横浜のみなとみらいで開かれているドガ展に行ってきました。
と言っても、実際に行ったのは随分前で、そう言えばちょうどAPECの直前だったためでしょう、バーでちょっと飲んでみなとみらいの海沿いを徘徊していたら、おまわりさんに5回も声を掛けられました・・・
さてドガですが、これまで色々な美術展で散発的に観ることはありましたが、ドガだけの展示は初めての体験です。事前に予想はしていましたが、何と言うのでしょう、自分の好みにドンピシャなところが多く、またそれだけではないドガの色々な側面を多角的に観ることが出来、とても面白い経験でした。
例によって印象に残った作品を4点。
(エドガー・ドガ「バレエの授業」1873-76年、オルセー美術館蔵)
遠近法の技法はむろんですが、その構図によって劇的な奥行きを確保しています。こういう絵に限りませんが、ドガの室内画を観ていると、その空間の切り取り方が実に独特で、うまいと感じます。
(エドガー・ドガ「綿花取引所の人々(ニューオリンズ)」1873年、ポー美術館蔵)
ドガが39歳の時、アメリカを訪れた際に、母方の親戚が営んでいたニューオリンズの綿花取引所の様子を描いた作品です。ドガの弟もそこで働いていたそうで、画面中央で新聞を読むのがその人。手前で綿花のチェックをしているのがドガの叔父に当たる人だそうです。これは人物画でありながら、どことなくある種の風景画ような感じがします。皆はそれぞれに動いているはずで、その瞬間を切り取っているにも関わらず、そこに感じられるのは明確な「動き」。パチンと手を叩けば、即座にまた皆それそれ動き出しそうな感じ。不思議ですが、それがドガなのだと思います。
(エドガー・ドガ「浴盤(湯浴みする女)」1886年、オルセー美術館蔵)
晩年目を悪くしたドガはパステルを多用するようになりますが、ドガには気の毒だったかもしれないそのおかげで、私たちは素晴らしいパステル画を眼にすることが出来ます。ひとつ上の綿花取引所の作品もそうですが、この裸婦も、自分が描かれている(見られている)ことは全く感じさせません。人目を気にせず湯浴みをする女性の後ろ姿を、何だか見てはならないものを覗いてしまったようは、観る者にそんな錯覚を与えます。右側のテーブルで画面を仕切ってしまうのも奇抜、かつ大胆ですね。
さて、いよいよ真打ち登場。
(エドガー・ドガ「エトワール」1876-77年、オルセー美術館蔵)
この絵の美しさを、何と表現したら良いのでしょう。「エトワール」は英語では「星」。バレエダンサーの最高位、オペラで言えばプリマ・ドンナ。その実力と誇り、威厳に満ちて舞台の中央でスポットライトを浴びる、その動きの軽快さと柔軟さ、同時に、着地した瞬間の筋肉の緊張までが、ここにぐっと凝縮されています。
同時に、その衣装の表現にある、まるで羽毛のような軽やかさ。パステルというのはいわゆるチョークのようなもので随分と粉っぽいものだと想像していますが、それがこのグレーの背景(モノタイプという、金属板にインクで描いた図柄を紙に刷り取る技法)の上に、まるで粉雪のように綺麗に定着しています。
一方で、よく知られたことですが、当時のバレエダンサーの位置付けは現在とは全く違っていたようで、左手の舞台袖に黒い足が見えるのがこの踊り子のパトロンだろうとの由。
・・・そんなことを色々考えながら、けれど眼は純粋にその美しさに終始釘付け。日本に居ながらにしてこの絵を観ることが出来たことを、とても幸せに思います。
展示は12月31日まで。何とかもう1回は行きたいと思っています。
ドガ展
2010年9月8日~12月31日
横浜美術館
ドガですか
エトワールですよネ
確か横浜は箱根の東
なんのこの程度では箱根越えは
できるもんですか
少しだけ痩せ我慢
文泉
私が行ったのは金曜日の夜でしたが、会場は意外に
空いていて、ゆっくりじっくり観ることが出来ました。
私ならこれだけで十分、関ヶ原を越えられますがね