消費増税の悪影響が徐々に出てきました。厚生労働省が2/4に発表した統計速報によると実質賃金は昨年前年比2.5%の減少です。昨年から始まった原油の値下がりが消費税対策に有効でしたが、ここにきて原油先物が下げ止まり春以降はガソリン価格が値上がりそうで値下がり効果を帳消しにしそうです。超金融緩和で行き場のない資金に支えられている株式市場は今後も一部の銘柄を除き活況を呈するでしょうが、株式相場とは関係ない大多数のサラリーマン世帯は春以降の物価の再上昇や実質賃金切り下げの影響を受けるでしょう。韓国ではたばこが今年から日本の販売価格並みに上昇したあおりで1本買いが流行っているようですが、対岸の火と笑っていられなくなる日が来るかもしれません。安倍首相は来年夏の参議院選挙後に改憲発議の意欲を示しているようです。しかし、国民の前には日本経済不況入りの危機が迫っており憲法改正は絵に書いた餅になるかもしれません。
以下コピー 厚労省は昨年1年間の毎月勤労統計調査(速報)を公表した。安倍政権はアベノミクスで賃金上昇と息巻いているが、物価上昇を考慮した実質賃金は前年比2.5%減に沈んだ。リーマン・ショック後の09年(2.6%減)に匹敵する最悪の数字だ。
「想像以上に悪い数値でした。昨年、サラリーマン世帯は消費税増税や円安進行による物価上昇に痛めつけられ、生活水準を一段と悪化させたことがハッキリした」(市場関係者)
しかも、中小・零細企業の実質賃金の低下が目立つ。全体では2・5%減だが、従業員30人以上に絞ると1・7%減に過ぎない。賃上げの恩恵は大企業に集中している。
日本商工会議所が実施したアンケートでは、15年度に「賃上げなし」と回答した中小企業は19.3%で、前年より2.5ポイント上昇した。
「サラリーマンの約7割が勤める中小企業は、円安による資材高やエネルギー価格の高騰で苦しさを増しています。現在は原油安のおかげで何とかしのいでいますが、ここにきて原油価格は底を打ち、上昇に転じ始めています。中小零細には痛手でしょう」(株式評論家の倉多慎之助氏)
帝国データバンクの調査によると、中小企業の主な円安対策は「燃料費の節約」(26.9%)だが、約12%は「人件費の抑制」を挙げている。
「原油高で燃料費の高騰が続くと、コスト削減のため人件費に手をつけざるを得なくなる中小企業が続出する恐れがあります」(帝国データバンク関係者)
給与ダウンなら、まだマシだ。1月は、17カ月ぶりに上場企業(スカイマーク)が倒産。市場ではシャープやソニーなど大手企業の経営危機も叫ばれる。さらに12年の「ミシュラン」で1つ星を獲得したレストラン(東京)や、神戸の老舗洋菓子店、業歴450年以上の水産練り製品会社(神奈川)など倒産が相次いでいる。
「1月の倒産件数そのものは増えていませんが、上場企業の倒産で潮目が変わった可能性はあります。春先から増加傾向に転じる危険性が出てきました」(東京商工リサーチ情報部の増田和史氏)
倒産を回避するため、中小企業は人員削減に踏み切るしかなくなる。“クビ切り”ラッシュが巻き起こり、それでも立ち行かない企業は倒産にまっしぐらだ。
リーマン・ショック後の09年は不動産のライフステージやジョイント・コーポレーションなど上場企業20社が倒産。全体では1万5480社が経営破綻した(東京商工リサーチ調べ)。昨年は24年ぶりに1万社を下回ったが、実質賃金の減少幅は09年とほぼ同じ。倒産激増の恐れは高まっている。