福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

秩父三十四所観音霊験圓通傳 秩父沙門圓宗編・・14/34

2023-10-14 | 先祖供養

 

第十四番 長岳山今宮坊。御堂三間四面南向。

本尊聖觀音 雲中出現之尊像 弘法大師御作

當坊に安置の尊像は、徃古弘法大師諸州を巡り給ひ、其地の霊なるに於ては必ず佛像を彫刻し給ふ。或は岩を彫、石を刻み、所として佛像を世に残したまはずと云ことなし。或時此今宮の地に來給ひしに、 天に慶雲たなびきぬ。必ず此の處霊地たらんと思ひたまひ、暫く徘徊し給ふ處ろに 天童降て大師を禮し、 吾れは是役の小角に隋身の童子なり、吾師讒せられて侘邦に行時命じて曰く、後年大徳のこゝに至る事あるべし。其時汝等吾遺命を告て此木を以て觀自在の聖像を彫刻し給へと云べし、敢て怠る事なかれと。 吾輩依之、此地に至給ふを待てり。大師亦辞退にも不及許諾し給ふ時に、童子傍成榧の木を指示て、此木を以て彫刻を進む。大師則三禮して刀を下し給ふに及で、空中に觀世音の聖容現じ給ひ、吾小角が行法を守る事久、小角が願望を満てんが為に現すと。大師歡喜し給ひ、雲中の聖容を拜し、則一刀三禮に 彫刻し給へば、雲中の菩薩は白雲とともに跡なく、天童もかきけして失ぬ。是より永く此地に坐し、今現在に順禮結縁の道俗に普く利益を施し給へり。仰て聖容を拜し奉れば、面輪端正の相好、巍々として 歡喜の泪裳を潤し、慈悲覆護の領袖、郁々として感歎の思肝に染り、大師は亦此處を去て有縁の霊地に趣給ふ 此時より當山は代々修験道の行者住職し、相続て今に至り、効験無双の霊境と稱する事も、定て役君のはからひにやと最貴く覺ぬ。抑優婆塞の古を尋れば、大峯の霧を分、葛城の雲を蹈、浅間嶽の煙を凌ぎ、富士の嶺の雪に立て、身を捨骨を摧き、樹下を舎とし、石上に座し、功を累ね、徳を積、修験 の高祖と仰がれ給ふ。法孫連綿として昌隆に、各祖師の法燈をかゝぐ。役君の行實(行者傳記霊験記同縁起等に委し)此處に畧す。

「昔より 立つともしらず 今宮に 参る心や 浄土なるらん」

詠歌の意は、當寺往古より無双の霊地たるをも知らず、唯何の辨へもなく参り来て拝するが、白浄心とて最佛意に叶へり。彼愚痴無智の尼入道の、一向専念の勧めに叶へると同意なるべし(法然『一枚起請文』「尼入道の無智の輩に同じくして、智者の振る舞いをせずして、ただ一向に念仏すべし」)。

秩父三十四所観音霊験傳 巻第二終

 

 

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