欧米では離職する人が急増しており、”the Great Resignation”(大退職時代)として話題になっている。アメリカの離職率(離職者数/雇用者数)は2021年8月に3.3%に達し過去最高の水準となった。アメリカにおける離職率の上昇は労働供給の不足となって経済回復のボトルネックになると同時に、企業が労働者のつなぎ止めのために待遇を改善する動きもみられ、平均賃金は上昇が加速している。賃金外のところでも、福利厚生の改善を進める企業も出てきているようだ。ここには、新型コロナウイルスが絡んだ様々な理由が考えられている。第1の理由はワクチン普及、活動制限緩和による経済環境の急速な改善だ。欧米諸国は経済正常化に早期に舵を切り、2021年4-6月期にはすでにコロナ発生前のGDP水準を取り戻している。
経済環境の正常化に伴い、求人数や労働環境が改善、転職に踏み切る人が増えているようだ。各国における調査・各種報道等を見渡していくと、コロナ禍特有の要因も存在するようだ。例えば、以下のような要因が挙げられている。
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多くの人が長い期間にわたるリモートワークを経験し、プライベートの時間が増す・人間関係のわずらわしさから解放されるといったメリットを体感した結果、オフィスに戻りたくないと考える人が出てきている。
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職場を離れ働き方が大きく変わったことが、自らのキャリアを見直すきっかけとなった。
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失職を免れた人たちは、経済活動の制限によって貯蓄額が急増。金銭的に余裕が出来た人たちが待遇面より自分のやりたいことを職にしたいと考えるようになった。
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仕事とプライベートの境界があいまいになり、長時間ストレスにさらされた結果、バーンアウト(燃え尽き症候群)してしまった。
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コロナ禍はデジタル関連の求人には追い風となっており、専門職の待遇改善、転職増につながっている。このような傾向は日本においても、起きており、今後日本でも、生活環境の改善のための、社畜からの解放を目指す、自主退職の働き人口が増加するでしょう。日本人の場合には一流大学→一流企業→幸せな結婚→幸福人生 のイメージが強すぎる。今後は、自分の適性を生かす道が主流になり、一流企業を目指さないケースの方が多くなり、目的もなくただブランド大学を目指し、受験勉強する学生の数は減り、個性を生かす道を選ぶ、学生が増加するでしょう。
以下抜粋コピー
「大退職(Great Resignation)」を予見した心理学者は、今後2、3年は平均以上の割合で労働者の退職が続くと予測している。
アンソニー・クロッツ教授は、フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで、この傾向は続くだろうと示唆している。というのも、COVID-19の世界的なパンデミックから2年が経っても、人々はまだ「自分の人生を模索している」からだ。
テキサスA&M大学メイズ・ビジネススクールの教授であるクロッツは、従業員のさまざまな退職方法を調査することに関心を持っていると述べている。
彼は2021年2月、ブルームバーグのインタビューで「大退職」という言葉を作ったとされている。2021年4月、約400万人のアメリカ人が仕事を辞め、それは20年ぶりのことだった。それから2022年2月まで、9カ月連続で月間の退職者数は400万人を超えている。2022年4月3日のFTに掲載されたインタビューでクロッツは、雇用主が新しい働き方を提示しようと模索する中で職場が著しく変化しており、さらに退職は伝染するように広がりかねないため「労働市場はしばらくはやや不安定な状態が続くだろう」と指摘している。