今日は釣りの話題ではありません。(ちょっと長文です。)
以前も書きましたが、私の場合、釣りは趣味の一つであって、釣りが趣味の全てではありません。釣りと同じくらい、いやひょっとしたら釣りよりも大切な趣味かも知れませんが、私の生活と切っても切り離せない趣味が、クラシック音楽です。
母親がピアノを持っていたこともあり、随分小さい頃から音楽には接してきましたが、ピアノを習い始めた幼少期、学校の部活で吹奏楽をやっていた中学・高校時代までは、音楽と言えばレコードやラジオからの情報が全てでした。そんな私の蒙を啓いてくれたのは、大学に入って一人暮らしを始めてから通うようになったコンサートホールでした。
ちょうどその数年前、大阪の梅田に日本初のクラシックコンサート専用ホール「ザ・シンフォニーホール」が誕生し、毎週のように、と言えば大仰ですが、それくらいの勢いで京都から通っていました。当時のアルバイト代は殆どが本代とレコード代、そしてコンサートのチケット代で、余れば食費に回す、というような感覚でした。
とは言え、所詮は学生の身。外来の一流オーケストラのチケットは高くて手が出ません。どうしても聴きたいオーケストラは、当時一番安かった天井桟敷やバックステージの席で聴きましたが、それでも数は少なく、今もそのオーケストラと指揮者、座った席を思い出せるほどです。
因みにその時に聴いたオーケストラで最も印象に残っているのはロシアのレニングラード・フィルハーモニーで、ここは当時カリスマ指揮者として有名だったムラヴィンスキーという指揮者が公演する予定だったのですが、公演直前に急病とかで来日しなくなり、弟子筋の若い指揮者が代役に立ちました。しかしオーケストラの技術はピカいちで、後にも先にも(と言うのは、その後、東京に来てから聴いたどのオーケストラも含めて)あんなに端正で冷徹な響きを持つオーケストラを聴いたことがありません。
恐らく他の同世代の方と同様、音楽を聴く最初にきっかけは私の場合もFMラジオやレコードで、それで慣れ親しんだ楽曲を実際のコンサートで聴くという順番が多かったのですが、唯一それとは逆の聴き方をしたのが標題の弦楽四重奏です。
弦楽四重奏というのは、ヴァイオリンが2本にヴィオラとチェロ、合計4本の弦楽器で演奏する室内楽の一種です。クラシックのコンサートというのは、多少乱暴に言うと、演奏家の数とチケット代は比例していて、大人数のオーケストラよりもソロ(1人)の演奏や弦楽四重奏(4人)の方がチケットが安くなっています。当時の感覚では、海外の有名なオーケストラのコンサートに1回行くお金で、弦楽四重奏なら4回ないしは5回、行くことが出来たので、ともかく生の演奏に飢えていた私は、それこそ手当たり次第に、弦楽四重奏を聴きに通いました。
それも、今思えばとても贅沢な聴き方をしていて、恐らくその当時の数年間は、ザ・シンフォニーホールにやってきた海外の弦楽四重奏団の演奏は、殆ど聴いたと思います。それも、事前にレコードやラジオで勉強することなく、いきなりぶっつけ本番で聴いた訳です。現在でも世界最高峰と言われる楽団も数多く、アルバン・ベルク四重奏団や(もう引退してしまいましたが)スメタナ四重奏団もこの時に生で聴きました。特に、どうした訳かチェコ系の弦楽四重奏団の来日が多く強く印象に残っていて、彼らの「お国もの」、即ちドヴォルザークやスメタナ、ヤナーチェクの弦楽四重奏曲は、今でもお気に入りの楽曲になっています。
社会人になってしばらくして東京で生活するようになってからはコンサートも学生時代ほどは飢えた聴き方をしなくなりましたが、それでも弦楽四重奏だけは生で聴くものと決めていました。ここまで来ると目鼻が利いてくるというか、お得なコンサートを選別することが身に付いてきて、いつも一期一会の出会いを楽しみながら今日まで過ごして来ました。
そんな私が一番好きな曲が、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番、嬰ハ短調です。この曲を初めて聴いたのは(大阪でも聴いたかもしれませんが覚えていないので)東京に来てからで、演奏はハーゲン四重奏団でしたが、それまで聴いたどのベートーヴェンよりも内向的、まぁ一言で言って暗い曲なのですが、それに一発で魅了されてしまいました。このコンサートがきっかけで弦楽四重奏のCDを買うようになったのですが、何種類か聴いたCDのうち、今はスメタナ四重奏団が30年以上も昔に録音したものが気に入っています。
さて、それでようやく標記の写真に繋がるのですが(前置きが長くてすみません)、先日とあるコンサートに行った時、アメリカのフェルメール・クァルテットのさよならコンサートの案内に目が留まりました。この弦楽四重奏団は、何年か前に来日した時は予定が合わず聴き逃していたのですが、何とこれが引退コンサートだとか。しかも、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全曲演奏。行かない訳はありません。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は全部で16曲(数え方によっては17曲)、それを6日間にわたって演奏するというものです。6回セットのチケットが29,000円!それはとても無理そうなので、どれかひとつ選ぶとなるとやはり上述の14番です。プログラムを見ると、何とこの14番が6日間の一番最後の演奏曲目になっています。迷わずこの日を選びました。因みにその日は、第2番、第6番とこの第14番が演奏されることになっています。
先日チケット代6,000円を振り込んで、今はチケットが届くのを待っている状況です。まだ3ヶ月も先なのですが、今から会社のスケジュールには表出しをして、残業も振り切ってホールに行こうと思っています。こんな風に、先々のチケットを押さえてそれを実現するために日々仕事をする、というのは間違っているかもしれませんが、私の中では極めて当たり前の思考経路です。もっとも、家族や職場の同僚にはなかなか理解されないという点では、釣りも似たようなもんですがね・・・
もっとも、当時、井伏鱒二の世界がどこまで分かっていたか、甚だ疑問ではありますが・・・
「川釣り」と詩集、早速明日オアゾの丸善に行ってみます。
読書のすすめ
最近 再読 否 再再読になりつつある作家の一人が井伏です なにを読んでも楽しめると思いますが もし まだでしたら 次の二冊はいかがでしょうか
岩波文庫 川釣り これは新書版の文庫入りです
同 井伏鱒二全詩集
鴎外訳で覚えているのはアンデルセンの「即興詩人」と
シュニッツラーの「みれん」くらいです。
最近遊びの本ばかり読んでて、がっつり本を読むことが
少なくなりましたねぇ・・・
多分 ブラスの魅力を語られて以来ではないかと思います
微かな記憶を辿れば福永や内田についての氏の詩文論も
で 強引に文学がらみに話題を移します
以下は自慢話です
先日 岩波文庫版鴎外訳の第1版を入手いたしました
現在の訳者は別人です さてそのタイトルは?