阿字は自心の本不生を詮じて(阿字を見て、自分の身心は新しく生まれたものでもないし死ぬものでもないと観ずると)、自心に十界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天・声聞・縁覚・菩薩・仏)の諸法を備えるなり。佛の知見を開きて我が自心の一肘の間の阿字を見るものは、「実の如く自心を知る」がゆえに即身成仏なり(仏様の加持力により自分の胸の中に肘大の阿字を観じるものはもともと自分の身心は新しく生じたものでもなければ滅するものでもない、仏界そのものである、と知るがゆえに即身成仏する)。阿字は胎蔵の大日の種字真言にして大日経の一部始終は阿字門の実義を説けり。金剛頂経には阿字をば金剛薩埵の種字とし、識大のウン字を大日の種字とせり、これ理知の不同を現すなり(胎蔵界の理(本来の姿)金剛界の智(修業して得る姿)が一体であることを示す)。本不生は本有性徳の理、ウン字には搉破の義あり。これ修生顕得の智(修業して得る智慧)なり。いわく上根利智の人の若し自心是佛の真言の教えに遇うときに、忽ちに自心の中の自然の智があらわれて、自心の本不生の理をみるがゆえに即ち凡夫の肉身は本より以来仏身なりと知るなり。是を自然覚という。
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