筆者の時代には銀座・赤坂・六本木の高級クラブは憧れの社交場でしたが、新型コロナウイルスの影響で、一気に閉店に追い込まれる店が増えるはずです。特に落ち込むのが社用族の利用でしょう。高級クラブに限らず、ここ100年ぐらいから出てきた職業は生き残りを賭け選別される時代なのです。下手をすると新型コロナウイルスの影響だけではない第4次産業革命が起きっている可能性すらあります。ここ1年半ぐらいは厳しい時代が来る覚悟が必要かもしれません。
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2月下旬あたりから、銀座の街も新型コロナの影響が深刻になり、連日キャンセル続きで「ザボン」もついに休業宣言を致しました。4月に入ってからは街もガラガラ。そんな銀座を見てしまうと、悲しいだけではなく苦しい気持ちでいっぱいです。
テレビのワイドショーではダウンタウンの松本人志さんが、水商売の人たちの休業補償について、「ホステスさんが休んだからといって、我々の税金では、俺は払いたくない」と発言されました。世間では私たちというのはそんなにお金を持っていると思われているのでしょうか? たしかに稼いでいらっしゃる高級クラブもありますが、銀座はそういった店がすべてではありません。不況に悩まされながらも、これまで歯を食いしばって頑張ってきたんです。
正直に言いますと、私は毎月のように通帳を開いては、店の経営状況に悩んでおります。社会不況、出版不況でお客様は減っても、家賃と固定費はまとまって消えてゆく。支払いが回らず、自分の貯蓄を切り崩すこともしばしばです。3月はほとんど営業もしていないのに、大きな維持費だけが出ていきました。「手遅れになる前に店を閉めた方がいいのではないか」といった声を、常連の先生方から頂くこともあります。しかし、私にはどうしても簡単に店を閉めることなどできないのです。
銀座という街は、ほかの歓楽街とは違った機能を持っていると私は確信しております。ジャーナリスト、作家、編集者。そういった方々が集まれば話題は尽きることなく、新しいものが次々に生まれる。新宿、渋谷、六本木、人が集まる場所は多くありますが、文化人の方たちが一堂に集まるのは銀座くらいではないのでしょうか。
同じ店でいろいろな分野の文化人が集まるのです。普段は接点がないけれど、お互いに会うべき人たちが自然と集まることができる。この文化は、後世にも残していかなければなりません。休業要請というものは法的に縛られることはないですが、私としては営業を再開できません。いまは苦しいけれど、この状況で営業をしてお客様が感染してしまったら、それこそ店が潰れてしまいます。銀座という文化を守るためにも、いまはみんなで歯を食いしばるしかないのです。
老舗文壇バー「ザボン」の水口素子ママ