八月、人々あまた、人の家の花を折る、掘り植うるところ
みるひとも なきやどなれば いろごとに ほかへうつろふ はなにしかなく
見る人も なき宿なれば 色ごとに ほかへうつろふ 花にしかなく
八月、多くの人々が、人の家の花を折って、他の場所へ掘り植えるところ
鑑賞する人もいない家の花なので、色ごとに分けて他の場所に植え替えられていくのは、花にとってなによりのことであるよ。
最後の「しかなく」は「如かなく(「如く」+打消しの「ず」)」で、「如く」は匹敵する意。ここで咲いても見てももらえないのなら、他の場所に植え替えられた方が花にとって良いという歌ですが、「人の家」はかつて愛しい人が住んでいた家で、その人がいなくなってしまった寂しさ悲しさを詠んだものなのかもしれませんね。