藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖)の今季タイトル戦開幕局が28日の叡王戦5番勝負第1局で始まります。その藤井五冠のライバル将棋の渡辺明名人が「信じられないことを普通にやってる」とロッテ・佐々木朗希の快投にツイッターで驚きを表した。その上で「将棋界にもそういう人がいますけど」となぞらえたのは、もちろん藤井聡太五冠のこと。年明けの王将戦は藤井が4連勝の〝完全試合〟で渡辺から王将位を奪った。
その藤井の今季タイトル戦開幕局が28日の叡王戦5番勝負第1局で、相手は26歳の出口若武(わかむ)六段。昨年3月に昇級した順位戦C級1組ではB2への昇級こそ逸したが、7勝3敗の好成績を残し大混戦の叡王挑戦者決定戦を制した若手の伸び盛りだ。
藤井とは2018年、棋士養成機関「奨励会」三段のとき、新人王戦決勝3番勝負で初対戦し藤井が2勝した。その後も藤井が2勝し20年3月の棋王戦予選では乱戦の末、出口が初めて勝っており約2年ぶりの対戦となる。ある棋士は「出口六段は勝ち負けより、胸を借りるつもりで藤井五冠がなぜ強いか肌で感じ、何かを得てステップを上がる絶好の機会」と見る。
第1局の対局場は東京・神田明神。縁結び、商売繁盛の神様で知られ一見将棋とは縁遠い会場だが、三ノ宮に祀られる平将門は勝負ごとの神様といわれる。慶長5(1600)年、徳川家康が関ケ原の戦いに向け江戸城から出発したとき必勝祈願で立ち寄り、天下統一の勝利を収めている。