2016年8月31日に小池都知事が豊洲移転延期を表明してから政治的思惑も絡み、豊洲移転問題は迷走しています。小池都知事は(築地は)長年使われていた所で、コンクリート、アスファルトでカバーされているので汚染という観点、もしくは法令上の問題はないとしていた。ところが、豊洲に対しては都の土壌汚染対策の専門家会議が先月19日、「地下水の水位を保つシステムの稼働で有害物質が流れ出た」と推測し、「地下水は飲用ではなく、コンクリートで覆われた地上部分は安全」との見解を出し、いわば科学的な安全宣言が出たにもかかわらず、安心宣言を先延ばしにしていることが判明。小池流「ダブルスタンダード」問題です。ここが勝負どころと読んだ自民党都議連は、都民の後押しを受けて7/2日の都議選で豊洲市場への早期移転を公約に盛り込む方針を決めた。今後、民進党からの鞍替えが目立つ「都民ファースト」の政策が問われます。
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小池百合子東京都知事が、築地市場の移転問題を検討する「市場のあり方戦略本部」を立ち上げた。築地の再整備も一案に豊洲移転の可否を決めるというが、都民の過半数が豊洲移転支持という世論調査の結果が出たうえ、小池流の「安心」評価に、築地と豊洲で差をつける「二重基準」の批判も出ている。
都議会百条委員会の証人喚問が終わった。石原慎太郎元知事、浜渦武生元副知事、歴代市場長、東京ガス関係者ら24人を喚問。証言の矛盾点を突いたものの、豊洲取得交渉の真相は、ぼやけたままだ。
一方、豊洲の地下水から環境基準値を大幅に超えるベンゼンなどが出た問題は、都の土壌汚染対策の専門家会議が先月19日、「地下水の水位を保つシステムの稼働で有害物質が流れ出た」と推測し、「地下水は飲用ではなく、コンクリートで覆われた地上部分は安全」との見解を出した。いわば科学的な安全宣言だ。
いずれも大きな区切りだが、小池知事は結論を急がず、新設の戦略本部でさらに検討する構え。しびれを切らす卸売業者らは「引き延ばし」と批判する。
戦略本部発足に合わせるように、小池知事のブレーンでもある小島敏郎「市場問題プロジェクトチーム」座長が先月29日、築地再整備の私案を発表した。設計・工事に7年、500~800億円かけ営業を続けながら築地市場をリニューアルするという。
だが、この案には疑問が多い。築地再整備は、都が何度もトライし、工事に取りかかり途中で断念した経緯がある。費用も都の試算値では3400億円、工期も20年以上かかると見込まれていた。
小島氏は、建設技術の進歩を理由にあげているようだが、東京五輪を控え公共工事が集中することや、建設業界の深刻な人手不足などの負の要素も考慮したうえの工期、費用なのか。戦略会議での比較検討の材料としての“当て馬”の疑いはぬぐえない。
仮に7年で完成するとしても、その間の震災リスクもある。築地市場の老朽建築には耐震基準を満たさない棟があり、アスベスト使用も指摘される。日本橋魚河岸、落語の題になった「芝浜」など、江戸時代から続いた10余りの魚市場が、関東大震災で破壊され、築地に統合された歴史を忘れてはなるまい。
地歴といえば、築地市場敷地には戦後の一時期、進駐軍がドライクリーニング工場を建て、有機溶剤のタンクあり、車両の整備工場もあったことが、都の調査でわかっている。土壌の汚染が推定されている。
その調査が明るみに出た際の小池都知事のコメントが「(築地は)長年使われていた所で、コンクリート、アスファルトでカバーされているので汚染という観点、もしくは法令上の問題はない」だった。
コンクリートで覆われているなら豊洲とて同じで、小池発言に「ダブルスタンダード」(二重基準)の批判が出た。「安全と安心はセット」が小池氏の持論だが、安全は科学的、客観的に計れる。安心はあくまで主観的評価だ。小池氏は「安心」を、築地では多めに、豊洲では少なめに語っていないか。きつく言えば「安心」をあやつっていないか。
案外、世論は客観的だ。朝日新聞(4日付)の都内有権者を対象にした世論調査によれば、豊洲市場への移転を「今後も目指すべきだ」とした人が55%、「やめるべきだ」の29%を大きく上回った。
6000億円もかけて完成した豊洲の新鋭施設を使わないのはもったいないと、過半の都民は思っているのだろう。また、同じ調査で小池氏の支持率は74%。小池支持=反豊洲でも、豊洲支持=反小池でもない。
結局、小池氏は引き延ばした末に豊洲移転を決断するのだろう。時間の無駄のような気もするが。
食品衛生の研究者らでつくるNPO法人「食の安全と安心を科学する会」の代表は先月末、都庁で記者会見し「衛生管理面から比較すると安全性が高いのは築地より豊洲」と早期移転を提唱し、「小池知事が安全宣言すれば都民の安心につながる」と訴えた。
「都民ファースト」が問われている。土谷 英夫