ぬれてほす やまぢのきくの つゆのまに いつかちとせを われはへにけむ
ぬれてほす 山路の菊の つゆのまに いつかちとせを われは経にけむ
素性法師
山路の菊の露に服が濡れてそれを干しているほんのわずかの間だというのに、私はいつの間に千年もの時を経てしまったのだろうか。
非常に難解です。詞書には「仙宮に菊をわけて人のいたれるかたをよめる」とあり、その意味は、咲いている菊の花を分け入って、人が仙人の住む宮殿に到達した、その「かた(州浜)」を見て詠んだということのようです。ひとつ前の 0272 から続く、州浜を鑑賞しての歌ですね。解説本などによれば、仙宮をかたどった州浜を見てそれに興じた作者が、菊の露の力によって仙人となり仙宮にたどり着いた者になりきって詠んだ歌とのこと。菊の花びらに降りた露を飲ませたら母親の病気が治ったという、中国の故事を踏まえています。