うゑしとき はなまちとほに ありしきく うつろふあきに あはむとやみし
植ゑし時 花待ち遠に ありし菊 うつろふ秋に あはむとや見し
大江千里
植えたときには花が咲くのを待ち遠しく感じた菊。秋になって、その菊が色褪せていくのを見ることになろうなどとは思わなかったことだ。
歌の字句を現代の感覚で素直に読んでいくとこのような解釈になるかと思いますが、一方で菊は他の花と異なり、美しく色変わりをするのが賞美されもする花です。このことを踏まえると、この歌も「秋になってこれほど美しく色変わりするのを見られるとは、花が咲くことばかりを待ち遠しく思って植えたときには思いもしなかったことだ」との解釈がなされることもあるようです。私自身は実体験がないのですが、「美しく色あせる菊」を間近に見る機会を経たならば、自分としての歌の解釈も後者の方に寄っていくのかもしれません。