漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0309

2020-09-03 19:42:43 | 古今和歌集

もみぢばは そでにこきいれて もていでなむ あきはかぎりと みむひとのため

もみぢ葉は 袖にこき入れて もて出でなむ 秋は限りと 見む人のため

 

素性法師

 

 紅葉の葉は、袖の中にこじ入れてでも持って帰ろう。秋はもう終わりと思っている人のために。

 詞書には「北山に僧正遍昭と茸(たけ)狩りにまかれりけるによめる」とあります。僧正遍昭は素性法師の父親ですから、親子でキノコ狩りに出かけたのですね。秋も終わろうとする時期、そこで見つけた紅葉の葉を、もう秋が終わりで見られないと思っている人に見せるために、袖にこじ入れてでも持って帰ろうという訳です。

 この歌に触れて思い起こしたいのは、同じ作者の手になる 00550056

 

みてのみや ひとにかたらむ さくらばな てごとにをりて いへづとにせむ

見てのみや 人にかたらむ 桜花 手ごとに折りて 家づとにせむ

 

みわたせば やなぎざくらを こきまぜて みやこぞはるの にしきなりける

見わたせば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の 錦なりける

 

 前者は、桜の花を枝ごと折って土産にしようという歌。後者は「こく」という印象的な言葉が共通で使われていますね。



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