おなじえを わきてこのはの うつろふは にしこそあきの はじめなりけり
同じ枝を わきて木の葉の うつろふは 西こそ秋の はじめなりけり
藤原勝臣
同じ枝なのに、西側の葉が先に色づくのは、西こそが秋がやって来る方角だからなのだ。
五行思想では春夏秋冬はそれぞれ東南西北に充たるとされており、そのことを知悉した上での歌。詞書によれば、同じ木を見て殿上人たちが歌を詠んでいるに合わせて詠んだ歌とありますから、自分もそれを聞いている周囲の人々も教養ある身分であり、そうしたシチュエーションならばこその歌ということでしょう。
作者の藤原勝臣(ふじわらのかちおん)は平安時代前期の官人・歌人。古今和歌集には、この歌を含めて三首が入集しています。