
「日本の名随筆」というアンソロジーが出ているのは以前から知っていましたが、その中に「釣(り)」をテーマにしたものがあるということはつい最近まで知りませんでした。
しかも、編者が開高健とあっては、釣り師のはしくれとしては買わずにはおれません。
本は箱というより本全体を覆う帯に入っていて、収録されている作品と筆者が記載されています。これを見るだけで読む前からわくわくしてます。ここに全部記載してもよいのですが、ともかく、実に錚々たる顔ぶれです。
何だか読み進むのがもったいなくて、結構な時間が掛ってしまったのですが、例えばムツゴロウでお馴染み畑正憲が外房での鯛釣りについて書いた「外川の鯛」、作曲家の團伊玖磨が葉山・鎧摺でチヌを釣る「黒鯛釣り」に始まって、幸田露伴の「幻談」、井伏鱒二の名文「釣人」、その師匠筋にあたる佐藤垢石の「水垢を凝視す」、最後は編者開高健の「ナクネク川のキング」。全28編、珠玉の名品揃いです。
なかでも印象的だったのは、プロレタリア文学で有名な葉山嘉樹の「信濃の山女魚の魅力」という小品。私はかつて彼の「セメント樽の中の手紙」を読んでそのド現実描写に衝撃を受けたのですが、その随筆は何というかとても安閑としたもので、けれどその中に鋭い心理描写や洞察が見え隠れして、とても味があります。私はヤマメ釣りはやったことがないのですが、短い文章の中に、魚と人の知恵比べというか、釣り人の思考のプロセスがよく描写されていて、思わずふっとほほ笑んでしまいます。
掲載されている釣りのジャンルも、船釣りから磯釣り、鮎に岩魚、そしてヘラブナまで、多岐にわたっています。そのどれもが釣りの、釣り人の、一面を見事に切り取った、噛み締めるように読んで楽しめる文章ばかり。釣りをする人ならどこから読んでも楽しめること請け合いです。またいい本に出会いました。
開高健(編)『日本の名随筆4「釣」』(作品社)
ブログまとめて拝見しました。
刃物に投稿するには、鉈と切り出し程度
しか使用していませんので、
ここにしました。
ブ美は3作品を拡大レベルを変更して、
ながめました。
Wou-Kiのブルー、実物を見たい
衝動にかられました。
祐三の文字、なんとなく惹かれます。
で、本題
お気に入りの2冊、ご紹介
垢石著<狸の入院>
とぼけた味わいをたのしみました。
西園寺公一著<釣り60年>
彼の<釣魚迷>の世界版です。
2冊とも古書店で入手
文泉
釣りの本ですが、探せば色々あるのでしょうね。
このアンソロジーにも巻末にその種の目録のような
一覧があって、けれどどれも古い本ばかりで、
古書店を丹念に回らないと入手出来ないだろうな、
と思っていました。
垢石は水垢の研究、西園寺公一はイトウを釣った話が
それぞれこの本にも収録されていました。
オススメの2冊、早速探してみます。