半分くらい読んだところで、「あ、やっぱりこれは以前読んだなぁ・・・」と思い当たりました。それがいつだったかは思い出せないのですが、恐らく手当たり次第に一番本を読んだ中学か高校の頃。ただ、原書では初めて読みました。
ペーパーバックでわずか100頁。けれど、見掛けほど浅く薄い本ではありません。まさにがっつり。それは逃れたくても逃れられない、言わば「生きる」ということに似ています。
舞台はスタインベックの生まれ故郷、カリフォルニアのとある街。そしてそこで語られるのはわずか数日間の出来事。
ストーリー立てや人物描写も見事ですが、私が特に凄いと思ったのは、ところどころ場面が替わる時に必ずそこから書き起こす、自然の描写。
それは西部劇の映画で、ただ単に荒野が映っているだけだと思って見ていると、向こうから小さな点が少しずつ近づいてきて、実はそれがさすらいのガンマンだと分かるとか、そんな手法に似ています。しかもそれが決して難しい英語ではなく、ごくごくありふれた単語で綴られるものですから、読み手はうまくそれに乗せられて、大きなものから小さなものへ、例えば空や山、川を渡る風や音、そういったものから、ずっと目線を近くに落として、そら、女が歩いてきた、という風に誘導されます。その心地良さと言ったら、それこそ本を読む快楽としか言いようがありません。
しかも、この本のどこをどう切り取ってもそのまま映画の一場面になりそうな、そんな視点の余裕さえ感じます。それは間違いなく、事前に入念かつ周到に計算し尽くされていればこそ。
ラストの20頁ほどはとても途中で本を置けず一気に読んでしまいましたが、それほどに力のある本です。決して Happy End ではないけれど、これからもずっと私の心の底に残り続けるに違いありません。
John Steinbeck,
Of Mice and Men
(Penguin Books)
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