ロシアの侵攻を受けているウクライナの政府高官は、ウクライナ東部で「今後2週間にわたり戦争の次の段階の行方を決める重大な戦いが起こる」との見方を示した。首都キーウ(キエフ)近郊などから撤収した露軍は東部に戦力を集中し、新たな攻勢を始めるとみられる。ゼレンスキー大統領は「困難な闘いだが、勝利を信じている」とも語った。
高官によると、露軍は侵攻当初、ウクライナ北部、東部、南部の九つの方面で作戦を展開していた。ところが、ウクライナ軍の抵抗で損失が拡大したため、現在は東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州一帯)と南東部マリウポリに作戦を縮小させているという。「露軍が攻勢に出ようとしている唯一の場所がドンバスだ」とし、東部で近く侵攻が始まる可能性を指摘した。
ルガンスク州のハイダイ知事も「今後数日で露軍は攻勢に移る。その展開によって今後の停戦協議のプロセスが決まる」と述べた。10日にキーウでオーストリアのネハンマー首相と会談したゼレンスキー氏も「ウクライナはいつも交渉の準備ができており、戦争を終わらせる道を探っていくが、東部で将来を左右する戦闘の準備が行われているのも見ている」と語り、露軍の攻勢に備える考えを示した。
露軍は3月下旬に「作戦の第1段階は達成された」としてウクライナ北部やキーウ周辺からの撤収を始め、代わりにドンバスの「解放」を目標に掲げている。
一方で、米CNNは9日、露軍部隊の約4分の1が既に「作戦遂行能力を失っている」とする欧州当局者の見方を報じており、露軍が損失拡大の結果、戦線の縮小を余儀なくされたとの見方が強まっている。
ただ、露軍は予備役らの招集も進めるなど、ウクライナ東部に戦力を補充しているとみられている。ウクライナのクレバ外相は「ドンバスの戦いは数千の戦車や装甲車、火砲が参加した第二次世界大戦の戦いを思い出させるものとなるだろう」と激しい戦闘を予想している。
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②ウクライナ国営通信によると、マリウポリを防衛するウクライナの部隊「アゾフ大隊」は11日、SNSへの投稿で、露軍がマリウポリで、ドローン(無人機)から「軍事的な化学物質」を投下し、3人に呼吸困難など中毒症状が出ていると主張した。
この投稿について、米国防総省のジョン・カービー報道官は11日、「現時点では確認できず、引き続き注意深く状況を監視していく。もし事実であれば、我々が持っていた懸念を反映したものだ」と述べた。露軍についてはこれまで、戦況の劣勢を受け、シリア内戦への軍事介入でも指摘されている化学兵器使用に踏み切るとの懸念が出ていた。