった。
 戦争指導者が守ろうとしたのは「国体」か? それとも「自分の命」か?
 国体でいえば、「大日本帝国」はなくなったが「日本国」ができた。

 靖国神社には今年もコスプレ旧日本軍人が集まるのかな?
 英霊に敬意と感謝を捧げるのなら黒い服だと思うけど。
 腹の出たコスプレ軍人をあざ笑おう。
 靖国神社はA級戦犯を合祀したらだめだろう。
 彼らの無謀と過信と無能で命を落とした兵隊はたくさんいる。
 彼らは安全な所で戦争を語っていた。

 特攻。
 卓球・早田ひな選手の発言で話題になっているが、Xでこんな投稿を目にした。
「特攻隊員が特攻にいったおかげで今の日本がある。ありがとう」ではなくて
「二度とあなたたちのような悲劇・悲惨を繰り返さないために努力します」が正しい。

 そのとおりだと思う。
 卓球・早田選手は「特攻平和館」に行って何を思う?
 ……………………………………………………

 昨年も書いたが、日中戦争中に『小日本主義』という政治主張があった。
 政治家・石橋湛山が唱えた主張だ。

『小日本主義』要約すると──
・日本が植民地にしている朝鮮、台湾、満州などを棄てろ。
・そうすればアジアなどの国々は日本を支持し、尊敬する。
・欧米も居心地が悪くなり、最終的に自分の植民地を手放す。

 なかなかの卓見である。
 とはいえ人は持っているものを簡単に棄てられない。
 台湾、満州、樺太は先人が血を流し、命を捨てて得たものだから尚更だ。
 欧米諸国が植民地を持っているのに、どうして自分たちだけが放棄しなくてはならないのか、
 とも考えるだろう。
 だが、湛山は具体的な数字をあげて『小日本主義』を説く。

 それらを棄てていかに日本を守るかという事であるが、経済・貿易の観点から見て、
 朝鮮・台湾・関東州、この三地合わせて九億円の商売をしたに過ぎない。
 これに対し、米英その他の国との貿易は二十四億円を超える。
 朝鮮・台湾・樺太を領有し、関東州を租借し、志那・シベリアに干渉する事が我が経済的自立に欠くべかざる要件などという説が全く取るに足らざるは明白である。


 「植民地経営」より「貿易」
 この方がよりはるかに経済的に豊かになる、ということだ。
 植民地経営にはコストもかかるし、他国との紛争も起こるし、実は効率的でない。
 そして戦後、現実は石橋湛山の言ったとおりになった。
 戦後、日本はさまざまな国と貿易をして経済大国になった。
 経済一本に専心した結果、高度経済成長を成し遂げることができた。

 昨日、岸田首相が総裁選不出馬=総理退任を発表したが、
 岸田首相の戦後日本の破壊は凄まじい。
・防衛費倍増。12兆円。
・リスクの多い敵基地攻撃能力の容認
・武器輸出
・アメリカと共にある発言

 安倍晋三氏は集団的自衛権を実質、可能にしたが、
 アメリカといっしょに戦争をする準備は着々と進んでいる。

 これで憲法9条が改定されればチェックメイト。
 すべてはアメリカ様のシナリオどおり?
 果たしてこれでいいのだろうか?

 終戦記念日。
 改めて現在の日本が向かっている方向について考えたい。

コメント (7)
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