2023年1~6月期、中国の自動車輸出台数は前年同期比75.7%増の214万台だった(中国汽車工業協会(CAAM)の統計による)。
中国は、わが国を追い抜き世界最大の自動車輸出国になった。輸出の伸びが顕著なのは電気自動車(EV)だ。
共産党政権がEVの製造、販売、充電などのインフラ整備を支援したこともあり、中国EV産業の成長は急速だ。
比亜迪(BYD)などの中国メーカーは、EVをデジタル家電の延長線上にあるモノと考えているようだ。
現在、中国のEV業界の成長をけん引しているのは、BYDなど中国勢と米国のテスラだ。
彼らの自動車の製造コンセプトは、日欧の主要自動車メーカーとやや異なる。トヨタやフォルクスワーゲンなどは、精緻な“すり合わせ技術”で覇権を握った。
中国は、大気汚染対策や党主導での需要喚起の一環としてEVの普及策を強化した。なお、共産党政権はEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を“新エネルギー車”と位置付け、普及支援策の対象にした。
また、BYDやテスラは世界から優秀なバッテリーやモータなどの駆動装置(eアクスルなどと呼ぶ)を調達し、車体上に配置する。その上にボディーをかぶせ、EVが完成する。
デジタル家電のようなユニット組立型生産方式であるため、エンジン車に不可欠なすり合わせ技術を必要としない。
こうして中国製EVは主要先進国の自動車メーカーを上回る価格競争力を実現した。価格の低さは中国以外の消費者からも支持され始めた。中国のEV輸出は増加し、わが国を上回る世界最大の自動車輸出国に中国は成長した。
中国の共産党政権は先端分野での国際競争力を高めるためにEV産業の成長支援を強化する。BYDなど自動車メーカー、車載バッテリー最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)、半導体製造を手掛ける中芯国際集成電路製造(SMIC)などを対象に、補助を強化する。
今後は、各国、地域の主要メーカーや政策当局を巻き込んだEVシェア争いが世界規模で激化していくはずだ。