高橋英郎『モーツァルトの手紙』(2007年)読了。
短い生涯の割に膨大な手紙を残したモーツァルト。本人はこんな形で残るとは思ってもみなかっただろうが、逆に私たちはそこに生身のモーツァルトの姿を見る。
フィクションと知りつつも慣れ親しんだ映画『アマデウス』が、実は実際のエピソードをあちこちに散りばめていることとか、モーツァルトの手紙とともに史実を辿ると(読みながら自然とそうなる本書の構成は見事)、ラストシーンそれ自体が、モーツァルトの棺を見送る面々それぞれの運命を暗示しているようにも見えることとか、ともかく発見と感嘆の連続。
著者の翻訳も、恐らく日本語に移す時に相当練りに練っておられるのだと思うが、韻を踏んだり駄洒落っぽく落としてみたり、それを下ネタや借金の話でやるものだからとても電車のなかで読めるものではないけれど、休日や夜にゆったり構えて大声で笑えるのは本当に楽しい。名著です。
高橋 英郎『モーツァルトの手紙』(小学館、2007年)
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