漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 280

2024-01-21 05:34:33 | 貫之集

延喜の末よりこなた、延長七年よりあなた、内裏の仰せにて奉れる御屏風の歌、二十七首

はるたちて かぜやふきとく けふみれば たきのみをより たまぞちりける

春立ちて 風や吹きとく 今日見れば 滝の水脈より 玉ぞ散りける

 

延喜の末から延長七年(929年)にかけて、帝の仰せによって奉った御屏風の歌二十七首。

立春となった春風が氷を溶かす今日見ると、川の深いところで水しぶきが玉となって散っている。

 

 「延喜の末」は、文字通り最後の年だとすれば923年ですので、929年までの6年間に詠まれた歌ということになります。「二十七首」とありますが、実際には 317 まで38首採録されています。
 春が来て風が氷を溶かすというと、古今集0002 の著名な貫之歌が思い出されますね。私もとても好きな一首です。なお、この歌は新拾遺和歌集(巻第一「春上」 第18番)に入集しています。

 

そでひちて むすびしみづの こほれるを はるたつけふの かぜやとくらむ

袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ


紀貫之



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