なぜ、時代の流れにあえて逆行してでも「浪人のすヽめ」なのか?その理由を明かす前に、まず大学受験を取り巻く現状から押さえよう。
現在の大学受験は、浪人どころか「現役志向」が加速している。2007年度の「大学入試センター試験」では2割を超えていた高卒生、いわゆる浪人生の受験比率が徐々に下がり、22年度はとうとう15%を割り込んだ。
一方、1月に判明した21年度の大学への進学率はというと、前年度から0.5ポイント上昇となる54.9%と、過去最高を更新している。なぜ大学進学率は高まっているにもかかわらず、浪人生比率が下がっているのか?
短期的な要因としては、まず21年度以降、大学入試センター試験から「大学入学共通テスト」に切り替わったことで、現役生が有利になり、浪人を避ける動きが一気に加速したこと。同時に、16年以降、私立大学の定員厳格化が始まり、浪人回避の「安全志向」が強まったことが挙げられる。さらには、総合型選抜や推薦入試の拡大など入試方式の多様化も理由に挙げられよう。
加えて、中長期的な要因としては、少子化と大学数の増加がある。1992年には205万人いた18歳人口が、21年には115万人へと著しく減少。その間、4年制大学の数はおよそ500校から800校に急増した。21年度の私立大学の入学定員充足率が89年の調査開始から初めて100%を割り込み、妥協すれば誰でもどこかの大学に入れるのだ。
さて、この「大学全入時代」にあって、「不本意な大学に入学するぐらいなら」という条件付きで浪人を勧める理由は、編集部の試算では、妥協して第1志望でない大学に行くよりも、浪人してより難関の大学に入る方が、卒業後の長い人生を考えるとお得になる可能性が大きいからだ。
当然ながら「浪人しても成績がどれだけ伸びるのか分からない」という不安があるに違いない。また、予備校費用など浪人のコストへの懸念もあるだろう。
その不安を解消するべく、現役時から1浪後にどれだけ偏差値が上昇するのか、河合塾の内部データに基づく平均上昇値を初公開。1浪後に期待できる偏差値で、チャレンジできる大学がどれほど変わるのか明らかにする。
その上で、1浪後に入学が期待できる大学の卒業者の推定年収から、浪人のコストがそれに見合うのかについても算定した。
目下、大学受験予備校、河合塾の浪人生向けコースにおける「仮面浪人」の割合が、従来の2割から3割へと急上昇しているという。そんな「後悔先に立たず」になる前に、もう1年、受験勉強の「学び直し」をすべきか否かを考える一助となるはずだ。
「現役時代よりも成績が5%以上向上した」と回答した割合は約80%であるため、大半は浪人して成績が上がったとわかります。ちなみに「成績が変わらなかった:約20%」「5%以上成績が下がった:0%」という結果でした。
*なお、今回のアンケートについては「浪人経験者のみ」からアンケートを取ったので、多少意見に偏りがあるかもしれない点はご了承ください。
浪人して第一志望校に合格できた人は約30%でした。浪人して成績が上がった人が約80%であることを考えると、「成績が上がっても必ずしも第一志望校に合格できるとは限らない」ということがわかります。
浪人することで成績を上げること自体は十分に可能ですが、「第一志望に合格できる学力レベルまで引き上げるのは難しい」と覚えておくといいでしょう。
浪人生の中には「もう1年勉強するのであれば現役時よりも偏差値の高い大学に行けるだろう」と考える人も多いです。多くの時間を勉強に費やせるので、成績を伸ばしやすいイメージがあるかもしれません。
しかし今回のアンケート結果からもわかるように、適切な志望校設定が重要だとわかります。また、志望校に受かるためには、十分な勉強時間を確保して勉強の方向性を間違えないよう計画的に勉強したいところです。
ここで「第一志望校に合格できる可能性が低いなら浪人はしないほうが良いのかな?」と感じる人も多いでしょう。確かに「第一志望校に合格できない=浪人失敗」というイメージもあるため、不安に感じるのも無理はありません。
しかし、実際に浪人した方にアンケートを取ると「浪人には成功したと感じる」という回答が、約70%も集まりました。第一志望校合格者(30%)よりもかなり高い数値になっていることが分かります。
受験時はどうしても「第一志望校に合格することがすべて」と考えがちです。もちろん、自分が一番行きたい大学に合格できるに越したことはありません。
とはいえ、実際は「第一志望校以外でも十分に楽しく生活できた」「必死に頑張って勉強した経験自体が財産になった」と感じることがほとんどです。
第一志望校に合格できないからといってその後の人生が悪くなることはほぼありませんし、ひとつのゴールに向けて努力した経験は間違いなくプラスに働きます。
現役時に受けた大学に全落ちしているなら、基本的には浪人してでも大学へ行きましょう。
「大卒」「高卒」という最終学歴は、生涯賃金や就職時の選択肢にも影響してきます。生涯賃金については、男女ともに大卒のほうが5,000万円ほど高いです。苦労知らずの時代、流れに逆行する浪人もありかもしれません。