リーマンショックが襲来した時には、米国中心の世界平和と繁栄を可能にした戦後の「世界システム」である「パクスアメリカーナ」は機能して、大恐慌の危機を米国も世界も克服できた。
※パクス・アメリカーナとは、「アメリカによる平和」という意味であり、超大国アメリカ合衆国の覇権が形成する「平和」である。
そして、「米国の繁栄」や「GAMFAやAIの成長は永遠」という神話を世界の人が信じるようにもなった。
しかし、「パクスアメリカーナ」は米中経済戦争・ウクライナ戦争・イスラエルとハマスとの戦闘などで 完全に崩壊している。
中国の台頭が、米国の「中産階級」の中心だった内陸部の工業地帯の経済を破壊する一方、独占的な収益を上げるGAMFAや政府に救済してもらってから巨額の収益と報酬を謳歌するグローバル金融機関へ「99%の国民」の怒りを買い、 その怒りが2016年のドナルド・トランプ大統領を生んだ。
2024年の米大統領選挙ではトランプ・バイデンの2人の大統領経験者が、「グローバリゼーション」をかなぐり捨てて「アメリカファースト」を連呼することが確定している。
米中の軍事的緊張も両国民の敵意に拍車をかけている。
だから、世界の「インフレが来ない」原動力であった「体制を超えて一番安いところで生産する」という「グローバリゼーション」は過去のものであり、「インフレはすでに来ている」。
インフレ→高金利→リスク資産の大暴落→大不況、というサイクルは始まっているのだ。
国際的にも「パクスアメリカーナ」は崩壊している。
第2次世界大戦後の世界の平和と繁栄の中核にあったのは、米国の最強の敵国であった日独両国を戦後の米国の軍事経済両面の最大の同盟国としたことだった。
その方針を開戦前に決めていたフランクリン・ルーズベルト大統領の世界への遺産だった。
しかし、ソ連との「冷戦に勝利」し、「歴史は終わった」と浮かれていた1990年代初頭の米国は、「敗戦国」と決めつけたロシアを軍事でも経済でも同盟国にはしなかった。
それどころか、対ソ連の「冷戦戦略」を作り上げたジョージ・ケナンをはじめとした米国の多くの専門家が「そんなことをしたらロシアとの戦争になる」と強く警告した「NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大」を欧州各国と進め、核保有国の軍事同盟であるNATOがロシアへの「包囲網」を形成した。
そして「ウクライナがNATOに加盟するようなら軍事行動を起こす」というロシアのウラジーミル・プーチン大統領の警告は、2019年に登場したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領による「NATO加盟」の方針の表明、そして、2022年からのロシアのウクライナ侵攻により現実のものとなった。
このようないきさつから今後世界は経済を始め、混とんとしてくる可能性があるのです。