そこで物質世界と生物世界を決定的にわけるものが何かについてまず考えてみよう。矛盾論④でそれは「自己複製」と「進化」の原理であると述べた。どちらが先と言われれば「自己複製」である。「進化」は複製される自己情報の複製エラーとその淘汰から生ずる。エラーが生まれるのは生物世界の基底が物質だからである。生物世界の現在の多様性は「複製エラーと淘汰により進化する情報」と同義語である。ここを差異の根源と考えよう。生物学の言葉でそれは端的にgene とかgenom などと呼ばれる。
人間世界と生物世界の差異表現として「利己的遺伝子(selfish genes)」の作者、リチャード・ドーキンスは「meme」を想定した。日本語ではしばしば遺伝子に対応し「文化子」の訳語が与えられる。この新コンセプトはまだ未成熟でその内容自体が充分整理されていないが、お金も、言語も、法律も、技術も皆memeの1種とされる。私もほぼこの考えを受け入れているが、一方ではgeneの類推物としてのmemeでは安易すぎるとも感じている。geneは根源的に物質世界にはないという意味で根源的差異を表現しているが、memeはgeneと類推物なのでヒトと生物を分かつ根源的な新概念と考えにくいのである。この点については次回で更に掘り下げたい。(続)
人間世界と生物世界の差異表現として「利己的遺伝子(selfish genes)」の作者、リチャード・ドーキンスは「meme」を想定した。日本語ではしばしば遺伝子に対応し「文化子」の訳語が与えられる。この新コンセプトはまだ未成熟でその内容自体が充分整理されていないが、お金も、言語も、法律も、技術も皆memeの1種とされる。私もほぼこの考えを受け入れているが、一方ではgeneの類推物としてのmemeでは安易すぎるとも感じている。geneは根源的に物質世界にはないという意味で根源的差異を表現しているが、memeはgeneと類推物なのでヒトと生物を分かつ根源的な新概念と考えにくいのである。この点については次回で更に掘り下げたい。(続)