つゆながら をりてかざさむ きくのはな おいせぬあきの ひさしかるべく
露ながら 折りてかざさむ 菊の花 老いせぬ秋の 久しかるべく
紀友則
露がついたままの菊の花を折って挿頭にしよう。老いることのない秋がいつまでも続くように。
菊は不老長寿の花とされ、特にそこに置いた露にその力があるとされていました。直接の表現としては「秋が久しく続くように」と詠まれていますが、含意としては自ら(あるいは思いを寄せる人)の不老長寿を願うものでしょう。撰者の中心でありながら古今集の完成を見ることなくこの世を去った作者。没年は907年とされる一方、この歌の詞書には「是貞親王の家の歌合の歌」とあり、その歌合せが催されたのは893年ないしそれ以前の時期。すでに体調の異変を自覚していたからこその歌と考えるのは、いささか想像が過ぎるでしょうか。