つきくさに ころもはすらむ あさぎりに ぬれてののちは うつろひぬとも
月草に 衣はすらむ 朝霧に ぬれてののちは うつろひぬとも
よみ人知らず
あなたの衣をつゆくさでそめましょう。朝霧に濡れたあとは染めた色がうつろってしまうとしても。
「月草」はつゆくさのこと。衣を薄藍色に染めるのに使われますが、その染めた色が褪せやすいことから、人の心が移ろいやすいことの例えとして歌に詠まれます。「あさぎりにぬれ」るとは、朝になって、一夜を共にした愛しい男性が帰って行ってしまうことの象徴。その男性の心変わりを心配する気持ちを詠んだ、女性の立場からの歌ですね。この歌は万葉集(巻第七 1351番)からの採録で、古今集では 0192 とこの歌の2例のみとなっています。