ひとりのみ ながむるよりは をみなへし わがすむやどに うゑてみましを
ひとりのみ ながむるよりは 女郎花 わがすむ宿に 植ゑて見ましを
壬生忠岑
一人でもの思いにふけっているより、この女郎花を私の家の庭に移し植えたいものだよ。
例によって女郎花は女性の比喩。愛しい女性を遠くから見てひとり思い悩んでいるより、いっそ家に連れて帰って一緒に暮らせるものならなぁという思いでしょう。反実仮想(実際には起こり得ないことや、起こらなかったことを想像する)を表す助動詞の「まし」が、この歌に込められた思いの切なさを一層際立たせていますね。