E. C. ベントリーの Trent Intervenes(1938年)読了(邦題『トレント乗り出す』)。
ベントリーのトレント物を出版年順に読んできたが、この短編集は第一作の『トレント最後の事件』よりも前の設定。
通りがかりの旅行者がまんまと騙されるトリックを暴いた『ほんものの陣羽織』、晩御飯時になると様子が変になる女性の秘密を解き明かした『利口なオウム』、瞬き一瞬、白昼堂々の殺人を見破った『トレントと行儀の悪い犬』等、どれもトレント君の推理が冴えわたる逸品揃いなのだが、私が一番ぐっと来たのは短編集の最後を飾る『ありふれたヘアピン』。殺人や強盗ではなく、叙情溢れる極上のミステリー。
以上の12編に、これまで未収録だった『救いの天使』を加えて全13編。特にラスト数編は、まさに巻を措く能わず。錫杯の冷たさに酔いながら、ベントリーを堪能した夜。
E. C. Bentley,
Trent Intervene
(Kindle)
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