「日本精神の正体をとらえるためには定義を考えることが必要である。・・日本精神の概念成立のためには満たすべき条件が若干存在する。
・その第一は日本精神とは一つの中間原理である、ということである。芳賀矢一氏が『国民性十論(明治40年)』で忠君愛国・崇祖尊家・現実的実際的・自然愛・楽天洒落・淡泊瀟洒・繊麗繊巧・清浄潔白・礼節作法・温和寛恕等の国民性を指摘したがこれらの国民性に対して日本精神とは国民性特性の根底に存する一層基本的なるものである。しかもその原理たるや人間最高の精神的原理としてのロゴスや神や理性とまでなってはならぬ。(ここまでくると)日本と言う属性がなくなるからである。これが「中間」という所以。
・第二は、国際的に個性的なるべきこと。
・第三は、国内的に共通的一般的性質。国民として全体的に有する精神的性格であり、時間的にも古今を通じて一貫して存在したもの。
・第四は、規範的にして実在的な二重性。国民にとって理想、規範であると共に、実際に国民が実現しているもの。
・・・日本精神とは我が歴史を生み出した国民精神である、わが歴史的精神である。(日本精神を究めるためには)歴史的に発掘された代表的事象から出発してその根底となった精神を究めることが(日本精神を発見すること)である。この歴史的事象として明白にして何等疑いを挟む余地のないものとして、
・第一は國體(國體すなわち国家の性格は天皇中心の血族的国家、萬世一系の皇室を戴いて国民が建国以来歴史において実現し護持し成就しきたったところ)
・第二は世界文化の摂取(建国以来、儒教、仏教、新しくは西洋文化等およそ世界のすぐれた文化に対してこれを学得し消化しようとして取来った態度、成績である)
(それではこれら國體護持と世界文化の摂取をおこなってきた更に根本の)わが国民性とはなにか。・・・吾人の最も適当に挙示しうるものは「あかき心・きよき心」である。この語の代表的出所は記紀における天照大神と素戔嗚尊の間の誓約である。天照大神は素戔嗚の尊に「あかき心」をどのようにして示すかと問居、」素戔嗚尊は「男子生まれればきよき心ありとしたまへ」というのである。さらに続日本紀宣命にも多く出てくる。たとえば「天皇が・・明かき清き直き誠の心を以て(第一詔)」など。(村岡はこの「あかき心」のほかに「正直」、「大和魂」を日本的道義心・国民性の発現とします)
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