福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

般若心経秘鍵・・その17

2016-09-17 | お大師様のお言葉
原文
「第二の分別諸乗分に、また五つ有り。(だいいにのふんべつしょじょうぶんに、またいつつあり。

建・絶・相・二・一、是れなり。(こん・ぜつ・そう・に・いつ、これなり

初めに、建といっぱ、所謂、建立如来の三摩地門是れなり。(はじめに、こんといっぱ、いわゆる、こんりゅうにょらいのさんまじもんこれなり。

「色不異空」というより、「亦復如是」に至るまで、是れなり。(「しきふいくう」というより、「やくぶにょぜ」にいたるまで、これなり。

建立如来といっぱ、即ち普賢菩薩の秘号なり。(こんりゅうにょらいといっぱ、すなわちふげんぼさつのひごうなり。

普賢の円因は、円融の三法を以て宗とす。(ふげんのえんいんな、えんゆうのさんぼうをもってしゅうとす。

故に以て之に名づく。(かるがゆえにもってこれになづく。

また是れ、一切如来の菩提心行願の身なり。(またこれ、いっさいにょらいのぼだいしんぎょうがんのしんなり。

   頌に曰く、(じゅにいわく、

    色空本より不二なり。(しきくうもとよりふになり

    事理元より来同なり。(じりもとよりこのかたどうなり

    無碍に三種を融ず。(むげにさんしゅをゆうず

    金水の喩その宗なり。(こんすいのたとえそのしゅうなり。


訳・・・般若心経第二章の分別諸乗分(舎利子。色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受・想・行・識亦復如是。舎利子。是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。是故空中、無色、無受・想・行・識、無眼・耳・鼻・舌・身・意、無色・声・香・味・触・法。無眼界、乃至、無意識界。無無明・亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽。無苦・集・滅・道。無智亦無得。以無所得故)はまた五段階に分かれる。

建といって建立如来(普賢菩薩)の悟りの境地を説く華厳宗の部分。絶(無戯論如来すなわち文殊菩薩の境地を説く三論宗の部分)。相といって弥勒菩薩の悟りの境地を説く法相宗の教え。二(声聞と縁覚)。一(観自在菩薩の説く天台宗の教え)。これらがこの分別諸乗分に入っている。

初めに建とは建立如来の悟りの境地の教えである。これは「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受・想・行・識亦復如是」の部分である。建立如来とは普賢菩薩のことである。

般若理趣経によれば大日如来は一切平等建立如来となって法を説くとされ、この一切平等建立如来について、般若理趣釈には「一切平等建立如来とはこれ普賢菩薩の異名なり」とされる。普賢菩薩の菩提心は大日如来の円かな悟りの原因でもある。ここで「色不異空」は華厳でいう事事無碍(現象と現象が溶け合っているという華厳の教え)をいう。すなわち「色」は現象のことで「事」といい、「空」は真理のことで「理」という。「空不異色」は理理無碍をいい、「色即是空、空即是色」は事理無碍をあらわす。次の「受・想・行・識亦復如是」は「色」以外の「受・想・行・識」についても「色」の場合と同じように事理無碍・理理無碍・事事無碍の三種円融が成立するということ。華厳宗では事理無碍・理理無碍・事事無碍の三法が円かに融合し無碍であると説く。このように円融の三法を建立するのは普賢菩薩であるからこの菩薩の秘号を建立如来とするのである。

この建立如来は菩提心にもとずき上求菩提・下化衆生の願いによって修行する普賢菩薩の結果の姿であり、これは華厳宗の教えを示しているのである。

頌に示すと、
般若心経の「色即是空、空即是色」にあるように、「色」(現象・事)というも「空」(真理・理)というももともと一つである。
色に相応する「事」、空に相応する「理」もまた本来一つである。
このように事と理、理と理、事と事も無碍に円融している。華厳ではこれらの三種無碍円融の教えは金獅子のたとえ、水波のたとえで説かれている。

(「金獅子のたとえ」とは黄金の獅子について、黄金は真理(理)、獅子の姿は現象(事)として相互に円融していることを説く、「水波の喩え」も同じで、水が真理、波が現象にたとえてそれぞれがその性を失わずに融合しており無碍であると説く)

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